2020年度の労働保険の年度更新は期間延長!やり方と気を付けることを解説

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従業員を雇用している事業所が年に1回必ず行わなければならないのが、労働保険の年度更新です。年度更新の際には、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を計算しなければならず、手間がかかります。期限の直前にあわてないよう、手続きのやり方を知っておきましょう。
本記事では労働保険料の計算方法や年度更新手続きの流れ、注意点などを説明します。

労働保険とは

従業員を雇用している場合、労働保険への加入義務が生じます。まずは労働保険の概要を知っておきましょう。

労災保険と雇用保険のこと

労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の総称です。
労働者を1人でも雇う場合には、労働保険に加入する義務があります。








労災保険通勤中や勤務に起因するケガや病気、死亡などに対して保険給付を行うもの。労働者を1人以上雇う場合に対象となる。
雇用保険労働者が失業した際などに給付を行うもの。
一定の条件(労働時間が週20時間以上など)を満たす労働者がいる場合に対象となる。

労働保険の保険料率

労働保険料は、労働者へ年間に支払う賃金総額に保険料率をかけて算出します。

労災保険の保険料率は事業の種類により1,000分の2.5から1,000分の88に分かれており、危険度の高い業種ほど高くなっています。労災保険料は、全額事業主が負担します。

雇用保険料は事業主と労働者(被保険者)の両方が負担する形になっており、事業の種類によって保険料率とそれぞれの負担割合が定められています。

雇用保険料率事業主負担被保険者負担
一般の事業9/1,0006/1,0003/1,000
農林水産・清酒製造の事業11/1,0007/1,0004/1,000
建設の事業12/1,0008/1,0004/1,000

労働保険の年度更新の際には、保険料と合わせて一般拠出金も納付する必要があります。一般拠出金は石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てるために全事業主が負担するもので、一般拠出金率は1000分の0.02となっています。

労働保険の加入手続き

労災保険については労働基準監督署で、雇用保険についてはハローワークで手続きを行います。加入時にはその年度分の概算保険料の納付も必要です。

一元適用事業(農林漁業・建設業以外)では労働保険料の申告・納付をまとめて行いますが、二元適用事業(農林漁業・建設業)は労災保険料と雇用保険料を別個に申告・納付します。

労働保険は年度更新の手続きが必要

労働保険では、年に1回、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を申告する年度更新という手続きを行い、保険料を納付します。

労働保険の年度更新とは?

労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までを1年間とし、1年ごとに計算します。加入した年の労働保険料は加入時に納付しますが、翌年度以降の労働保険料は毎年申告・納付する必要があります。

労働保険料は賃金総額によって変わるので、年度末にならないと確定しません。納付する保険料はあくまで概算保険料なので、年度末に保険料が確定した後、精算する手続きが必要です。

前年度の保険料を精算し、今年度の概算保険料を納付するための手続きが、労働保険の年度更新です。労働保険に加入している限り、毎年更新手続きをしなければなりません。

年度更新の期間

労働保険の年度更新は、毎年6月1日から7月10日までの間に行います。なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度の年度更新の期間は通常よりも延長され、6月1日から8月31日までとなっています。

手続きが遅れると追徴金を課される可能性も

期限までに年度更新の手続きをしなかった場合、政府が保険料・拠出金の額を決定し、確定保険料に対し10%の追徴金も合わせて事業主に請求します。概算保険料に対する追徴金はありません。

労働保険の年度更新手続きの流れ

労働保険の年度更新の期間は、通常は40日ほどです。期限に遅れないようにスムーズに手続きを完了できるよう、大まかな流れを知っておきましょう。

  1. 申告関係書類が届く
  2. 年度更新に必要な書類は、毎年5月下旬頃、労働局から事業所宛に届きます。送られてくるのは、次のような書類です。

    ・労働保険 概算・増加概算・確定保険料 石綿健康被害救済法 一般拠出金申告書
    ・確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表
    ・申告書の書き方
    ・保険料率表

    申告書等が届いたら、印字されている会社名などに間違いがないかを確認しておきましょう。


  3. 賃金集計表の作成
  4. 賃金集計表は、保険料計算の基礎となる賃金総額を集計するために使います。申告書の基礎となるものですが、提出する必要はありませんので、事業所で保管しておきましょう。

    賃金集計表を作成する際には、厚生労働省から提供されている「年度更新申告書計算支援ツール」を活用すると便利です。Excelフォーマットに入力していくだけで自動計算され、申告書記入イメージも見ることができます。


  5. 申告書の記入
  6. 賃金集計表をもとに申告書に労災保険、雇用保険それぞれの対象賃金等を転記します。申告書の上段に前年度の確定保険料、下段には今年度の概算保険料を記入し、「期別納付額」欄で結果を集計し今期の労働保険料納付額を算出します。


  7. 申告書の提出・保険料の納付
  8. 申告書を提出し、保険料を納付します。保険料は一括納付が原則ですが、概算保険料が40万円以上の場合には3回の分割納付が可能です。

    申告書の提出や保険料の納付ができるのは、以下のようなところです。

    (1) 金融機関

    銀行、信用金庫、郵便局等の金融機関で、申告書の提出と保険料の納付をまとめて行うことができます。金融機関で申告書の提出だけを行うことはできません。

    (2) 都道府県労働局または労働基準監督署

    所轄の労働局または労働基準監督署の窓口で、申告書の提出・納付ができます。申告書だけ提出し、納付は金融機関で行ってもかまいません。口座振替を利用する場合には、申告書は労働局または労働基準監督署に提出が必要です。

    (3) 社会保険・労働保険徴収事務センター

    申告書の提出はできますが、保険料の納付はできません。


労働保険の年度更新は電子申請も可能

労働保険の年度更新は、インターネットを利用して電子申請することも可能です。

電子申請のメリット

電子申請をすれば、申告書を提出するためにどこかへ出向く必要がありません。年度更新を電子申請した場合には、保険料の納付も電子納付により行うことができます。自宅やオフィスから24時間いつでも手続きできるので、申請・納付先への移動時間の節約になります。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請は、e-Gov(電子政府の総合窓口)を利用します。必要なものは次のとおりです。

  • パソコン
  • e-Govの動作環境を満たしたパソコンとブラウザ、e-Gov電子申請アプリケーションのインストールが必要です。

  • 電子証明書
  • 事前に取得が必要です。マイナンバーカードに搭載された電子証明書を利用する場合には、ICカードリーダライタも用意しましょう。

動作環境等について、詳しくはe-Govのホームページでご確認ください。

電子申請の流れ

電子申請の流れは、大まかには次のとおりです。

  1. e-Gov電子申請手続検索で「労働保険年度更新申告」を検索
  2. 申請書入力画面で必要事項を入力し、電子証明書を添付したデータをe-Govに保管
  3. 保管した申請データを送信
  4. 申請データの到達を確認後、インターネットバンキングで保険料を電子納付

電子申請の詳しいやり方は、厚生労働省の操作マニュアルで確認できます。

市販の電子申請ソフトを使う方法も

e-Govの外部連携APIに対応した市販の電子申請ソフトや労務管理システムを使って、電子申請を行うことも可能です。

労働保険の年度更新の注意点

労働保険の年度更新をこれから手続きする場合、特に注意しておくべき点を知っておきましょう。

賃金に含まれるものを間違えない

労働保険料は賃金総額を基準にして計算します。賃金には、給与、手当、賞与など名称にかかわらず、労働に対して支払われるすべてのものが含まれます。

賃金に含まれないものは、役員報酬、傷病手当金、災害見舞金、解雇予告手当などです。出張旅費や宿泊費も賃金には含まれません。

なお、給与については支給日ではなく締日を基準にします。例えば、3月末締4月払いの給与は3月分として計算する必要があります。

65歳以上の高年齢者の雇用保険料免除は終了

65歳以上の高年齢労働者には、以前は雇用保険の適用がありませんでした。2017年から65歳以上も雇用保険の適用対象になっていますが、経過措置として2020年3月31日までの期間、高年齢労働者の雇用保険料は免除されていました。

ですが高年齢労働者の雇用保険料免除の期間は終了し、2020年4月1日以降は雇用保険料の納付が必要です。労働保険の年度更新の際には、65歳以上の従業員も雇用保険の対象に含めなければなりませんから、注意しておきましょう。

まとめ

労働保険の年度更新の際には、申告書を作成した上で、金融機関や労働基準監督署へ提出に行かなければなりません。2020年度は新型コロナウイルスの影響で申告期間が延長されていますが、役所など混雑している場所に出向くのは心配な方も多いと思います。
労働保険の年度更新は、インターネットを使って電子申請もできます。毎年必ず行わなければならない手続きですから、効率良く終わらせるよう工夫しましょう。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:西岡 秀泰(社会保険労務士/2級FP技能士)

生命保険会社に25年勤務した後、社会保険労務士事務所を開業。現在は、社会保険労務士として活動するとともに、社労士会からの委託を受け日本年金機構・年金事務所で年金相談員として勤務。労働者を支える労働保険・社会保険についてわかりやすく解説していきたいと考えています。



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