• 作成日 : 2016年6月3日
  • 更新日 : 2018年9月26日
  • 雇用保険

雇用契約を民法と労働契約法で比較してみました

雇用契約を民法と労働契約法で比較してみました

雇用契約を民法と労働契約法で比較してみました

雇用契約とは、民法第623条で定められている役務型契約の1つです。民法で定められている雇用契約は諾成契約といって、双方の合意があれば必ずしも書面で契約を交わす必要はないとされています。

しかし労働形態が多様化されるに伴い労使間のパワーバランスが崩れ始め、雇用契約上の紛争が増加することとなりました。そこで労働者保護や紛争防止を目的とする「労働契約法」が平成20年に施行されることになりました。

ここでは雇用契約を民法と労働契約法のそれぞれから眺め、相違点を明らかにしたいと思います。

雇用契約の民法上の解釈

雇用契約は民法第623条で

「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」

と定められており、「労務に服すること」と「報酬を与えること」に主眼が置かれています。

民法のもう少し大きな視点から雇用契約を捉えると、「役務型契約」に分類されていることがわかります。役務(えきむ)型契約とはサービスを提供することであり、雇用契約では労働というサービスを提供することを意味します。

役務型契約には他にも「請負契約」や「委任契約」などがあります。請負契約の最終的な目的は「仕事を完成させること」にあるため、労働というサービスそのものを提供する雇用契約の考え方とは異なる意味を持ちます(民法第632条)。

また、委任契約は信頼関係が元になっているため、特別な理由がなくても両者とも自由に契約解除することができるのが特徴です(民法第651条)。

役務型契約は、売買型契約や賃貸借契約と比較すると対象物が介在せず、サービスの提供に主眼が置かれています。そのため雇用契約は、労働というサービスを提供し、それに見合った報酬を受け取ることが前提となっているわけです。

しかしながら民法上の雇用契約は諾成契約であるため、書面締結することを必ずしも要件としていません。諾成契約とは、お互いの意思さえあれば成立する契約のことをいいます。

請負契約も委任契約も諾成契約ですが、請負契約は「仕事の完成」と「報酬支払い」が対等な関係にあり、委任契約は双方から契約解除の申し入れをできるため、パワーバランスは均衡していると考えることができますが、雇用契約は「労務に服す」という契約の性質上、労働者の立場が弱くなってしまいがちです。

そのため、従来は民法上の「雇用契約」で労使間のトラブルがあった場合、罰則規定を定めた「労働基準法」によって解決を図る方法をとるしかありませんでした。しかし、雇用契約に関するトラブルが起こってしまってから解決する方法よりも、未然に紛争を防ぐ方法のほうが合理的であるとし、「労働契約法」が施行されることになったのです。

雇用契約の労働契約法上の解釈

これまで前述してきた経緯のとおり、民法や労働基準法ではカバーしきれない内容を法規定したものが「労働契約法」となります。

労働契約法は

「この法律は(中略)労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。」

と第1条で定められているように、労働者を保護し、労使間のパワーバランスを均衡させることが目的となっています。

労働契約法上の雇用契約は「労働契約」とも呼ばれ、使用者と労働者の関係が民法よりも明確に規定されるだけでなく、書面締結することも定められることとなりました(労働契約法第4条第2項)。

また第5条では

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

とし、民法では具体的に定めなくても労働者を危険から保護する義務があるとされていた内容を明らかにしています。

「労働者の生命や身体等の安全」には、心身の健康も含まれている点で、社会的情勢の変化を反映したものであると解釈することができます。

第6条から第16条で定められている「労働契約」に関する内容は、これまでの最高裁判決などから確立してきた判例法理に沿って規定されている他、第17条から第20条は「期間の定めのある労働契約」として、契約終了に伴う影響の大きさから生じる不安の解消を考慮した内容となっています。

契約期間中の解雇についてこれまでの民法では「やむを得ない理由があれば解雇できる」とするのみにとどまり、「やむを得ない理由がない場合」に備えていませんでした。

そこで労働契約法では「やむを得ない理由がない限り解雇することはできない」と明文化することとなりました。

「やむを得ない理由がある場合の解雇」については、これまでどおり民法第628条の規定に従うこととなり、使用者は「やむを得ない」という評価の根拠となる事実を立証する必要があります。

民法と労働契約法の相違点一覧表

 民法労働契約法
目的個人の尊厳と両性の本質的平等(第2条)労働者保護(第1条)
書面締結規定なし第4条第2項
安全配慮義務規定なし第5条
契約期間中の解雇やむを得ない理由があれば可(第628条)やむを得ない理由がなければ解雇不可
(第17条)

まとめ

労働契約法が制定されることによって、それまで暗黙の了解であった事項や、一般概念から当然だと思われる事項が明確に定義づけられました。

これまで労働基準法による罰則でしか解決手段がなかった雇用契約は、労働契約法の制定によって労働者保護と労使間の安定を助けることとなったのです。

監修:川本 祐介 (社会保険労務士)

税理士法人ゆびすい
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