• 作成日 : 2016年11月17日
  • 更新日 : 2020年9月17日

中小企業で退職金を準備する方法

退職金を支払うためには、多額の資金を準備しなければなりません。そのため、中小企業では単独で退職金制度をもつことが難しいものです。

そこで、中小企業の従業員や小規模企業の経営者の退職金を準備するための共済制度があります。

中小企業退職金共済制度は従業員向けの制度

中小企業退職金共済制度(中退共)は、中小企業の従業員のための退職金制度です。事業主が掛金を払い込むことで、従業員の退職時に退職金が支払われます。

掛金は事業主が全額負担します。どのような事情があっても、従業員に負担させることはできません。

退職金は中退共本部から退職した従業員に直接支払われます。事業主が代わりに受け取ることはできません。

退職金は退職時に一括払いが原則ですが、退職日の年齢が60歳以上で一定の条件を満たせば、全額または一部を分割払いにすることもできます。

中退共の詳しい内容や手続き方法については、下記のサイトを参照してください。

中小企業退職金共済事業本部 トップページ
一般の中小企業退職金共済制度のしくみ|厚生労働省

掛金の一部が助成される

中退共は、掛金の一部について助成が受けられる点も大きなメリットです。

新規加入助成
初めて中退共に加入する事業主は、国から新規加入助成が受けられます。

助成を受けられる期間は加入後4か月目から1年間で、助成される金額は、加入している従業員の掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)です。

短時間労働者の掛金月額については、助成額が300円から500円上乗せされます。

ただし、次にあてはまる場合は新規加入助成が受けられません。

・社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している事業主
・同居の親族のみを雇用する事業主
厚生年金基金から資産の移換を申し出た事業主

月額変更助成
18,000円以下の掛金月額を増額する場合は、国から月額変更助成が受けられます。

助成を受けられる期間は増額する月から1年間で、助成される金額は、掛金月額を増額した分の3分の1です。

新規加入助成を受けている間に増額する場合は、新規加入助成と月額変更助成の両方が受けられます。

ただし、次にあてはまる場合は月額変更助成が受けられません。

・20,000円以上の掛金月額から増額する場合
・同居の親族のみを雇用する事業主

国からの助成に加えて、一部の県や市区町村では独自に掛金補助を行っています。補助の条件や金額などは、自治体ごとに異なります。

補助を行っている自治体は、下記のサイトに掲載されています。

中退共 助成自治体リンク集
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/link/link02.html

中退共に加入できる事業者は?

中退共に加入できる事業者は、次の表のとおり、業種ごとに規模の上限が定められています。

中退共に加入できる事業者

業種下記のいずれかを満たすこと
資本金
または出資金
常時雇用する
従業員の数
①一般業種(製造業、建設業など)3 億円以下300 人以下
②卸売業1 億円以下100 人以下
③サービス業5,000 万円以下100 人以下
④小売業5,000 万円以下50 人以下

(出典:加入条件|一般の中小企業退職金共済制度のしくみ|厚生労働省

原則として、従業員全員の同意を得たうえで加入します。ただし、期間雇用、試用期間中、休職中の従業員などは除きます。

事業主や小規模企業共済制度に加入している人は加入できません。また、法人の役員も加入できませんが、使用人兼務役員として賃金の支払いを受けている場合は加入できます。

同居の親族のみを雇用する事業所でも加入できますが、加入手続きに必要な書類が追加されるほか、掛金助成の対象にならないなどの制約があります。

小規模企業共済は経営者向けの制度

中退共が中小企業の従業員のための退職金制度であるのに対し、小規模企業共済は小規模企業の経営者のための退職金制度と位置づけられます。

小規模企業共済に加入できるのは、一定の要件を満たす役員または個人事業主です。個人事業主に共同経営者がいる場合は、2人まで加入することができます。

掛金は1,000円から7万円まで500円単位で設定でき、口座振替で払い込みます。

税務上、掛金は個人の所得から全額控除できます。事業上の損金または必要経費に算入することはできません。

受け取れる退職金の額の一例は次の表のとおりです。

共済金Aは主に事業の廃業や法人の解散の場合など、共済金Bは主に老齢給付の場合など、準共済金は主に事業譲渡や法人成りで経営から退いた場合などに適用されます。

なお、細かい要件は、退職金を受け取る人が個人事業主、会社の役員、共同経営者のいずれであるかによって異なります。

受け取れる退職金の額の一例
(例)掛金月額1万円の場合(平成16年4月以降に加入の場合)

掛金納付月数掛金残高共済金 A共済金 B準共済金
5 年600,000 円621,400 円614,600 円600,000 円
10 年1,200,000 円1,290,600 円1,260,800 円1,200,000 円
15 年1,800,000 円2,011,000 円1,940,400 円1,800,000 円
20 年2,400,000 円2,786,400 円2,658,800 円2,419,500 円
30 年3,600,000 円4,348,000 円4,211,800 円3,832,740 円

(出典:共済金(解約手当金)について|中小機構

事情があって解約する場合や法人成りをして引き続き経営に携わる場合は解約扱いとなり、解約手当金が支払われます。ただし、掛金納付期間が20年以下であれば、解約手当金は払い込んだ掛金の合計額を下回ります。

小規模企業共済の詳しい内容や手続き方法については、下記のサイトを参照してください。

中小機構:小規模企業共済

まとめ

ここまで、中小企業退職金共済制度(中退共)と小規模企業共済制度について概要をご紹介しました。

これらの制度を使えば、中小企業でも退職金を準備することができます。さらに、中退共では国や自治体からの助成も受けられます。

公的な制度を上手に活用して、福利厚生の充実を図ってはいかがでしょうか。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加地 延行 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
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