- 更新日 : 2024年8月29日
労働者名簿とは?記載項目や記入例を紹介!
労働者名簿は労働基準法の規定により雇用者が作成する書類で、記載事項として複数の必須項目があります。具体的な様式に制限はありませんが、内容を頻繁に編集するため管理しやすい工夫をしましょう。場合によっては提出義務も生じます。この記事では労働者名簿の概要や書き方、誰が書くべきかなどについて解説します。
目次
労働者名簿とは
労働者名簿は雇用者に対して労働基準法第107条により作成業務が義務化されている書類で、賃金台帳や出勤簿と合わせて「法定三帳簿」とも呼ばれます。場合によっては提出義務が生じるケースもあるため、忘れずに作成して保管しておきましょう。この章では労働者名簿の概要について解説します。
法定三帳簿における労働者名簿
労働者名簿は「法定三帳簿」に含まれる書類で、労働基準監督署が立ち入り検査を行う際に提出を求められる書類の1つです。残りの2種類は「賃金台帳」「出勤簿」で、いずれも労働基準法や労働基準法施行規則などに作成の必要性が記されています。法定三帳簿はいずれも会社の規模を問わず作成・保管が必要で、会社の実態を把握するために重要な書類です。
労働者名簿の作成義務
労働者名簿は適切な労務管理を行ううえで欠かせない書類のため、従業員を雇っている会社であれば必ず作成する必要があります。大企業も中小企業も変わりなく作成が求められます。従業員を雇っているならば、個人事業主でも作成の義務が課せられます。人事異動や入退社などで労働者情報に変化が生じれば、直ちに名簿も更新しなくてはなりません。なお、会社として複数の事業所を持っている場合は事業所ごとに労働者名簿を作ります。
労働者名簿の提出義務
作成後の労働者名簿は基本的に社内での保管に留まりますが、労働基準監督署の調査が入る際には提出を求められます。提出が必要になったタイミングで速やかに用意・提出できるように、保管体制や印刷体制などを整えておきましょう。
労働者名簿以外の法定三帳簿も提出を求められる機会が多く、いずれも提出を拒否したり虚偽の内容を記して提出したりすると処罰されるため注意が必要です。
労働者名簿の対象|従業員だけでなく役員も含む?
労働者名簿に記載が求められる対象は、雇用しているすべての労働者が該当します。そのため、正社員だけでなくパートタイマーやアルバイトも労働者名簿に記載しなくてはなりません。一方、会社の代表者や役員は労働者に含まれないため対象外です。日雇い労働者や派遣社員も労働者名簿には記載されません。他社に出向している従業員の場合、在籍出向していれば出向元・出向先ともに記載する必要があります。移籍出向の場合は出向先のみ記載します。
個人事業主も労働者名簿の作成は必要?専従者は?
会社を設立していない個人事業主でも、従業員を雇っているならば労働者名簿の作成が求められます。企業規模や法人・個人などは関係ありません。
個人事業主と同居する家族は専従者として区分されて、基本的に労働者扱いにはなりません。ただ、事業主の家族でも就労実態などの使用関係がはっきりわかる場合は労働者としてみなされます。労働者であるとみなされれば労働者名簿の対象に含まれるため、忘れずに名簿を作成しておかなくてはなりません。
労働者名簿と従業員名簿は違う?
労働者名簿と似た言葉に「従業員名簿」というものも存在します。両者の間に違いはなく、どちらも同じものを指しています。「社員名簿」という呼び方も存在しますが、やはり示す意味は労働者名簿や従業員名簿と変わりません。労働基準法では「労働者名簿」の名前で記されているため、あえて正しい表現を定めるならば「労働者名簿」が適切でしょう。
労働者名簿の書き方
労働者名簿の書き方は詳細な点まで決まっておらず、氏名・履歴・退職理由など記載必須の項目以外は自由に作成できます。自社が使いやすい様式で必要な項目を追加して、自社に最適な労働者名簿を作りましょう。労働者名簿の書き方を以下で詳しく解説します。
記載必須の項目
労働者名簿の作成時には労働基準法、および同法施行規則で定められた9つの項目を必ず記載しなくてはなりません。必須項目は以下のものです。
- 氏名
- 生年月日
- 履歴
- 性別
- 住所
- 従事する業務の種類
- 雇い入れた年月日
- 退職した年月日と事由
- 死亡した年月日と原因
退職事由が解雇の場合、解雇した理由も記載します。会社として常時雇用している従業員が30人未満の場合は、「従事する業務の種類」の記入は不要です。
なお、具体的な様式などは定められておらず、縦書き・横書きなども自由です。しかし、頻繁に追加や変更する可能性がある書類のため、テンプレートを活用して極力手間を減らしましょう。テンプレートは、厚生労働省のホームページなど各所でダウンロ―ドすることが可能です。
必須ではないが記載するのが好ましい項目
労働者名簿に記載する項目が9種類ありますが、それらのほかにも記載しておくと役立つ項目が複数存在します。主なものとして「緊急連絡先」と「社会保険や雇用保険の関連事項」が挙げられます。会社ごとに役立つ項目は異なるため、各社で記載すべき項目を検討して追加しましょう。
ただ、マイナンバーを記載する場合は注意が必要です。マイナンバーは厳重な管理が求められる情報のため、極力労働者名簿とは別ファイルで管理する必要があります。
労働者名簿は誰が書く?資格は必要?
労働者名簿は基本的に社内の労務担当部署が作成します。しかし、従業員本人以外は知らない情報も多いため、実際には従業員自身に書いてもらうケースも少なくありません。新入社員の入社時に必要な情報を記載できるよう別紙を用意して、労務担当者が情報を整理して名簿として仕上げます。
労働者名簿の記入例
労働者名簿の作成に用いる様式は定められておらず、任意の方法で作成できます。作成・編集をしやすくするために、一定の様式に統一しておきましょう。以下に労働者名簿記入の一例を紹介します。
履歴 | 退職 又は 死亡 | 男 | 性別 | |
事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。) | 年 月 日 | 生年月日 | 氏名 | |
平成十二年四月一日本社採用、平成十七年四月一日大阪支社営業部異動、平成二十二年四月一日名古屋支社営業部異動、平成二十七年本社営業課長 | 自己都合による退職 | 令和四年三月三十一日退職 | 昭和五十三年一月七日 | 名簿 太郎 |
従 事する業 務の種 類 | ||||
営業 | ||||
雇入れ年月日 | 住所 | |||
平成十二年四月一日 | 東京都新宿区西新宿 二―八―一 |
労働者名簿のテンプレート(ワード)
以下のリンクから、労働者名簿のテンプレートを無料でダウンロードできます。
実務でも活用できるような形式になっておりますので、業務に合わせて適宜変更し、活用してみてください。
◆ 労働者名簿のテンプレートをダウンロードする(フォーム入力画面に遷移します)
労働者名簿について人事労務担当者がやるべきこと
人事労務担当者には労働者名簿関連での業務が複数課せられています。
主な業務は以下のものです。
- 名簿の保管
作成後の労働者名簿を社内で厳重に保管しておきます。労働者名簿は労働基準法により5年間の保管が義務付けられており、期間内に廃棄・紛失などをすると罰金が科せられます。
- 名簿の編集
労働者名簿に記載された情報を適宜編集します。名簿の情報は極力リアルタイムの状態を反映している必要があるため、入退社や異動などが発生するたびに書き換えましょう。
- 名簿の作成
社員が入社して増えるたびに新しく名簿を作成します。会社が大きくなるほど名簿の規模が大きくなるため、管理効率を上げるために電子媒体の活用も有力な選択肢です。
労働者名簿の保管期間
作成後の労働者名簿は、一定期間社内で保管しておかなくてはなりません。労働基準法によって5年間の保管が義務付けられており、保管期間内に廃棄や紛失などをすると30万円以下の罰金が科せられます。期間の基準は退職・解雇・死亡など、自社の雇用から外れたタイミングを基準として考えます。退職したり解雇されたりした日、あるいは業務上の事故などで死亡した日を起算日として、以降5年間の名簿保管が必要です。雇用から外れた労働者の名簿はほかの名簿と分けて保管しておくと、混同を防いで管理しやすくなるでしょう。
労働者名簿を扱いやすい形で作成しよう
今回は労働者名簿の概要や書き方、扱い方などについて解説しました。労働者名簿は事業において人を雇用する際に必ず用意すべきもので、健全な会社経営のためにも重要です。
作成する数は会社が大きくなるほどに増えていき、作成後の編集も多数行う必要があります。様式に対する制限は少ないため、工夫して自社が扱いやすい形で作りましょう。
よくある質問
労働者名簿とはなんですか?
従業員を雇う際に必要な書類で、従業員の氏名・性別・履歴・雇い入れ年月日などを記載します。異動や退職などで状況が変化した場合はすぐに編集が必要です。必要事項を記載していれば、様式などは自由です。詳しくはこちらをご覧ください。
労働者名簿の作成は必須ですか?
労働基準法により作成が義務化されています。人を雇用しているのであれば、個人事業主でも作成しなくてはなりません。場合によっては提出を求められることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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