コロナの影響で住民税納税が難しい人向け 徴収猶予の「特例制度」

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新型コロナウイルスの影響で事業に支障が出ている個人事業者の方、中小企業の経営者の方もおられるでしょう。政府のコロナ対策としては、中小企業者や個人事業者向けの持続化給付金、フリーランスを含む個人事業者向けの実質無利子・無担保の融資など、金銭的な面での支援が知られるようになってきました。しかし、給付金や無利子の融資を受けたところで直近の支払いに苦労している経営者も少なくありません。この記事では、コロナの影響で税金、特に住民税の支払いが困難なケースでの、住民税の徴収猶予について解説します。

徴収猶予の特例で住民税の納税を遅らせることができる

新型コロナウイルスの影響を受けて、個人住民税、法人住民税いずれも徴収猶予の特例が設けられました。徴収猶予の特例とは、簡単にいえば対象となっている住民税の納付を最大で1年遅らせることができる制度です。

住民税にはもともと、一時納付が困難と認められたときの納税の猶予が認められていますが、従来の猶予には原則、担保の提供、延滞金(猶予の場合延滞金が軽減されるものの支払う必要がある)の支払いが発生します。

コロナによる徴収猶予の特例では、一時納付が困難な状況に加えコロナの影響で収入が大きく減少したことが条件とはなりますが、担保不要、延滞金なしで猶予を受けられるようになりました。つまり、従来と比べると、納付猶予によるマイナス面を心配することなく、住民税の徴収猶予を利用できるということです。

会社員は対象になる?特例制度の対象者

住民税の徴収猶予とはどのような制度なのか、要件や対象者など具体的に見ていきましょう。

徴収猶予の要件

コロナによる住民税の徴収猶予の特例は誰でも受けられるわけではありません。以下のような要件を満たす必要があります。

  • 一時納付、または納入が困難である
  • コロナの影響で前年の同じ時期と比べて、事業等の収入がおおむね20%以上落ち込んだ

たとえば、家族や自身がコロナに罹患して仕事ができなくなった、コロナが間接的に影響して客足が遠のき売り上げが大幅に落ち込んだ、コロナの影響で廃業した、といったケースが考えられます。

特例の対象者

住民税の徴収猶予の対象となるのは、個人事業主やフリーランス、不動産所得などで生計を立てている個人、そして法人です。パートやアルバイトなど、住民税を個人で納めている人も対象になります。

一方、特例の対象外となるのは、給与から住民税の天引きを受けている会社員などです。ただし、会社員は直接的に住民税の徴収猶予を受けることはできないものの、コロナに罹患して会社を休む場合は傷病手当金(※要件あり)を受けることができます。また、コロナの影響によって休業が余儀なくされる場合は、雇用調整助成金などの積極的な利用で、労働者に休業手当を支払うことが企業の努力義務とされました。会社員の場合、勤め先によっては、休業手当が受けられる可能性もあるでしょう。

法人の申告猶予と条件

今回のコロナに関連して、通常時のように営業できない企業も出てきました。これを受けて、住民税の徴収猶予だけでなく、法人には法人税や法人住民税などに関連して申告の猶予も認められています。以下が、法人税申告猶予が認められるやむを得ない理由の具体例です。

  1. 体調不良により外出を控えている方がいること
  2. 平⽇の在宅勤務を要請している⾃治体にお住いの方がいること
  3. 感染拡大防止のため企業の勧奨により在宅勤務等をしている方がいること
  4. 感染拡大防止のため外出を控えている方がいること

上記のような理由のいずれかに該当して通常の業務ができず決算が間に合わない場合、このほかコロナの影響で本来の納期限までの申告や納付が難しい場合には、所轄の税務署に申請することによって申告猶予(納付猶予)が認められます。

徴収猶予の特例が受けられる期間

住民税の徴収猶予は、あくまでもコロナ感染による緊急事態を受けた限定的な措置です。2020年6月1日時点で、特例の対象は2020年2月1日~2021年1月31日に納期限の到来する住民税となります。

猶予が受けられる期間は最大1年ですので、2021年1月31日に納期限の到来する住民税だと、最大2022年1月31日まで納付猶予を受けられる計算です。

納期限がすでに過ぎている場合の猶予について

特例の対象となる期間は前述のとおりですが、原則納期限までに猶予の申請をする必要がある点に注意しなければなりません。しかし、今回の特例は緊急で設けられたもので、納期限まで猶予の特例を知り得なかった人、コロナで急激に経営が悪化した企業も多いと思われます。そこで、納期限が2020年2月1日~2020年6月30日に到来するものについては、2020年6月30日までに申請すれば、過去に遡って未納分の猶予を受けられるようになっています。

特例制度を受けるための手続き

住民税徴収猶予の特例を受けるには、原則、本来の納期限までに申請を行わなければなりません。窓口は、各市町村の税務課などです。ここでは必要書類など、手続きの内容を説明します。
(※東京都は所轄の都税事務所となります)

必要書類

手続きに必要な書類は、以下のとおりです。

  • 徴収猶予申請書
  • 財産収支にかかわる書類(収支明細書など)
  • 収入の減少を証明する書類(通帳コピー、売上帳など)

上記の書類は、申請にあたってほとんどの市区町村で必要な書類と考えられますが、書類の内容、猶予を受ける額(100万円以上かどうかなど)など、自治体によって対応が異なることもあります。必ず住所のある市区町村で必要書類を再確認するようにしましょう。

なお、財産収支にかかわる書類、収入の減少を証明する書類についての提出が困難な場合は、口頭や電話での審査に代えて提出の省略を容認している自治体もあります。

電子申請での手続き

自治体によっては、e-TAXを活用して電子申請を可能にしているところもあります。過度な接触を避けるためにも、利用できる自治体にお住まいの場合は電子申請を活用すると良いでしょう。

eLTAXのサービス状況は以下のサイトからも確認できます。
地方自治体ごとのサービス状況|eLTAX 地方税ポータルシステム

法人の申告にかかわる猶予について

法人住民税の猶予に関連して、法人がコロナの影響で申告の猶予を受けたい場合は、窓口、郵送、あるいは電子申請(※対応している場合)で申請書の提出を行います。なお、申告の猶予のみであれば申告ができるようになってから速やかに申告・納付が必要です。法人住民税の徴収猶予を受けたいときは別途手続きの必要があります。

猶予を受けたあと

住民税の徴収猶予が認められたあとは、基本的に後日送付される納付書を使って納付することになります。最長1年の猶予期間内であればいつでも納付することが可能です。

コロナで住民税以外の税金も払えないとき

コロナの影響で住民税の支払いが困難ということは、そのほかの税金の支払いなども困難と思われます。この記事では住民税の徴収猶予の特例を中心に説明しましたが、住民税以外にも納税の猶予が特例として認められていますので、一時納付が難しい場合は積極的に活用されると良いでしょう。

住民税以外の地方税の納税猶予も受けられる

地方税では、住民税のほか、事業税や固定資産税、都市計画税なども特例の対象となる場合があります。この場合の手続きは、住民税の徴収猶予の手続きと基本的に同じです。なお、地方税のほとんどが対象になるものと考えられますが、自治体によって対象となる地方税が異なる可能性がありますので、住民税以外も猶予を受けたい場合は、市区町村のホームページや窓口で確認することをおすすめします。

国税についての納税猶予もある

所得税や法人税、消費税など、国税についても、コロナによる猶予制度の特例が設けられています。一時納付が困難で、収入が前年同時期よりおおむね20%以上落ち込んでいるなど、特例適用の条件は住民税の徴収猶予の特例とほとんど同じです。ただし、税務署での申請であることのほか、申請書類などが異なりますので、申請前に手続きなど確認されることをおすすめします。

このほか、社会保険(国民健康保険税や国民年金など)の減免、事業者の厚生年金保険料の猶予などコロナに関係して猶予や減免の特例も国や自治体で実施されています。お住まいの地域によっては、電気やガスなど公共料金の猶予が受けられる可能性もありますので、生活に大きな支障が出ている場合は、こうした特例をうまく活用されてはいかがでしょう。

まとめ

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言は解除されましたが、自粛ムードは続いていますし、以前のように事業や仕事を再開できないでいる個人や事業者も多いと思われます。持続化給付金など、直接現金で支援する対策も行なわれていますが、納税の猶予、あるいは減免といった特例もコロナウイルスの影響を受けて実施されていますので、うまく活用してこの局面を乗りきりましょう。

【参考】
国税庁 新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ
総務省 新型コロナウイルス感染症の発生により申告・納付が困難な場合における国税の取扱い
総務省 徴収猶予の特例における電子申請について
総務省 緊急経済対策における税制上の措置(案)について(地方税関係)

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。



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