- 作成日 : 2023年2月3日
会社の代表者変更で必要な社会保険手続きは?事業所関係変更届の書き方も解説
会社の代表者や名称の変更、所在地の移転などが発生した際は、社会保険の変更手続きを行う必要があります。特に年金事務所の管轄が変わる都道府県をまたぐような移転の場合には、保険料率が変更となる可能性があるため、すみやかに手続きを行うことが重要です。
ここでは、代表者の変更と所在地の変更に伴う社会保険の手続きについて解説します。
目次
会社の代表者変更で必要な社会保険手続きは?
会社の代表者が変更になった場合、健康保険・厚生年金保険は「事業所関係変更届」を提出します。労働保険・雇用保険については、法人と個人事業所で対応が異なります。
健康保険・厚生年金保険の必要書類
企業の代表者に変更があった場合、管轄の年金事務所に「事業所関係変更届」を提出します。提出期限は、対象となる事象が発生してから5日以内です。なお、協会けんぽに加入する事業所の場合は、年金事務所への届出をすれば協会けんぽへの届出は必要ありません。
しかし、健康保険組合に加入する事業所については、健康保険組合・年金事務所の双方に届出を行う必要があります。健康保険組合の場合、それぞれの組合で手続きの方法が異なることがあるため、事前に確認するようにしましょう。
なお、事業所が個人事業主の場合には、氏名変更の手続きの際、「事業所関係変更届」といっしょに「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を提出する必要があります。
参考:事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き|日本年金機構
労働保険・雇用保険の必要書類
代表者に変更があったときの手続きとして、労働保険(労災保険)と雇用保険については、法人の事業所の場合は届出不要です。個人事業所のみ、名称変更の手続きとして労働基準監督署およびハローワークへの届出を行います。
必要となる書類は、労災保険の手続きとして「労働保険名称、所在地等変更届」、雇用保険では「事業主事業所各種変更届」です。変更の事象が発生した日の翌日から10日以内に労働基準監督署および、管轄のハローワークに提出します。
個人事業所での代表者変更の場合
- 労働保険名称、所在地等変更届:(変更した日の翌日から)10日以内に管轄の労働基準監督署へ提出
- 事業主事業所各種変更届:(変更した日の翌日から)10日以内に管轄のハローワークへ提出
会社の住所変更でも社会保険手続きが必要?
移転により会社の住所が変更となる場合、健康保険・厚生年金保険・労働保険・雇用保険のすべてにおいて変更の手続きが必要です。
労働保険(労災保険)、雇用保険については、会社の所在地変更の際の届出を、変更の事象が発生した日の翌日から10日以内に移転後の所在地を管轄するそれぞれの労働基準監督署とハローワークへ提出します。
- 労働保険名称、所在地等変更届:(変更した日の翌日から)10日以内に管轄の労働基準監督署へ提出
- 事業主事業所各種変更届:(変更した日の翌日から)10日以内に管轄のハローワークへ提出
健康保険・厚生年金保険については、管轄の年金事務所内で移転するか管轄外に移るかによって提出書類が異なるため注意が必要です。労災保険や雇用保険では移転後の所在地を管轄する労働基準監督署やハローワークで手続きをします。一方、年金事務所の手続きは、管轄外へ移転する場合には、移転前の所在地を管轄する年金事務所になりますので注意しましょう。
参考:適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き|日本年金機構
適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き|日本年金機構
年金事務所の管轄内で移転・住所変更する場合の必要書類
- 健康保険
- 厚生年金保険
健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届(管轄内)を事案が発生してから5日以内に管轄の年金事務所へ提出します。
年金事務所の管轄外で移転・住所変更する場合の必要書類
- 健康保険
- 厚生年金保険
健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届(管轄内)を事案が発生してから5日以内に、移転前の管轄の年金事務所へ提出します。
なお、事業所が管轄外に移転する場合、健康保険料率が変更になる可能性があります。この場合、新しい保険料は届書に記載された「事業開始年月日」から適用されます。もし既に徴収済みの健康保険料に過不足がある場合には、管轄変更後に初めて納付する保険料で精算されます。
参考:適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄外の場合)の手続き|日本年金機構
事業所関係変更届の書き方・記入例は?
事業所関係変更届の記入例は、日本年金機構のウェブサイトにて公開されています。
引用:健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届(記入例)|日本年金機構
事業所関係変更届には、変更後の所在地などの情報以外に、事業所整理番号や事業所番号、変更後の年間における昇給月や賞与の支払い予定月といった情報を記入する必要があります。
また、事業所関係変更(訂正)届は、代表者の変更や所在地の変更のほか、以下のケースにおいても提出します。
(1)事業所の連絡先電話番号の変更
(2)事業主の変更
(3)事業主の氏名の変更
(4)「昇給月」、「賞与支払予定月」または「現物給与の種類」の変更
(5)「算定基礎届」または「賞与支払届」に被保険者氏名等を印字したものの送付を希望するときまたは不要となったとき
(6)事業主代理人を選任(変更)したときまたは解任したとき
(7)社会保険労務士に業務を委託したときまたは委託を解除したとき
(8)年金委員を委嘱したときまたは解任したとき
(9)健康保険組合の名称に変更(訂正)があったとき
(10)会社法人等番号に変更(訂正)があったとき
(11)法人番号に変更(訂正)があったとき
(12)事業所の「法人」「個人」「国・地方公共団体」の区分に変更(訂正)があったとき
(13)本店、支店の区分に変更(訂正)があったとき
(14)内国法人、外国法人の区分に変更(訂正)があったとき
引用:事業主の変更や事業所に関する事項の変更があったときの手続き|日本年金機構
代表者や所在地変更の際は社会保険の変更届を忘れずに行う
会社の代表者の変更や所在地の変更の際には、法務局の登記、税務署、都道府県税事務所、市区町村での手続きのほか、社会保険の手続きも必要です。変更する内容によって添付書類や手続きをする管轄の役所が異なりますので、変更の内容にあわせて、忘れずに社会保険の変更の手続きも行いましょう。
個人事業所の場合には、法人と異なり、代表者の変更の際に労働保険・雇用保険での変更届も必要になります。法人と個人事業所とでは届出の種類や必要となる添付書類が異なることがあるため、事前に確認し、確実に手続きを行いましょう。
よくある質問
会社の代表者変更で必要な社会保険手続きは?
代表者の変更があった場合、管轄の年金事務所に「事業所関係変更届」を提出します。提出期限は、対象となる事象が発生してから5日以内です。個人事業所の場合は労働基準監督署・ハローワークへも届出が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
事業所関係変更届の書き方・記入例は?
事業所関係変更届の記入例は日本年金機構のウェブサイトにて公開されています。事業所整理番号や事業所番号など、必要な情報を忘れずに記載しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
厚生年金の受給前に対象者が死亡した場合 – 手続きや金額
厚生年金に加入している方が亡くなった場合、本人の受給資格はなくなります。遺族は、亡くなった方が受給前だった場合には遺族年金を、受給中だった場合には遺族年金や未支給年金を受け取れる場合があります。ただし、そのためには請求手続きが必要です。本記…
詳しくみる扶養控除とは?所得税から引かれる金額や条件、配偶者控除との違い
扶養控除とは、納税者に所得税法上の扶養親族がいるときに、適用される控除制度のことです。同居の有無や年齢によって、38万~63万円の控除を受けられます。適用条件や配偶者控除との違い、扶養親族が老人ホームで暮らしている場合は同居とみなすか、また…
詳しくみる厚生年金基金の8つのメリット
厚生年金基金とは、企業年金の一種であり、厚生年金保険料の一部を「代行部分」として運用し、その運用益による「プラスアルファ部分」を公的年金に上乗せ支給する制度です。厚生年金基金の仕組みや給付について詳しく知りたい方は、「厚生年金基金と厚生年金…
詳しくみる厚生年金の受給額はいくら?計算方法も解説
企業などに雇われている方のほとんどは、給与から社会保険料として年金や健康保険、雇用保険などを天引きされていることでしょう。このうち年金については、実際にはどのような仕組みで将来いくらもらえるのかなど、気になる方も多いのではないでしょうか。 …
詳しくみる健康保険の年齢は何歳まで?70歳以上を雇用する場合の手続きを解説
健康保険は、労働者が医療機関を受診する際に必要となる制度です。年齢によって扱いが変わるため、労働者を雇用する際には注意しなければなりません。手続きに誤りがあれば、一旦治療費を全額自己負担しなければならない場合もあります。今回は70歳以上の健…
詳しくみる過労死とは?定義や症状および防止策を解説
繁忙期や納期の短縮などにより、どうしても長時間労働を行わざるを得ない状況となることもあるでしょう。しかし、長時間の労働は労働者の心身の健康を蝕み、最悪の場合は過労死という痛ましい結果にもつながってしまいます。 当記事では、過労死の定義や症状…
詳しくみる