勤怠付け忘れ、ICカードの押し忘れを無くしたい…労務担当者がすべきこと

勤怠押し忘れ・付け忘れを繰り返す労働者への対応

例えば下記のような思いをしている管理者はいませんか?

部下の中に勤怠押し忘れ・付け忘れを繰り返す労働者がいます。私がいくら注意しても直りません。このままでは勤怠管理の集計などの締めができなくなってしまいます。自分は部下の状況をよくわかっていますので、適当に勤怠時間などを記入してしまおうとさえ考えています。

どんな問題があるでしょうか。

勤怠管理は会社の責任です。押し忘れ・付け忘れの原因を究明しよう

いくら労働者が勤怠を押し忘れ・付け忘れしているからといって、現場の管理者など使用者が労働者への確認もなく、勝手に勤怠を付けることは許されません。労働時間管理などの勤怠管理は、そもそも使用者の義務です。勤怠管理手続きなどは就業規則で明記されているでしょう。それを労働者に周知するのも使用者の義務なのです。
就業規則は周知されていないと法的な効果が認められなくなることに注意してください。また使用者は、労働基準法などについても労働者への周知義務を持っています。
使用者が机の引き出しの中にしまっておいて周知していない『就業規則』には、法的効力が一切認められないことはいうまでもありません。なお、使用者は、就業規則だけではなく、労基法及び労基則、36 協定などの書面協定についても労働者に周知する義務を負っています(労働基準法 106 条)。

部下が勤怠押し忘れ・付け忘れを繰り返し、困り果てて管理者などが勝手に勤怠を付けたときには、後になって「ヤミ残業」「賃金不払い」といった個別労使紛争にさえなりかねません。労働基準監督署から説明を求められたときに、どう説明するのでしょうか。
仮に1件だけの改ざんであったとしても、「本当にこの1件だけなのか?」と問われたときに説明がつかなくなります。会社全体の勤怠管理体制が問われることになります。そもそも、なぜ、押し忘れ・付け忘れが起こるのでしょうか。

本人の資質だけの問題か、勤怠管理システムに見直すべき点はないのでしょうか。管理者が取り出すのを忘れてキャビネットにしまいこまれたまま、キャビネットの鍵は管理者が握り込んだままとなり、勤怠簿が定位置に置かれていないということもよくあります。営業担当者などで、外勤先からの直行直帰連絡などが管理者不在のために受け付けられていない。管理者不在のときには代わりの人が受け付けている。このようなルールから逸脱した管理をしている職場も見受けられるのです。 現場の管理者が困っているのなら、人事の担当者などは管理者から状況をよく聞いて、本当の原因を探って対策を打たなければいけません。現場の困りごとを本部が知らなければ、会社としての管理体制も疑われます。

勤怠管理のあり方を基本から見直そう

そもそも、勤怠管理について労働者の自己申告のみに依存するのは避けるべきです。労働時間管理について確認してみましょう。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を見てみましょう。

管理者や人事労務の担当者であれば、必ず確認するようにしましょう。 以下に出てくる「使用者」は社あるいは管理者とお考えください。大切な内容なので具体例も挙げながら説明します。

『使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること』を守るために

(1) 原則的な方法

・使用者が、自ら現認することにより確認する
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として 確認し、適正に記録する

(2)やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合

説明すべき事項としては、本ガイドラインで示した労働時間の考え方、自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより不利益な取扱いが行われることがないこと、などがあります。また、労働者が自己申告した労働時間と、実際に事業場内にいた時間や、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録に著しい乖離があるときは、労働時間の実態を調査するようにしてください。休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないのです。自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものです。自己申告できる労働時間に上限を設けるのは、労働時間の適正な把握の妨げになりかねませんので、やめましょう。また、36協定を超えた時間外労働をしているのに、協定を守っているかのように報告することが職場で当たり前になっているという可能性もありますので注意が必要です。

なお、このガイドラインでは、現在は管理監督者や裁量労働制適用者は対象外となっています。時間外手当の問題だけでなく、労働者の健康確保が重要なので、2019年4月からはこれらの方々も労働時間管理の対象になります。

働き方改革を考えて、今こそ勤怠管理システム導入も検討してみよう

働き方改革によって、罰則つき時間外上限規制の導入、時間外労働の割増賃金引き上げ(中小企業の経過措置がなくなる)、有休付与の義務化、など厳しい規制が課されます。これらはいずれも会社の義務であり現場管理者の義務なのです。労働者がさぼっていた、いい加減だった、といった言い訳は許されないでしょう。

1.時間外上限規制(大企業は2019年4月適用。中小企業は2020年4月適用

そもそも、単月100時間、2~6か月平均80時間などの複雑な制度の管理は、手作業では限界があるでしょう。もう一度、時間外管理の原則を確認しておきましょう。

時間外労働の上限を月45時間・年360時間を原則とし、これを超えた場合に罰則適用されます。また、臨時的な特別な事情がある場合、年間6ヶ月まではこの上限を超えることが可能だが、その場合でも、「単月100時間未満(休日労働含む)」「複数月平均80時間以下(休日労働含む)」「年720時間以下」のすべてを満たす必要があります。大変複雑なマトリックスになっています。100と80という数字だけが独り歩きしていますが、例えば、月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月以内に限られます。年720時間以下、という規制もかかっています。行政も専門家も口をそろえて「手作業管理ではもはや限界だろう」と指摘しています。

また、次の2以下の規制は2019年4月から企業規模の大小を問わず適用されます。待ったなしですが、行政や専門家は、中小企業の認識が甘いことに危機感を持っています。

2. 労働時間の状況の把握義務

労働時間の状況の客観的な方法等による把握が義務化されます。
管理監督者・裁量労働制適用者を含むすべての労働者について把握する必要があります(高度プロフェッショナル制度適用者を除く)。

3.年次有給休暇の確実付与義務

年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者に対して、毎年5日分を使用者が時季指定で付与することが義務化されます。

自社の現在の勤怠管理システムに問題があるのならば、ICT 技術を活用した管理システムの導入も検討すべきです。それによって労働者・管理者とも勤怠管理の負担を軽減し、有効な業務に時間と労力を振り向けることができる、とお考えになることをおすすめします。

勤怠の付け忘れ・押し忘れを個人のせいにしてはいけない

労働者が勤怠付け忘れ・押し忘れをするにはそれなりの原因・理由があるはずです。働き方改革が本格始動するいまこそ、思い切った改革の好機でしょう。行政の力を借り、社会保険労務士などの専門家やICT事業者などの知恵を借りて、改革に乗り出すことが、会社の発展にもつながることになるでしょう。

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【執筆協力】玉上 信明(たまがみ のぶあき)社会保険労務士 健康経営アドバイザー

紙芝居型講師(登録商標)/日本公認不正検査士協会アソシエイト会員
2015年10月三井住友信託銀行を65歳定年退職。現在社会保険労務士玉上事務所所長。 本業の他、執筆・セミナー活動を継続。人事労務管理全般、不正不祥事防止対策が専門。
「紙芝居型講師」は専門士業者のグループです。専門知識を紙芝居・ストーリー形式でわかりやすく伝える活動を進めています。

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