- 更新日 : 2026年10月5日
源泉徴収が必要な報酬とは?対象範囲と手取契約の計算方法を解説
源泉徴収が必要な報酬は、個人への原稿料・講演料・士業報酬など幅広く、支払先が法人の場合は原則不要です。
- 名目を変えても実態が報酬なら源泉徴収対象
- 消費税は請求書で区分されていれば除外可能
- 2027年1月から復興特別所得税率が変更予定
Q. 手取契約の場合、源泉徴収額はどう計算する?
A. 手取り額÷0.8979で支払報酬額を算出。100万円超の場合は超過分に20.42%を適用する二段階計算が必要です。
個人事業主であっても、給与等を支払っているなど源泉徴収義務者に該当する場合には、税理士や社会保険労務士など専門家へ報酬を支払う際は、条件を満たせば源泉徴収が必要になります。本記事では、源泉徴収が必要な報酬・料金の具体例と、手取契約時の源泉徴収税額の計算方法、2026年9月時点で押さえておきたい制度上の注意点を整理して解説します。
源泉徴収が必要な報酬・料金にはどのようなものがある?
源泉徴収が必要な報酬・料金の範囲は、支払う相手が個人か法人かによって異なります。個人へ支払う場合は原稿料や講演料、士業への報酬など幅広い項目が対象になり、法人へ支払う場合は原則として源泉徴収は不要です。それぞれの具体例を次の項目で確認します。
原稿料や講演料を支払うときの注意点
原稿料や講演料は、名目を変えて支払っても実態が同じであれば源泉徴収の対象になります。旅費・宿泊費の直接精算や少額の懸賞金には例外規定があるため、あわせて確認しておく必要があります。
調査費、取材費、車代といった名目で支払っても、実態が原稿料や講演料と同じであれば源泉徴収の対象です。
旅費や宿泊費は原則として報酬・料金に含まれますが、支払者が直接ホテルや旅行会社へ通常必要な範囲の金額を支払う場合は、報酬・料金に含めなくてもよいとされています。
懸賞小説・文学賞の入選者への支払いや、新聞・雑誌への投稿の謝礼金は、一人につき1回の支払いが5万円以下であれば源泉徴収の必要はありません。
試験問題の出題料や答案の採点料は、原稿料には該当しません。
参考:No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき|国税庁
弁護士や税理士など特定の資格者への報酬
弁護士、税理士、司法書士など特定の資格を持つ人への報酬・料金は、源泉徴収の対象です。謝金や調査費、日当、旅費などの名目で支払っても、実態が報酬・料金であれば同様に扱われます。
参考:No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金|国税庁
診療報酬支払基金やプロスポーツ・芸能関係者への支払い
社会保険診療報酬支払基金からの支払いや、プロスポーツ選手・芸能関係者への報酬も、源泉徴収の対象となる代表的なケースです。
- 社会保険診療報酬支払基金が、個人経営の診療所などに支払う診療報酬
- プロ野球選手などのプロスポーツ選手、モデル、保険外交員、集金人などに支払う報酬・料金
- 個人で経営する芸能プロダクションや芸能人に支払う報酬・料金
- プロのスポーツ選手などと専属契約を結ぶ際に支払う契約金
ホステスやパーティーコンパニオンへの報酬・料金の範囲
バーやキャバレーのホステス、パーティーコンパニオンなどに支払う報酬・料金も源泉徴収の対象です。報奨金や衣装代、深夜帰宅の際のタクシー代も報酬・料金に含まれる点に注意が必要です。
賞金や賞品で源泉徴収が不要になるケース
クイズ番組の獲得賞金など、広告宣伝を目的とした賞金・賞品は、1回に支払う金額が50万円以下であれば源泉徴収の対象になりません。一方、個人の馬主が受け取る競馬の賞金は同じ大区分に属しますが計算方法は異なり、「支払金額-(支払金額×20%+60万円)」の残額に10.21%を乗じて源泉徴収税額を算出します(広告宣伝の賞金のような一律50万円の非課税ラインはありません)。
法人へ報酬を支払う場合は原則として源泉徴収は不要
支払先が法人の場合、原則として源泉徴収は不要です。ただし、競馬の賞金を受け取る馬主が法人であるケースなど、一部の取引では法人への支払いであっても源泉徴収の対象となります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
算定基礎届の手続き完全ガイド
算定基礎届(定時決定)の手続きは、社会保険に加入する全従業員が対象になるため作業量が多く、個別の計算や確認事項の多い業務です。
手続きの概要や間違えやすいポイントに加え、21の具体例を用いて記入方法を解説します。
社会保険・労働保険の実務完全ガイド
これ1冊でしっかり網羅!社会保険および労働保険は、従業員の生活上・労働上のリスクに備えるための公的保険制度です。
本資料では社会保険・労働保険で発生する各種手続き方法を、入社・退職時や妊娠・出産時などのシーン別にまとめました。
健康保険・厚生年金保険 実務ハンドブック
健康保険・厚生年金保険の基本ルールをはじめ、手続きの仕方やよくあるミスへの対処方法について解説した実用的なガイドです。
年間業務スケジュール一覧も掲載しているので、ぜひご活用ください。
社会保険の手続きでよくあるミス 対処方法と防止策10選
社会保険の手続きは、ひとたびミスが生じると適切な対処方法がわからず対応に苦慮するケースが多いものです。
本資料では社会保険手続きでよくあるミスをシーン別に取り上げ、対処方法をステップにわけて解説しています。
源泉徴収を行う際に注意すべきポイントは?
報酬・料金の源泉徴収では、名目や支払方法、消費税の扱い、手取契約かどうかによって計算方法が変わります。間違えやすいポイントを整理します。
名目を変えても実態が報酬なら源泉徴収の対象になる
取材費や車代などの名目で支払っても、実態が報酬・料金と同じであれば源泉徴収が必要です。ただし、交通機関やホテルへ支払者が直接支払う通常範囲の交通費・宿泊費は、報酬・料金に含めなくてもかまいません。
金銭以外(物品)で支払う場合も源泉徴収の対象になる
現金の代わりに物品その他の経済的利益で支払った場合も、報酬・料金とみなされ源泉徴収の対象になります。
消費税を含めて源泉徴収するかどうかの判断基準
請求書上で報酬・料金額と消費税額が明確に区分されていれば、報酬・料金額のみを源泉徴収の対象にできます。区分されていない場合は、消費税を含めた金額が源泉徴収の対象です。この取扱いは、適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始後も変わっていません。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
手取契約の場合、源泉徴収税額はどう計算する?
手取契約とは、源泉徴収後の手取り額で報酬の支払額を取り決める契約です。支払報酬額が100万円以下か超えるかによって適用税率が変わるため、二段階で計算する必要があります。
| 支払報酬額の水準 | 適用税率 | 計算式 |
|---|---|---|
| 100万円以下(手取額89万7,900円以下) | 10.21% | 支払報酬額=手取り額÷0.8979 |
| 100万円超(手取額89万7,900円超) | 100万円までは10.21%、超過分は20.42% | 源泉徴収税額=(支払報酬額-1,000,000円)×20.42%+102,100円 |
STEP1 支払報酬額が100万円以下の場合
顧問税理士などへ源泉徴収後の手取り額で報酬を支払う契約をしている場合、まず税率10.21%で計算します。
例:手取り額50万円の場合
支払報酬額:500,000円÷0.8979=556,854円
源泉徴収額:56,854円
STEP2 支払報酬額が100万円を超える場合
支払報酬額が100万円を超える場合は、100万円までの部分に10.21%、超過部分に20.42%を適用する二段階税率で計算します。
例:手取り額150万円の場合
支払報酬額:(1,500,000-897,900)÷0.7958+897,900÷0.8979=756,597+1,000,000=1,756,597円
源泉徴収額:256,597円
2027年1月以降、源泉徴収の税率はどう変わる?
令和8年度税制改正により、2027年1月支払分から復興特別所得税率が2.1%から1.1%に引き下げられ、新たに防衛特別所得税(仮称)1%が創設される予定です。合計の税負担率は当面2.1%のまま変わりませんが、源泉徴収税額表の名称や内訳が変更されるため、2026年中に経理システムや計算式の更新準備を進めておくと安心です。
源泉徴収が必要な報酬を正しく把握して適切に納税しよう
源泉徴収が必要な報酬・料金の範囲は多岐にわたり、把握しにくいものです。自社が支払う報酬・料金については、対象範囲と計算方法を正しく理解し、特に手取契約の場合は源泉徴収額の計算を丁寧に行いましょう。2027年からの税率変更も見据え、早めに準備を進めることをおすすめします。
よくある質問
源泉徴収が必要な報酬を支払う相手が法人である場合の代表的なケースは?
競馬で賞金を受ける馬主が法人の場合、その賞金は源泉徴収の対象となる報酬・料金です。詳しくはこちらをご覧ください。
源泉徴収をする場合に注意することは?
実際の内容が報酬・料金であるものを取材費、車代、謝礼の名目で支払ったとしてもそれは源泉徴収の対象となること、金銭の代わりに物品で支払っても報酬・料金とみなされること、などが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
-
# 給与計算
個人事業主に給与明細は必要ない?作成場面や無料テンプレートを紹介
個人事業主に対して業務を発注した場合、給与明細は必要ありません。その代わり、報酬額を証明する書面を発行します。一方で個人事業主は、従業員を雇った場合など一定の条件に該当した場合に、…
詳しくみる -
# 給与計算
経費精算を担当する部署は?労務それとも経理?
働き方改革に伴い、経費精算の簡素化が求められています。特に、事業活動の際に従業員が一時的に立て替えた「立替経費」は払い戻すための手続きに手間や時間がかかり、大きな負担となっているの…
詳しくみる -
# 給与計算
有休はいつ増える?増え方の条件や日数、パートアルバイトの場合も解説
有休(年次有給休暇)は、入社後6ヶ月継続勤務し、出勤率が8割以上であれば付与されます。 その後は勤続年数に応じて増えていき、最大で年間20日付与されます。 パートやアルバイトの方も…
詳しくみる -
# 給与計算
所得税の寄付金控除の範囲とは?対象団体・計算方法・手続きを解説
寄付金控除の対象範囲は? 所得税の寄付金控除は、国・地方公共団体、特定公益増進法人、認定NPO法人など、法律で定められた「特定寄附金」に該当する寄付が対象です。団体の種類だけでなく…
詳しくみる -
# 給与計算
日払いバイトにも給与明細が必要?テンプレートをもとに書き方も解説
給与明細は、日払いバイトにも必要です。アルバイトと正社員は給与形態も異なるため、給与明細の発行の必要性について混乱することも珍しくありません。給与トラブルを防ぐためにも、日払いバイ…
詳しくみる -
# 給与計算
給与振込同意書とは?書き方・記入例やどこでもらえるかを解説【無料テンプレ付き】
給与振込同意書とは、会社が従業員の銀行口座に給与を振り込む際、従業員がその方法に同意したことを示す書類です。 給与振り込みに関する同意を得ることで、法令遵守やトラブル回避が可能です…
詳しくみる




