労働基準法違反に注意!どのようなときに違反は発覚するの?罰則は?

労働基準法に違反するとは?
労働基準法第1条(労働条件の原則)において、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければなら」ず、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」と規定されています。つまり、労働基準法に定められていることは、最低限度のもので、たとえ会社が就業規則等で独自のルールや労働条件を定めていたとしても、その規定は労働基準法で定める基準を下回ることができないということです。
労働基準法を守らない場合は、会社に対して労働基準法違反に対する罰則が与えられます。これが、労働基準法に違反するという意味です。
そして特に注意すべき点として、労働基準法は、実質的な権限をもって違反行為を行った者(行為者)のみならず、その違反行為が会社(事業主)のためにしたものであれば、その事業主(個人事業主の場合は事業主個人、法人企業の場合は法人)に対しても罰金刑を科すこととしています(労働基準法第2条)。これを両罰規定といいます。なお、事業主が違反の計画を知り、その防止や是正に必要な措置をとらず、あるいは違反をそそのかした場合は、事業主も行為者として罰せられます。
労働基準法違反した場合の罰則 その1
労働基準法に違反した場合、どのような罰則があるのでしょうか。
労働基準法第37条第1項は、次のように規定されています。
要約すると、労働基準法上の時間外労働や休日労働に対しては、通常の労働時間または労働日の賃金の2割5分以上5割以下の範囲内(60時間を超えた場合、その超えた部分の労働に退位しては5割以上)で、政令の定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないとされています。
この労働基準法第37条に違反すると、労働基準法第119条により、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられます。
労働基準法違反した場合の罰則 その2
労働基準法に定められる中で最も重い罰則が定められているのは、第5条「強制労働の禁止」です。
労働基準法5条では、以下のように定められています。
これは、かつてみられた、宿舎の出入り口に鍵をかけ強制的に重労働を課すという「タコ部屋労働」などの封建的な悪習を排除しようとした規定です。
労働基準法第5条に違反すると、労働基準法第117条により、「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」に処せられます。
労基法に違反した場合の罰則をまとめると下記のようになります。
労基法違反の内容 | 罰則 |
---|---|
強制労働の禁止 | 1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金 |
中間搾取の排除 最低年齢 坑内労働の禁止 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
均等待遇 男女同一賃金の原則 公民権行使の保障 賠償予定の禁止 前借金相殺の禁止 強制貯金 解雇制限 解雇の予告 労働時間 休憩 休日 割増賃金 年次有給休暇 年少者の深夜業 年少者・妊産婦等にかかる危険有害業務の就業制限 産前産後 育児時間 療養補償 休業補償 障害補償 遺族補償 葬祭料 寄宿舎の設備および安全衛生 など | 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
契約期間 労働条件の明示 貯蓄金の返還命令 退職時の証明 金品の返還 賃金の支払い 非常時払い 休業手当 出来高払制の保障給 変形労働時間制協定の届け出 みなし労働時間制・裁量労働時間制協定の届け出 年少者の証明書 未成年者の労働契約 帰郷旅費 生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置 就業規則の作成および届け出の義務 制裁規定の制限 法令等の周知義務労働者名簿 賃金台帳 記録の保存 など | 30万円以下の罰金 |
労働基準法違反はどのようなときに発覚する?
労働基準法違反が発覚するのはどういったときでしょうか。
多くの場合、労働者が、管轄労働基準監督署に通報(申告)したり、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談に行ったことがきっかけで労働基準法違反が発覚します。もちろんそれ以外にも、会社内で労働者から会社の労働基準法違反を指摘されて発覚する場合もあります。
労働者が管轄労働基準監督署に通報した場合、労働基準監督官が会社への立ち入り調査(いわゆる「臨検」と言われます。)を行い、実際に調査した結果、法違反が発覚する可能性があります。この場合、労働基準監督官は、会社の現況への是正のための勧告や改善に関する指導など、労働基準法違反を是正するための行政指導をします。基本的には文書によってこの指導が行われ、会社側が指導の内容を把握し、状況に改善がみられるまで指導が続きます。
また、違反が悪質な場合や改善が見られない場合、厚生労働省のHPに社名および違反内容が公表される場合があります。(労働基準関係法令違反に係る公表事案)
労働基準法違反といわれないために
これまで見てきたように、労働基準法に違反するということは懲役刑に科される可能性もある大変な問題です。特に、賃金に関する労働基準法違反などは労使トラブルに発展する可能性があり注意が必要です。そのため、日ごろから労働基準法違反が発生していないかどうか、しっかりとチェックしていく必要性があります。その際には、労働基準法チェックリストを活用したり、外部の専門家(労働法に詳しい社会保険労務士や弁護士等)を活用することで、より正確な判断に近づくでしょう。
<参考>
労働基準法
労働基準法の基礎知識