• 更新日 : 2026年10月5日

年末調整で追加徴収されるのはなぜ?原因・対処法から2025・2026年度税制改正による控除額の変更点まで解説

Point年末調整で追加徴収される原因は?

年末調整の追加徴収は、給与増加や控除額の減少により源泉徴収額が実際の税額より少なくなった場合に発生します。

  • 主な原因は給与・賞与の増加や扶養親族の減少
  • 2025年度改正で基礎控除が最大95万円に拡大
  • 不足額は原則12月給与から自動的に天引きされる

Q. 追加徴収された場合、自分で納付手続きは必要?

A. 不要です。会社が12月の給与から自動的に天引きします。手取りへの影響が大きい場合は翌年1〜2月への繰延べ申請が可能です。

1年間の給与や世帯の事情などで納めた税金が少ない場合は、年末調整の際に追加徴収となることがあります。特に2025・2026年度税制改正により基礎控除や扶養控除等の要件が変わったため、例年と状況が異なるケースも想定されます。本記事では、年末調整で追加徴収となる原因から対処方法、確定申告が別途必要となるケースまでを解説します。

年末調整の追加徴収とは?

年末調整の追加徴収とは、納めるべき税金が源泉徴収額を上回った場合に、差額を追加で納税する仕組みです。会社員は毎月の給与から所得税が源泉徴収されており、その金額が適切かどうかを年末に精算するのが年末調整です。

年末調整は、原則として、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している一定の給与所得者を対象に行います。ただし、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、年末調整の対象外となる人もいます。1月から12月までの給与・賞与に基礎控除や配偶者控除などの各種控除を適用し、正しい年間の税額を算出したうえで、源泉徴収額との過不足を精算します。

徴収額が納めるべき税金より多ければ「還付」を受けられますが、逆に少なければ「追加徴収」の対象となります。

追加徴収と追徴課税の違い

追加徴収と混同されやすい言葉に「追徴課税」がありますが、両者は発生する場面が異なります。会社員が年末調整で不足分を納めるのが追加徴収、個人事業主や法人が確定申告時に申告漏れなどで不足額を納めるのが追徴課税です。

追加徴収は、納めるべき税金に対して源泉徴収額が少ない場合に発生します。追徴課税は、納める必要のある所得税より少ない金額を申告していたことが発覚した際に不足額を納めるものです。なお、追徴課税は個人事業主や法人に限らず、会社員を含む納税者にも生じる可能性があります。

年末調整で追加徴収される主な原因は?

年末調整で追加徴収となる原因は、給与や世帯構成の変化により控除額が実質的に減ることが主です。具体的には次の5つが挙げられます。

  1. 給与が増えたから
  2. 賞与が多かったから
  3. 扶養親族が減ったから
  4. iDeCoの掛金が減ったから
  5. 生命保険を解約したから

それぞれの内容を確認し、自分に当てはまる原因がないか確認しておきましょう。

給与が増えたから

給与の上昇は、追加徴収の代表的な原因です。源泉徴収は「毎月ほぼ一定額の給与を受け取る」ことを前提に計算されるため、パート勤務時間の増加や昇進・転職による昇給、残業代の増加などで給与が変動すると、源泉徴収額が実際の税額より少なくなりやすくなります。

参考:令和8年版 源泉徴収のあらまし|国税庁

賞与が多かったから

賞与の増加も、給与と同様に追加徴収の原因になります。賞与額は企業業績の影響を受けやすく、事業が好調な年は例年より賞与が増えることがあります。所得が増える分、源泉徴収額が不足し、年末調整で追加徴収の対象となるのです。

扶養親族が減ったから

扶養親族が減ると扶養控除による控除額がなくなり、その分課税所得が増えて追加徴収につながります。子どもの独立や親族の死亡などで扶養から外れるケースが典型例です。

2025年度税制改正により、2025年分は扶養親族等として認められる合計所得金額の要件が48万円以下から58万円以下に、給与収入のみの場合は年収123万円以下に引き上げられました。

さらに2026年度税制改正により、2026年分からは合計所得金額62万円以下、給与収入のみの場合は年収136万円以下に引き上げられます。あわせて、19歳以上23歳未満の親族について、所得が58万円を超えても段階的に控除を受けられる「特定親族特別控除」が新設されています。この改正により、これまで扶養から外れていたケースでも控除が継続・縮小適用され、追加徴収の影響が緩和される場合があります。

目安は次のとおりです。

区分 控除額
一般扶養親族 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上) 原則48万円、同居の場合は58万円

参考:No.1180 扶養控除|国税庁、No.1177 特定親族特別控除|国税庁

iDeCoの掛金が減ったから

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の掛金を減らすと、所得控除額が減り追加徴収につながることがあります。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象であるため、拠出額を減らすとそのまま課税所得が増える仕組みです。

2026年9月時点の掛金上限額は、企業年金制度のない会社員が月額2万3,000円、公務員が月額2万円、最低掛金額は月額5,000円です。2024年12月には事業主証明書の提出が不要になるなど手続きが簡素化されており、2027年1月分の拠出からは掛金上限額がさらに大幅に引き上げられる予定です。掛金額を見直す際は最新の上限額を確認しましょう。

参考:iDeCo公式サイト|国民年金基金連合会

生命保険を解約したから

生命保険を解約してその年の保険料の支払額が減少すると、生命保険料控除の額も減少し、年末調整で追加徴収につながることがあります。

老後資金を見据えて満期を迎えた生命保険を解約し、解約返戻金を受け取っている場合は特に注意が必要です。返戻金は一時所得となり所得税負担が増えるため、金額によっては確定申告が必要になることがあります。生命保険料控除の対象は、生命保険・私的な医療保険・介護保険・個人年金保険です。

参考:No.1140 生命保険料控除|国税庁

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年末調整で追加徴収となった際の対処法は?

追加徴収となった場合、基本的には特別な手続きなく給与から天引きされます。手取りへの影響が大きい場合は、繰延べの申請も可能です。

基本的には給与から追加徴収分が差し引かれる

追加徴収分の税金は、源泉徴収と同様に給与から天引きされます。一般的には12月分の給与から徴収されるため、12月の源泉徴収額がこれまでより多ければ追加徴収されている証拠です。会社の労務担当者が対応するため、自分で金融機関に納付する必要はありません。

徴収の繰延べを申請する

追加徴収により手取りが大幅に減る場合は、繰延べの申請ができます。対象となるのは、不足額の全額をその年最後の給与から徴収すると、12月分の税引後給与が1月から11月までの税引後給与の平均額の70%未満となる人です。承認を受けると、不足分を翌年1月・2月に繰り延べて徴収してもらえます。

申請には「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を作成し、その年最後の給与の支払を受ける日の前日までに、給与の支払者を経由して所轄税務署に提出します。

参考:A2-10 年末調整による不足額徴収繰延の承認申請|国税庁

年末調整をしても確定申告が必要になるケースは?

年末調整は給与所得に対する所得税を精算するものであり、給与以外の所得がある場合は別途確定申告が必要になることがあります。

副業収入がある場合

副業による所得は、その内容や実態に応じて雑所得や事業所得などに分類され、年末調整とは別に税額計算が必要です。給与所得者の場合、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超えるなど、一定の場合には確定申告が必要です。

給与以外の収入がある場合

以下のような所得がある場合も、確定申告が必要になります。

  • 不動産所得:家賃収入など、不動産の貸付けによる所得
  • 譲渡所得:不動産や株式、ゴルフ会員権などの売却による所得
  • 一時所得:生命保険の解約返戻金や懸賞の賞金など一時的な所得
  • 事業所得:一定規模以上の事業から得られる所得

これらの所得も、収入から必要経費を差し引いて所得が発生していれば確定申告の対象です。

2025・2026年度税制改正が年末調整に与える影響は?

2025・2026年度税制改正により、基礎控除・給与所得控除・扶養控除等の要件が段階的に見直されています。これにより、控除額全体が底上げされ、例年より還付側に有利になっている人も多いと想定されます。

基礎控除・給与所得控除の引き上げ内容

基礎控除は合計所得132万円以下の場合、48万円から95万円へ引き上げられました。給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられ、いわゆる「103万円の壁」は「160万円の壁」に変わりました。これらは令和7年分(2025年分)以後の所得税に適用され、2025年12月の年末調整からすでに反映されています。

合計所得金額 基礎控除額(改正後) 改正前
132万円以下 95万円 48万円
132万円超336万円以下 88万円 48万円
336万円超489万円以下 68万円 48万円
489万円超655万円以下 63万円 48万円
655万円超2,350万円以下 58万円 48万円

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

令和8年度税制改正大綱による2026年分の年末調整への影響

令和8年度税制改正による基礎控除等の引上げは、2026年12月1日から施行され、2026年分の所得税から適用されます。そのため、2026年1月から11月までの給与・賞与に対する源泉徴収事務には変更がなく、2026年12月の年末調整で改正後の控除額を反映して精算します。

したがって、2026年分の年末調整では、月々の源泉徴収に反映されていなかった基礎控除等の引上げが年末調整で適用されることになります。

そのため、2026年分の年末調整では追加徴収よりも還付が生じやすい状況が想定されます。最新の適用状況は、年末調整の実務を進める前に国税庁の公表資料で必ず確認してください。

参考:令和8年分 源泉徴収税額表|国税庁

追加徴収額の計算方法は?

追加徴収額は、給与・賞与の合計額から所得控除額を差し引いた課税所得金額に税率を掛け、源泉徴収額との差額を求めることで計算できます。以下の手順で確認しましょう。

STEP1 給与・賞与の合計額を算出する

その年の1月から12月までに支払われた給与・賞与すべてを合計します。税金や社会保険料が引かれる前の額面給与であり、手取り金額ではない点に注意してください。

STEP2 所得控除額を算出する

年末調整で適用される主な控除は、以下のとおりです。2025年度税制改正により、基礎控除・扶養控除等の要件が変更されている点に注意しましょう。

適用される控除の種類 年末調整時に提出する書類
扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
基礎控除、配偶者控除、所得金額調整控除、特定親族特別控除 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書
生命保険料控除、社会保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除 保険料控除申告書
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)※初年度を除く 住宅借入金等特別控除申告書

住宅ローン控除は初年度のみ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で対応できます。書類を提出しないと控除を受けられず税額が増えるため、忘れずに提出しましょう。

参考:住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)|国税庁

STEP3 課税所得金額を算出する

給与・賞与の合計額から所得控除額を差し引き、「課税所得金額」を算出します。会社員の場合、給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算し、そこから基礎控除や社会保険料控除、生命保険料控除などの所得控除を差し引いて課税所得金額を計算します。

STEP4 税率を掛けて所得税額を算出する

課税所得金額に、以下の税率を掛けて所得税額を求めます。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円 5% 0円
1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円〜6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円〜8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円〜17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

課税所得金額に所得税率を適用して所得税額を算出した後、復興特別所得税を加算し、年調年税額を計算します。年調年税額は100円未満の端数を切り捨てます。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

STEP5 源泉徴収額との差額を算出する

最後に、年調年税額を源泉徴収税額と比較します。源泉徴収税額が多ければ還付、少なければ追加徴収です。年調年税額から源泉徴収額を差し引いた金額がプラスの場合、その差額が12月分の給与とあわせて徴収されます。

追加徴収の原因を特定し2025・2026年度の改正内容もふまえて対処しよう

年末調整で追加徴収となる要因は、給与・賞与の増加や扶養親族の減少、iDeCoの掛金減額など多岐にわたります。2025・2026年度税制改正により基礎控除や扶養控除等の要件が変わったため、例年と状況が異なる場合もあります。原因を把握し、必要であれば確定申告もあわせて検討しながら、年末調整の追加徴収に適切に対処しましょう。


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