- 更新日 : 2024年8月8日
帳簿の締め切りとは?書き方と流れを解説
決算期にすべての帳簿の記載が終わったら、当期の記入と次期の記入を区別するために帳簿の締め切りを行わなければなりません。
帳簿の締め切りには4つの流れがあります。収益、費用の各勘定の残高を0にして損益勘定に振り替える損益振替、当期純利益を繰越利益剰余金へ振り替える資本振替を順に行い、すべての勘定を締め切って繰越試算表を作成するという流れです。
本記事では、帳簿の締め切りで行う4つのステップについて、詳しく紹介します。
帳簿の締め切りとは
帳簿の締め切りとは、決算期を迎えて各勘定の残高を締め切る作業です。帳簿を締め切ることにより、貸借対照表では1年間の財務状態を把握し、損益計算書では事業成績を確認ができます。
収益と費用は一会計年度の利益や経営成績を表すため、次期は0から開始するのが基本です。資産・負債・純資産は会社の財政状態や資産を表すもので、次期へ繰り越します。
帳簿の締め切り方法は大陸式と英米式があり、大陸式とは費用・収益・資産・負債・純資産のすべての勘定につき、振替仕訳を行う方法です。
一方、英米式は費用・収益の残高は損益勘定に振り替え、資産・負債・純資産は仕訳帳を経由しないで総勘定元帳で締め切る方法です。費用・収益を締め切るときには、決算振替仕訳を行いますが、資産・負債・純資産の諸勘定は「次期繰越」と記入して締め切り、繰越試算表を作成します。
大陸式はすべての勘定で仕訳を行って貸借一致を検証する方法で、手間がかかるため実務ではあまり使われていません。本記事では、帳簿の締め切りについて英米式で説明します。
帳簿の締め切りの手順
帳簿を締め切る際は、4つの手順で行います。まず、収益と費用の各勘定残高を損益勘定へ振り替えます。次に損益勘定を0にして繰越利益剰余金勘定に振り替え、すべての勘定を締め切ってから繰越試算表を作成するという流れです。
ここでは、4つのステップを順に見ていきましょう。
損益振替
当期収益・費用の残高は次期には引き継がないため、残高を0にして「損益」という勘定科目に振り替える作業が必要です。これを損益振替と呼びます。
仕入に500円の残高がある場合の仕訳は次の通りです。
売上に700円の残高がある場合は以下のように記載します。
ほかにも残高がある科目があれば、同じく「損益」として仕訳しましょう。
資本振替
次に、損益勘定を0にして資本振替という作業を行います。当期純利益が計上されたときは資本が増えたと考え、損益勘定を繰越利益剰余金の勘定に振り替えましょう。当期純損失が出た場合は、反対側に記載します。
当期純利益が50万円計上された場合の記載は、次の通りです。
当期純損失が4万円だった場合は、次のように記入します。
勘定締め切り
次にすべての勘定を締め切りますが、損益勘定と資産・負債・純資産の勘定で締め切り方が異なります。
【損益勘定】
損益勘定は資本振替を行なっているため、次期繰越は行いません。収益・費用の勘定は、損益振替と資本振替で貸借の金額が一致しています。
まず、各勘定の借方、貸方の合計金額を一番下に記載して、金額が一致していることを確認できたら、合計金額の下に二重線を引きましょう。
以下が締め切りの一例です。
【資産・負債・純資産】
資産・負債・純資産は、残高がある科目を次期に繰り越します。各勘定の貸借の差額が次期繰越額です。
残高のある欄の反対側に「次期繰越」と記入し、左右の金額を一致させて二重線を引きます。二重線の下に、「前期繰越」と記入してください。
以下が締め切りの一例です。
繰越試算表の作成
最後に、次期繰越の金額を表にした繰越試算表を作成します。各勘定科目の前期からの繰越残高が左右で同じ数字になっているかを確認するために作るものです。
次期繰越の記入がある勘定科目をすべて記載し、左右の合計金額が一致することを確認しましょう。
繰越試算表の一例は、以下の通りです。
令和〇年12月31日
40,000 | ||
60,000 | ||
30,000 | ||
200,000 | ||
20,000 | ||
210,000 | ||
100,000 | ||
330,000 | 330,000 |
帳簿の締め切りは正しく行おう
帳簿の締め切りは決算期において、当期と次期の記入を区別するためにおこなうものです。収益と費用の勘定は損益勘定へ、損益勘定の差額は繰越利益剰余金へ振り替え、次期は0からスタートします。資産・負債・純資産の勘定は次期に繰り越すという流れです。締め切りを行ったあと、最後は繰越試算表を作成しましょう。
このあとは、決算の総仕上げとして損益計算書と貸借対照表を作ります。そのほかの処理として、財務諸表を作ることも忘れないでください。
よくある質問
帳簿の締め切りとは?
決算整理で当期の金額を確定させ、次期の帳簿に繰り越す作業です。詳しくはこちらをご覧ください。
帳簿の締め切りの流れは?
収益、費用の各勘定の残高を0にする損益振替と当期純利益(または当期純損失)を繰越利益剰余金勘定へ振り替える資本振替を行い、その後、すべての勘定を締め切って繰越試算表を作成します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
直接原価計算とは?全部原価計算との違いや計算のポイント
直接原価計算とは製造費用を変動費と固定費に分け、変動費で原価計算をする方法です。一方で変動費・固定費ともに製造原価とする方法を、全部原価計算と呼びます。どちらも原価計算方法の手法ですが、内容についてあまり詳しくない方も多いでしょう。 本記事…
詳しくみる純資産とは?総資産との違いや内訳、見るべきポイントを解説
「純資産」とは、企業が所有する資産の総額から負債の総額を差し引いたものです。組織の実質的な経済的価値を表しており、財務状態の健全性を評価するのに用いられます。本記事では純資産と総資産の違いや内訳、決算書において見るべきポイントをわかりやすく…
詳しくみる企業結合に関する会計基準とは?徹底解説
企業結合会計は、M&Aの様々な取引を分類して会計処理が行われます。 この会計基準を理解するためには、M&Aの各取引に加えて、会計基準独特の分類の仕方を知らなければいけません。 そこで、この記事では企業結合に関する会計基準を理解できるように、…
詳しくみる決算書とは?主な種類や見方をわかりやすく解説
決算書を見ると企業の経営状態や財務状況がわかります。しかし、見方がわからないと記載されている数字の意味がわからず、企業の経営状況を適切に把握することができません。決算書の作成は税理士に依頼することが一般的とされていますが、自身でも読み取れる…
詳しくみる収支報告書とは?収支報告書と決算報告書の違いや書き方を具体例別に紹介!
収支報告書とは、企業や団体などの組織や、飲み会や部活動などの集まりでの収支を記録した書類です。決算報告書よりも簡潔な内容とすることが多いですが、お金の出入りや運営状況の判断材料になるため、組織の外部・内部のどちらにとっても重要な情報源となり…
詳しくみる総資産とは?種類や決算書の記載場所、分析方法などをわかりやすく解説
総資産とは、決算日時点で会社が持っているすべての資産を合計したもののことです。総資産は、流動資産・固定資産・繰延資産の3つの種類の資産に分けられます。総資産からわかることや純資産との違いについてわかりやすく解説します。 総資産とは 総資産と…
詳しくみる