- 更新日 : 2024年11月1日
損益計算書で使われる勘定科目まとめ
損益計算書は会社における年間の収益や費用を明確にし、損益を可視化するための財務諸表です。損益計算書では勘定科目ごとに計上されているため、お金の流れを客観的に把握できます。そこで本記事では、損益計算書のおさらいや使われる勘定科目を一覧にして紹介します。特によく使われる勘定科目については理解を深めることで作成もしやすくなり、仕訳作業の効率化にもつながるでしょう。
目次
損益計算書のおさらい
損益計算書は、ある一定期間の収益や費用の損益の計算をまとめた財務諸表です。貸借対照表やキャッシュフロー計算書と同じく決算書の1つとなります。
損益計算書は構成しているのは「収益」「費用」「利益」の3要素です。利益はさらに5段階に分かれています。
損益計算書の分析には、この5つの利益をしっかりと理解する必要があります。
損益計算書の勘定科目一覧
ここからは損益計算書の各勘定科目について、それぞれ解説します。
売上高
売上高とは、企業活動の商品やサービスの提供などにより獲得した売上の合計額のことです。ここでは売上高に計上される勘定科目について解説します。
- 売上値引き:商品や製品に何らかの不良などがあり、商品代金を引き下げた値引額のこと
- 売上返品:販売した商品や製品の返品を受けたとき処理するための科目
- 売上割戻し:販売した商品やサービスの量によって、事前に取り決めた割合の金額を一部購入者に戻すもの
売上原価
売上原価は、商品の仕入れや製品の製造にかかった費用のことで、商品が販売されたタイミングや、サービスが提供されたタイミングで計上される原価のことです。ここでは売上原価で調整される勘定科目について解説します。
- 期首商品棚卸高:前期末の棚卸で在庫となり残った商品のこと。当期へ繰越すことが可能
- 当期仕入高:当期に販売する商品の売上における、原価の仕入分を指す
- 仕入値引:売上品の品質不良や数量不足、破損といった原因によって、仕入れ高から控除される金額のこと
- 仕入返品:返品などを実施した際に計上する、買掛金の減額や代金を返戻金額分を仕入れ高から控除したもの
- 仕入割戻し:一定期間に多くの取引をした仕入先から、仕入高などを基準に割戻しを受けることを指す科目のこと。仕入高からの控除が原則
- 期末商品棚卸高:期末に在庫となった残った商品を、翌年に繰越すための科目
販売費及び一般管理費
商品や製品の販売にかかった費用のうち、販売活動や管理活動に間接的にかかる費用の合計額のことです。ここでは販売費及び一般管理費に計上される勘定科目について解説します。
- 役員報酬: 取締役や監査役の役務対価である報酬役員報酬の支給金額
- 役員賞与:取締役や監査役など会社役員に役務対価として支払われた役員報酬のうち、賞与の分の金額のこと
- 役員退職金:創業社長や代表取締役など役員の退職に対して支給される退職金に使う科目。一般従業員の退職金と区別するために設定されたもの
- 給料手当:社員や従業員などに支払った給与や諸手当の金額
- 賞与:社員や従業員などに支払ったボーナスに該当する金額
- 退職金:従業員の退職時に支払う退職金(慰労金や一時金など)に該当する金額
- 法定福利費:従業員の社会保険料や労働保険料などのうち、会社負担分の金額
- 福利厚生費:慶弔見舞や結婚祝い金、学資補助、香典といった福利厚生のために、給与や交際費以外で従業員全員に支出した費用の処理に使う科目。ただし、社会通念上相当と認められることが条件
- 雑給:アルバイトやパートタイマーといった有期雇用の従業員に支払う給与や手当のこと
- 外注費:外部企業や個人事業主と業務委託契約の下、一部業務を依頼した際に発生する費用
- 販売手数料:代理店などに自社商品やサービスを販売してもらった際に、手数料として支払う金額のこと
- 荷造運賃:商品出荷時に発生する梱包材料費や配送料、荷造りに必要な費用など
- 広告宣伝費:不特定多数の人々に対する宣伝効果を意図しておこなった施策に対して支出した金額
- 旅費交通費:従業員が業務遂行に必要な場所へ移動するための、交通費や航空機の代金、宿泊費といった費用
- 会議費:取引先や社内スタッフとの打ち合わせなど、業務に必要な会議を実施するために必要な勘定科目。おもに会議の際に使用した喫茶店や貸会議室の料金、資料代など
- 交際費:顧客やステークフォルダーに対しての接待や供応、慰安、贈答などで支出した費用の計上に使う科目
- 水道光熱費:事業活動に必要な水道代やガス代、電気代にかかった費用を計上するための科目
- 通信費:事業活動において必要な電話や郵便、インターネット、その他の通信手段として支出した費用など
- 事務用品費 消耗品費:事業活動に必要な鉛筆やコピー用紙、伝票類などを購入する際に発生した費用を計上するための科目
- 租税公課:住民税や事業税、法人税、消費税以外の租税公課の支払い金額のこと。固定資産税や不動産取得税といった、公的な課金や罰金などへの支払いが対象
- 寄付金:第三者に対して金銭や金銭以外の品を無償贈する、寄付金や拠出金として発生した費用
- 修繕費:建物やOA機器などの固定資産や消耗工具器具備品を現状復帰させるため、修繕や改修をおこなった際に発生した費用を計上
- 地代家賃:土地や建物(事務所など)、倉庫、駐車場などの賃借料を経費計上する際に使う科目
- 賃借料:土地や建物以外の、機械などの資産を借りるために必要な賃借料
- 減価償却費:固定資産の取得価額をその耐用年数の期間に応じて減価償却する金額を計上する科目(有形固定資産の場合)無形固定資産の場合は、資産の有効期間に応じて配分を実施
- 繰延資産償却費(くりのべしさんしょうきゃくひ):支出効果が将来に及ぶ費用を繰延資産として資産計上した場合、償却期間中の決算時に償却するための勘定科目のこと
- 保険料:生命保険や火災保険、自動車保険などについて保険会社との契約内容に応じて支払う金額
- 支払手数料:サービスの利用料金や銀行の振込手数料などに支払った金額
- 支払報酬料:弁護士や税理士といった士業や、イラストレーターやプログラマーなどの専門家に顧問料や業務委託費として支払った費用
- 諸会費:事業に関係する業界団体や自治体、商工会議所に所属するための会費や組合費として支払った費用を計上する科目
- 新聞図書費:新聞や雑誌、書籍などの購入時に支払った費用を計上する科目
- 研究開発費:新技術の研究や調査、商品開発、改良などに支出した費用を計上するための科目
- 研修費:従業員が研修会や講習会、セミナー、教育訓練などに参加した費用を計上するための科目
- リース料:OA機器や事業に必要な機会などのリース料として支払った費用を計上するもの
- 貸倒損失(かしだおれそんしつ):取引先の倒産などで、売掛金や貸付金といった債権の未回収金額
- 貸倒引当金繰入額(かしだおれひきあてきんくりいれ):貸倒によって想定される損出を見積もった際の金額を計上する科目(この段階では貸倒は発生していない)
- 賞与引当金繰入額:賞与の支払いに備え、決算時に賞与分の金額を勘定として繰入し、賞与引当金としてストックするための科目
- 退職給付費用:将来、従業員に支払う退職金のうち、現在までに発生している金額を見積り計上するための科目
- 雑費:他の勘定科目に該当しない費用や、少額もしくは一時的な費用のこと
営業外収益
営業外収益とは本業以外の投資や財務活動などを通じて、定期的に発生する収益のことです。ここでは営業外収益に計上される勘定科目について解説します。
- 受取利息:預金や貯金、有価証券から得られる利息など
- 受取配当金:他法人からの利益配当や中間配当、剰余金や投資信託などの収益分配による金額のこと
- 仕入割引:買掛金を支払期日前に支払うことで、支払額から一定額の割引をしてもらった金額を計上するための科目
- 為替差益:為替の相場変動により発生した損益のこと
- 有価証券売却損 :企業が保有する有価証券の売却で発生した利益
- 有価証券評価損:企業が保有する有価証券の時価と帳簿価額の差額処理に使う科目
- 貸倒引当金戻入益(かしだおれひきあてきんもどしいれえき):受取手形や売掛金などの売上債権や金銭債権が改修できなかった場合の損出を、引当金として計上する科目
- 賞与引当金戻入益:従業員に支払う賞与のうち今期負担分を引当金として計上するための科目
- 退職給与引当金戻入益:従業員に支払う退職金にかかる費用のうち、今期負担分を引当金として計上して取り崩しをおこなった金額のこと
- 雑収入:本業以外の収益で、少額かつ他のいずれの勘定科目にもあてはまらない、重要性の低い収入
営業外費用
営業外費用とは、主たる営業活動以外から継続的に発生する費用の総称のことです。ここでは営業外費用に含まれる勘定科目について紹介します。
- 支払利息:金融機関や取引先からの借入金や、社債に発生する利息
- 売上割引:掛取引による代金が期日前に支払われ、期日短縮による利息分の割引額に使う勘定科目
- 手形売却損:手形割引をおこなった際に発生する、手形満了日までの利息相当額との差額のこと
- 為替差損:外貨建て金銭債権債務為替の決算時に、相場変動により発生した損益
- 有価証券売却損:有価証券の売却の結果として発生した損益
- 有価証券評価益:売買目的で企業が保有する有価証券を時価評価した結果、評価益がある場合に該当金額を計上するための科目
- 投資有価証券売却損:転売目的ではない有価証券を売却した結果、発生した損失額を計上するための科目
- 雑損失:他の勘定科目に分けることができず、少額かつ重要ではない損益のこと
特別利益
特別利益とは臨時的もしくは偶発的に、会社の業務内容とは関係しない利益のことです。ここでは、特別利益に計上される勘定科目について解説します。
- 固定資産売却益:土地や建物、車両運搬具などの固定資産の売却において、売却価額が売却時の帳簿価格を上回った場合の差額処理に使う勘定科目
- 償却債権取立益:以前に貸倒処理をおこなった債権を回収した金額
- 保険差益:火災や地震など損害保険の支払いが関係する事故や災害が起きた場合に、保険会社から補償のために受けた保険金の金額が、実際の被害で受けた損壊の金額よりも多い、その超過差額の金額を計上するための科目
- 前期損益修正益:過去分の経理処理のミスを修正した際に発生した利益額
- 投資有価証券売却益: 売買以外の目的で企業が保有する有価証券を売却した結果、得られた利益額のこと
特別損失
特別損失とは臨時的、もしくは偶発的で会社の業務内容には直接関係しない損失のことです。ここでは、特別損失に計上される勘定科目について紹介します。
- 固定資産売却損:土地、建物、車両運搬具などの固定資産の売却において、売却価額が売却時の帳簿価格を下回った場合の差額
- 固定資産除却損:不要もしくは耐用年数を迎えた固定資産の除却より生じる損失の計上に使う科目
- 災害損失:火災や災害、盗難などによって、固定資産や棚卸資産を損失した際の処理に使う科目
- 前期損益修正損:過去の経理処理のミスなどが原因で発生した損失額を計上するための科目
法人税等
法人税等とは会社の利益に課税される法人税や法人住民税、法人事業税のことです。ここでは法人税等に含まれる勘定科目について解説します。
- 法人税、住民税及び事業税:確定した法人税や住民税、一部の事業税などに支払う金額
- 法人税調整額:会計上の利益と法人税の課税所得との差額を一定期間に配分する調整額を計上するための科目
損益計算書のテンプレート-無料ダウンロード
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損益計算書で使われる勘定科目を改めておさらいしよう
ここまで損益計算書のおさらいや使われる勘定科目を一覧にして紹介しました。損益計算書は正しい経営を行うにあたり必要な情報が多く含まれています。
正確な損益計算書を作成するためにも、勘定科目の内容を理解することは重要です。損益計算書で使われる勘定科目を改めてみなおすことで、理解が乏しいものについてはこの機会に覚えてしまいましょう。
また、勘定科目の設定は各社それぞれで名称や定義、範囲を考えても問題ありません。その際は、どの勘定科目を用いるかが重要です。各社ごとに基準やルールを設け、効率的な運用をおすすめします。
よくある質問
損益計算書とは?
損益計算書は、ある一定期間の収益や費用の損益の計算をまとめた財務諸表であり、「収益」「費用」「利益」の3要素で構成されています。詳しくはこちらをご覧ください。
損益計算書に使われる勘定科目は?
損益計算書に使われる勘定科目には、売上高・売上原価・販売費及び一般管理費・営業外収益・営業外費用・特別利益・特別損失・法人税等があります。詳しくはこちらをご覧ください。
損益計算書の利益は何で構成されている?
利益は「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つで構成されています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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