• 更新日 : 2022年10月11日

労災保険に加入していないとどうなる?未加入のリスクや責任

労災保険は、常勤やパート・アルバイトなど、労働者の業務上あるいは通勤による傷病等に対して必要な保険給付を行い、保険料は会社が負担します。

会社が労災保険の加入手続きを行わなかった場合、罰則はあるのか?また、会社が労災保険に加入していなかった場合、労働者は保険給付を受けることができないのか?これらについて解説していきます。

労災保険の加入条件

労災保険の加入条件については、常勤、パート・アルバイト、派遣社員等の名称や雇用形態に関係なく、労働者を1人でも雇用している事業場については加入義務があります。

ただし、以下の事業場または労働者に関しては、他の法律で補償されることになっているので労災保険の加入対象にはなりません。

  • 官公署の事業のうち非現業のもの
  • 国の直営事業

また、個人事業主などの労働者でない人は本来、労災保険の加入対象ではありませんが、「特別加入」という制度を利用して労災保険に加入することができます。

特別加入制度に加入できる人としては、下記のような人がいます。

  • 中小事業主ならびにその家族従事者など
  • 一人親方ならびにその他の自営業者など
  • 海外派遣者

労災保険の未加入はなぜ起こる?

労災保険が未加入になってしまうケースについて、起こりうるケースを見ていきます。

まず、故意に未加入のままにしている場合が考えられます。労働局の職員や労働基準監督署の監督官などの行政庁から勧奨や指導を受けていたにもかかわらず、そのままにして労災保険に加入しない会社がそのケースにあたります。

次に、重大な過失の場合が考えられます。労働局の職員や労働基準監督署の監督官からの勧奨や指導はなかったが、労働者を初めて雇用してから1年以上が経過しているにもかかわらず労災保険に加入していなかった会社が該当します。

その他にも、以下などが労災保険に未加入になる理由として考えられます。

  • 労災保険の加入手続きの必要性を認識していなかった
  • 労災保険料を負担したくなかった
  • 日常業務に追われて手続きを後回しにしてしまっていた

労災保険に加入していない場合に罰則はある?

行政庁から成立手続を行うように指導を受けたにもかかわらず、手続を行わなかった会社に対しては、行政庁が職権による成立手続ならびに労働保険料の認定決定を行います。認定決定の際は、労働保険料を遡って徴収するほか、併せて追徴金を徴収することになります。

また、会社が故意または重大な過失により労災保険の「保険関係成立届」を提出していなかった期間中に労働災害が生じ、労災保険の保険給付を行った場合には以下のようになります。

  • 未加入だったとして会社から遡って労働保険料(併せて追徴金も)を徴収する
  • 労災保険給付に要した費用の全部または一部を徴収する

罰則などについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

労災保険に未加入で事故を起こした場合

労災保険に入っていない従業員が業務で事故に遭ったらどうなるのでしょうか。実は、労災事故が発生した場合には、労災に未加入であっても労働者は労災の給付を受けられます。

なぜかというと、人を雇えば、労災保険の強制適用事業所になるので、保険料が未納であっても、労働者は保護され、労災申請ができるのです。

労災保険未加入の場合であっても労災申請ができるのであれば、とりあえず未加入でよいのではないかと思われるかもしれませんが、未加入の場合、当然のことながら未払いの保険料が遡って徴収されます。

ただし、最大2年間を限度とします。さらに、労働保険料額の10%の追徴金が課せられます。また、故意または重大な過失による未加入であれば、労災給付金の全部または一部が費用徴収されることになるのです。

故意に労災保険加入の手続をとらなかった場合

故意に労災保険の加入手続をとらなかった場合とは、労働局職員あるいは労働基準監督署の監督官からの勧奨・指導を受けていたにもかかわらず、労災保険に加入をしていない場合をいいます。

この場合、事業主の故意による未加入と判断し、労災給付金額の全額を費用徴収することになります。

重大な過失により加入の手続をとらなかった場合

重大な過失により加入手続をとらなかった場合とは、労働局職員あるいは労働基準監督署の監督官から加入勧奨・指導がないまま、労働保険の適用事業となってから(労働者を雇用してから)1年以上経過している場合をいいます。

この場合、事業主の重大な過失と判断し、労災保険給付の40%を費用徴収することとなります。

下記の例の場合、具体的に保険料・追徴金等の徴収額はいくらになるかを見ていきましょう。

【例】3年前から従業員を雇用しているにも関わらず、労災保険未加入でいたところ、従業員のA(給付基礎日額※15,000円)が、作業を行っていた際、機械に挟まれて死亡した。年間の賃金総額は1億円で保険料率は1000分の7だった。遺族(補償)年金の受給要件を満たす遺族がいなかったため、遺族補償一時金が支給された。

※給付基礎日額=原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額

【未払保険料、追徴金の徴収額】
2年間遡って徴収されるため、計算式は次のようになります。
① 労災保険料=140万円(1億円×1000分の7×2年)
② 追徴金=14万円(140万円×10%)

【故意に労災保険加入の手続をとらなかった場合】
遺族補償一時金の額=1,500万円(給付基礎日額15,000円×1,000日分)
③ 労災給付費用徴収額=1,500万円(1,500万円× 100%)
合計(①+②+③)=1,654万円(140万+14万+1,500万)

【重大な過失により加入の手続をとらなかった場合】
遺族補償一時金の額=1,500万円(給付基礎日額15,000円×1,000日分)
④ 労災給付費用徴収額=600万円(1,500万円× 40%)
合計(①+②+④)=754万円(140万+14万+600万)

このように、労災保険に未加入で事故が発生すると莫大な金額が請求される可能性があるわけです。

労災保険の未加入は注意が必要です

今回は、労災保険の加入条件を確認し、未加入になってしまうケースや未加入中に労災事故が起きた場合についての罰則などについても見てきました。

労災保険の加入を怠っていた場合、会社は遡りで莫大な金額の未払保険料や追徴金、給付金の費用徴収がかかってきます。

会社の経営にもかかわる事態になりかねませんので、労災保険の加入状況や保険料納付状況について確認するようにしましょう。

よくある質問

労災保険への加入義務となる対象について教えてください。

労災保険の加入義務の対象の有無については、常勤、パート・アルバイト、派遣社員等の名称や雇用形態の違いにかかわらず、労働者を1人でも雇用している事業場については労災保険の加入義務が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。

労災保険への未加入が生じてしまうケースには、どういったものがありますか?

行政庁の勧奨や指導があったにもかかわらず、故意に労災保険に加入しなかったケースや、勧奨や指導はなかったが、労働者を初めて雇用してから労災保険に加入しないまま1年以上が経過してしまったケースがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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