本当に「自由」?個人事業主・フリーランスの労務管理

そもそもフリーランスの定義は?

「フリーランス」とは、「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」として定義され、これまではカメラマンやコンサルタント、小説家といった限られた職種の方がメインでした。しかし、シェアリングエコノミーやIT技術の発展によって、IT関連の独立技術者やネット経由で仕事を請け負う「クラウドワーカー」が増加。クラウドソーシング大手のランサーズ「フリーランス実態調査2018年版」によると、日本には現在1千万人あまりのフリーランス(副業・兼業を含む)がいると言われています。

フリーランスは、大きく「独立系フリーランス」と「副業系フリーランス」とに分かれています。独立系フリーランスとは、企業や組織に属さず雇用関係を持たない法人経営者(法人成りしている人)、個人事業主等が分類されます。一方、副業系フリーランスは、基本的に主となる企業や組織に雇用され、すきま時間を使って個人の名前で仕事をしており、1社に雇用されながら他の組織や個人と契約を結んだり、2社以上に雇用されたりと、多様な働き方が考えられます。

労働時間や働く場所、仕事を自分で選択し働くことができるといった、自由な働き方が注目され、人気が出てきているフリーランスですが、会社員(労働者)とはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは特に独立系フリーランスを対象に、【労働基準法の規制対象】【労働保険・社会保険の手厚い保護】といった観点から二者の違いを考えていきます。

労働基準法の規制対象とは?

「労働基準法」は「労働者を守るための法律」です。労働基準法上の「労働者」とは、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」とされ、使用従属性(指揮監督下の労働・報酬の労務対償性)と労働者性(事業者性の有無・専属性の程度・その他)を総合的に勘案し、個別具体的に判断されます。
独立系フリーランス(法人経営者や個人事業主等。以下同様)は、一般には使用従属性や労働者性を満たしていないので、労働者には該当しません(*)。つまり、労働時間の規制(36協定の上限時間規制や割増賃金の支払い、法定休日や休憩時間の確保等)、最低賃金の規制、産休・育休・介護休業等の法定休業の規制、不当解雇の禁止といった、規制が適用されなくなり、すべてが自己責任になるということです。また、これに付随して、労働保険・社会保険においても手厚い保護が受けられなくなります。

(*)労働者性の要件を満たしていれば、「請負契約」という名目でも労働者として保護される場合もあります。中には労働法上の規制を免れるために形式的に請負契約などの形を取るケースがあり、問題となっています。

労働保険・社会保険の手厚い保護とは?

労働保険(労災保険・雇用保険)

労災保険・雇用保険を一括して労働保険と呼びます。会社員(労働者)であれば、毎月の給与から天引きで雇用保険料を納めています。また、労災保険料は労働者の負担は一切ありませんが、会社が全額保険料を納めています。
業務中や通勤途中にケガを負ったり、業務が原因で病気になったりした場合、労災保険が適用され、治療費が全額不要になったり、休職中の生活費の補償が受けられます。また、何らかの理由で会社を退職した場合、失業中には雇用保険から失業給付が給付され、失業中の生活費を一定程度補填することができます。労災保険には一部の方向けに特別加入制度があります(*)が、雇用保険のように失業中の生活費を補填するような国の制度は、独立系フリーランスにはありません。
(*)労働者以外の方のうち、業務の実態等から労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。特別加入できる方の範囲は、中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4種に大別されます。

<参考>厚生労働省「特別加入制度とは何ですか。」

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

健康保険・厚生年金保険を一括して社会保険と呼びます。会社員であれば、健康保険組合や協会けんぽ等に加入し、健康保険料・厚生年金保険料を給与天引きで納めますが、独立系フリーランスの場合、基本的には国民健康保険に加入(または家族の被扶養者になる)し、国民健康保険料と国民年金保険料を自ら納めます。会社員の場合、それぞれの保険料は事業主との折半負担ですが、国民健康保険料、国民年金保険料については、保険料全額を自ら負担する必要があります。また、国民健康保険の場合、家族を扶養に入れることができないため、会社員時代は配偶者や子・親等を扶養に入れていたという場合、保険料を家族分それぞれに対して支払う必要が出てきます。

さらに、会社員の場合、業務外で病気やケガを負った場合、出産前後や介護期間中に働けない場合に、健康保険から生活費が一定程度補填される、また、老後には基礎年金に上乗せして厚生年金も支給されるなど、手厚い保障が受けられますが、独立系フリーランスの場合、病気やケガで働けない場合には自助努力で備えておく必要がありますし、将来受け取れる年金額も基礎年金分のみとなり、会社員よりは少ない金額となります。

フリーランスに起こりうるトラブルとは?

独立系フリーランスは、自身に関連する法律についての知識がなかったり、発注者と比較して交渉力が弱いなどの理由から、発注者から不利益な要請を押しつけられる、等のトラブルが発生しています。例えば、不利益な契約内容を押し付けられた、仕事内容・納期などを一方的に変更された、報酬支払いが遅れた、一方的に契約を打ち切られた、などです。またハラスメント問題、自身が病気やケガで働けなくなったときの対応、過度な秘密保持や競業避止義務を課されたトラブルも指摘されています。以下の資料でトラブルの事例等がまとめられています。

政府もフリーランスの支援に向けて法整備を急いでいますが、現状ではまだ対応が追い付いていない部分が多々見受けられます。

「自由」への憧れだけでなく、メリット・デメリットをしっかり理解しましょう

個人の働き方は今後ますます多様化していくとみられ、政府もそれを応援する姿勢を見せています。独立系フリーランスは「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態」であるからこそ、様々な面で会社員よりも自由に働くことができると言えます。一方で、これまで見てきたように、組織に属していないが故のデメリットも複数あります。これらを認識したうえで、自身に合った働き方とはどういうものか、考えてみてはいかがでしょうか。

<参考>
【厚生労働省】フリーランス白書 2018
「雇用類似の働き方に関する検討会」報告書(PDF:1390KB)
【公正取引委員会】「人材と競争政策に関する検討会」報告書について
日経新聞フリーランス支援へ法整備 厚労省、労災適用など検討 デジタル経済に対応(2019/1/10)

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【監修】金田朋子(かねだ ともこ) 社会保険労務士

社労士事務所にて給与計算、各種社会保険事務、就業規則の作成・改定、行政機関調査対応等に関する社会保険・労務コンサルティング業務に従事後、現在はベンチャー企業内の社内社労士として勤務。
社労士事務所での外部コンサルタント、ベンチャー企業内での労務担当者としての経験を生かし、ベンチャー・中小企業に強い社労士として社会保険・労務コンサルティングを行っている。
Twitter : @tok0moco

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