- 更新日 : 2024年12月13日
休職中の給与は?6割もらえるケースは?病気休職の場合は?
休職中は給料が支払われるのか、支払われないのか、気になる方もいらっしゃるかことでしょう。また、休業中は給料の6割が支給されるということを聞いたことがあるかもしれませんが、どのようなケースが支払われるのでしょうか。本記事では休業中の給料の扱いについて、よくある質問を交えながら考えていきましょう。
目次
休職中の給与は就業規則によって決まる?
労働基準法第24条にのっとり、会社は労働者に対しては賃金を支払う義務があります。一方で、休職中の給与は会社の就業規則によって詳細が異なります。ここでは、関連する法律や原則をもとに考えていきましょう。
休職中の給与
原則として会社は休職中の従業員に対して給料を支払う義務はありません。これは労働者が仕事をしなければ給料は発生しないという「ノーワーク・ノーペイ」という原則に基づいています。
前述の通り、給料の支払い義務は労働基準法第24条で定められています。一方で、民法第624条では「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」と規定されており、これがノーワーク・ノーペイの原則の根拠となっています。
休職中の賞与・ボーナス
休職は労働者が会社に在籍しているものの仕事をしていない状態であるため、基本的に会社は休職している従業員に対して給料を支払う義務ありません。他にも仕事を欠勤した、遅刻や早退した場合なども、その分の給料の支払いの義務は生じません。
ただし、休職中であっても会社独自のルール(考え方)に基づいて給料を支払う会社もあります。詳細については、就業規則を確認する、または人事部への問い合わせが必要です。
ボーナスに関しても給料と同様にノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。休職中のボーナスを支給するのか否かに関しても、会社側に決定権がありますので、詳細は就業規則を確認してみましょう。
なお、算定対象期間の一部の期間のみ休職していた場合、その期間も算定されるのか、算定されないのかが、争点になることがあります。「休職期間は賞与の算定対象期間に含まれない」などと記載されている場合、休職期間分を差し引かれた分が支給されるでしょう。
会社によっては「給与補償制度」がある?
以上のように、原則として会社は休職している従業員に対しては給料を支払う義務はありません。有給休暇を除いて仕事をしていない従業員にも給料を支払うということになれば、逆に懸命に働いている労働者との公平性が担保できなくなってしまいます。
一方で、病気やケガあるいは家庭の事情などで働きたくても働けなくなってしまうケースも有り得るでしょう。そこで、福利厚生の一環として、独自に休職中にも給料の一部もしくは全部に相当する額を補償する給与補償制度を採用している会社もあります。やはりこうした制度の有無も就業規則を確認するか、人事担当者に問い合わせみましょう。
休職願(ワード)のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
休職中の給与で6割もらえるケースとは?
休職中の従業員に対して給料もしくは補償金を支払うかどうかは、会社側の判断に委ねられています。しかし、給料の6割以上が「休業手当」として支給される場合もあります。ここからはその支給条件や支給額の計算方法について見ていきましょう。
休業手当とは
休業手当とは「使用者の責に帰すべき事由」によって従業員が休業する場合に支払われる手当で、労働基準法第26条で支給が義務付けられています。例えば、業務量が減少してしまった、業績が悪化して休業を余儀なくされた、資材や不足したり設備や機械が故障したなどで業務ができなくなってしまったりした場合などが挙げられます。
休業手当の計算方法
上記の通り、従業員が休業した場合、平均賃金(1日あたり)の6割以上が休業手当として支給されます。
休業手当の額を計算するためには、まずは平均賃金を算出しなければなりません。平均賃金とは休業が発生した日以前の3カ月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その総日数で除した金額のことを指し、以下のような計算式で求められます。
そして、休業手当の金額は以下の計算式で求められます。
<例>Aさんは1日の休業を余儀なくされ、それ以前の3カ月間で90日働き合計で63万円の給料を得た場合
630,000(円)÷90(日)=7,000(円) …平均賃金
7,000(円)×0.6×1(日)=4,200(円) …休業手当
つまり、Aさんの平均賃金は7,000円であり、休業手当の額は少なくとも4,200円ということになるのです。
休職中の有給付与はどうなる?
原則として休職中は有給休暇の取得はできません。そもそも有給休暇とは、労働の義務がある日に、その日の労働が免除されかつ給料が支給されるという制度です。そもそも休職期間中は労働の義務がないため、有給も使えないということになります。
なお、労働基準法第39条では有給休暇は雇用してから6カ月以上継続的に勤務して、かつ全労働日の8割以上出勤した人に対して付与が義務付けられています。休職してこの条件を満たせなかった場合は、有給が付与されない可能性があります。
ただし、やはり休職期間中の有給休暇の取得についても、企業独自の判断に委ねられているため、就業規則を確認するか人事担当者に問い合わせてみましょう。
休職中の給与に関するよくある質問集
休職して仕事ができなくなるとなると今後の生活に支障が出かねません。最後に休職期間中の給料や手当の支給に関して、皆さんが不安に思われている点、疑問に思われている点に対してQ&A形式で回答していきます。
国家公務員の場合、休職中の給与はどうなりますか?
国家公務員の休職期間中の給与支給に関するルールは一般職の職員の給与に関する法律第23条に定められています。病気で休職した場合、最初の90日間は全額、それ以降1年間は給料の8割、2年目以降は無給です。
病気で休職したのですが、給与はもらえませんか?何か手当はありますか?
基本的に病気で休職する場合、会社は休職期間中にその従業員の給料を支払う義務はありません。ただし、前述の通り、会社によっては休職期間中でも給料を支払ってもらえる可能性があるため、就業規則や人事労務担当者に確認してみましょう。
なお、病気で休職する場合は協会けんぽや健康保険組合の傷病手当金が支給される場合があります。例えば、協会けんぽに加入していれば、「業務外の事由によって病気やケガをした休業であること」「医師の判断などによって仕事に就くことができないこと」「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」「休職期間中に給料が支払われないこと」という4つの条件を満たした場合、給料の3分の2程度の傷病手当金を受け取ることが可能です。
パワハラで休職したのですが、給与はもらえませんか?何か手当はありますか?
パワーハラスメント(以下、パワハラ)やセクシャルハラスメント(以下、セクハラ)などが原因で、うつ病やPTSDなどに罹患して休職した場合であっても、会社には給料の支払い義務はありません。これらの精神疾患の罹患が労働災害に認定されるかどうかで、その後の対応が異なります。
パワハラやセクハラが労災として認定されるには、医師の診断書や労災発生を証明する資料などを用意する必要があります。資料をそろえたうえで、休業補償給付支給請求書に必要事項を書類に記載し、労働基準監督署に提出しましょう。パワハラがあった事実が認められ、それが労災に認定された場合、休業1日につき平均賃金相当額(給付基礎日額)の6割が支給されます。
また、同じ様式で同時に申請することとなる休業特別支給金から2割が支給されるため、合計8割ということになります。休業特別支給金も労災保険の制度ですが、保険給付事業とは別の社会復帰促進等事業において被災労働者を支援するものです。
なお、精神疾患が労災として認められなかった場合、業務外ということになり、前述の傷病手当金を受け取ることが可能です。また、これとは別に訴訟を起こして慰謝料や治療費、休職中に受け取れなかった給料の補償を求めることが可能です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
最低賃金とは?制度の概要や種類をわかりやすく解説
労働者に は契約に従って労働する義務はありますが、使用者にも労働の対償として賃金を支払う義務があります。また、賃金には最低の額が定められており、その額を下回ることは許されません。 本記事では、最低賃金についての概要や注意点などについて解説を…
詳しくみる山口県の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
山口県内でビジネスを運営する企業にとって、給与計算は不可欠な業務の一つです。しかし、専門知識や時間を要するため、外部に委託する企業も増えています。この記事では、山口における給与計算代行の料金相場を詳しく解説し、コストを抑えつつ高品質なサービ…
詳しくみる給与明細から標準報酬月額を確認できる?言葉の意味や調べ方、社会保険料の算出方法も
標準報酬月額とは、社会保険料を計算する際のもととなる数値のことです。複数月の給与の平均額を計算し、決められた等級に分けて表したものでもあります。 本記事では、標準報酬月額の言葉の意味や調べ方、給与明細からの確認方法について解説します。あわせ…
詳しくみる給与計算の正しい方法とは?やり方や流れ、ポイントを解説
給与計算の流れは、【①総支給額を計算→②控除額を計算→③差引総支給額を計算】という3段階で進めます。 当記事では、従業員やパートの給与計算の手順と方法について、わかりやすくお伝えします。 将来自分が給与の支払いを行う立場になったときに慌てな…
詳しくみる福利厚生賃貸とは?住宅系福利厚生制度と他の福利厚生制度を比較しながら解説
採用や人材定着、ブランディングなど、さまざまな部分に影響を与える福利厚生。 今回は福利厚生の基礎知識に加え、住宅系福利厚生制度(住宅手当/社宅制度)と他の福利厚生の比較、福利厚生賃貸サービスの概要・特徴などを分かりやすく解説します。 福利厚…
詳しくみる転職後の住民税の手続きまとめ!一括徴収とは?
一般的に、会社の給料から天引きされているため自分で納付する必要がないのが住民税です。では、転職した場合は住民税をどのように納付すればよいのでしょうか。 ここでは、転職後の住民税の納付の手続きについて解説します。 住民税の特別徴収とは 住民税…
詳しくみる