• 更新日 : 2026年9月8日

年末調整で雑所得は処理できる?書き方と確定申告の要否を解説

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Point年末調整で雑所得はどう扱えばよい?

給与以外の所得は勤務先では精算できないため、確定申告で対応します。

  • 勤務先が計算するのは給与にかぎられる
  • 申告書の所得見積額には副収入も書き入れる
  • 20万円を超えたら自分で手続きする

記入もれがあると控除額の計算がずれるため、年内に見込み額を確かめておきましょう。

給与以外に雑所得がある従業員について、年末調整で処理できるのか迷う場面があります。年末調整は勤務先が支払う給与を対象とした手続きのため、雑所得の税額をここで精算することはできません。ただし申告書には所得の見積額を書く欄があり、雑所得も記入の対象です。処理と記入の違いを整理して解説します。

年末調整で扱う雑所得とはどんな所得?

所得税では、所得を10種類に区分しています。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得給与所得退職所得、山林所得、譲渡所得一時所得の9つに当てはまらないものが、すべて雑所得になります。

つまり、雑所得は、所得の性質がよくわからない所得を全て含めているものになります。具体例としては、副業や公的年金での受取収入などがあります。

公的年金等と業務に係るものに区分される

令和4年分以後の雑所得は、公的年金等、業務に係るもの、それら以外に区分して金額を計算します。

区分ごとの計算方法は次のとおりです。

区分 内容 計算式
公的年金等 国民年金や厚生年金、確定給付企業年金など 収入金額 − 公的年金等控除額
業務に係るもの 副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの 総収入金額 − 必要経費
それら以外 個人年金や暗号資産の取引など上記に当てはまらないもの 総収入金額 − 必要経費

業務に係る雑所得には、記帳と書類保存の取扱いも定められています。前々年分の収入金額に応じて、次のように分かれます。

  • 300万円以下:実際に受け払いした年に収入と費用を計上する現金主義の特例を選べる
  • 300万円超:現金預金取引等関係書類の保存が必要になる
  • 1,000万円超:確定申告書に収支内訳書などを添付する

現金主義の特例を受けるには、確定申告書にその旨を記載することが条件です。

副業や暗号資産の利益も対象になる

副業による業務委託の報酬やアフィリエイト収入、暗号資産の売却益なども雑所得に含まれます。働き方の多様化にともない、給与以外の収入を得る従業員は珍しくなくなりました。フリマアプリやネットオークションでの継続的な販売、動画配信の広告収入なども、事業所得に当たらなければ雑所得として扱われるのが一般的です。

注意したいのは損失の扱いです。雑所得の計算上生じた損失は、給与所得など他の所得の金額と損益通算できません。副業が赤字でも給与の税額が減るわけではない、という点は誤解が生じやすいところです。

参照:No.1500 雑所得|国税庁

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年末調整で雑所得は処理できる?

年末調整は、会社員が自分で確定申告をしなくて済むよう、勤務先が所得税を精算する制度です。この仕組みのため、勤務先が確認できない雑所得については、年末調整で処理できません。

年末調整で精算するのは勤務先が支払う給与

年末調整は、毎月の給与から源泉徴収した税額と、その人が1年間に納めるべき税額との差額を精算するものです。対象になるのは、扶養控除等(異動)申告書を年末調整を行う日までに提出している一定の人です。

12月に行う年末調整では、次のような人が対象になります。

  • 1年を通じて勤務している人
  • 年の中途で就職して年末まで勤務している人

ただし、1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人などは対象から除かれます。

勤務先は従業員の雑所得を計算できない

勤務先が金額を確認できるのは自社が支払った給与にかぎられるため、雑所得まで計算する立場にはありません。源泉徴収の義務は給与などの支払者に課されるもので、従業員が個人で受け取った報酬の入出金にまでは及びません。

副業の必要経費がいくらかかったかも、勤務先には確かめようのない情報です。このため雑所得は年末調整の枠外に置かれ、従業員本人が確定申告で精算する仕組みになっています。

年末調整で処理できないのは制度の不備ではなく、勤務先が計算できる範囲に合わせた線引きだと理解しておくとよいでしょう。

参照:No.2665 年末調整の対象となる人|国税庁

年末調整の申告書に雑所得は書く必要がある?

税額の精算はできませんが、申告書には所得の見積額を記入する欄があります。雑所得もこの欄の対象になるため、金額があれば書き入れます。

基礎控除申告書の給与所得以外の所得の合計額に記入する

雑所得は、基礎控除申告書の「給与所得以外の所得の合計額」欄に、ほかの所得と合算して記入します。基礎控除申告書の様式は、1枚で複数の申告ができるつくりになっています。

正式な名称は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です。

この申告書では、給与所得の金額と給与所得以外の所得の合計額を足した「本年中の合計所得金額の見積額」をもとに、基礎控除の額が決まります。つまり雑所得の記入は、控除額の計算に直接影響する項目です。

なお令和8年度税制改正により、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正が行われました。令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されるため、令和8年12月に行う年末調整から反映されます。

参照:A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁

記入するのは収入ではなく必要経費を差し引いた所得

この欄に書くのは報酬や売上の総額ではなく、必要経費を差し引いたあとの所得の金額です。収入金額をそのまま書いてしまうと見積額が過大になり、控除額が本来より小さく計算されるケースがあります。

【記入する金額の例】業務委託の報酬が年間45万円の場合
  • 収入金額:450,000円
  • 必要経費(通信費や機材の購入費など):180,000円
  • 申告書に記入する所得金額:450,000円 − 180,000円 = 270,000円

年末調整の書類を集めるのは11月ごろで、その時点では年間の金額が確定していないことも少なくありません。その場合は12月末までの見込みを立てて記入します。

配偶者や扶養親族の所得見積額にも含める

配偶者控除等申告書や扶養控除等申告書に書く家族の所得の見積額にも、その家族の雑所得を含めて計算します。配偶者がフリマアプリでの販売や在宅の業務委託で収入を得ているケースは増えています。

給与の分だけで見積もると所得要件の判定を誤り、あとから控除の是正が必要になることがあります。判定に使う金額は様式の年度によって異なります。

  • 令和8年分の申告書:
    合計所得金額58万円以下(給与収入だけなら123万円以下)
  • 令和8年12月1日以後に支払う給与:
    62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)
  • 令和9年分の申告書:
    62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)

家族の副収入は本人でも金額を意識していない場合があるため、申告書を配る際にあわせて案内しておくと確認もれを減らせるでしょう。

雑所得を書かないとどうなる?

記入が漏れると控除額の計算がずれるほか、確定申告が必要な場合には無申告加算税や延滞税がかかることがあります。年末調整の申告書に書かなかったこと自体に罰則が定められているわけではありません。

ただし合計所得金額の見積額が実際と食い違えば、基礎控除や配偶者控除の額が正しく計算されず、あとから精算し直す必要が生じるケースがあります。

さらに、雑所得を含む給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超えていれば確定申告の義務があり、これを怠ると期限後申告として扱われます。期限後申告には無申告加算税と延滞税がかかります。

ただし次の要件をすべて満たす場合は、無申告加算税はかかりません。

  • 法定申告期限から1か月以内に自主的に申告している
  • 納付すべき税額の全額を法定納期限までに納めている

気づいた時点で早めに申告するほど負担は軽くなる傾向があります。

参照:令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁
参照:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

雑所得があると確定申告は必要?

給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。20万円以下でも、ほかの理由で確定申告をするなら雑所得もあわせて申告します。

20万円を超えるかどうかは所得で判定する

判定に使うのは収入金額ではなく、必要経費を差し引いたあとの所得の金額です。給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合が前提になります。

この条件のもとで、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計が20万円を超える人は、確定申告をしなければなりません。給与の年間収入金額が2,000万円を超える人は、この基準にかかわらず確定申告が必要です。

【判定の例】アフィリエイト収入が年間30万円の場合
  • 収入金額:300,000円
  • 必要経費:150,000円
  • 所得金額:150,000円 → 20万円以下のため申告義務は生じない

収入で判断してしまうと不要な申告をすることになるため、経費の集計は先に済ませておきましょう。

ほかの理由で確定申告するなら20万円以下でも申告する

20万円の基準は確定申告を要しない場合を定めたものです。確定申告をするときに20万円以下の所得を除いてよい、という規定ではありません。

たとえば次のようなケースでも、雑所得があれば申告の対象になります。

少額の所得についてまで一律に申告を求めると納税者の負担が大きくなることから設けられた基準であり、申告書を提出する以上は所得の全体を記載する、という整理です。

なお、ふるさと納税のワンストップ特例を使っていた人が確定申告をすると特例が無効になります。この点もあわせて案内しておくと親切でしょう。

住民税には20万円の基準がない

住民税には20万円以下なら申告不要とする定めがないため、確定申告をしない場合は市区町村への申告が必要です。住民税は、その年の1月1日時点で住所のある市区町村に納める地方税で、前年の所得をもとに税額が計算されます。

所得の情報が届かなければ正しい税額を算定できないため、確定申告をしないケースでは住民税の申告が求められます。

逆に確定申告をすれば、その内容が税務署から市区町村へ引き継がれるため、別途住民税の申告をする必要はありません。申告書の様式や受付期間は自治体ごとに案内されています。

参照:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
参照:個人住民税|総務省

雑所得の計算方法は?

雑所得は、公的年金等とそれ以外で計算方法が分かれます。公的年金等は速算表を使い、それ以外は総収入金額から必要経費を差し引いて求めます。

公的年金等は速算表で計算する

公的年金等の雑所得は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて計算します。令和2年分以後は、受給者の年齢と、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて計算式が分かれます。

ここでは、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の計算式を掲げます。

【65歳未満】

公的年金等の収入金額 公的年金等に係る雑所得の金額
600,000円以下 0円
600,000円超1,300,000円未満 収入金額 − 600,000円
1,300,000円以上4,100,000円未満 収入金額×0.75 − 275,000円
4,100,000円以上7,700,000円未満 収入金額×0.85 − 685,000円
7,700,000円以上10,000,000円未満 収入金額×0.95− 1,455,000円
10,000,000円以上 収入金額 − 1,955,000円

【65歳以上】

公的年金等の収入金額 公的年金等に係る雑所得の金額
1,100,000円以下 0円
1,100,000円超3,300,000円未満 収入金額 − 1,100,000円
3,300,000円以上4,100,000円未満 収入金額×0.75 − 275,000円
4,100,000円以上7,700,000円未満 収入金額×0.85− 685,000円
7,700,000円以上10,000,000円未満 収入金額×0.95 − 1,455,000円
10,000,000円以上 収入金額 − 1,955,000円

【計算例】70歳の人が公的年金等を年間400万円受け取っている場合(それ以外の合計所得金額が1,000万円以下)

  • 400万円×0.75 − 27万5,000円 = 272万5,000円

合計所得金額が1,000万円を超える場合は控除額が小さくなるため、該当する区分を国税庁の速算表で確かめてください。

参考:No.1600 公的年金等の課税関係|国税庁

公的年金等以外は総収入金額から必要経費を差し引く

公的年金等以外の雑所得は、総収入金額から必要経費を差し引いた金額です。たとえばアフィリエイトの収入が50万円あり、必要経費が25万円かかっていれば、差額の25万円が所得になります。

必要経費として認められるのは、その収入を得るために直接かかった費用です。自宅の家賃や通信費のようにプライベートと共用しているものは、業務で使った割合に応じて按分します。領収書や取引の記録は残しておきましょう。

先物取引やFXは申告分離課税になる

先物取引オプション取引、外国為替証拠金取引による所得は、ほかの所得と合算せずに税額を計算する申告分離課税の対象です。税率は所得税15%、地方税5%です。

平成25年から令和9年までの各年分については、所得税と復興特別所得税を併せて申告・納付するため、合計で20.315%となります。

なお令和9年1月1日以後に生じる所得からは、復興特別所得税の税率が1.1%に引き下げられ、防衛特別所得税1%が新設されます。合計の付加税率2.1%は変わらないため、20.315%という税率に変更はありません。

店頭取引と市場取引の間の損益通算はできるため、複数の金融取引がある場合は合算して確かめるとよいでしょう。損益通算をしてもなお引ききれない損失は、一定の要件のもとで翌年以後3年内の先物取引に係る雑所得等の金額から控除できます。

参照:No.1600 公的年金等の課税関係|国税庁

従業員に雑所得を聞かれたらどう答える?

問い合わせが多いのは、年末調整で処理してもらえるのかという点です。精算はできないことと、申告書に記入する欄があることを分けて伝えると誤解が生じにくくなります。

精算できないことと記載欄があることを分けて伝える

「年末調整では税額を精算できない」と「申告書の所得見積額には記入する」は、矛盾せず両立する説明です。この2点をまとめて説明すると混乱を招きやすいため、次の順序で案内すると伝わりやすくなります。

  • 給与以外の所得は年末調整の対象外である
  • ただし基礎控除申告書などの所得見積額には含める
  • 20万円を超えるなら翌年に確定申告をする
  • 20万円以下でも住民税の申告が必要な場合がある

書類の配布時にこの内容を一枚にまとめて添えておくと、個別の問い合わせを減らせるでしょう。

会社は所得の内容まで確認する立場にない

申告書の記載内容に責任を負うのは提出した従業員本人であり、勤務先が所得の中身を調べる義務はありません。勤務先に求められるのは、申告書を回収し、記載された金額にもとづいて年末調整を行うことです。

副業の内容や金額の妥当性まで踏み込んで確認する立場にはありません。個別の税額計算について相談を受けた場合は、所轄の税務署や税理士への相談を案内するのが安全です。

就業規則で副業の届出を定めている企業もありますが、年末調整の申告書はあくまで税額計算のための書類です。副業の可否を判断する資料として扱うものではない、という線引きを社内で共有しておくと、従業員が記載をためらう状況を減らせます。

参照:年末調整がよくわかるページ|国税庁

年末調整と雑所得の扱いを整理しよう

雑所得は年末調整で税額を精算できないため、金額が基準を超える従業員は自分で確定申告をすることになります。一方、基礎控除申告書などに書く合計所得金額の見積額には雑所得も含めるため、書類の上でまったく無関係というわけではありません。

給与以外の所得が20万円を超えるかどうかで確定申告の要否が分かれ、20万円以下でも住民税の申告が必要になる場合があります。

勤務先としては、精算の対象外であることと記入欄があることを分けて案内し、個別の税額計算は税務署や税理士に委ねる形が実務として無理のない進め方です。年内のうちに見込み額を確かめるよう周知しておくと、申告書の差し戻しを減らせるでしょう。

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