裁量労働制とは?限定される適用対象とは?

裁量労働制とは何か?

裁量労働制とは、特定の業務について、「実労働時間にかかわらず、一定時間労働したものとみなす」制度です。
これまでの労働時間法制は、工場などで集団的に働く人のように「一定の時間」「一斉に働くこと」を前提に、労働時間を定め、時間外労働については割増賃金を支払うという制度でした。
しかし、業務の内容や業態が多様化する中、一定の専門的な業務については、「業務遂行の方法や時間配分を大幅に労働者に委ねる方が良い」と考えられるようになりました。実際の労働時間によらず、一定の労働時間働いたものと「みなす」扱いをするものです。例えば、みなし労働時間を9時間とした場合には、実際の労働時間が10時間であっても7時間であっても、みなし労働時間9時間分の賃金が支払われます。
とはいえ、実態よりも不適切に短いみなし労働時間を定め、残業代の支払いを軽減しようとしたり、裁量労働制の働き方になじまない業務に裁量労働制を適用したりといった濫用も懸念されます。このような事態に至らないように、対象業務等の要件は法令で明確化されており、労使間で協議決定すべき事項も、「みなし労働時間」のみならず、「健康・福祉等の確保の措置」、「苦情処理手続き」など厳格に定められています。


<参考>「労働時間の柔軟化」について、他の制度との比較
労働時間の柔軟化については、二通りの方法が定められています。
①「法定労働時間の柔軟化」:一日8時間1週間40時間といった法定労働時間の枠を一定の期間などで柔軟化して、過不足の調整を認めるもの。「フレックスタイム制」「変形労働時間制」等です。
②「労働時間の算定そのものの柔軟化」実労働時間にかかわらず、一定時間労働したものとみなすもの。「裁量労働制」「事業場外労働」等です。
これらの制度において、何がどの範囲で柔軟化されているか、しばしば誤解も見受けられるようです。それぞれの特徴と相違点をよく見極めて理解する必要があります。
(参考文献:水町勇一郎「労働法第7版」262~264、277~284頁)

裁量労働制の適用対象は専門業務型・企画業務型に限定されている

裁量労働制の適用対象は専門業務型・企画業務型に限定され、対象労働者にも厳格な要件があります。それぞれの適用要件と対象とされる業務の種類は次のとおりです。

(1)専門業務型裁量労働制:19業務に限定されます。(以下、主だったものを記載。)
新商品・新技術の開発、人文科学・自然科学に関する研究業務、情報処理システムの分析・設計・企画、システムコンサルタント、新聞・出版・放送の取材・編集等、衣服・室内装飾・工業製品・広告等のデザイナー、インテリアコーディネーター、ゲームソフトの創作、金融商品の開発、大学の研究職、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士。
(2)企画業務型裁量労働制:本店本社他の中枢事業場において、事業運営の企画・立案・調査・分析を行う業務。かつ、業務の性質上、適切な運営のためには遂行方法を大幅に労働者に委ねる必要があるもの。

裁量労働制が適用される労働者に対して、使用者は「業務の遂行方法を時間配分の決定などに関し、具体的な指示をしないこと」という規定が明示されており、対象となる労働者についても、「使用者の業務指示を受けずに自分の裁量で業務を進められるだけの相当の知識経験を持つものであって当該業務に常態として従事している者」という要件が課されています。

裁量労働制における労働時間の取り扱いと割増賃金の考え方

裁量労働制においては、実際に働いた時間ではなく「みなし労働時間」が労働時間とされ、みなし労働時間の中に法定労働時間を超える部分があればそれに応じた割増賃金を払うことになります。例えば、みなし労働時間が9時間の場合、法定労働時間の8時間を超える部分が1時間分ありますので、出勤日1日あたり、必ず1時間の割増賃金の支払いが必要になります。
また、休日労働や深夜業については、別途その時間に応じた割増賃金の支払いが必要となります。

裁量労働制の導入にあたり労使間で行う手続きとは

専門業務型では労使協定、企画業務型では労使委員会の決議で「みなし労働時間」を定めます。また「労働者の健康・福祉の確保に関する措置」(勤務状況の把握、それに応じた休日休暇の付与、健康診断等)、「苦情処理のための措置」等も定める必要があります。労使協定・労使委員会の決議については、不適切な運用を防ぐため有効期間を3年以内とすることが望ましいとされています。

裁量労働制の導入にあたっては、本当に対象となる業務かをしっかり見極めよう

裁量労働制とは、その業務の性格上、業務遂行方法や時間配分について労働者に委ねることが適切なものについて適用されるものです。
対象業務や適用労働者の要件が法令で厳格に定められ、労使間の厳格な手続きを経て決定されるのは、裁量労働制を悪用した過重労働や割増賃金の不当なカットなどを防ぐためです。また、使用者の個別の指示が厳しく規制されるのも、本来、使用者の指示を要するような業務は裁量労働制の対象業務になりえないからです。
このような制度趣旨をよく理解して、適切な運営を行っていきましょう。

【監修】金田朋子(かねだ ともこ) 社会保険労務士

社労士事務所にて給与計算、各種社会保険事務、就業規則の作成・改定、行政機関調査対応等に関する社会保険・労務コンサルティング業務に従事後、現在はベンチャー企業内の社内社労士として勤務。
社労士事務所での外部コンサルタント、ベンチャー企業内での労務担当者としての経験を生かし、ベンチャー・中小企業に強い社労士として社会保険・労務コンサルティングを行っている。
Twitter : @tok0moco

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