- 更新日 : 2025年1月17日
所得税の支払い方法は?納税の種類や確定申告期限を過ぎた場合を解説
所得税の支払い方法は7種類あり、自身のライフスタイルに合わせて選択するのが大切です。
また所得税には納付期限が設けられており、期日までに支払わなかった場合、延滞税などのペナルティが課せられる可能性があります。
本記事では、支払い方法や納付期限、期日までに支払えなかった場合に活用できる制度について解説します。
目次
所得税の支払い方法は?
所得税は次章で解説する、7つの方法から自分にあった方法を選んで支払えます。
金融機関の口座振替(口座引落し)
「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を、e-Taxまたは、税務署か金融機関の窓口に提出しておくことで、口座振替で所得税を支払えます。
引っ越しや移転等により所轄税務署がわかったり、引き落とし口座を変更したりしたい場合は、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」の提出が必要です。引き続き口座振替を希望するには、「振替納税を引き続き希望する。」欄の「はい」に〇をつけましょう。
ただし確定申告のタイミングで納税地の変更をするのであれば、確定申告書の第一表左上にある「振替継続希望」に〇とつけておくと、変更に関する届出書を提出せずとも、引き続き口座振替が継続されます。
口座振替の手続きをしておくことで支払い忘れを防止でき、自動的に次回以降も振替納税が可能です。ただし、期日に残高不足による引き落としがされなかった場合、法定納期限の翌日より納付する日までの期間に延滞税が発生します。
余計な税金を納めないためにも、期日前に預金残高不足にならないように、確認しておきましょう。
ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
e-Taxの利用開始手続きおよび、ダイレクト納付口座の届出等を税務署に提出しておけば、e-Taxから口座引き落としによる納付ができます。
利用開始方法は以下のとおりです。
- e-Taxの利用開始手続き
- 納税用確認番号等の登録
- ダイレクト納付利用届出書のオンラインまたは書面で所轄税務署へ提出
- ダイレクト納付利用可能のお知らせの確認
ダイレクト納付利用の流れは、次のとおりになります。
- ダイレクト納付したい申告データまたは納付情報データを作成、送信
- 納付区分番号通知の画面で「ダイレクト納付」をクリック
- 「今すぐ納付を行う。」または「納付日を指定して納付を行う。」を選択
- 引き落とし口座をクリック
- 確認メッセージの表示で「はい」をクリック
- メッセージボックスに格納されている完了通知の詳細から、納付結果を確認
「納付日を指定して納付を行う。」を選択した場合は、完了通知で日付に誤りがないか確認しましょう。
e-Tax利用者にとってダイレクト納付は、申告書の作成から提出、納付までを一括で行えるので便利です。
ただし、個人の方は届出書をオンラインでの提出が可能ですが、法人は書面で所轄の税務署に提出をなっていますので、ご注意ください。
インターネットバンキングやATMで支払い
所得税は、インターネットバンキングやATMでも簡単に納付ができます。
インターネットバンキングとは、パソコンやスマホなどのデバイスを使って、オンラインで金融取引をするサービスです。インターネットバンキングでの支払いを希望する場合は、利用できる金融機関で口座開設および、利用手続きを事前に行っておきましょう。
インターネットバンキングやATMは、次の方法で支払えます。なおATMでの支払いは、「Pay-easy(ペイジー)」に対応している金融機関のみです。
- e-Taxの利用開始手続き
- 納税用確認番号等の登録
- ネットバンキングで納付したい申告データまたは納付情報データを作成、送信
- メッセージボックスから納税区分番号を確認
- インターネットバンキングログイン画面またはATMのPay-easy画面から「税金・料金振込」等のボタンを押す
- 収納機関番号「00200」を入力
- 「利用者識別番号・納税用確認番号・納付区分番号」を入力
- 内容を確認して振込
納付区分番号通知の画面で「インターネットバンキング」をクリックして、金融機関を選択し、金融機関のホームページ内の指示にしたがって納付手続きもできます。
普段からインターネットバンキング利用者または、最寄りにPay-easyが利用できる金融機関がある場合は、キャッシュレスでの支払いが可能なので、手元に現金をわざわざ用意する必要がありません。
一方で、インターネットバンキングやPay-easy対応の金融機関しか利用できないため、自分のいつも使っている口座が使えないケースがあります。
クレジットカードで支払い
専用サイトへの情報入力によって、クレジットカードで所得税を支払えます。
利用方法は、「国税クレジットカードお支払いサイト」と呼ばれる、国税庁長官が指定した納付受託者が運営するサイトにアクセスして納付手続きをします。アクセス方法は以下の3つです。
- e-Taxの電子申告・徴収高計算書データの送信または納付情報登録依頼した後に、メッセージボックスに格納される受信通知からアクセス
- 確定申告書作成コーナーで納税額のある所得税または個人消費税の申告書を書面提出した場合に表示される、納付方法の案内画面からアクセス
- 国税庁のホームページから「国税クレジットカードお支払サイト」をクリックしてアクセス
サイトでは、以下の情報を入力します。
- 氏名、住所等の利用者情報の入力
- 納付内容を入力
- クレジットカード情報の入力
手続きが完了するとクレジットカード決済がされ、納付完了です。
利用するごとにポイントが還元されるクレジットカードでは、所得税の支払いによってポイントを貯められます。
ただし、使えるクレジットカードが決まっていたり、納付税額ごとに決済手数料がかかったりする点に、留意が必要です。
スマホアプリで支払い
スマホアプリでの支払いとは、国税庁長官が指定した納付受託者が運営するスマホ決済専用のWebサイトにアクセスして、利用するPay払いを選んでサイト内で納付する方法です。
利用できるPay払いは以下の6種類から選択できます。
- PayPay
- d払い
- au PAY
- メルペイ
- Amazon Pay
- R Pay
パソコンまたはスマホで、e-Taxの受信通知から専用サイトへアクセスして、利用するpay払いを選択して決済すると、完了です。
普段からPay払いを利用している人であれば、サイトにアクセスするだけで納付が完了するので、手軽で便利に感じるでしょう。
ただし、スマホアプリで支払えるのは30万円までと限度額が決まっているため、納税額が多い人は、別の方法で納付方法を利用してください。
QRコードによるコンビニ振込
自宅等で支払いのために作成して印刷したQRコードをコンビニにもって行き、専用の機械で読み取らせて納付書を出力することで、レジで所得税の支払いができます。
QRコードの作成方法は次のとおりです。
- 国税庁ホームページ「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」で必要情報を入力して書面で出力
- 確定申告書等作成コーナーにて、申告書作成と合わせてQRコードの作成をして書面で出力
QRコードによる支払いができるコンビニは次の2つになります。
- ローソン、ナチュラルローソン、ミニストップ(いずれも「Loppi」端末設置店舗のみ)
- ファミリーマート(「マルチコピー機」端末設置店舗のみ)
持参したQRコードをLoppiまたはマルチコピー機で読み取り、出力された納付書で支払いをすれば完了です。
QRコードを作成して印刷しておけば、24時間いつでもコンビニで買い物するついでに納付ができます。
しかし納付できる限度額は30万円であり、さらにクレジットカードや電子マネーが利用できないため、手元に現金を用意しなくてはいけません。
金融機関や税務署の窓口で現金支払い
必要事項を記載した納付書を金融機関や税務署窓口に持参すれば、現金でのみ所得税の支払いができます。
納付書は金融機関や税務署に用意されており、記載内容は国税庁HPに記載例があるので、参考にして準備しておきましょう。
窓口での支払いは、自宅に届いた納付書をもって行くだけなので、インターネット操作やキャッシュレス決済になれていない方でも、安心して支払える方法になっています。
ただし、金融機関や税務署の窓口対応可能時間でしか納付ができないので、平日行くのが難しい人は、別の方法を検討しましょう。
所得税の支払い方法の選び方
所得税の支払い方法は複数あるため、自分のライフスタイルに合わせて選択するのが一番です。
以下では、手数料の有無やそれぞれの支払い方法がおすすめの人を一覧にしています。
支払い方法 | 手数料の有無や利用可能額 | おすすめの人 |
---|---|---|
振替納税 |
| 支払い全般を口座振替にしており、支払い方法を統一したい人 手続きの手間を省きたい人 |
ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替) |
| e-Tax内で、申告書の作成から提出、納付までを一括で行いたい人 |
インターネットバンキングやATMで納付 |
| Pay-easyでの支払いが多い人や、よくATMに行くことが多いので、一緒に支払いを済ませたい人 |
クレジットカードで納付 |
| クレジットカードでのポイントを普段から貯めている人 |
スマートフォンアプリで納付 |
| 日常的にPay払いでの支払いが多い人 |
QRコードによりコンビニで納付 |
| 現金で納付したいけど、金融機関や税務署の窓口対応可能時間帯に行くのが難しい人 |
金融機関や税務署窓口で納付書による現金納付 |
| シンプルでわかりやすい方法で納付したい人 |
たとえば毎年の納税の手間を省略したい人は、最初に一度手続きすれば継続利用できる、口座振替やクレジットカードの利用がおすすめです。
さらにクレジットカード支払いであれば、会計ソフトと連携できるものが多いので、支払い履歴の自動取り込み機能によって、仕訳作業がスムーズにできます。
納付する所得税額が30万円以下であれば、コンビニやスマホアプリ決済が手軽で便利です。
このように、自身のライフスタイルや支払う額によって最適な納付方法を選択してみましょう。
所得税の支払いの納付期限
個人事業主は、前年度の所得が一定額以上ある場合は予定納付をしたあとに、確定申告によって、所得税額を確定させるため、源泉所得税とは異なったスケジュールで納付期限が定められています。
- 予定納税 第1期分→7月中
- 予定納税 第2期分→11月中
- 確定所得税→3月15日
なお、支払い方法で口座振替を選択した場合、令和6年分の申告分の所得税の引落日は、4月23日です。申告ギリギリで納税額が確定し、想像よりも多くなってしまった場合などは、口座振替にしておくとほかの支払い方法に比べて1ヶ月ほど時間に余裕が生まれます。
納付期限までに支払いできなかった場合
事業形態に関わらず所得税を納付期限までに支払いできなかった場合は、納付すべき日から遅れた日数に応じて「延滞税」が発生します。
納付が遅れるとそれだけ支払う金額が大きくなるので、できるだけ早めに対処しましょう。
所得税の支払いが難しい場合
所得税の納付期限は前述のとおり決められていますが、どうしても期日までに支払いが難しい場合には、「猶予制度」もしくは「延納制度」が用意されています。
猶予制度
猶予制度とは、特定の事情がある場合、申請による許可を得ることで原則1年以内に限り納税が猶予される制度です。申請対象となる条件については、国税の納税の猶予制度FAQを参考にしてください。
制度を受けられるのは、確定申告分以外にも中間申告分や予定納税、修正申告分についても対象になります。
制度の申請は、納付期限から6ヶ月以内に申請する必要があり、猶予制度の許可された場合は申請日より延滞税が軽減または免除されます。
ただし納付期限を過ぎてからの申請は、通常の支払い期日を超えてしまった場合と同様に、延滞税がかかってしまうので、申請日に注意しましょう。
申請方法は以下の3種類があります。
- e-Taxによる電子申請
- e-Taxで申請書類を作成して書面を税務署へ郵送または持参
- 国税庁HPで様式をダウンロード、作成して税務署へ郵送または持参
納税が認められると、税務署より猶予許可通知書が送付されるので、猶予税額や猶予期間を確認しておきましょう。
延納制度
延納制度とは、4月15日までに納付予定額の2分の1以上を納付していれば、残額の納付を同年5月31日まで延長できる制度です。
残額分に関しては、年7.3%か特例基準割合のいずれか低い割合で利子税がかかりますが、必要経費にできます。一方で、延納の手続きをせずに納付期限を過ぎてしまうと、延滞税がかかり、利子税よりも高く経費にできません。
期日までに満額納付するのが難しいとわかっている場合は、無駄な税金を払わないために延納の手続きをするようにしましょう。
延納の手続きは、確定申告書の「延納届出額」欄に、「納める税金」欄に記載されている金額の2分の1以下の金額を記載して提出します。
所得税の支払いは無理のない納税方法を検討しよう
所得税は納付期限が決められており、期限内に支払わないと延滞税が発生し、税金を本来の金額より多く払わなければいけなくなります。
納税方法によっては、事前準備が必要な方法があるので、早めに納税方法を決めて計画的に進めましょう。
所得税を一度ですべて支払うことが難しい場合は、猶予制度や延納制度の活用を検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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