• 作成日 : 2023年12月29日

改善基準告示とは?運転者の労働時間等の改正ポイントも解説

改善基準告示とは?運転者の労働時間等の改正ポイントも解説

トラックやバス、タクシーなどの運輸業者は、「改善基準告示」に則ってドライバーを就業させる必要があります。

この記事では改善基準告示の意味や令和6年度に施行される改正のポイントについて解説。業種ごとの労働時間の目安についてもご紹介します。

改善基準告示とは?

改善基準告示の正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」で、トラックやバス、タクシーなどの自動車運転者の労働時間の基準について定められた厚生労働大臣告示です。

自動車運転者が過労に陥ると運転者自身の健康に悪影響が及ぶのはいうまでもありませんが、事故が発生して第三者が巻き込まれるおそれもあります。しかしながら、運輸業では長時間・過重労働が状態化しているという実態がありました。

そこで、自動車運転者の労働条件を改善する目的で、労働基準法とは別に改善基準告示という告示が平成元年(1989年)に策定されたのです。

改善基準告示に関する主な労働時間

冒頭の通り、運輸会社は改善基準告示に従ってドライバーを勤務させる必要があります。労働基準法では職場の指揮命令下にある「労働時間」という概念を用いて規制がされていますが、改善基準告示は「拘束時間」と「休息期間」という概念が用いられています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

拘束時間

拘束時間とは始業時刻から終業時刻までの時間のことを指し、「労働時間」と「休憩時間(仮眠時間も含む)」を合計した時間です。労働時間はさらに「作業時間」と「手待ち時間」に細分化されます。作業時間とは車両の運転や整備、荷扱いなど、ドライバーとしての業務を行っている時間のことを指し、手待ち時間とは荷待ちや乗客の乗車を待つ時間などの待機時間を指します。

休憩時間や手待ち時間は作業を行っていない状態にはなりますが、会社の指揮命令下にあるため拘束時間となっています。

たとえばトラック運転者の拘束時間の上限は年間3,516時間、1ヶ月あたり293時間です。なお、労使協定を結んでいる場合は6ヶ月までは1年間の拘束時間を超えない範囲内かつ320時間までであれば延長することができます。なお、延長した場合は次月以降の拘束時間を短くして調整しなければなりません。

1日あたりの拘束時間は13時間以内を基本として、延長する場合であっても16時間が限度です。また、15時間を超える回数は1週間につき2回を限度とします。

休息時間

休息期間とは休日も含めた勤務と勤務の間の期間、会社にまったく拘束されない時間のことです。改善基準告示では1日の休息期間は継続して8時間以上と定められています。

たとえば会社の始業時間が8時として21時までが拘束時間であるとすると、次の日の始業時間まで11時間の休息期間があるので、改善基準告示の基準はクリアしています。これが翌日の1時まで拘束時間が延びたとなると、休息期間は7時間となるため、基準を満たしていないことになります。

改善基準告示改正のポイント

改正基準告示は令和4年(2022年)12月23日に改正されました。より基準が厳しくなったため、これまでと同じようにドライバーを働かせていると違反となるおそれもあります。ここからは令和4年度の改善基準告示改正のポイントについて見ていきましょう。

改正の概要

今回の改正では年間および月間の最大拘束時間が短くなり、その一方で1日あたりの最低休息期間が長くなりました。また、時間外労働に対しては年間960時間の上限規制が新たに設けられることになります。よりドライバーの負担が軽減される方向で改正されるのです。

なお、最大拘束時間や最低休息期間は業種(トラック、タクシー、バス、ハイヤーなど)によって異なります。具体的な改正内容については後述します。

改正される背景

今回の改正の背景にあるのは「働き方改革」です。2019年に働き方改革関連法案が施行され、改善基準告示もその一環として改正が検討されてきました。

前述の通り、特に自動車運転者は過労状態に陥ると自身だけでなく第三者に対しても危険を及ぼすリスクが高くなります。実際に過酷な労働を強いられた結果悲惨な事故が起こってしまったケースも少なくありません。ドライバーの待遇を改善し、道路交通の安全を守る目的で今回の改正がなされました。

また、運輸業界は深刻な人手不足状態です。ドライバーの労働環境を改善して新たな人材を呼び込もうという狙いもあります。

改善基準告示の改正はいつから?

改善基準告示は令和4年12月23日に改正され、令和6年(2024年)4月1日より適用となります。それまでに運輸会社は就業規則や運行スケジュールの見直しをするなど、労働環境を整備しなければなりません。

トラック運転者の改善基準告示の改正

トラックの運転者に関してはこれまで年間の拘束時間は3,516時間、1ヶ月の拘束時間は原則293時間(最大320時間)を上限とし、1日あたり最低継続8時間の休息期間を設けるよう定められていました。

改正後は年間の拘束時間は原則3,300時間(最大3,400時間)、1ヶ月の拘束時間は284時間(最大310時間)を上限とし、1日の休息期間は継続11時間(最低でも9時間)設ける必要があります。

改正前改正後
1年の上限拘束時間3,516時間原則:3,300時間
(最大:3,400時間)
1ヶ月の上限拘束時間原則:293時間
(最大:320時間)
原則:284時間
(最大:310時間)
1日の最低休息期間継続8時間継続11時間
(最低継続9時間)

※時間外労働は年間960時間以内

タクシー運転者の改善基準告示の改正

タクシーの運転者(日勤者)に関してはこれまで1ヶ月の最大拘束時間は299時間、1日あたりの最低休息期間は継続8時間という基準が設けられていました。

改正後は1ヶ月あたりの最大拘束時間は288時間、1日の最低休息期間は継続11時間(最低でも9時間)となります。

改正前改正後
1ヶ月の上限拘束時間299時間288時間
1日の最低休息期間継続8時間継続11時間
(最低継続9時間)

※時間外労働は年間960時間以内

なお、隔日勤務の場合は1ヶ月の最大拘束時間が262時間、2暦日あたり24時間が上限で、最低休息期間は継続21時間という基準となります。

1ヶ月の上限拘束時間262時間
2歴日の最低休息期間継続22時間

※時間外労働は年間960時間以内

バス運転者の改善基準告示の改正

バスの運転者に関してはこれまで年間の拘束時間は原則3,380時間(最大3,484時間)、1ヶ月の拘束時間は原則281時間(最大309時間)を上限とし、1日あたり最低継続8時間の休息期間を設けるよう定められていました。

改正後は年間の拘束時間は原則3,300時間(最大3,400時間)、1ヶ月の拘束時間は281時間(最大294時間)を上限とし、1日の休息期間は継続11時間(最低でも9時間)設ける必要があります。

改正前改正後
1年の上限拘束時間原則:3,380時間
(最大:3,484時間)
原則:3,300時間
(最大:3,400時間)
1ヶ月の上限拘束時間原則:281時間
(最大:309時間)
原則:281時間
(最大:294時間)
1日の最低休息期間継続8時間継続11時間
(最低継続9時間)

※時間外労働は年間960時間以内

ハイヤー運転者の改善基準告示の改正

ハイヤー運転者の上限拘束時間と最低休息期間はタクシーと同様です。

【日勤者】

改正前改正後
1ヶ月の上限拘束時間299時間288時間
1日の最低休息期間継続8時間継続11時間
(最低継続9時間)

※時間外労働は年間960時間以内

【隔日勤務者】

1ヶ月の上限拘束時間262時間
2歴日の最低休息期間継続22時間

※時間外労働は年間960時間以内

車庫待ち等の自動車運転者の改善基準告示の改正

タクシー運転者の場合はお客様がいらっしゃるまで車庫に待機する「車庫待ち」があります。車庫待ちは運転しながらお客様を見つける、いわゆる「流し」と比較して負担が軽いことから、特例が認められています。

車庫待ち等の勤務形態で一定の条件を満たせば日勤者の場合は1ヶ月あたりの上限拘束時間を300時間まで、隔日勤務者の場合は262時間まで延長可能です。

改善基準告示に違反したら?

労働基準法に違反すると罰金や懲役などの刑事罰が科せられるおそれがあります。改善基準告示は法律ではなく厚生労働大臣の告示であるため、違反しても刑事罰には問われません。しかし、違反行為が発覚した場合は国土交通省から行政処分が下されるおそれがあります。

たとえば1ヶ月あたりの拘束時間や休日労働の限度を超えて自動車運転者を働かせた場合、「乗務時間等告示遵守違反」として違反件数に応じて車両が運行できなくなります。未遵守が1件であれば10日車(車両1台が10日間運行できなくなる)、2件以上であれば20日車の運行停止処分が下される可能性があります。

他にも健康診断未受診者がいる場合は「疾病、疲労等のおそれのある乗務」に該当し、未受診者1名の場合は警告、2名の場合は20日車、3名以上の場合は40日車となります。

社会保険等未加入も違反となり、同様に未加入者1名の場合は警告、2名の場合は20日、3名以上の場合は40日車という処分になります。

改善基準告示を守ることがドライバーと会社を守ることにつながる

改善基準告示が改正されれば、ドライバーにとっては労働時間が短くなり労働環境の改善が期待できます。一方で運輸会社や荷主、乗客にとってはドライバー不足によって運行の停滞につながる、コストが増大するなどの懸念があり、「2024年問題」としてクローズアップされています。

しかし、ドライバーが過労状態に陥るとドライバー自身や第三者に危険が及ぶリスクがあります。ドライバーと会社を守るためにも、今からしっかりと改正の内容を押さえておき、対策をはじめましょう。


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