• 更新日 : 2025年2月21日

年末調整で追加徴収される原因は?徴収時の対処方法や計算方法、確定申告が必要なケースを紹介

1年間の給与や世帯の事情などで納めた税金が少ない場合は、年末調整の際に追加徴収となる場合があります。しかし、どのように対応すべきか悩むのではないでしょうか。追加徴収は原因を特定し、適切に対処することがポイントです。

本記事では、年末調整で税金が追加徴収となる原因から対処方法、別途で確定申告が必要となるケースについてを解説します。ぜひ参考にしてください。

年末調整の追加徴収とは

年末調整の追加徴収とは、「納めるべき税金 > 源泉徴収額」となった場合に追加で納税する仕組みです。会社員は源泉徴収により所得税や住民税を納付します。納付金額が適切かどうかは年末調整によって判断されます。

年末調整とは、源泉徴収額と年間税額を一致させるための手続きです。対象は勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人を指します。年末調整では、1月から12月までの給与・賞与から基礎控除配偶者控除などを適用し、所得に応じた税率を掛けて正しい税額を算出します。

徴収額が納めなければならない税金よりも多い場合は、払いすぎた税金が戻ってくる「還付」を受けることが可能です。納める税金が少ない場合は、追加徴収がされます。

追加徴収と追徴課税の違い

追加徴収と似たような言葉に「追徴課税」があり、発生条件がそれぞれで異なります。違いは以下のとおりです。

追加徴収納めなければならない税金に対して源泉徴収額が少ない場合に、追加で税金を納めること
追徴課税納める必要のある所得税よりも少ない金額を申告していたことが発覚した際に、不足額を納めること

追加徴収は、年末調整時に発生する可能性があるものです。一方で、追徴課税は個人事業主や法人の確定申告時に起こり得ます。

それぞれ税金を徴収されることに変わりはありません。会社員の場合は「追加徴収」、個人事業主や法人経営者は「追徴課税」と覚えておくとよいでしょう。

年末調整で追加徴収される5つの原因

年末調整で税金が追加徴収される原因に、以下の5つが挙げられます。

  • 給与が増えたから
  • 賞与が多かったから
  • 扶養親族が減ったから
  • iDeCoの掛金が減ったから
  • 生命保険を解約したから

追加徴収の原因は給与や世帯構成の変化により、控除額が減少することで起こることが主です。想定される原因を事前におさえておき適切に対処しましょう。

給与が増えたから

追加徴収となる原因のひとつに、パート勤務時間の増加や昇進・転職によって給与が上がったケースです。源泉徴収はあくまで「毎月同じ金額の給与を受け取るもの」と想定して計算されます。

しかし、実態は残業代や転職・昇進による昇給などで給与が一定でないケースもあるでしょう。 給与が増えると源泉徴収額が本来よりも少なくなってしまい、年末調整で追加徴収の対象となるのです。

参考: 国税庁「給与所得の源泉徴収事務」

賞与が多かったから

給与と同様に、賞与の増加によって追加徴収となるケースです。賞与金額は企業業績の影響を受けるため、勤務先の事業が大きく成長した場合は、賞与が例年よりも増える場合があります。

賞与が増えると所得も増えるため源泉徴収額が不足し、結果的に年末調整で追加徴収の対象となるのです。

扶養親族が減ったから

扶養親族が減ると、扶養控除による控除額が減ってしまい追加で税金がかかります。たとえば、年の途中で子どもが一人暮らしをはじめたり父母が亡くなった場合など、自分の扶養から外れるケースです。

扶養控除は親族を扶養していないと適用されません。よって、控除がなくなり税額が増えます。主な控除は以下のとおりです。

  • 一般扶養親族:控除額38万円
  • 特定扶養親族(19—23歳未満):控除額63万円
  • 老人扶養親族(70歳以上):控除額は原則48万円、同居の場合は58万円

参考: 国税庁「No.1180 扶養控除」

扶養する親族がいる人は、上記の条件や控除額を事前におさえておきましょう。

iDeCoの掛金が減ったから

iDeCo(イデコ)の掛金を少ない金額に変えた場合は、控除額が以前より減ることがあります。iDeCoは掛金すべてが所得控除の対象です。そのため、減額すると控除額が減り、所得が増えることで追加徴収の可能性が高まります。

拠出額の限度額は、企業年金制度のない会社員の場合は月額2万3,000円、公務員は月額2万円まで掛金を拠出でき、最低掛金額は5,000円となっています。

参考: iDeCo「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの4つのポイント」

iDeCoは、公的年金とは別に年金を用意できます。掛金を全額「小規模企業共済等掛金控除」にできるなど、税制優遇できることも強みです。

生命保険を解約したから

生命保険を解約した場合にも、追加徴収の原因となることがあります。生命保険料の支払いには「生命保険料控除」が適用されます。解約による保険料の払込がなくなることで控除額が減り、追加徴収となるケースです。

老後生活を見据えて働いている50代後半〜70歳の人など、満期を迎えた生命保険を解約し、解約返戻金を受け取っている場合は注意しましょう。返戻金が一時所得となることで所得税負担が増え、確定申告が必要になることがあります。

生命保険料控除は、生命保険・私的な医療保険・介護保険・個人年金保険が対象です。

参考: 国税庁「No.1140 生命保険料控除」

年末調整で追加徴収となった際の対処方法

年末調整で追加徴収となった場合の対処法は、以下のとおりです。

  • 基本的には給与から追加徴収分が差し引かれる
  • 徴収の繰延もできる

対処方法をおさえておくことで、万が一に追加徴収となった際に慌てることを防げます。必要に応じて、適切な手続きをとりましょう。

基本的には給与から追加徴収分が差し引かれる

追加徴収分の税金は、源泉徴収と同様に給与からの天引きとなります。一般的には、12月分の給与から徴収されます。12月の源泉徴収額がこれまでよりも多かったのであれば、税金が追加徴収されている証拠です。

自治体から税金の納付書が来たり、自分で金融機関などで納めたりする必要はありません。会社の労務担当者が毎月の源泉徴収と同じように対応してくれるため、特段の手続きは不要です。

徴収の繰延もできる

追加徴収により手取りが大幅に減る場合は、繰り延べをできます。具体的な条件は、給与をもらう最終月の前月までの税引手取額が月割平均額の70%に満たない場合です。たとえば、12月に徴収される税金の不足分を、翌年の1月〜2月の期間に繰り延べます。

条件不足金額の全額その年最後に支払う給与から徴収すると、12月分の税引後の給与の金額が1月から11月までの税引後の給与の平均の70%未満となる人
提出日承認を受ける年度で最後の給与が支払われる日の前日

参考: 国税庁「A2-10 年末調整による不足額徴収繰延の承認申請」

繰り延べをする際は「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を記入し会社へ提出、自身で提出する場合は税務署が窓口となります。

年末調整しても確定申告が必要となるケース

年末調整で追加徴収や還付を受けていても、別途で確定申告が必要な場合があります。該当するケースは以下のとおりです。

  • 副業収入がある
  • 給与以外の収入がある

年末調整は、給与所得に対する所得税を算出するものです。ほかに所得がある場合は、確定申告が必要となることがあります。該当する場合は忘れずにおこないましょう。

副業収入がある

給与とは別に副業収入がある場合、確定申告が必要な場合があります。副業収入は雑所得に分類されるので、年末調整とは別に税額計算をする必要があるためです。

確定申告が必要なケースは、雑所得が20万円を超えた場合です。収入から必要経費を差し引いた金額が20万円超の場合は、必ず確定申告をしましょう。

給与以外の収入がある

以下のような、給与以外の収入がある場合は確定申告が必要になります。

  • 不動産所得:家賃収入など、不動産を貸付して得られた所得
  • 譲渡所得:不動産や株式、ゴルフ会員権などを売却して得た所得
  • 一時所得:生命保険の解約返戻金や競馬の払戻金、懸賞の賞金など一時的な所得
  • 事業所得:一定以上の規模の事業を営むことで得られた所得

上記の所得も、雑所得と同様に年末調整とは別に税額計算をします。収入から必要経費を差し引き、所得が発生した場合は確定申告をします。

追加徴収分の計算方法

追加徴収分の計算方法は、以下の手順でおこないます。計算方法を知っておくと、おおよその税額の目安や追加徴収の有無を確認できます。追加徴収額が気になる人は、ぜひ参考にしてください。

  1. 給与・賞与の合計額を算出する
  2. 所得控除額を算出する
  3. 給与・賞与の合計額から所得控除額を差し引く
  4. 税率を掛けて所得税額を算出する
  5. 源泉徴収額と所得税額の差額を算出する

追加徴収分の税金計算は本来、納める必要のある所得税と源泉徴収税の差額を求めるものです。会社員であれば労務担当の職員がしてくれるため、基本的に自分で計算することはありません。

給与・賞与の合計額を算出する

はじめに、給与と賞与の合計額を計算します。その年の1月〜12月に支払われた給与・賞与すべてを足し合わせましょう。

足し合わせるのは、税金や社会保険料が引かれる前の額面給与です。手取り金額ではない点をおさえておきましょう。

所得控除額を算出する

次に、給与・賞与の合計から差し引く所得控除額を算出します。年末調整で適用される控除は、以下のとおりです。

適用される控除の種類年末調整時に提出する書類
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
「保険料控除申告書」
「 住宅借入金等特別控除申告書」

※初年度を除く

参考: 国税庁「各種申告書・記載例」

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」・「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」・「保険料控除申告書」は、年末調整で提出必須の書類です。裏面に記載されている事項を確かめながら、書類を記入しましょう。

「住宅借入金等特別控除申告書」については、住宅ローン控除を受ける人が提出します。住宅ローン控除は、控除の初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で対応できます。

参考: 国税庁「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

書類を提出しないと、控除を受けられず税額が増えることがあります。忘れずに提出しましょう。

給与・賞与の合計額から所得控除額を差し引く

所得控除額が算出できたら、給与・賞与の合計額から差し引いて「課税所得金額」を算出します。もし自分で計算に挑戦する場合は、控除額の足し忘れに注意してください。

適用される控除額は人によって異なり、会社員の場合は給与所得控除と社会保険料控除が適用されます。所得額が2,500万円以下であれば、基礎控除も適用されます。

税率を掛けて所得税額を算出する

課税所得金額を算出できたら、税率を掛けて所得税額を求めましょう。所得税の税率は所得金額に応じて、以下のように定められています。

課税される所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,000円23%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

参考: 国税庁「No.2260 所得税の税率」

この計算で算出された金額は「年調年税額」とよばれ、納めるべき所得税額となります。税率が10%以上の場合は、税率を掛けたのちに控除額の差引が必要です。忘れずにおこないましょう。

源泉徴収額と所得税額の差額を算出する

最後に、年調年税額を源泉徴収税額と比較します。源泉徴収税額が多ければ差額が還付され、少なければ差額分が追加で徴収されます。

追加徴収の対象となるのは、年調年税額から源泉徴収額を差し引いた金額がプラスの場合です。差額が12月分の徴収分と合わせて差し引かれます。

追加徴収の原因を特定し適切に対処しよう

年末調整で追加徴収となる要因は、給与・賞与のアップや控除額の減少などさまざまです。給与以外に収入がある場合は、確定申告が必要なケースもあります。

自分でおおよその税額を計算できれば、追加徴収されても慌てることがありません。年末調整時に追加徴収となった原因をおさえて、適切に対処しましょう。


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