- 更新日 : 2026年3月31日
パート社員の雇用契約書とは?記載事項や正社員との違い、注意点などを解説
パートの雇用契約書作成は任意ですが、法的義務である労働条件通知の機能を兼ねた「兼用書面」での締結がトラブル防止に最適です。
- 2024年法改正で「業務変更の範囲」等が必須化
- パート法独自の「相談窓口」等の明示が必要
- 正社員用雛形の流用は違法となる恐れあり
Q. 正社員用の契約書と何が違う?
A. 契約期間の定めに加え、昇給・賞与・退職手当の「有無」と「相談窓口」の記載が義務付けられている点が異なります。
パート社員の雇用契約書は、会社とパート社員の間で雇用条件や業務内容、契約期間などを記載した重要な書面です。 条件があいまいなままだとトラブルにつながりかねません。特に2024年4月(令和6年)の法改正により、すべての労働者に対して明示ルールが厳格化されました。
本記事では、パート社員の雇用契約書について、記載項目や正社員との違い、注意点など解説します。
目次
パート社員も雇用契約書は必要?
法律上は労働条件通知書の交付が義務ですが、実務上は「雇用契約書兼労働条件通知書」の作成が強く推奨されます。
パート社員の採用時、企業には労働条件の明示義務(労働基準法第15条)があります。
法律だけを守るなら一方的に通知する「労働条件通知書」で足りますが、これでは「言った・言わない」のトラブルになりがちです。
そのため、「労働条件通知書」の機能を持たせつつ、本人の署名・捺印をもらう「雇用契約書」を1枚の書類(兼務書)として作成するのが、最もリスクの少ない方法です。
そもそも雇用契約書とは?
雇用契約書とは、勤務条件や待遇が記載されており、従業員と雇用主が契約を結んだ証拠の書面です。
雇用契約書の作成は義務付けられていませんが、雇用主は労働基準法第15条第1項に基づいて従業員に労働条件を書面で交付するよう定められています。上記の書面は、単体の労働条件通知書として作成される場合もありますが、雇用契約書兼労働条件通知書として作成することも可能です。
そのため、従業員と信頼関係を築き、トラブルを防ぐためにも、必要な明示事項を記載した雇用契約書を作成しておきましょう。
雇用契約書については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
なお、以下では雇用契約書兼労働条件通知書として、雇用契約書を作成する場合を想定して解説を行っています。
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パート社員の雇用契約書に明示すべき内容は?
法改正により「就業場所・業務の変更の範囲」などの記載が必須となりました。
雇用契約書(労働条件通知書)には、必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、制度がある場合のみ記載する「相対的明示事項」があります。
1. 絶対的明示事項(必ず記載)
以下の項目は、文書での明示が義務付けられています。
- 労働契約の期間(契約期間、更新基準)
- 就業場所・業務の内容(※雇入れ直後だけでなく、変更の範囲も必須)
- 始業・終業時刻、休憩、休日、休暇
- 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
- 昇給の有無(パート有期法独自)
- 退職手当の有無(パート有期法独自)
- 賞与の有無(パート有期法独自)
- 相談窓口(パート有期法独自)
2. 相対的明示事項(制度がある場合は記載)
- 費用負担(食費、作業用品など)
- 安全衛生、職業訓練、災害補償など
3. 2024年4月から追加された明示事項
法改正により、以下の項目の記載が新たに追加・変更されました。
- 就業場所・業務の変更の範囲(将来的な配置転換の可能性など)
- 更新上限の有無と内容(通算契約期間または更新回数の上限)
- 無期転換申込機会(無期転換ルール発生時)
- 無期転換後の労働条件(無期転換ルール発生時)
出典:2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました|厚生労働省
正社員とパートの雇用契約書の違いは?
主な違いは「契約期間の有無」「労働時間」、およびパート法に基づく「4つの明示事項」です。
正社員は「無期雇用」が前提ですが、パート社員は「有期雇用」が多く、適用される法律も異なります。
そのため、正社員用の雇用契約書をそのまま流用することはできません。主な違いを比較表にまとめました。
正社員とパートの記載項目の比較表
| 比較項目 | 正社員(無期雇用) | パート社員(有期・短時間) |
|---|---|---|
| 1. 契約期間 | 期間の定めなし | 期間の定めあり(原則3年以内)
※更新基準の明示が必須 |
| 2. 就業場所・業務 | 変更の範囲を記載 | 変更の範囲を記載
※エリア限定等の場合はその旨を明記 |
| 3. 労働時間 | フルタイム | 短時間
※曜日やシフトによる変動を明記 |
| 4. 相談窓口 | 記載義務なし | 記載必須(パート・有期法) |
| 5. 待遇の有無
(昇給・賞与・退職金) |
制度があれば記載 | 「有無」自体の記載が必須
(なしの場合も「なし」と書く) |
最大の違いはパート・有期法独自の項目
特に注意が必要なのは、表の4と5です。
「パートタイム・有期雇用労働法」により、パート社員の契約書には以下の4項目を明示することが義務付けられています(正社員には義務付けられていません)。
- 昇給の有無
- 賞与の有無
- 退職手当の有無
- 雇用管理の改善等に関する相談窓口(氏名や部署名、連絡先など)
正社員用のテンプレートを流用する場合、これらの項目が欠落していることが多いため、必ず追記してください。
パート社員の雇用契約書で注意するべきポイントは?
契約期間の上限や更新判断の基準、社会保険の適用要件を明確にし、トラブルを未然に防ぎましょう。
正社員用とは異なり、パート社員(有期雇用)特有の注意点があります。
パート社員は契約期間や労働時間に定めがあるため、更新や加入要件に関するトラブルが多く発生します。以下のポイントを必ず押さえてください。
1回の契約期間は原則3年以内
1回あたりの契約期間の上限は原則3年です(専門職や60歳以上は5年)。
これは「3年間雇用しなければならない」という意味ではありません。あくまで1回の契約期間の長さの上限です。 3年を超える期間(例:4年契約など)を定めた契約は、原則として無効となります。実務上は、6ヶ月や1年ごとの契約更新とするケースが一般的です。
契約更新の基準を具体的に明示
更新の可能性がある場合は、どのような基準で判断するかを具体的に記載します。
「契約を更新する場合があり得る」とする場合、判断基準の明示が必要です。 以下のような基準を契約書に記載しましょう。
- 契約期間満了時の業務量
- 労働者の勤務成績、態度
- 労働者の能力
- 会社の経営状況
- 従事している業務の進捗状況
契約を更新しない場合、30日前までに予告
3回以上更新している場合などは、契約満了の30日前までに更新しない旨(雇止め)の予告が必要です。
以下の条件に当てはまる場合、いきなり契約終了を告げることはできません。
- 有期労働契約が3回以上更新されている場合
- 雇用の期間が通算1年を超えている場合
トラブル回避のため、契約満了の30日前までに書面等で予告を行ってください。
社会保険・有給休暇の加入条件を確認
パート社員でも条件を満たせば、社会保険の加入と有給休暇の付与が必要です。
「パートだから保険はなし、有給もなし」という思い込みは法的なリスクとなります。契約書を作成する際は、以下の要件を確認し、該当する場合は契約書に加入・付与の旨を明記しましょう。
- 社会保険(健康保険・厚生年金)
- 週の所定労働時間が20時間以上などの条件を満たす場合、加入義務が発生します(※企業の規模等により要件は異なります)。
- 年次有給休暇
- 週の所定労働日数に応じた日数が、雇入れから6ヶ月後に付与されます。
契約書を電子化する場合は同意が必要
2019年から電子交付が可能になりましたが、労働者本人の希望・同意が必須条件です。
雇用契約書(労働条件通知書)は、FAXやメール、SNS、電子契約サービスを通じて明示することも認められています。
ただし、会社側が一方的に電子データで送ることはできません。必ず「労働者が電子交付を希望した場合」に限られます。 後々のトラブルを防ぐため、電子契約システム等を利用する場合は、事前に本人から同意を得るフローを徹底してください。
パート社員と正社員の待遇格差(同一労働同一賃金)
正社員と不合理な待遇差を設けることは禁止されています。
同じ業務内容で同じ責任を負っているにもかかわらず、正社員には通勤手当が出てパートには出ない、といったケースは違法となる可能性があります。
契約書を作成する際は、各種手当や福利厚生において不合理な差がないか確認しましょう。
同一労働同一賃金については、以下の記事でも解説しています。
雇用契約書(ワード)のテンプレート
雇用契約書を必ず作成する必要はありませんが、労働者が働きやすい環境を整え、安心して働いてもらうためにも雇用契約書の作成がおすすめです。
マネーフォワードでは、雇用契約書(ワード)のテンプレートをダウンロードできます。パート社員用の雇用契約書ではありませんが、必要に応じてカスタマイズして使用可能です。
テンプレートは下記のフォームを記入すれば、無料でダウンロードできます。
雇用契約書の作成を検討している方や作成方法がわからずお悩みの方は、ぜひ利用してみてください。
パート社員の雇用契約書締結における実態とトラブルの傾向
パート社員を含め、従業員を新しく雇い入れる際には、雇用契約書の締結や社会保険の加入など様々な手続きが発生します。マネーフォワードが手続き業務の経験者に対して独自に調査を実施したところ、入社時の手続きにおいて多くのトラブルが発生していることがわかりました。
入社時の手続きで多いトラブルとその原因
入社手続きにおいて最もトラブルや苦労が発生しやすい項目は「社会保険(健康保険・厚生年金)や住民税の手続き」で、39.0%でした。次いで前職の源泉徴収票の回収やマイナンバー等の回収が続き、「雇用契約書・労働条件通知書の締結」においても28.3%と、約3割がトラブルや苦労を経験しています。
さらに、これらの手続きにおいてトラブルが発生する主な原因として最も多いのは「本人(入退社する従業員)の対応の遅れ・不備」で、35.3%でした。次いで「人事担当者の知識不足・確認ミス」が30.8%となっています。
パート社員と雇用契約を締結する際は、労働条件などの記載事項に漏れがないか確認し、書類回収の遅れや認識の齟齬による入社時のトラブルを回避できるよう準備しておくことが重要です。
出典:マネーフォワード クラウド、入社手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目・トラブルが発生する主な原因【入退社に関する調査データ】(回答者:手続き業務に携わった経験がある597名、集計期間:2026年2月実施)
パート社員と契約する際は雇用契約書を作成しよう
パート社員と契約する場合、雇用契約書の作成は任意です。しかし、雇用契約書を作成し、書面で条件を明記しておくと、労働者との信頼関係の維持とトラブルの回避につながります。また、パート社員と契約する際は明記すべき項目も増えるため、事前に確認したうえで作成することが重要です。
パート社員と契約するための雇用契約書の作成をご検討の場合は、当記事を参考にトラブルが生じないよう作成してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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