• 作成日 : 2016年4月5日
  • 更新日 : 2017年4月17日
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みなし残業は労働基準法違反か?法的根拠と注意点を解説

みなし残業は労働基準法違反か?法的根拠と注意点を解説

みなし残業は労働基準法違反か?法的根拠と注意点を解説

中小企業などでの導入が多く見られる「みなし残業時間制」。「違法なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、これは労働基準法によって定められている労働形態です。

ただし、運用に注意をしなければ違法になってしまうこともあります。ここでは同法が条文で言及する3つの「みなし残業」について解説するとともに、「みなし残業時間制」運用の注意点について解説します。

「みなし残業」は労働基準法違反か?

「みなし残業時間制」と「みなし労働時間制」の違い

「みなし残業」とはあらかじめ設定する、「30時間」「40時間」などの残業とみなす時間です。

これに基づいて残業代を固定して支払う給与制度を「みなし残業時間制」と呼びます(または「固定残業代制度」)。この給与制度は労働基準法には明記されていませんが、小里機材事件最高裁判決(最高裁昭和63年7月14日判決)において「一定の要件を満たせば認められる」とされているため、違法ではありません。

対して「みなし労働時間制」は、残業時間を含むすべての労働時間をあらかじめ設定し、それに基づいて給与を支払う制度です。こちらも労働基準法第38条に3つの規定があるため違法ではありません。

労働基準法第38条が示す3つの「みなし労働時間制」

労働基準法第38条は「時間計算」について定める条文です。この条文で定められているみなし残業労働制には3つのタイプがあります。以下でそれぞれについて見ていきましょう。

「事業場外みなし労働時間制」とは

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。

(出典:労働基準法第38条の2第1項

これが事業場外みなし労働時間制の根拠となる条文です。営業職などの場合、企業の外で仕事をすることが多いため、雇用者側が正確に労働時間を把握するのが難しくなってしまいます。

そこであらかじめ「みなし労働時間」を定めておいてもよい、と定めたのがこの労働基準法第38条の2の1項なのです。各項に基づけば、雇用者側は従業員側と「みなし労働時間」をどれくらいにするかの協定を交わし、その協定を行政に対して届け出て、初めて事業場外みなし労働時間制を採用することができます。

この点については専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制の2つも同様です。

「専門業務型裁量労働制」とは

業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務

(出典:労働基準法第38条の3第1項

こちらが労働基準法で定められている「専門業務」の定義です。デザイナーやシステムエンジニアなど、専門性の高い仕事では、必ずしも雇用者側が仕事の仕方や時間の使い方について細かく指示ができません。

悪い言い方をすると「怠けていても、一生懸命していても、雇用者側にはわからない」のです。そのため前もってみなし労働時間制を採用する、というわけです。

「企画業務型裁量労働制」とは

「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある」仕事

(出典:労働基準法第38条の4第1項

これが「企画業務型裁量労働制」の「企画業務」の定義です。この種の仕事についても、専門業務と同じく雇用者側が仕事の仕方や時間の使い方に口を出すのが難しいので、みなし労働時間制が認められています。

「みなし残業時間制」「みなし労働時間制」 それぞれの運用の注意点

みなし残業時間制の運用の際に注意するべき点が、「労働時間の計算」です。みなし残業時間制を採用しているからといって、従業員の労働時間管理を全くしなくて良くなるわけではありません。労働時間および残業時間の把握は月給制でも日給制でも、年俸制でもみなし残業時間制でも企業の義務です。

以下では雇用者・従業員双方がこの点について注意すべきポイントを紹介します。

「みなし残業時間制」の注意点

みなし残業時間制の注意点

みなし残業時間制を採用する雇用者が注意したいのはあらかじめ設定している「みなし残業」を大幅に超えているにも関わらず、その超過分を雇用者が払わないような場合は「違法」になる、という点です。

なぜならば厚生労働省が公表する「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」によると、みなし残業時間制を採用している企業でも従業員の労働時間管理が義務付けられているからです。

あくまでみなし残業時間制はあらかじめ設定した時間分の残業代を固定給として支払うもの。それを超えればその分の残業代は改めて支払う必要があります。そのために労働時間・残業時間を把握しておかなくてはなりません。

また従業員側にも注意点があります。それは毎月大幅にみなし残業時間を下回る場合、雇用者側は未実施分の残業を従業員に対して要求することができる、という点です。「みなし残業代を働かずにもらえて得をした」と安易に考えることなく、「(みなし残業代を含む)給料分」はきっちり働く必要があるというわけです。

「みなし労働時間制」の注意点

労働時間管理が義務付けられているみなし残業時間制に対し、みなし労働時間制にはその義務がありません。ただしこれは「残業代を支払わなくてもよい」という意味ではありません。

労働基準法第32条第2項に定められた8時間の労働時間を超えるみなし労働時間を定める場合には、その超過分の残業代をあらかじめ給与に加算しておく必要があります。

まとめ

「みなし残業時間制」と「みなし労働時間制」は全く別の給与制度です。それぞれの違いを把握して採用を検討するとともに、運用する際は労働時間の管理や残業代の扱いに注意しましょう。



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