- 更新日 : 2026年1月20日
厚生年金保険料が急に上がったのはなぜ?理由や確認方法を解説
厚生年金や健康保険などの社会保険料は、会社勤めや公務員の場合、給与から天引きされるのが一般的です。そのため、給与明細を見て保険料が上がったのを知り驚く方も多いでしょう。保険料が上がるのは通常、1年に1度ですが、例外もあります。
本記事では、厚生年金保険料の計算方法や標準報酬月額上限の改定について説明します。
目次
厚生年金保険料が急に上がったのはなぜ?
厚生年金保険料が急に上がったと感じる主な原因は、給与の変動にともなう「標準報酬月額」の改定です。
保険料は毎月変動する給与額に連動しているわけではなく、年に一度の見直しや、大きな給与変動があったタイミングで改定されるため、そのタイミングで負担増を実感しやすくなります。
厚生年金保険料は、毎月の給与から直接計算されるのではなく、「標準報酬月額」と呼ばれる、一定期間の平均給与を元に決められた区分(等級)によって決まります。この標準報酬月額は、健康保険料と厚生年金保険料の計算の基礎となるもので、給与額を区切りの良い幅で分けた表(等級表)に当てはめて決定される仕組みです。
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厚生年金保険料が急に上がった要因は?
厚生年金保険料が急に上がったと感じる原因には、個人の働き方や年齢の変化、制度の変更など、さまざまな要因があります。
昇給や手当増による標準報酬月額の上昇
基本給の昇給はもちろん、役職手当、家族手当、通勤手当などの固定的賃金が増えると、随時改定の条件を満たし、保険料が上がることがあります。とくに昇給のタイミングは、保険料が急に上がる代表的なケースです。
賞与支給による負担増
賞与(ボーナス)の支給月は、通常の給与とは別に、高額な賞与に応じた厚生年金保険料が差し引かれます。賞与の金額によっては、一時的に社会保険料の合計額が非常に高くなるため、「厚生年金引かれすぎ」と感じやすくなります。
40歳到達で介護保険料が加算される場合
40歳になると、介護保険法にもとづき、医療保険料(健康保険料)に加えて介護保険料の負担が始まります。この介護保険料も給与から天引きされるため、給与明細の「社会保険料」の合計額が急に上がります。厚生年金保険料自体は変わりませんが、社会保険料全体が高くなったと感じる最大の理由の一つです。
関連記事|介護保険料は年齢でどう変わる?40歳から65歳以上をシミュレーション
転職・雇用形態の変更で保険料が変わる場合
転職により給与水準の高い企業へ移った場合や、パート・アルバイトから正社員へ雇用形態が変わった場合、給与が上がることで標準報酬月額も上がり、厚生年金保険料が高くなります。
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厚生年金保険料が正しいか確認する方法
厚生年金保険料が急に上がったと感じたら、まずはその金額が正しく計算されているか確認することが重要です。
給与明細で確認する
給与明細の「控除」欄にある厚生年金保険料の金額をチェックしましょう。
10月や11月の給与から上がっている場合、4月~6月に支給された給与を基にした「定時決定」の影響である可能性が高いです。また、「介護保険料」が新たに引かれていないか確認します。40歳に到達した場合はこの加算で社会保険料合計が上がります。
会社によっては、明細に適用されている標準報酬月額の等級が記載されている場合もあります。
ねんきん定期便で標準報酬月額を確認する
日本年金機構から毎年届く「ねんきん定期便」には、これまでの加入記録が記載されています。例えば、被保険者期間と、その期間に適用されていた標準報酬月額が確認できます。
給与明細とねんきん定期便の標準報酬月額を照らし合わせることで、適用されている等級が正しいかを確認できます。
関連資料|標準報酬月額かんたん確認&社会保険料計算シート
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厚生年金保険料の上限は今後どう変わる?
厚生年金保険料には現在、上限が定められています。制度を維持するためにこの上限が見直される可能性があります。将来の制度改正を見据えておくことが大切です。
厚生年金保険料の現在の上限は?
現在の厚生年金保険料の計算に使われる標準報酬月額には、65万円の上限が設定されています(2025年7月時点)。これは、月給が65万円を超えても、保険料の計算に用いられる標準報酬月額は65万円で頭打ちになることを意味します。この上限を超える高所得者は、以降の増額に対する保険料の負担は発生しません。
2027〜2029年には75万円への段階的引き上げ
厚生労働省では、公的年金の財源確保のため標準報酬月額の上限を現在の65万円から75万円へ段階的に引き上げが予定されています。これは、2027年から2029年までの間に実施される見通しです。
高所得者の負担にどのように影響する?
標準報酬月額の上限が引き上げられると、月給が65万円から75万円の間に位置する高所得者の保険料負担が増えることになります。上限が75万円になった場合、月給75万円の高所得者は、現在の制度と比較して毎月最大約9,150円(75万円 – 65万円×9.15%)ほど保険料の本人負担が増える可能性があります。
そもそも厚生年金保険とは?
厚生年金保険は、事業主と従業員が共同で保険料を負担し、将来の年金や万が一の保障を支えあう公的な社会保障制度です。会社で働く人を対象とした、日本における重要な公的年金制度の1つです。
国民年金と厚生年金の仕組み
日本の公的年金制度は「2階建て」の構造で成り立っています。
- 20歳以上60歳未満の日本に住むすべての人に加入義務があり、基礎年金として機能します。
- 会社員や公務員が国民年金に上乗せして加入する制度です。国民年金に加え、より手厚い年金(報酬比例部分)を受け取ることができます。
加入対象となる従業員
厚生年金保険の加入対象となるのは、原則として法人事業所や常時5人以上の従業員がいる個人事業所(一部業種を除く)で働く、70歳未満の従業員です。
パートやアルバイトの場合でも、特定の要件(所定労働時間や賃金、従業員規模など)を満たせば、加入の対象となります。
関連記事|厚生年金の加入条件とは?加入義務のある対象企業や加入手続きを解説
保険料は事業主と従業員で折半
厚生年金保険料は、従業員と事業主(会社)が原則として半分ずつ(折半)負担します。
従業員が実際に給与から差し引かれている厚生年金保険料率は、2017年9月以降、18.3%で固定されています。このうち、従業員本人の負担割合は9.15%となります。この保険料率が急に変わることはありませんが、計算の基礎となる「標準報酬月額」が変わることで、毎月の支払額が変動します。
関連資料|〖社労士が解説〗10分でわかる! 健康保険・厚生年金保険 実務ハンドブック
関連記事|厚生年金と国民年金の違い – 差額や切り替え方法
厚生年金保険料の計算方法はどう決まる?
厚生年金保険料の計算は、入社時や給与が大きく変動した時など、定められたルールにもとづいて行われます。このルールを理解することで、「なぜ保険料が急に上がったのか」がわかります。
関連記事|厚生年金における標準報酬月額表について見方を解説!
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入社時は「見込みの給与」で決まる
会社に入社し、厚生年金保険の加入資格を取得した際に行われる決定です。入社時の賃金や契約内容にもとづき、おおよその報酬月額を算出し、最初の標準報酬月額を決定します。
給与が変わったときは「3か月平均」で再計算
標準報酬月額は基本的に年に一度見直されますが、昇給や降給などで給与が大幅に変わった場合に、臨時に改定が行われます。これを随時改定と呼びます。
随時改定の条件は以下の3つをすべて満たす場合です。
- 固定的賃金(基本給や役職手当など、変動しにくい手当)の変動があった
- 変動月からの3か月間に受け取った給与の平均月額が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じた
- この3か月間、支払基礎日数がすべて17日以上(特定の短時間労働者は11日以上)ある
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毎年1回、4〜6月の給与で16か月分が決まる
毎年1回、すべての被保険者を対象に標準報酬月額を見直すことを定時決定と呼びます。
毎年4月、5月、6月の3か月間の給与(残業代や手当を含む)の平均額を計算、この平均額を基に新たな標準報酬月額が決定されます。そして、原則、その年の9月から翌年の8月までの保険料に適用されます。
そのため、4月から6月にかけて一時的に残業や手当などで給与が大幅に増えると、9月以降の保険料が上がり、「急に上がった」と感じやすくなります。
関連記事|社会保険料の定時決定とは?算定基礎届の書き方・随時改定との違いをわかりやすく解説
賞与支給時にかかる厚生年金保険料は?
賞与(ボーナス)からも厚生年金保険料が引かれます。賞与にかかる保険料は、「標準賞与額」(1,000円未満切り捨て、上限150万円)に保険料率(18.3%)をかけて計算されます。
賞与は通常の給与とは別に計算されるため、賞与が支給された月は社会保険料の負担が増え、「厚生年金引かれすぎ」と感じることがあります。
関連記事|標準報酬月額に賞与は含まない?含まれる場合や計算方法を解説
残業が増えて給与が上がると具体的にどうなる?
給与が上がった場合、標準報酬月額の等級が1つ上がるだけでも、毎月の保険料は数千円単位で変動します。
例えば、標準報酬月額が2万円上がると、本人負担の保険料は月々約1,830円(20,000円 × 9.15%)増えます。これが9月から適用されるため、年間の負担増はかなり大きくなります。
4月、5月、6月に残業が多くなり、一時的に給与が上がったとしましょう。この3か月の平均給与が普段よりも高くなることで、9月からの標準報酬月額が上がり、保険料も高くなります。
たとえ7月以降、残業が減り給与が元に戻ったとしても、翌年8月までは高い保険料が継続するため、「給与が下がっても保険料が下がらない」という状態になりがちです。
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【企業向け】厚生年金保険料をできるだけ上げない工夫
厚生年金保険料を合法的に適正化し、厚生年金が上がりすぎる状況を避けるためには、とくに4月〜6月の給与水準を意識した運用が重要になります。
4〜6月の働き方を見直す
定時決定に影響を与える4月、5月、6月は、残業を集中させないように、業務量を調整することが一つの工夫になります。この3か月間の残業を減らすことで、平均給与が抑えられ、9月以降の標準報酬月額が上がりにくくなります。
非固定的手当の支給時期を4~6月以外にする
会社として、固定的賃金にあたらない非固定的手当(例えば、業務報奨金など)の支給時期を、4月〜6月を避けて調整する運用も考えられます。ただし、不自然な賃金調整は年金事務所から指導を受ける可能性があるため、あくまで業務上の合理的な理由にもとづいて行う必要があります。
報酬設計を見直す
賃金規程を見直し、非固定的賃金の割合を増やすなど、標準報酬月額の決定に影響が少ない形での報酬設計を検討する方法もあります。ただし、従業員の生活保障の視点もふまえて、慎重な検討が求められます。
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厚生年金保険料に関するよくある質問
給与が下がっても保険料が下がらないのはなぜ?
給与が下がってもすぐに保険料が下がらないのは、随時改定の条件を満たしていない可能性があるからです。標準報酬月額は年に一度の見直し(定時決定)が基本であり、途中で給与が下がっても、固定的賃金の変動がない場合や、下がった幅が2等級未満の場合は、翌年の9月まで保険料は据え置かれます。
退職後に負担が増えたように感じる理由は?
退職後、会社が半分負担していた厚生年金保険料がなくなり、代わりに国民健康保険料と国民年金保険料を全額自己負担することになります。とくに、退職前の給与が高かった場合、国民健康保険料が高額になるケースがあり、社会保険料の合計額が大きく増えたように感じることがあります。
関連記事|退職月の社会保険料はいくら?月末退職と月途中退職の違いは?2か月分徴収の理由も解説
パート・アルバイトでも急に上がることはある?
パート・アルバイトでも、社会保険の加入要件を満たして厚生年金に加入している場合、正社員と同様に定時決定や随時改定のルールが適用されます。4月〜6月に残業などで給与が増えれば、9月以降に保険料が上がり、「急に上がった」と感じることはあります。
産休・育休復帰後に保険料が変わる理由は?
産前産後休業や育児休業から復帰した後、多くの場合、復帰後の給与水準で標準報酬月額を見直す育児休業等終了時改定が行われます。休業により給与が下がった場合、保険料も下がることがありますが、復帰後すぐに給与が休業前水準に戻ると、その後の定時決定などで保険料が上がる可能性があります。
4〜6月残業が多いとどれくらい手取りに影響する?
4月〜6月の残業で標準報酬月額が2等級上がった場合、その年の9月から翌年8月まで、毎月の手取りが大きく減る可能性があります。例えば、2等級の差が約4万円の場合、毎月約3,660円(4万円 ×9.15%)の保険料負担が増え、年間では約4.4万円もの手取りに影響が出ます。
関連資料|〖社労士が解説〗入社/退職/異動/妊娠出産/育児/介護 社会保険・労働保険の実務完全ガイド
4月〜6月の給与で1年の厚生年金保険料が決まる!
厚生年金保険料が急に上がったと感じるのは、4月〜6月の給与を基にした定時決定や、40歳到達による介護保険料の加算が主な原因と考えられます。
保険料は「標準報酬月額」という等級で決まるため、実際の給与変動から数か月遅れて適用されることで、急な変動として体感しやすいのです。もし金額が高いと感じたら、まずは給与明細やねんきん定期便で適用されている等級や計算の根拠を確認しましょう。
よくある質問
厚生年金保険料を含む社会保険料の計算方法は?
4月~6月の報酬の平均を求めて標準報酬月額を決定し、そこに保険料率を掛けて算定します。詳しくはこちらをご覧ください。
厚生年金保険料が上がる理由は?
4月~6月の報酬が残業などで高かったか、昇給などにより標準報酬月額が2等級以上上がったことが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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