- 更新日 : 2017年4月26日
年末調整で雑所得は処理できるか?
給与以外に雑所得がある場合、年末調整で処理することはできるのでしょうか。
年末調整とは、基本的には会社で支払われる給与をもとに、生命保険料など必要経費を控除する計算を、会社が代わりに行ってくれるものです。そのため、会社の給与以外の雑所得は年末調整での処理はできません。
今回は雑所得の処理について解説します。
雑所得とは
まず所得には、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得がありますが、これ以外の所得はすべて雑所得になります。
つまり、雑所得は、所得の性質がよくわからない所得を全て含めているものになります。具体例としては、公的年金での受取やアフィリエイトからの収入などがあります。
年末調整と雑所得
年末調整は、会社員等が自ら確定申告しなくてもいいように、会社で定型的な所得控除をしてもらえる便利な制度です。その趣旨から、雑所得のような定型的でない所得については年末調整で処理することはできません。
確定申告と雑所得
雑所得は年末調整では処理できないことから、原則として確定申告することになります。ただし、雑所得が20万円以下の場合には確定申告は不要になります。
ここで注意が必要なのは、サラリーマンでも医療費控除を受ける場合や会社からの給与以外に所得があるなど、確定申告をしなけなければいけないなら、雑所得が仮に20万円以内であったとしても確定申告で雑所得について申告をしなければいけません。20万円以内について確定申告を不要としているのは、少額の所得について確定申告を求めると納税者の負担が大きいからです。
ほかの理由で確定申告をするのであれば、原則どおり確定申告が必要になるということです。
したがって、生命保険料控除を年末調整で申告するのを忘れたので、確定申告するような場合にも、雑所得があれば申告しなければなりません。
住民税の申告と雑所得
所得税では、給与とは別の所得が20万円までであれば、確定申告は不要ですが、住民税にはそのような規定がないため、給与所得と合わせて住民税の申告が必要です。
雑所得の計算方法
(1)公的年金を受給している場合
「公的年金受給額 − 公的年金等控除額」により計算されますが、以下の速算表により簡単に計算されます。
例えば、70歳で400万円年金を受け取ると、「400万円 × 75% − 37万5,000円 =262万5,000円」になります。
■速算表
【65歳未満】
公的年金等の収入金額 | 掛率 | 控除額 |
---|---|---|
700,001 円から 1,299,999 円まで | 1 | 70 万円 |
1,300,000 円から 4,099,999 円まで | 0.75 | 37 万 5,000 円 |
4,100,000 円から 7,699,999 円まで | 0.85 | 78 万 5,000 円 |
7,700,000 円以上 | 0.95 | 155 万 5,000 円 |
【65歳以上】
公的年金等の収入金額 | 掛率 | 控除額 |
---|---|---|
1,200,001 円から 3,299,999 円まで | 1 | 120 万円 |
3,300,000 円から 4,099,999 円まで | 0.75 | 37 万 5,000 円 |
4,100,000 円から 7,699,999 円まで | 0.85 | 78 万 5,000 円 |
7,700,000 円以上 | 0.95 | 155 万 5,000 円 |
(2)公的年金以外の雑所得がある場合
「総収入金額 − 必要経費」により計算されます。例えば、アフィリエイトで収入が50万円あり、通信費やパソコン購入費などの必要経費が25万円あったとすれば、「50万円 − 25万円 = 25万円」が所得になります。
(3)特例措置
雑所得は、他の所得と合算される総合課税になります。しかし、先物取引、オプション取引、外国為替証拠金取引(FX)などの収益は、先物取引に係る雑所得等の特例の対象になっており、総合課税ではなく申告分離課税になっています。
申告分離課税というのは、ほかの所得と合算せずに、当該所得に税率を掛けて税額を計算する方法です。税率は、所得税が15%、地方税が5%になっています。
なお、店頭取引と市場取引との間の損益通算は可能なので、複数の金融取引がある場合には、チェックしてみるとよいでしょう。また、損益通算をした結果がマイナスとなれば、3年間の繰越控除が認められているので、次年度以降収益が発生した場合には、繰り越した損失を収益から控除することができます。
まとめ
以上、雑所得について解説してきました。最近は、ネットで収益を得ている人も増えてきているので、税務当局も目を光らせているようです。
年末調整では雑所得は申告できませんので、確定申告の時期になったら、1年を振り返り、申告すべき収益を得ていないかきちっとチェックし、申告漏れがないよう注意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
年末調整でのシャチハタの利用について
簡単に入手でき、朱肉もいらず手軽に使えるシャチハタですが、年末調整でシャチハタを使用することはできるのでしょうか? ここでは、シャチハタの性質、公文書や年末調整におけるシャチハタの利用について説明します。 シャチハタの性質と使う場面 シャチ…
詳しくみる社労士が年末調整を行うのは違反?社労士と税理士の業務範囲を解説!
企業の人事労務担当者にとって相談しやすい専門家は、税理士と社労士ではないでしょうか。しかし、社労士と税理士とでは、専門家として行える業務範囲が異なります。 毎年年末に行う重要な業務に年末調整があります。年末調整の業務を依頼するのは、税理士と…
詳しくみる固定資産税は年末調整で控除対象になる?減額するための方法を紹介
土地や家屋といった不動産に対する固定資産税には、さまざまな減税措置があります。しかし、制度が複雑であるため、知らずに恩恵を受けることができないこともあります。今回は、固定資産税や、あまり聞きなれない償却資産の定義のほか、新築住宅やリフォーム…
詳しくみる年末調整での年調年税額の計算
年調年税額とは、一年間に従業員に支給した給与に対する所得税を計算するための数字を指します。ここで言う所得税には、復興特別所得税が含まれます。 年末調整では、従業員ごとに算出した年調年税額と、すでに源泉徴収した金額とを比べて、過不足額を精算し…
詳しくみる年末調整の還付金はいつ戻ってくる?支払日や金額の計算方法を解説
年末調整の還付金とは、徴収された源泉所得税が本来納めるべき金額よりも多かった場合に、12月または1月に戻ってくるお金のことです。年末調整は過不足税額の調整をする仕組みであるため、源泉所得税が不足していた場合には追加徴収されます。今回は年末調…
詳しくみる傷病手当金は年末調整の対象?
「傷病手当金」に所得税はかからず、年末調整の対象にはなりません。給料の代わりに休職中に受け取っていたとしても、年末調整での申告は不要です。扶養控除の申告での基準にも関係しませんが、社会保険の扶養家族の収入基準には関係します。傷病手当金受給者…
詳しくみる