新型コロナで働く妊婦の在宅勤務や休暇 企業に義務づけるガイドラインとは?

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妊婦 オフィス

新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、妊娠中の女性労働者の健康管理上の措置として、厚生労働省より「新型コロナウイルス感染症に関する措置」が新たに規定されました。

そこで今回は、新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインを解説します。

従来の母性健康管理措置のポイントと新型コロナウイルスによる改正点、その後に続く妊娠中の労働者の申請の流れや、事業主の対応方法にも触れていますので、ぜひ参考にしていただけければと思います。

従来の母性健康管理措置とは?

母性健康管理措置とは、男女雇用機会均等法によって、「妊娠中・出産後1年以内の女性労働者が、保健指導・健康診査の際に医師や助産師から指導を受け、事業主に申し出た場合は、その指導事項が守ることができるようにするために、事業主は必要な措置を講じなければならない」と定められている義務です。

男女雇用機会均等法第13条の「指導事項を守ることができるようにするための措置」には以下があります。

  • 時差通勤、勤務時間の短縮のような「妊娠中の通勤緩和」
  • 休憩時間の延長、休憩回数の増加のような「妊娠中の休憩に関する措置」
  • 作業の制限、休業のような「妊娠中または出産後の症状などに対応する措置」

他にも事業主は、妊婦の保険指導や健康診査を受診する時間を確保する必要がありますし、妊娠や出産を理由に解雇などの不利益な取り扱いを禁止しています。

このような措置を講じず、是正指導にも応じない場合は企業名の公表の対象となります。

尚、妊婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限に関しては、労働基準法に定められています。

新型コロナによる母性健康管理措置の改正点

この度の新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえて、従来の母性健康管理措置が改正され、「新型コロナウイルス感染症に関する措置」が追加されました。

新型コロナウイルス感染症に関する措置とは、「妊娠中の女性労働者が保健指導・健康診査を受け、その作業などにおける新型コロナウイルスへの感染のおそれに関する心理的なストレスによって、母体または胎児の健康保持に影響があると主治医や助産師から指導を受け、事業主に申し出た場合は必要な措置を講じなければならない」という義務です。

つまり、妊婦が「職場などで新型コロナに感染する恐れがある」という不安や心理的ストレスを解消するための措置です。

医師や助産師の指導を受け、妊婦が事業主に申し出た場合は、作業の制限(感染のおそれの低い作業への転換)や出勤の制限(在宅勤務または休業)を事業主は講じる必要があります。

「感染のおそれの低い作業への転換」とは、たとえば顧客と対面するような業務から事務職へ変わるといったような配置換えを指します。

営業や販売で顧客と接する時間が長ければ、新型コロナウイルスへの感染のおそれから、心理的な負担が強くなる可能性があります。

そのことが母体や胎児に影響すると医師などが判断し、妊婦の申し出があれば、職場転換などの措置を考える必要がある、ということです。

他にも、通勤緩和の措置として、時差通勤、勤務時間の短縮、交通手段、通勤経路の変更が必要なケースもあります。

対象期間は「令和2年5月7日~令和3年1月31日」の時限的な措置ですが、今後の状況によっては延長の可能性もあります。

妊婦が新型コロナによる母性健康管理措置を申請する流れ

妊婦が新型コロナウイルスによる母性健康管理措置を申請する流れは以下です。


  1. 妊娠中の女性労働者が母子健康法の保健指導や健康診査を受ける
  2. 医師や助産師は、かかりつけの医療機関が一般的ですが、医療機関が変更になる場合は初診でも構いません。

    また、電話やオンラインで保健指導が実施されている場合でも利用できます。


  3. 健康診査等を行う医師や助産師が必要と判断した場合は、母性健康管理指導事項連絡カード(以下、母健連絡カード)に必要な指導事項を記載してもらう
  4. 母健連絡カードは厚生労働省のホームページからダウンロードできます。また、ほとんどの母子健康手帳に様式が記載されています。

    必要な指導事項は母健連絡カード裏面の「特記事項」に記入してもらうことになるでしょう。

    妊婦から医師に対して、「在宅勤務に転換するように書いてほしい」「休業が適切と書いてほしい」などのように特定の措置を記載してもらうことは出来ません。


  5. 母健連絡カードを事業主に提出する
  6. 新型コロナウイルスによる措置は、あくまでも妊婦の側から申し出る必要があります。

    母健連絡カードを見せずに「医師から必要な指導があった」と伝えても、事業主側は適切な措置を講じる必要がありますが、指導内容や妊娠週数、出産予定日などを書面で申し出ることが望ましいとされています。指導の有無や内容が不明確な場合には、事業主は、女性労働者を介する等により担当の医師等に確認をとり、判断を求める等適切な対応が必要です。

    事業主が措置を講じない場合は、都道府県労働局の助言指導などの対象になりますので、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談すると良いでしょう。

    妊婦が事業主への申し出を取り下げた場合、事業主は措置を講じる必要はありません。

尚、妊娠中の労働者には、正社員だけでなく、非正規雇用や派遣労働者も含まれます。


経営者、人事労務担当者はどう対応する?

妊婦から新型コロナウイルスによる措置を申請された事業主(経営者・人事労務担当者)は、必要な措置を講じる必要があります。

その場合、産業医や産業保健スタッフ、機会均等推進責任者(令和2年6月1日以降は男女雇用機会均等推進者)の助言に基づき、妊婦と話し合って定めることが望ましいとされています。

※機会均等推進責任者とは、母性健康管理措置等について必要な措置や助言を行う担当者です。

具体的な措置として作業場の転換や在宅勤務、休業などがありますが、医師の指導内容に基づき、いずれかの措置をとれば良いとされています。

通勤緩和が医師の指導内容に含まれている時は、勤務時間の短縮や交通手段・通勤経路の変更を行う必要があるでしょう。

休業させる場合の賃金の取り扱いは事業主ごとに任されていますが、労使で十分に話し合っていただき、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えるようにします(休業手当が雇用調整助成金の対象になるケースもあります)。

事業主の側から医師に指導内容を確認する場合は、妊婦を介して担当医に確認したり、妊婦の確認を得て、産業保健スタッフが確認することになります。

産業保健スタッフがいない場合は、妊婦の同意を得て、人事労務担当者などが確認を行います。

新型コロナウイルス措置の申請による解雇などの不利益な取り扱いは禁止されていますし、出産後1年以内の解雇も無効です。

また、職場におけるいわゆるマタニティハラスメントには、母性健康管理措置を求めたことやこれを受けたこと等を理由とするものも含まれ、事業主にはこれを防止するための措置を講じることが義務付けられています。

まとめ

以上、「新型コロナウイルス感染症に関する措置」のガイドラインを解説しました。

従来の母性健康管理措置に加えて、「新型コロナウイルスによる心理的なストレスが母体や胎児に影響を与えるおそれ」という部分がポイントになるでしょう。

措置の申請は妊婦の側から行いますが、申請された事業主は措置を講じる義務があります。

あくまでも新型コロナウイルスに伴う暫定的な措置ではありますが、今後の状況によっては期間延長も充分に考えられる制度です。

令和2年5月7日からスタートした新しい制度なので、内容を理解され、安心して出産・育児ができるように役立ててみてください。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:西岡 秀泰(社会保険労務士/2級FP技能士)

生命保険会社に25年勤務した後、社会保険労務士事務所を開業。現在は、社会保険労務士として活動するとともに、社労士会からの委託を受け日本年金機構・年金事務所で年金相談員として勤務。労働者を支える労働保険・社会保険についてわかりやすく解説していきたいと考えています。



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