• 更新日 : 2021年6月10日

税金計算上の「扶養」とは?知って得するあれこれ

税金計算上の「扶養」とは?知って得するあれこれ

「扶養」というと一見単純に思えますが、具体的にどのような人が扶養の範囲に入るのか、すぐに答えられる人は少ないのではないでしょうか。
一般に、扶養とは「自分の生活を自分で維持することができない者に対して,その生活を援助するため何らかの給付を行うこと」をいいますが、所得税の扶養は所得税法独自に定められており、この該当の有無が様々な規定に影響します。
今回は内容を簡略化するため扶養する方・扶養される方が給与収入のみである場合を前提に所得控除(主に配偶者控除扶養控除)を通して「扶養」について紹介します。(執筆者:大元誠児  監修者:税理士・公認会計士 三井啓介)

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所得税の扶養とは

所得税法上の扶養は課税の公平上問題が生じないよう厳密に定められています。
簡単にまとめると要件は下記の3つです。

所得税法上扶養とされるための要件
要件1.扶養対象者であること
要件2.生計を一にすること
要件3.扶養される方の給与収入が少額であること

要件1.「扶養対象者である」

所得控除(配偶者控除・扶養控除)において、扶養の範囲に制限がなくなってしまうと富裕層ばかり優遇される制度となってしまい、課税の公平が保てなくなります。したがって扶養される方というのは誰でも良いというものではありません。
それぞれの控除ごとにその範囲が定められています。

<配偶者控除>
配偶者控除の対象となる方は民法の規定による配偶者であり、「正式な婚姻関係にある配偶者の方」がこれに該当します。内縁関係にある方は対象外ですのでご注意ください。

<扶養控除>
扶養控除の対象となる方は「配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます)など」であり、年齢が16歳以上の方が該当します。
ご存知ない方もおられると思いますが、上記の通り16歳未満の扶養家族は扶養控除の対象外となっています。これは 児童手当(子ども手当)の制度が創設されたことを機に、その財源として16歳未満の扶養控除が廃止されたことによるものです。

この改正は、家計にどのような影響を与えているのでしょうか。
例えば、1歳の子供がいて、扶養する方に課せられる所得税率が20%であった場合、仮に扶養控除が適用できたとするならば税負担は76,000円(38万円×20%)軽減されますが、同じ場合の児童手当の支給額は180,000円(15,000円×12か月)であり、家計の収入が104,000円が増えたということになります。
一般家庭にとってこの改正は良い改正だったのかもしれません。
しかし、高所得者(年収960万円超)の場合には児童手当の支給額に制限(特例として一律月5,000円)がかかり、家計の収入が減ったというケースもあります。

要件2.「生計を一にする」

生計を一にするとは日常の生活の資を共にすること、つまり「同じ財布で生活すること」をいいます。この表現が曖昧で難しいのですが、例えば親族の方が同居している場合には、ほとんど生計を一にするものとして取り扱われます。
また、単身赴任、大学の一人暮らし、療養費などの都合上別居している場合であっても、余暇には帰省することなどを習慣としている場合や、常に生活費、学資金、療養費などの送金が行われている場合には、生計を一にするものとして取り扱われます。

要件3.「扶養される方の給与収入が少額」

前述の通り、扶養は「自分の生活を自分で維持することができない者に対して…給付を行うこと」をいい、扶養する方が扶養される方の生活を維持する必要があります。この生活を維持する必要性の判断基準として、所得税法では扶養される方の給与収入に上限(103万円)が定められています。

扶養の判断時期

扶養はその年の12月31日の現況で判断します。
ただし、扶養する方・扶養される方が年の中途で死亡したときはそれぞれその死亡時の現況で判断します。

例えば、妻Aを扶養する夫が年の中途に死亡し、その後息子がAを扶養していた場合、その年においてAは夫と息子どちらの扶養となるのでしょうか。
答えはどちらの扶養にも入ることができます。
通常12月31日の現況において、ある1人の方が複数の方の扶養に入ることはできません。しかし、当初扶養する方が年の中途に死亡し、その後他の親族の方が扶養する場合には、扶養の判断時期が異なるのでそれぞれの時期の現況により判断することになります。

所得控除の内容

上記の要件1~3を満たすと所得控除として下記の金額を控除できます。ただし、配偶者控除については、控除を受ける人の所得金額に制限があります。

配偶者控除

控除を受ける人
の所得金額
控除額
一般の控除対象配偶者老人控除対象配偶者(70歳以上)
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円

扶養控除

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【参考】
国税庁|配偶者控除
国税庁|扶養控除

配偶者の場合には、その給与収入が103万円を超えた場合であっても、201.6万円未満までは「配偶者特別控除」としてその給与収入に応じて下記の金額を控除できます。

配偶者の状況扶養する方の給与収入
給与収入1,120万円以下1,170万円以下1,220万円以下
150万円以下38万円26万円13万円
155万円以下36万円24万円12万円
160万円以下31万円21万円11万円
166.8万円未満26万円18万円9万円
175.2万円未満21万円14万円7万円
183.2万円未満16万円11万円6万円
190.4万円未満11万円8万円4万円
197.2万円未満6万円4万円2万円
201.6万円未満3万円2万円1万円
【参考】
平成29年度版税務ハンドブック 発行㈱コントロール社 

「○○の壁」

「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」という言葉を耳にされることがあるかと思います。これらは所得税と社会保険の扶養の限度額を指しますが、よく「壁」として比喩されます。

「103万円の壁」

前述の通り、所得税の扶養とするための給与収入の限度額を指しています。
扶養される方の給与収入が103万円以下であれば所得税の扶養に入ることができます。なお、この給与収入には所得税法上非課税となる通勤手当などは含まれません。

「106万円の壁」と「130万円の壁」

この2つは社会保険の扶養とするための給与収入の限度額を指しています。
扶養される方の勤務する会社が従業員500人超の場合に106万円、500人以下の場合に130万円となります。扶養される方の給与収入がそれぞれ106万円未満、130万円未満であれば社会保険の扶養に入ることができます。
しかし、この社会保険上の給与収入には所得税法上非課税となる通勤手当なども含まれますので注意する必要があります。

扶養される方の給与収入がこの「壁」を超えてしまうと所得税・社会保険の負担額がそれぞれ増えることとなります。扶養をとって給与収入を抑えるか・扶養をとらず給与収入を増やすか、これは扶養する方の所得税率などを加味して考えていく必要があります。

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まとめ

所得税法上の扶養はその年の扶養の判断時期の現況で1.扶養対象者の範囲、2.生計一の状況、3.扶養対象者の給与収入、を判断することにより確定します。扶養に該当することとなった場合にはそれぞれその扶養対象者に応ずる所得控除を適用することができます。ただし配偶者控除・配偶者特別控除の場合、平成30年以後はその適用要件と控除額が改正されているのでご注意ください。
今回は所得控除の観点から扶養を考えましたが、扶養は所得税のあらゆる規定に影響してきます。この機に一度ご自身の扶養の有無を確認し、所得税で適用できるものがないか確認してみてはいかがでしょうか。

参考

給与収入のみである場合の所得税の計算過程

  1. 給与収入-給与所得控除(※1)=所得金額
  2. 所得金額-所得控除(※2)=課税所得金額
  3. 課税所得金額×所得税率(※3)=所得税額
  4. 所得税額-税額控除(※4)=納付税額


(※1)給与所得控除とは、勤務に伴う必要経費の概算額として給与収入に一定の計算式を当てはめ算出します(詳しくは「所得税とは?専門家が10種類の所得税をわかりやすく徹底解説!」をご覧ください)。
(※2)所得控除とは、納税者個々の税金を負担する能力(担税力)を考慮し、所得金額から一定額を差し引いて税負担を軽減する制度です。所得控除は14種類あります。
(※3)所得税率は課税所得金額が高いほど高い税率が課せられ、その税率は5%~45%となっています。
(※4)住宅ローン控除などの税額控除の適用がある方は算出された所得税額から一定額を控除することができます。

2020年の児童手当支給額(1人当たり月額、所得制限世帯対象外)

0歳以上3歳未満一律15,000円
3歳以上小学校修了前第1子・第2子:10,000円
第3子以降:15,000円
中学生一律10,000円

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よくある質問

所得税法上扶養とされるための要件は?

「扶養対象者であること」「生計を一にすること」「扶養される方の給与収入が少額であること」の3つがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

扶養の判断時期は?

その年の12月31日の現況で判断します。詳しくはこちらをご覧ください。

「○○の壁」とは?

「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」といった言葉は、所得税と社会保険の扶養の限度額を指します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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