- 更新日 : 2025年3月28日
嘱託とは?社員・パートとの違いや雇用形態を解説
嘱託社員とは正社員とは異なる雇用形態で働く社員で、行政機関などでは嘱託職員などと呼ばれることもあります。雇用期間の定めのある非正規雇用として働き、あらかじめ担当する業務も契約で定めておき、責任の範囲も限定されます。嘱託社員の中でも正社員に近い働き方をする場合を常勤嘱託と言うこともあります。定年後の再雇用を嘱託社員とする場合が多くなっています。
目次
嘱託とは?
正社員や契約社員、パート、アルバイトといった会社で働く従業員の種類の1つが、嘱託社員です。非正規雇用社員に該当し、雇用期間の定めのある有期雇用で働きます。嘱託社員は主に専門的な知識や資格を有していて企業に必要とされる期間だけ働く場合と、定年後の再雇用のため有期雇用で働く場合の2パターンに分類されます。
嘱託と委嘱の違い
嘱託には「仕事を依頼する」という意味があり、一定の業務や仕事を正社員ではない人に任せること、もしくはそのような形で仕事を依頼された従業員を言います。これに対して委嘱は特定の仕事を人にさせたり役職を任せたりすることを指す言葉です。嘱託と委嘱の違いは仕事を依頼する対象となる人にあり、嘱託は正社員でない人に仕事を任せること、委嘱は特定の人ではない相手に仕事を依頼することを指します。
嘱託と契約の違い
嘱託と契約の違いには、さまざまな点が挙げられます。最も大きな違いは対象となる従業員の違いです。嘱託は専門的な知識を保有している人や定年後に再雇用される人が主に嘱託契約締結の対象となるのに対し、契約社員の対象となる人は特に定まっていません。個人の事情により有期雇用となる人の他、正社員とは異なる働き方になる人を契約社員の身分とする場合があります。
嘱託社員の雇用形態は?
嘱託社員は非正規雇用に該当し、雇用期間はあらかじめ定められた期間になります。専門的な知識や資格を有している嘱託社員の雇用期間は、多くの場合、数ヵ月から2年程度になっています。これに対して定年後の再雇用で働く嘱託社員は5年を一区切りとし、体調や身体的な衰えの程度からまだ働けるようであれば妥当な年数を雇用期間とすることが多くなっています。その他の労働時間・休日、社会保険・労働保険は、以下のように取り扱われます。
労働時間・休日
嘱託社員の労働時間・休日は労働基準法違反にならない範囲内で、柔軟な設定が可能です。専門的な知識やスキルを有している嘱託社員の場合は繁忙期に労働時間を長くしたり、定年後に再雇用される嘱託社員の場合は身体的な負担を考慮して少ない勤務日・短い労働時間としたりすることができます。残業についても無しとしたり、1日の限度時間を設けたりすることが可能です。
社会保険・労働保険
社会保険・労働保険はそれぞれの要件を満たす場合には加入、満たさない場合は加入しません。
その他
その他の労働条件については以下のように取り扱います。
- 有給休暇:嘱託社員も労働基準法に定める労働者に該当し、有給休暇を付与する必要があります。
- 福利厚生:社会保険のような法定福利厚生以外の法定外福利厚生であれば、嘱託社員にどこまで認めるかは、企業が決めることができます。
福利厚生施設の利用は認めるが慶弔見舞金制度からは除外する、というようなルール適用が可能です。
嘱託社員と契約社員の違い
嘱託社員も契約社員も雇用期間などを定めた労働契約書を交わして働く、非正規雇用社員である点は同じです。どちらも定義付けがはっきりとされていない点も同じですが、一般的に契約社員の方が嘱託社員よりも、フルタイムで働く正社員に近い働き方をすると解されています。
常勤嘱託と通常の嘱託との違い
通常、常勤嘱託とは労働時間・休日について、正社員と同じような条件で働く嘱託社員を指します。嘱託社員には常勤と非常勤の2種類があり、働き方がそれぞれ次のように異なります。
- 常勤嘱託社員:正社員と同じ、または近い働き方をする例)週に5日勤務、労働時間は9:00から17:00まで
- 非常勤嘱託社員:正社員より少ない勤務日や、短い労働時間で働く例)週に3日勤務、労働時間は10:00から15:00まで
週に2日勤務、労働時間は9:00から16:00まで
嘱託社員の労働条件は?
嘱託社員の労働条件は、締結した労働契約の通りとなります。以下のように、それぞれの事情に合わせた内容にすることができます。
例) 勤務日について
- 週に3日(毎週月・水・金曜日)勤務
- 毎月1日・5日・10日・15日・20日・25日・30日に勤務
- 第1週と第4週にそれぞれ4日勤務
労働時間について
- 9:00から16:00まで
- 13:00から18:0まで
嘱託社員の給与について-正社員との違い
嘱託社員の給与は、担当する仕事や責任の重さで決定します。身分は嘱託社員であっても正社員と同レベルの業務を行わせ、責任も負わせる場合は、給与額も同等とすることが求められます。反対に少ない仕事量しか与えなかったり軽微な責任しか生じなかったりする場合は、相当の給与額とすることができます。
嘱託社員における無期転換ルールとは?
無期転換ルールとは、有期雇用労働者から申し込みがあった場合は無期雇用に転換しなければならないという決まりを指します。労働契約法の改正により2013年4月1日より適用された、雇用に関する新しいルールです。
有期労働契約が5年を超えて更新された従業員に対して無期雇用への転換を申し込む権利が発生し、企業は申し込みに応じなければなりません。従業員から無期転換を申し込まれた場合、有期雇用契約が終了する日の翌日から無期雇用に転換されます。2013年4月1日から1年ごとに契約更新が行われている場合は、2018年4月から従業員に無期転換申込権が発生します。
有期雇用労働者にはアルバイトやパートなど名称を問わず、雇用期間の定めのある労働者すべてが対象になります。嘱託社員も有期雇用労働者であるため無期転換ルールが適用されます。定年後、引き続き雇用される有期雇用の嘱託社員についても、通常、無期転換ルールは適用されます。
ただし、有期雇用特別措置法により、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けた事業主の下で、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、無期転換申込権が発生しないとする特例があります。
嘱託社員を雇用するメリット
正社員より嘱託社員の方が給料を抑えられ、昇給も必要とされないため、嘱託社員の雇用には人件費を抑制できるというメリットがあります。また正社員は期間を定めずに雇用し、基本的に企業側の都合で解雇することはできないのに対し、嘱託社員は雇用期間を定めることができ、人員調整が可能になるというメリットもあります。
無期雇用ルールに注意し、嘱託社員を有効に活用しよう
嘱託社員はアルバイトやパートと同じ非正規雇用で、契約社員のように雇用期間を定めて働きます。正社員と同じような働き方をする常勤嘱託社員、少ない勤務日・短い労働時間で働く非常勤嘱託社員に分かれ、どのような働き方をするかは柔軟な設定が可能です。嘱託社員は主に専門的な知識やスキルを持って企業側から必要とされる期間だけ働く嘱託社員と、定年後の再雇用の身分とされる嘱託社員に分類されます。
労働契約法の改正により有期雇用契約で働く労働者に、無期転換ルールが適用されるようになりました。嘱託社員も適用対象ですが、定年後の再雇用での嘱託社員には適用されないという特例があります。こうした法改正や雇用の新ルールに注意しながら、嘱託社員を有効活用して人件費抑制を図りましょう。
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