- 更新日 : 2025年1月20日
就業規則は労働基準監督署へ届出が必要!必要書類や記入例などを解説
就業規則は、労働条件や労働者が守るべき規則などが記載された大切な書類です。一定の企業には就業規則の作成義務が課せられていますが、作成時や変更時には届出の義務も同様に課せられています。
当記事では、就業規則の届出について解説します。これから作成や変更を予定している場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
労働基準法における就業規則の提出義務とは
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する企業に、労働基準法上の作成義務が課されている書類です。また、作成後に所轄労働基準監督署へ届け出ることも義務付けられています。届出義務は変更時にも同様に課せられているため、就業規則を変更する都度、労働基準監督署へ届け出なければなりません。
就業規則の作成義務があるにも関わらず作成しなかったり、作成しても届出を欠いたりした場合には、労働基準法第89条違反となります。労働基準法第120条によって30万円以下の罰金が科せられるため、必ず届け出るようにしましょう。
就業規則を労働基準監督署へ届出するときに必要な書類
労働基準監督署に就業規則を届け出る際には、いくつかの書類が必要です。書類ごとに解説します。
就業規則
就業規則を届け出る際には、作成や変更した就業規則が必要です。就業規則には、必ず記載が必要な「絶対的必要記載事項」と、企業に定めがある場合に記載が必要な「相対的必要記載事項」が存在します。
絶対的必要記載事項は、以下のとおりです。
- 始業および終業の時刻
- 休憩時間と休憩、休日に関する事項
- 就業時転換に関する事項
- 賃金の決定や計算等、賃金に関する事項
- 昇給に関する事項
- 退職に関する事項
相対的必要記載事項は、以下のとおりです。
- 退職手当に関する事項
- 臨時の賃金と最低賃金に関する事項
- 食費や作業用品等の負担に関する事項
- 安全および衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償等に関する事項
- 表彰や制裁に関する事項
- そのほか当該事業場の労働者すべてに適用される定めに関する事項
絶対的必要記載事項を欠いた就業規則も、ほかの要件を満たす限りにおいては有効な就業規則として扱われます。しかし、就業規則について定めた労働基準法第89条違反となるため、同法第120条によって30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
従業員代表者の意見書
就業規則を作成したり、変更したりする場合には、労働者の過半数で組織する労働組合の意見を聴かなければなりません。労働組合がない場合には、労働者の過半数代表の意見を聴く必要があります。なお、管理監督者は労働者代表にはなれず、挙手や投票等の民主的方法で代表者を選出しなければなりません。
聴取した意見は意見書の形でまとめ、就業規則の届出時に添付します。労働者代表が内容について異議を述べなかった場合も同様です。なお、労働組合や過半数代表者の意見が就業規則の内容に反対でも、就業規則の効力に影響を及ぼしません。ただ、できうる限り、意見を反映した就業規則とすることが望ましいでしょう。
就業規則の内容が法令や協約に違反する場合には、労働基準監督署から就業規則の変更を命じられる可能性があります。この際にも意見書の添付が必要となるため注意しましょう。
就業規則(変更)届
就業規則を届け出る際には、就業規則(変更)届も同時に提出しなければなりません。書類の様式には定めがないため、自由に作成しても問題ありませんが、テンプレートなどを利用したほうが確実でしょう。
就業規則(変更)届のテンプレート・記入例
就業規則(変更)届に決まった様式はありませんが、厚生労働省が公開するテンプレートを利用することが推奨されます。本項では、厚生労働省の以下テンプレートに沿って記入例を解説します。
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引用:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省
まず、届け出る日付と届け出る労働基準監督署を記載する必要があります。そして、今回の届出が作成であるか変更であるかを明らかにします。作成時であれば「就業規則を制定・変更いたしましたので〜」の「制定」に、変更時であれば「変更」に丸を付けましょう。
新規作成時には不要ですが、変更時であれば、変更箇所を変更前後で対比させる形で記載します。たとえば、所定労働時間を変更した場合の記入例は以下のとおりです。なお、新規作成時には下記表に斜め線を引く必要があります。
| 条文 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 第20条 | 1日の労働時間は8時間とし、始業および終業時刻は以下の通りとする。 始業 8:00 休憩 0:00~1:00 終業 17:00 | 1日の労働時間は7時間30分とし、始業および終業時刻は以下の通りとする。 始業 8:30 休憩 0:00~1:00 終業 17:00 |
あとは、労働保険番号や事業場名、所在地、使用者職氏名など、企業に関する情報を記載すれば完成です。なお、以前は押印が必要でしたが、現在は必要ありません。これは意見書も同様です。
就業規則を労働基準監督署へ届出する方法
就業規則を労働基準監督署へ届け出る方法は、複数あります。届出方法ごとに解説するため、自社にとって都合のよい方法を選択してください。
労働基準監督署の窓口に持参する方法
所轄労働基準監督署の窓口に書類を持参する方法です。所轄となる労働基準監督署が近い場所にあれば、この方法を選択してもよいでしょう。間違いがあれば窓口で指摘してもらえるため、初めて作成する場合でも安心して届出を行えます。
労働基準監督署に郵送する方法
就業規則は、郵送で所轄労働基準監督署へ届け出ることも可能です。郵送時には必要書類のほかに、返信用の封筒も同封しておきましょう。
e-Govで電子申請する方法
就業規則の届出は、電子申請することも可能です。企業の所在地を問わず24時間いつでも提出できるうえに、郵送に掛かるコストも削減できます。電子申請はe-Govから行えるため書類をアップロードするだけで済むほか、複数作成して手元に残しておく必要もありません。令和3年4月からは電子証明書や電子署名が不要となったため、より利用しやすいでしょう。
就業規則を労働基準監督署へ届出する期限
就業規則を作成・変更した場合、作成や変更の後「遅滞なく」届出を行う必要があるとされています。具体的に何日や何週間以内といった明確な期限は設けられていませんが、作成や変更後できるだけ早く届け出ることが推奨されます。就業規則に記載された施行年月日の前であっても届出自体は可能であるため、速やかに届け出ましょう。
作成義務のない小さな企業であっても、常時10人以上使用することになった場合には、遅滞なく就業規則を作成し、届け出なければなりません。就業規則を作成し、働くうえでの規則を定めておくことは、労使間のトラブルを未然に防止する効果が期待できます。そのため、作成義務のない企業も就業規則を作成しておいたほうがよいでしょう。
就業規則を労働基準監督署へ届出するときの注意点
就業規則を労働基準監督署へ届け出る際には、いくつかの注意点があります。注意点ごとに解説するため、しっかりと把握して届出時のトラブルを防いでください。
就業規則の付属規程等も届出が必要
本則である就業規則のほかに、給与規程や退職金規程などの付属規程が存在する場合には、それらの付属規程も併せて提出しなければなりません。名称を問わず、それらの規程も就業規則の一部として扱われるためです。パートタイム規程やアルバイト規程など、雇用形態ごとの規程を作成している場合も同様に提出する必要があります。
ただし、社内で参考資料とするためや、単なる指針として定めた規程集のようなものは対象外です。どの範囲まで提出するべきか判断が付かない場合には、所轄労働基準監督署に問い合わせましょう。
就業規則の本社一括届出を利用することも可能
支店や支社など、複数の事業場を設けている企業は、事業場ごとに就業規則を届け出るのが原則です。しかし、多くの事業場を設けている場合には手間が掛かるため、本社一括届出を利用することも可能です。本社と同様の就業規則が適用される事業場に限定されますが、一括で届け出ることで手間を削減できます。ただし、この場合でも労働者代表の意見書は、事業場ごとに正本を提出しなければなりません。
本社一括届出の手順は、労働基準監督署によって異なる場合があります。事前に本社を所轄する労働基準監督署に確認するとよいでしょう。
受付印が押印された控えを保管しておく
届出を行う場合には、必要書類を2部ずつ作成しておく必要があります。2部提出すると、受付印が押されたうえで所轄労働基準監督署から書類が返却されるため、会社控えとして保管しておきましょう。なお、電子申請した場合には、受付印が押された控えをダウンロードできます。
変更した就業規則は労働者に周知・閲覧させる義務がある
就業規則は、ただ作成しただけでは効力は生じません。作成や変更した就業規則を労働者に周知することで、はじめて効力が生じます。仮に届出を怠った場合でも、周知をしていれば、その就業規則は有効です。しかし、届出を行い、受付印が押されたとしても、労働者への周知を欠けば、その就業規則は無効となってしまいます。作成や変更を行った後は、忘れずに労働者への周知を行いましょう。
就業規則の周知は、以下のような方法が考えられます。自社にとって便利な方法で周知を図りましょう。
- 見やすい場所への掲示
- 書面による交付
- デジタルデータとして作成し、いつでも閲覧可能とする
就業規則の周知を怠った場合には、就業規則が効力を生じないだけでなく、労働基準法第106条違反として、同法第120条によって30万円以下の罰金が科せられます。
就業規則の変更は手順を守ることが大切
就業規則は、ただ作成や変更しただけでは効力を生じません。正しい手順を踏んだうえで届出や周知を行わなければ、効力が生じないだけでなく、罰則を科される恐れもあります。当記事を参考に、就業規則に対する理解を深め、適切な届出や周知を行ってください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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