- 更新日 : 2024年6月7日
労災保険の特別加入とは
労災保険は、基本的に労働者を保護するための保険ですが、労働者に準じて保護することがふさわしい者については特別に、任意加入することができます。それが、特別加入制度です。今回は、労災保険に特別加入できる対象範囲について解説していきます。
目次
特別加入することができる者
労災保険に特別加入することができる者は、おおきく分けて以下の4種類になります。
1. 中小事業主及びその家族従事者等
2. 一人親方及びその他の自営業者等
3. 海外派遣者等
4. 特定作業従事者及び家事支援従事者
中小事業主及びその家族従事者等とは?
中小事業主やその家族の従事者等とは、個人事業主(フリーランスなど)、法人(会社)の役員、事業主の家族をいいます。中小事業主と認められる規模は、常時雇用している労働者の数によって決まります。金融、保険、不動産、小売の事業は50人以下、卸売、サービスの事業は100人以下、それ以外の業種においては300人以下となります。
一人親方及びその他の自営業者等とは?
一人親方とは一人で大工をやっている人など事業主兼労働者のような人をいいます。その他の自営業者も親方ではないにせよ同じように労働者と同様の仕事をする人をいいます。具体的には、次の種類の事業を行う者が労災保険に特別加入できます。
1. 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業を行う者
2. 土木、建築、その他の工作物の建設、修理、解体等の事業を行う者
3. 漁船による水産動植物の採捕の事業を行う者
4. 林業の事業を行う者
5. 医薬品の配置販売の事業を行う者
6. 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業を行う者
7. 船員法第1条に規定する船員が行う事業
海外派遣者等とは?
海外派遣者として労災保険に特別加入することができる人とは、以下の条件に当てはまる人です。
1.独立行政法人国際協力機構等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する者(青年海外協力隊)
2.日本国内の事業所から海外支社や工場、国外の提携先企業等、海外で行われる事業に労働者として派遣される者
3.日本国内の事業所から海外にある中小規模の事業(金融、保険、不動産、小売の事業は50人以下、卸売、サービスの事業は100人以下、それ以外の業種においては300人以下)に労働者としてではなく事業主等として派遣される者
なお、派遣される事業の規模については、海外の国ごとかつ企業ごとに判断します。つまり、派遣先の各々の国ごとの事業場において先述した規模以内であれば労災保険に特別加入が可能です。
特定作業従事者とは?
特定作業従事者とは、以下の6つを指します。
1.特定農作業従事者
特定農作業従事者とは、農業生産物の年間の販売額が300万円以上、または経営している耕地の広さが2ヘクタール以上の大きさで、土地の耕作・開墾、植物の栽培・採取、家畜や蚕の飼育を行う自営農業者であって、エンジンや電力などの動力により駆動する機械を使用する作業等、危険を伴う作業に従事する者をいいます。
2.指定農業機械作業従事者
指定農業機械作業従事者とは、自営農業者であって、トラクターなどの機械を使用し、土地の耕作・開墾または植物の栽培・採取の作業を行う者をいいます。
3.国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
国又は地方公共団体が実施する訓練従事者とは、職場適応訓練従事者と事業主団体等委託訓練従事者をいいます。
4.家内労働者及びその補助者
家内労働者及びその補助者とは、家内労働法でいうところの家内労働者またはその補助者であって、プレス機械、旋盤、ボール盤などを使用して行う、金属、合成樹脂、ゴムや紙などの加工の作業など特に危険度が高いとされる作業に従事する者をいいます。ただし、原則として1年間のうち200日以上従事し、就労時間が一日平均で4時間以上と見込まれることが必要です。
5.労働組合等の常勤役員
労働組合等の常勤役員とは、常勤職員を置かない労働組合等において、労働組合等の事務所や集会場、道路など公共施設における集会の運営、団体交渉や労働組合等の活動に係る作業をする一人専従役員をいいます。
6. 介護作業従事者及び家事支援従事者
介護作業従事者とは、「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第2条第1項に規定する介護関係業務に係る作業で、入浴や排せつの介助、食事等の介護、その他日常生活においての世話、機能訓練または看護に係る作業を行う者をいいます。
また、家事支援従事者とは、家事(炊事、洗濯、買い物、児童の日常生活上の世話及び必要な保護その他家庭において日常生活を営むのに必要な行為)を代行し、または補助する作業を行う者をいいます。
まとめ
以上のとおり、労災保険の特別加入はあくまで例外措置なので、加入できる者が限定されています。
また、上記解説はあくまで概論的なものにすぎず、その他の要件も存在しますので、労災保険に特別加入できるどうか迷ったときには、最寄りの労働局、もしくは労働基準監督署の窓口へ相談するようにしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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