• 更新日 : 2025年3月7日

病欠で有給を使いたくない場合は欠勤扱いになる?風邪や体調不良の対応方法を解説

風邪など急な体調不良で会社を休む場合、「有給休暇を使いたくない」と考える人もいるでしょう。本記事では、病欠時に有給を消化せずに休む方法や、就業規則・労働基準法の観点から押さえておくべきポイントを解説します。社員の権利を守りつつ、会社とのトラブルを防ぐための知識を身につけましょう。

病欠で有給を使いたくない場合の対処法

会社を病欠する際に「年次有給休暇を使わずに休みたい」という場合、いくつかの方法が考えられます。

欠勤扱いにする

有給休暇を使わずに休む場合は「欠勤」となり、その日数分の給料は支払われないのが基本です。有給休暇を使えばその日の給与は保証されますが、欠勤扱いにすれば有給の残日数を温存できます。

まずは上司や人事担当者に「今回は有給は使わず欠勤扱いで構いません」と相談し、自身の有給を使いたくない旨を伝えましょう。会社との合意が得られれば、病欠した日が欠勤として処理されます。ただし、欠勤の日数が人事評価に影響する企業もありますので、あらかじめ確認しておくと安心です。

振替出勤を提案する

どうしても欠勤したくない場合や、収入が減るのを避けたい場合は、別の日に勤務して埋め合わせる方法も検討できます。病欠した日の振り替えとして、週末や別の休日に出勤できないか提案してみましょう。これが認められれば、病欠日を公休扱いにし、有給休暇を使わずに休めます。

ただし、振替出勤を行うには会社の許可と調整が必要です。就業規則で振替休日・出勤の手続きが定められている場合もありますので確認しましょう。フレックスタイム制を導入している会社であれば、月内の他の日に勤務時間を調整して不足分を補うことも可能です。例えば、所定労働時間に足りない分を別日に残業するなどしてカバーできれば、欠勤扱いとせずに済むケースもあります。

特別休暇を活用する

会社によっては、福利厚生の一環で年次有給休暇とは別に病気療養のための特別休暇を設けている場合があります。名称は「病気休暇」「傷病休暇」など様々ですが、内容としては私傷病で一定期間休む場合に使える、賃金の支払いがある休暇です。例えば「年次有給休暇を使い切った後に○日まで有給扱い」「有給とは別枠で毎年○日付与」など会社ごとに規定があります。就業規則に特別休暇の種類や取得条件が記載されているはずなので、制度があれば遠慮せず所定の手続きを踏んで申請しましょう。特別休暇を使えば有給休暇を減らさずに休むことができ、給料も支給されます。

コロナやインフルエンザで有給を使いたくない場合

多くの企業では、新型コロナウイルスやインフルエンザの感染拡大を防ぐために、「特別休暇」や「感染症休暇」といった有給とは別枠の休暇を設けています。特にコロナに関しては、政府や自治体の指導に従い、休業補償を設けている企業もあります。まずは会社の就業規則や人事部に確認し、特別休暇が利用できるかを問い合わせることが重要です。

また、健康保険の傷病手当金を利用する方法もあります。傷病手当金は、業務外の病気やケガで連続して4日以上仕事を休んだ場合に、給与の約3分の2が支給される制度です。会社の健康保険に加入している場合は、勤務先の人事部や健康保険組合に相談し、申請手続きを行いましょう。

病欠した社員に有給取得を強制するのは違法!

法律上、風邪などの体調不良で病欠した社員に対して、会社が有給休暇の消化を一方的に強制することできません。有給休暇は、労働基準法第39条に基づいて労働者の権利として与えられており、取得の時期は労働者が自由に決めることが基本となります。会社側は「時季変更権(会社の業務に大きな支障が出る場合に、有給の時期を変更できる権利)」を持っていますが、これはあくまで時期の変更に関するものであり、労働者の同意なしに有給休暇を消化させることは認められていないのです。

そのため、もし会社が「病欠した日は自動的に有給休暇とする」といった運用をしている場合、労働基準法違反となる可能性があります。労働基準監督署や労働組合に相談して、適切な対応を求めましょう。

病欠をあとから有給として処理するのはおかしい?

法律上、年次有給休暇の取得は原則事前申請とされており、あとから有給扱いにすることを会社に要求する権利までは保障されていません。体調不良で急に休んだ後に「その日を年次有給休暇に変更したい」と言われても、会社としては認める義務まではないというのが原則です。

しかし実際には、事後の有給申請を認める会社もあります。例えば、急病で倒れてしまい家族からの連絡で欠勤扱いになったが、本人の復帰後に有給消化を希望するといったケースです。

事後の有給申請を認めるかどうかは、会社の就業規則やルールによって異なります。また、会社によっては、医師の診断書などの提出を求めることがあります。事後の有給申請を検討している場合は、あらかじめ有給休暇の取得ルールを確認しておきましょう。

有給を使い切った後に体調不良で休むとどうなる?

年次有給休暇をすべて使い切った後に体調不良で休む場合、一般的には「欠勤」扱いとなります。これは、有給休暇が労働者に与えられた一定の日数の範囲内で取得できる権利であり、使い切った後はそれ以上の取得が認められないためです。

欠勤となると、その期間の給与は支払われないのが通常ですが、会社の就業規則によっては「病気休暇(病気欠勤)」の制度がある場合もあります。この制度がある場合、一定期間は給与が支払われることや、欠勤扱いにならずに済むこともあります。また、会社によっては「特別休暇」や「公休」を認める場合があり、状況によっては柔軟な対応をしてもらえる可能性もあります。

さらに、長期間の療養が必要な場合、傷病手当金を申請できる可能性があります。これは健康保険の制度で、連続して4日以上仕事を休んだ場合に、給与の約3分の2の金額が支給されるものです。ただし、対象となるのは会社の健康保険に加入している正社員や一定の条件を満たす契約社員などに限られます。

病欠時は診断書を提出すべき?

病欠時に診断書を提出すべきかについては、会社の方針によって異なります。厚生労働省のモデル就業規則でも、「診断書の提出要否は各事業所で決めること」とされています。一般的には、3日以上の連続欠勤や頻繁な病欠の場合に診断書提出を求める場合が多いようです。また、インフルエンザなど伝染性の場合も、治癒証明書の提出を求められることがあります。これは他の従業員への感染を防ぐ観点から必要な措置です。

もし会社から診断書提出を求められた場合には拒否せず提出する義務があると考えた方が無難です。提出を渋ると「本当は仮病ではないか」と疑念を招きかねません。通院した病院で「会社提出用の診断書をお願いします」と依頼すれば発行してもらえます。診断書には「〇月〇日から〇月〇日まで休養が必要」等の記載がされますので、その指示に従って療養し、職場には原本またはコピーを提出します。提出方法は会社の指示に従い、郵送や復帰後直接提出など適切に行いましょう。

急な病欠を伝える時のポイント

スムーズに対応するためには、迅速かつ適切な連絡が重要です。まず、体調が悪く出勤できないと判断したら、できるだけ早く上司や担当者に連絡を入れましょう。朝の業務開始前、可能であれば始業1時間前までに伝えるのが望ましいです。

連絡方法は、会社のルールに従うことが基本です。多くの会社では、電話やメール、チャットツール(LINE、Slackなど)での報告が認められていますが、「電話連絡が必須」と決められている場合もあるため、就業規則を確認しておきましょう。

伝え方のポイントとして、簡潔で明確に報告することが大切です。以下のような内容を含めると、相手も状況を把握しやすくなります。

病欠の伝え方のポイント
  • 氏名と所属部署
  • 休む理由(体調不良のため)
  • 具体的な症状(可能であれば)
  • 休む期間(現時点での見込み)
  • 業務の引き継ぎや対応の必要性
  • 連絡可能な状況かどうか

例えば、電話で伝える場合は以下のように話すと良いでしょう。

おはようございます。〇〇部の△△です。申し訳ありませんが、今朝から高熱があり、体調が優れないため、本日はお休みをいただきたいと思います。現時点では明日以降の出勤についても様子を見ながら判断したいのですが、必要であれば連絡が取れますので、何かありましたらお知らせください。

メールやチャットの場合は、以下のようなシンプルな文面で伝えます。

件名:本日の欠勤について(〇〇部 △△)

おはようございます。〇〇部の△△です。

今朝から発熱と体調不良のため、本日はお休みさせていただきます。明日以降の出勤については、回復の状況を見ながら判断いたします。

ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

欠勤することで業務に影響が出る場合は、可能な範囲で引き継ぎ事項や代替対応の指示を伝えると、職場の負担を減らすことができます。ただし、無理をする必要はなく、体調が悪い場合は「後日対応する」と伝えるだけでも十分です。

病欠で有給を使いたくない場合は会社に相談しましょう

急な風邪や体調不良で会社を休む際、「有給休暇をなるべく使いたくない」と考える場合でも、欠勤扱いにしたり振替出勤を提案したりといくつかの対処策があります。病欠で有給を使うかどうかは労働者が決めることであり、会社が一方的に決めることはできません。自分の権利を正しく理解しつつ、会社とも十分に話し合って円満に問題を解決することが大切です。急な休みでも焦らず適切に対応し、しっかり療養してまた元気に職場復帰しましょう。


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