裁量労働制とフレックスタイム制の違いを詳しく解説

裁量労働制、フレックスタイム制とは?

最近ニュースなどで頻繁に取り上げられている裁量労働制やフレックスタイム制。これらはどういった制度なのでしょうか。今回は、両制度の違いについて詳しく解説していきます。

裁量労働制とは、特定の業務について、「実労働時間にかかわらず、一定時間労働したものとみなす」制度です。業務遂行の方法や業務にかかる時間配分が大幅に労働者に労働者に委ねられており、実労働時間による管理になじみにくい場合において、一定の要件を満たした場合に適用が認められています。

裁量労働制は、1987年の労働基準法改正において、研究開発やシステムエンジニアなどの専門職についてまず導入されました。これを、専門業務型裁量労働制といいます。専門業務型裁量労働制は、創造的業務に従事する労働者に対しては、使用者が具体的な指示をすることが困難であり、また、当該労働者本人の裁量に委ねた方が効率的な業務になることもあるため、一定の業務に従事する労働者について、労使協定で定めることにより1日あたりの労働時間をあらかじめ「みなす」こととしたものです。

その後、1998年及び2003年の労働基準法改正により、事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務を行う一定範囲のホワイトカラー労働者にも裁量労働制を適用することが可能となりました。これを、企画業務型裁量労働制といいます。企画業務型裁量労働制は、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮しうる環境づくりをするため、また、労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するために、その選択肢の1つとして施行されたものです。

一方、フレックスタイム制とは、1ヶ月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定し働く制度です。労働者が生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことを目的として導入されました。

裁量労働制、フレックスタイム制の導入のために必要な手続きとは?

専門業務型裁量労働制を導入するには?

原則として次の7つの事項を労使協定により定めた上で、様式第13号により、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

(1)制度の対象とする業務
(2)対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
(3)労働時間としてみなす時間
(4)対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
(5)対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
(6)協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。)
(7)(4)及び(5)に関し労働者ごとに講じた措置の記録を協定の有効期間及びその期間満了後3年間保存すること

企画業務型裁量労働制を導入するには?

以下8つの要件をすべて満たす必要があります。
(1)制度の対象となるのが、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(対象業務)であること
(2)対象業務が存在する事業場が「本社・本店」もしくは「本社・本店の具体的な指示を受けることなく独自に、事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等」(対象事業場)であること
(3)制度の対象となるのが「当該業務を適切に遂行するための知識経験等があり、常態としてその業務に従事する者」(対象労働者)であること
(4)対象労働者が企画業務型裁量労働制が適用されることに個別合意していること
(5)労働基準法38条の4第2項各号の要件を満たす「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(労使委員会)」が設置されていること
(6)労使委員会の委員の5分の4以上の多数により労働基準法38条の4第1項各号に掲げる事項に関する決議がなされたこと
(7)労使委員会の決議を管轄の労働基準監督署長に届け出たこと
(8)企画業務型裁量労働制を採用する旨を就業規則または労働協約で定めたこと

フレックスタイム制を導入するには?

以下2つの要件をいずれも満たす必要があります。
(1)就業規則その他これに準ずるものにおいて始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨を定めること
(2)対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間に”おける起算日、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間、コアタイム(コアタイムを設ける場合のみ)、フレキシブルタイムを労使協定で定めること

裁量労働制、フレックスタイム制導入のメリット・デメリットとは?

裁量労働制のメリットは、ある仕事をやり遂げる上で、それにかける時間や進め方を、自分の裁量でコントロールできることです。「定時」の考え方も原則としてありませんので、きちんと求められる成果を上げていれば、何時から何時まで働くかは自由です。
その半面、「みなし労働時間」を超えて働く場合でも、「みなし労働時間」を超えた部分の残業代が出ないことは対象者側のデメリットですし、出退勤時間を指定できないため、取引会社や他部門との連携を行なうときに、時間の設定が難しくなることなどは、会社側のデメリットだと考えられます。

フレックスタイム制のメリットとしては、勤務時間をずらすことで、通勤ラッシュを避けることができることや、個人が効率的に時間配分を行なうことで、月中で繁閑の差が多い場合は、残業の軽減につながる、柔軟な時間帯で勤務可能なため、優秀な人材の採用や定着の向上につながる(育休後の離職や介護離職を防ぐ)ことが挙げられます。
その反面、取引会社や他部門との連携を行なうときに、時間の設定が難しくなるため、現実には導入できる職種が限られやすいことや、自己管理ができない従業員が多い場合に、時間にルーズな働き方が助長される恐れがあることは、デメリットだと考えられます。

働き方改革関連法における裁量労働制、フレックスタイム制の改正内容とは?

2019年4月より順次施行予定の働き方改革関連法において、裁量労働制、フレックスタイム制についても改定が予定されています。
裁量労働制については、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)が新設され、職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,075万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識等を必要とする業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や労使委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とすることが規定される予定です。
また、フレックスタイム制については、「清算期間」の上限が1か月から3か月に延長される予定です。

裁量労働制、フレックスタイム制を通して求められる今後の働き方とは?

働き方改革法の施行により、裁量労働制・フレックスタイム制ともに制度が改正され、より多くの企業がこれらの制度を活用していくことになると予想されます。企業には労働者のワークライフバランスを重視した、より柔軟な働き方が求められていくと考えられますので、これらの制度の仕組みや特性をうまく理解し、活用していくことが必要です。一方で、労働者には、短時間で効率的なアウトプットを出す等、労働生産性の向上が一層求められていくでしょう。

<参考>
専門業務型裁量労働制に関する協定届

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【監修】金田朋子(かねだ ともこ) 社会保険労務士

社労士事務所にて給与計算、各種社会保険事務、就業規則の作成・改定、行政機関調査対応等に関する社会保険・労務コンサルティング業務に従事後、現在はベンチャー企業内の社内社労士として勤務。
社労士事務所での外部コンサルタント、ベンチャー企業内での労務担当者としての経験を生かし、ベンチャー・中小企業に強い社労士として社会保険・労務コンサルティングを行っている。
Twitter : @tok0moco

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