• 作成日 : 2016年10月13日
  • 更新日 : 2018年10月1日
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社会保険に加入できる人が増える!平成28年10月施行の制度改正内容を解説

社会保険に加入できる人が増える!平成28年10月施行の制度改正内容を解説

社会保険に加入できる人が増える!平成28年10月施行の制度改正内容を解説

平成28年10月に改正社会保険制度が施行され、加入対象者が拡大されます。ここではこの改正によってどのような基準で加入対象者が拡大されるのか、その目的は何なのかについて解説します。

また、加入対象者の拡大に伴って人材コストが拡大する企業とそうでない企業も生じます。その違いを理解するとともに、改正に伴う悪影響に対して国がどのような緩和措置を用意しているかも知っておきましょう。

社会保険制度はどう変わる?

社会保険制度改正で加入対象者は約25万人増える

平成28年10月施行の改正以降は社会保険の加入対象者は次の5要件を満たした人となります。

1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
2. 賃金の月額が8.8万円以上であること
3. 勤務期間が1年以上見込まれること
4. 学生でないこと(ただし、夜間、通信、定時制の学生は対象)
5. 以下のいずれかに該当すること
・従業員数501人以上の企業(特定適用事業所)で働いていること
・従業員数が500人以下の企業で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている(平成29年4月から)

(引用:短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大|厚生労働省

従業員数が501人以上の企業について改正前の制度では正社員の所定労働時間・所定労働日数の約4分の3以上であれば、アルバイト・パートでも社会保険に加入できるとしていました。

正社員の所定労働時間を一週間で40時間(週あたりの所定労働日数は5日)とすると、その4分の3は30時間です。

週20~30時間の短時間労働者の分布

(引用:短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大|厚生労働省

上図は週20~30時間の短時間労働者の分布をまとめたものです。所定労働時間の要件を「20時間以上」に拡大するだけでは加入対象者が約400万人も増加し、企業への負担の激増が予測されます。

そこで今回の改正では所定労働時間の要件に4つの要件を加えて、増加する加入対象者を約25万人に抑えているのです。

今回の社会保険制度改正の目的とは?

この社会保険制度改正が決まった背景には3つの目的があります。

1つは社会保険における「格差」を是正することです。現在非正規労働者として働いている人の中には、「正社員並み」に働いている人も数多くいます。そうした人たちと正社員との社会保険上の差を是正するのが今回の改正の目的の1つなのです。

2つ目は女性の就業意欲の促進による、人口減少社会対策です。配偶者控除や特別配偶者控除といった制度は、ともすると「働かない方が得」という認識につながります。このような認識をなくし、「働いた方が得」という仕組み作りをすることも目的の1つとなっています。

3つ目は平成24年8月10日に成立した「年金機能強化法」の主要項目の1つである「短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大」を実現するためです。

社会保険制度改正で企業にどんな影響があるか?

社会保険制度改正がマイナスに働く企業

今回の改正でマイナスの影響を被る企業は、飲食サービスや流通業、小売業などを経営する企業です。これらの企業の特徴としては、次の2点が挙げられます。

1.短時間労働者の割合が高い。
2.社会保険加入者の平均賃金が比較的低い。

社会保険の保険料負担は企業と従業員で折半します。そのため社会保険加入者が増加すると、その分だけ企業の負担は増加するのです。

社会保険制度改正がプラスに働く企業

一方で、今回の改正でプラスの影響を受ける企業もあります。それは正社員がほとんどで、アルバイト・パートがほとんどいない企業です。特徴は平均賃金が比較的高い点です。

このような企業の場合これまで従業員の被扶養者だった家族が、勤め先で社会保険に加入できるようになります。その分だけ保険給付費等が減り、保険財政が改善されると考えられます。

扶養家族がいる従業員に家族手当等を支給している企業は、被扶養者が扶養から外れることにより、家族手当等の支給対象でなくなり、企業の負担が減るケースがあります。

社会保険制度改正に伴う影響の緩和措置

社会保険制度改正の影響に対する緩和措置

今回の改正で企業に生じるマイナスの影響に対し、緩和措置を用意しています。それは各企業の社会保険加入者数に応じて負担額が決まっている後期高齢者支援金(加入者割相当分)と介護納付金を、従業員に支払った報酬に応じて減額するというものです。

標準報酬月額と標準賞与額の年平均額が標準報酬月額に換算して9.8万円(報酬額ベースで10.1万円)未満の者と、その被扶養者の人数(特定加入者)を補正し、特にマイナスの影響を受ける企業の負担を軽減するのです。

これによって減少する後期高齢者支援金と介護納付金については、社会保険に加入している企業全体でカバーする予定となっています。

緩和措置はどれくらいの効果があるのか?

厚生労働省の試算によるとこの緩和措置によって改正に伴う保険料率の上昇幅を約半分に抑えることができます。

飲食サービスや流通業、小売業などを経営する企業の実質保険料率は、改正がなければ平成28年度は約12.7%、平成29年度は約12.8%です。しかし改正が実施されると平成28年度で約13.4%、平成29年度では約14.9%になります。

たった2%程度の増加ですが、分母である標準報酬月額の総額が何千万円、何億円となれば金額はその分だけ大きくなります。

そこで今回の改正でマイナスの影響を受ける企業に対し、後期高齢者支援金と介護納付金の計算に用いる社会保険加入者数を、100分の1換算したとします。

すると平成28年度の保険料率は約12.9%(改正前と同程度)、平成29年度では約14.0%(上昇幅が約半分)に抑えられるのです。

まとめ

2016年10月の社会保険制度改正で、アルバイト・パートなどの非正規労働者も社会保険に加入できる人が増えることになります。労働者にとってはより安心して働ける環境が整うのです。

しかし企業によっては手痛いコスト増につながる可能性も考えられます。今後の緩和措置の決定を見守るとともに、準備や対策を怠らないようにしましょう。

監修:川本 祐介 (社会保険労務士)

税理士法人ゆびすい
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