• 更新日 : 2025年3月18日

個人事業主でも外国人雇用助成金を申請できる?申請方法や注意点について解説

個人事業主も外国人雇用助成金を申請できます。助成金を活用すれば、支払った費用の一部を回収できる可能性があるため、人材確保や職場環境の整備が可能です。ただし、助成金ごとに対象要件や申請期限が異なるため、事前の確認が重要です。

本記事では、個人事業主が活用できる助成金の種類や申請方法、注意点を徹底解説します。

個人事業主も外国人雇用助成金を申請できる

個人事業主でも外国人雇用助成金を申請できます。

具体的には「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」が該当します。本助成金の支給対象は、以下のとおりです。

  1. 外国人労働者を雇用していること
  2. 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、就労環境整備措置を導入・実施すること
  3. 一定期間経過後の離職率が10%以下であること

ただし、助成金によっては個人事業主が対象外となる場合があるため、申請前に必ず支給要件を確認しましょう。

外国人労働者を雇用する方法については、下記の記事で詳しく解説しているためあわせてご覧ください。

個人事業主が活用できる外国雇用助成金一覧

外国人雇用助成金には複数の種類がありますが、すべてが個人事業主を対象としているわけではありません。

対象外の助成金に申請しても支給されないため、事前に支給要件を確認することが重要です。個人事業主でも申請可能な助成金を活用することで、外国人労働者の雇用環境を整備し、経営の安定につなげられます。

以下では、個人事業主が利用できる外国人雇用助成金を紹介します。

個人事業主を支援する助成金は多くあるため、ぜひ以下の記事もあわせてご覧ください。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者の職場定着を目的とし、特有の事情に配慮した就労環境を整備する事業主に対し、経費の一部を助成する制度です。

支給要件は以下のとおりです。

  1. 雇用保険被保険者の外国人労働者(特別永住者及び在留資格「外交」・「公用」を除く)を雇用している事業主であること
  2. 外国人労働者の計画期間終了後、1年以内の離職率が10%以下(2〜10人の雇用時は1人以下)であること
  3. 日本人労働者の離職率が、計画前1年間と比較して計画期間終了後1年間に上昇していないこと

上記を満たしている場合、個人事業主でも助成金を利用できます。支給額は以下のとおりです。

  • 賃金要件を満たしていない場合:対象経費の1/2(上限57万円)
  • 賃金要件を満たしている場合:対象経費の2/3(上限72万円)

また、助成金を支給してもらうためには、具体的な取組を行っている必要があります。

【必須メニュー】

項目内容
雇用労務責任者の選任事業所ごとに担当者を選任し、3ヶ月ごとに1回以上面談を実施する
就業規則等の多言語化すべての就業規則を他言語化し、全外国人労働者へ周知する

参考:外国人労働者を雇用する事業主の皆様へ|厚生労働省

【選択メニュー】

項目内容
1. 苦情・相談体制の整備すべての外国人労働者の苦情や相談に応じるための体制を整備し、多言語の苦情・相談に応じる
2. 一時帰国のための休暇制度すべての外国人労働者が一時帰国を希望した場合に、必要な有給休暇を取得できる制度を定め、1年に1回以上の連続した5日以上の有給休暇を取得させる
3. 社内マニュアル・標識類の多言語化社内マニュアルや標識を多言語化し、全外国人労働者へ周知する

参考:外国人労働者を雇用する事業主の皆様へ|厚生労働省

同一事業主のもとで5年以上勤務し、日本語を十分に理解できる外国人労働者は、本人の希望により多言語化を省略できます。ただし、日本語での周知は必要です。

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、職務に関する知識や技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。

支給対象は以下のとおりです。

雇用保険被保険者(有期契約労働者等を除く)を対象とする訓練の場合
  • 訓練期間中に雇用保険被保険者であること
  • 事業主が実施する訓練を受講する被保険者であること
  • 訓練別の対象者一覧に記載されていること
  • 訓練受講時間が実訓練時間数の8割以上であること
有期契約労働者等を対象とする訓練の場合
  • 既存または新規雇用の有期契約労働者等であること
  • 訓練終了日または支給申請日に被保険者であること
  • 正規雇用を約束された労働者でないこと
  • 職業訓練実施計画届時に提出した​「​訓練別の対象者一覧」に記載されていること
  • 訓練受講時間が実訓練時間数の8割以上であること
  • 訓練の趣旨・内容を理解していること

参考:人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) のご案内|厚生労働省

支給額は以下のとおりです。

【賃金助成】

対象者経費助成賃金助成(1人1時間あたり)経費助成
雇用保険被保険者(有期契約労働者等を除く)30%380円45%

※中小企業以外の場合は30%

有期契約労働者等60%380円60%
有期契約労働者等を正規雇用に転換した場合70%380円70%

参考:人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) のご案内|厚生労働省

上記に加え、賃金要件または資格要件を満たした場合には支給額が加算されます。

賃金要件とは、外国人労働者の基本賃金が最も遅い施策実施日から、1年以内に5%以上増加することです。

資格要件とは就業規則、労働協約または労働契約等に規定したうえで、訓練終了後の翌日から起算して1年以内にすべての対象労働者に対して実際に当該手当を支払うことを指します。さらに、毎月決まって支払われる賃金を3%以上増加させていることも含まれます。

【eラーニング・通信制により訓練を実施した場合(経費助成のみ)】

中小企業の事業主・事業主団体中小企業以外の事業主
10時間以上100時間未満15万円10万円
100時間以上200時間未満30万円20万円
200時間以上50万円30万円

参考:人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) のご案内|厚生労働省

専門実践教育訓練の指定講座は一律で200時間以上の区分、通信制訓練は一律で10時間以上100時間未満の区分が適用されます。

本助成金を活用すれば、従業員のスキル向上やキャリア形成を支援でき、職場の人材定着や生産性向上につながります。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進し、正社員化や処遇改善を行った事業主に対して支給される助成制度です。労働者の雇用安定や企業の人材確保を目的としています。助成金を受けるための事業主の要件は以下のとおりです。

  1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
  2. 各事業所ごとにキャリアアップ管理者を設置していること
  3. 労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画を作成していること
  4. 労働条件、勤務状況、賃金支払いの証明書類を整備し、賃金の算出方法を示せること
  5. 計画期間内にキャリアアップの取組を実施したこと

参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省

助成内容はコースごとに異なるため、事前の確認が重要です。

コース名概要
正社員化コース有期雇用労働者を 正社員に転換した場合に助成
賃金規定等改定コース有期雇用労働者の基本給を3%以上増額改定し、適用した場合に助成
賃金規定等共通化コースすべての有期雇用労働者に正社員と共通の賃金規定を適用した場合に助成
賞与・退職金制度導入コースすべての有期雇用労働者に賞与・退職金制度を新たに導入し、支給または積立てた場合に助成
社会保険適用時処遇改善コース短時間労働者に以下のいずれかの取組を行った場合に助成

  1. 社会保険適用時に賃金総額を増加させた場合(手当支給・賃上げ・労働時間延長)
  2. 週の所定労働時間を4時間以上延長し、社会保険適用要件を満たした場合

参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省

本助成金は、非正規雇用労働者の雇用環境を改善し、企業の人材確保を支援する制度です。計画的なキャリアアップを進め、必要な書類を整備すれば、助成を受けられます。

個人事業主が活用できる外国人雇用の支援制度

外国人労働者を雇用する個人事業主は、助成金以外にも活用できる支援制度があります。国の支援制度を利用すれば、採用や定着の負担を軽減できます。たとえば、外国人向けの職業相談や日本語学習支援、労務管理のアドバイスなどです。

支援を活用すれば、円滑な雇用環境を整えられます。以下では、個人事業主が利用できる具体的な支援制度を紹介します。

外国人雇用管理アドバイザー制度

外国人雇用管理アドバイザー制度は、外国人労働者の雇用管理や職務上の問題について相談できる支援制度です。各都道府県に配置されたアドバイザーに、事業主は無料で相談できます。

相談を希望する場合は、ハローワークで申し込み、その後訪問日程を調整してアドバイザーが事業所を訪問します。また、ハローワークで定期的に相談日を設けている場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

外国人雇用管理アドバイザー制度を活用すれば、適切な雇用管理ができ、外国人労働者の定着にもつながります。

登録支援機関

登録支援機関は、特定技能1号外国人を受け入れる企業(受入れ機関)から委託を受け、入国から帰国までのサポートを行う機関です。

受入れ機関は「特定技能1号支援計画」を作成し、外国人が円滑に業務や生活を送れるよう支援する義務がありますが、登録支援機関に委託すれば、支援業務を代行してもらえます。

受入れ機関は以下の条件を満たす必要があります。

  • 外国人と適切な雇用契約を結ぶ(報酬が日本人と同等以上であること)
  • 法令遵守(過去5年以内に出入国・労働法違反がないこと)
  • 外国人に対する支援体制を確保する(理解できる言語で対応できること)
  • 適切な支援計画を作成する(生活オリエンテーション等を含む)

参考:登録支援機関について|出入国在留管理庁

また、受入れ機関には以下の義務があるため、支援を利用する際は注意が必要です。

  1. 外国人との雇用契約を確実に履行する(適切な報酬の支払いなど)
  2. 外国人への支援を適切に実施する(登録支援機関への委託も可)
  3. 出入国在留管理庁へ各種届出を行う

参考:登録支援機関について|出入国在留管理庁

登録支援機関が提供する支援は以下のとおりです。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保や生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続きの同行
  • 日本語学習の機会提供
  • 相談・苦情対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理時など)
  • 定期的な面談や行政機関への通報

参考:登録支援機関について|出入国在留管理庁

個人事業主が特定技能1号外国人を受け入れる際、支援業務をすべて自社で行うのは負担が大きくなります。登録支援機関に委託すれば、負担を軽減し、外国人労働者を安定して雇用できます。

個人事業主が外国人雇用の助成金を申請するメリット

個人事業主が外国人を雇用する際、助成金を活用することで負担を軽減し、事業の成長を促せます。助成金のメリットを正しく理解すれば、支援を受けながら経営の安定や人材確保を効率的に進められるでしょう。以下では、外国人雇用の助成を申請するメリットを解説します。

返済の義務がない

助成金は融資とは異なり、返済義務がありません。助成金は、企業や事業主の雇用促進、地域経済の活性化を目的とした資金です。

個人事業主は、助成金を活用して事業を成長させ、人材の確保や育成に役立てられます。重要なのは、助成金を単なる援助と考えるのではなく、事業の発展や社会課題の解決につなげる視点を持ち、最大限に活用することです。

事業を維持できる

助成金を活用すると、事業を維持しやすくなることがメリットです。外国人労働者が働きやすい環境の整備や新しい機器の導入に費用がかかります。しかし、助成金を活用すれば、支払った一部を補填できるため、必要な改善投資がしやすくなります。

とくに新規事業では、大きな出費は経営に影響を与えるでしょう。そこで、返済不要の助成金を活用すれば、自己資金を確保しつつ事業を継続でき、発展や成長の機会を広げられるでしょう。

資金を減らさずに人材確保できる

助成金を活用すれば、資金を減らさずに外国人労働者の確保が可能です。

とくに、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人の雇用や定着を支援する制度であり、支給されれば採用や研修にかかった費用の一部が補填されます。

事業規模が小さい個人事業主は、人材確保や育成に十分な資金を確保しにくい場合がありますが、助成金を活用すれば採用コストを抑え、優秀な人材を確保しやすくなります。さらに、職場環境が改善されることで、従業員の満足度やモチベーションも向上するでしょう。

個人事業主が外国人雇用の助成金を申請する際の注意点

個人事業主が外国人を雇用する際に申請できる助成金には、注意すべき点があります。要件を満たしていなかったり、手続きに不備があったりすると助成金が支給されない可能性もあるため、事前に確認することが重要です。

適切に申請すれば、助成金を最大限に活用し、事業の発展につなげられます。以下では、各助成金の具体的な注意点について解説します。

個人事業主も助成金の支給対象か確認する

助成金を申請する前に、個人事業主が支給対象か確認しましょう。すべての助成金が個人事業主に適用されるわけではなく、中小企業や大企業のみを対象とする場合もあります。

また、個人事業主が対象でも、他の条件を満たしていなければ支給されません。活用したい助成金がある場合は、公式ホームページで条件を確認し、適用範囲に該当するかを確かめることが重要です。

とくに、厚生労働省の助成金は公式ホームページで応募要項を確認できるため、事前にチェックしておきましょう。

応募申請期間内に申請する

助成金を申請する際は、応募期間内に提出することが重要です。どれほど適切に書類を作成しても、期限を過ぎた申請は無効となります。

申請書類の作成には、情報収集や必要書類の準備に時間がかかるため、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。助成金の種類により申請期限は異なるため、事前に確認し、計画的に進めることが求められます。

たとえば、雇用調整助成金は申請期限後の提出は認められないため、他の助成金についても期限を厳守することが重要です。

受給までに時間がかかる可能性がある

助成金は後払いのため、受給までに時間がかかる可能性があります。助成金は事業を実施した後に必要書類を提出し、審査を経て支給されるため、すぐには受け取れません。

そのため、受給までの期間を考慮し、資金計画を立てることが大切です。また、書類の作成や審査にも時間がかかるため、助成金が振り込まれるまで事業を維持できるよう、自己資金を確保しておく必要があります。

個人事業主が対象の外国人雇用助成金を活用して事業維持を図ろう

個人事業主でも活用できる外国人雇用助成金をうまく活用すると、事業を安定させながら人材確保の負担を軽減できるようになります。とくに、助成金は返済不要の支援金であり、自己資金を減らさずに必要な人材を確保できる点が大きなメリットです。

外国人雇用を検討する際は、各助成金の対象要件や申請期限をしっかり確認し、適切に活用しましょう。


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