• 作成日 : 2021年4月9日

決算短信とは?概要と読み方を徹底解説

決算短信(けっさんたんしん)とは、企業の財務情報や経営状態がまとめてある書類のことです。投資家にとっては非常に有益な情報源であり、証券取引所でも重要情報として扱われています。しかし、専門用語や記載内容の多さから「どこをどう読めばよいのかわからない」と思う方も少なくありません。

当記事では決算短信の概要や種類、開示される時期、有価証券報告書との違いを解説します。読み方のポイントも紹介するので、ぜひ決算短信の理解にお役立てください。

決算短信とは

決算短信とは、上場企業が決算および四半期決算の発表を行う際に、決算内容の要点をまとめた書類です。
決算短信
【出典】マネーフォワード | 決算短信

もともとは記者クラブが決算発表内容の標準化を上場企業に要請したのがはじまりで、その後、証券取引所によって、さまざまなルールが定められました。決算短信はすべての上場企業が作成・開示することが義務付けられており、証券取引所が上場規程によって定めた様式を用いて作成します

上場会社は、事業年度又は連結会計年度に係る決算の内容及び四半期累計期間又は四半期連結累計期間に係る決算の内容が定まった場合は、直ちにその内容を開示することが義務づけられています。東京証券取引所(以下「東証」といいます。)は、以下に掲載する参考様式等に基づいて決算短信及び四半期決算短信の作成・開示を行っていただくよう、要請しています。
(引用:日本取引所グループ|決算短信・四半期決算短信作成要領

決算短信の大きな目的は、投資家に向けて早めに決算結果を伝えることです。本来、正式な決算結果が出るのは3ヶ月以上先になりますが、決算に関する情報は投資判断の基礎となる重要な会社情報です。

投資家はいち早く情報を求めます。そのため、日本取引所グループ(JPX)も「速やかに内容を取りまとめて決算短信を開示してほしい」と要請を行っています。

そこで、正式な決算結果となる「有価証券報告書」とは別に、決算結果の速報となる決算短信の作成を上場企業に義務付けている状況です。通期決算の情報を載せる「通期決算短信」と、四半期決算ごとの情報を載せる「四半期決算短信」に分かれます。

通期決算短信および四半期決算短信は「サマリー」と「添付資料」の2部構成になっています。記載事項は主に次のとおりです。

  • 期間中の経営成績や財政状態、キャッシュ・フロー
  • 株式の配当状況や配当予想
  • 今後の業績予想 など

ただし、決算短信は速報の意味合いが強く、記載内容については推測の部分も含まれます。情報の網羅性や正確性は有価証券報告書が勝ります。

もし開示情報に誤りがあった場合は「決算発表資料の訂正」として外部に開示しなければなりません。

なお、当記事においては東京証券取引所の規定を例に紹介していますが、日本国内の他の証券取引所でも、仕様だけが異なる同様の規定が存在します。

決算短信の発表時期

決算短信は、通期決算および四半期決算が終了した後、1~2ヶ月後に証券取引所やメディアを通じて発表されます。原則として、監査や四半期レビューの終了を待たずに開示を行う点が特徴です。

決算の内容の開示について、上場規程においては、「決算の内容が定まった場合」に直ちにその内容を開示することを求めており、監査や四半期レビューの手続きの終了は開示の要件とはしていません。
これは、決算短信等には、事業報告等や有価証券報告書などの法定開示に先立って決算の内容を迅速に開示する速報としての役割が求められるためです。

(引用:決算短信・四半期決算短信作成要領等)

「決算短信・四半期決算短信作成要領等」によると、正確には決算後30日以内、遅くとも45日以内に開示することが望ましいとされています(決算の45日ルール)。

もし50日を超えた場合は、開示内容と合わせて「遅れた事情」や「翌事業年度もしくは翌連結会計年度以降における決算内容の開示にかかる見込みや計画」も開示しなければなりません。

日本は3月末を決算としている企業が多いことから、以下の時期で決算短信が発表となるケースが多いです。

  • 通期決算短信:4月下旬~5月中旬
  • 四半期決算短信:1月下旬~2月中旬、7月下旬~8月中旬、10月下旬~11月中旬

とくに通期決算短信が発表される4月下旬~5月中旬は、株価が一気に動くことも珍しくありません。ただし、外国企業の場合は3月決算よりも12月前後の決算が多く、それに倣って12月や11月、1月を決算月とする日本企業も存在します。

決算短信の種類

ここからは「通期決算短信」と「四半期決算短信」のそれぞれの概要を解説します。

通期決算短信

通期決算短信は、事業年度1年分の決算内容をまとめた年次報告です。主な記載内容は以下のとおりです。

決算短信   概要
サマリー・連結(個別)経営成績や財政状態、キャッシュ・フロー
・株式の配当状況や配当金総額、次期の配当予想
・経営や財政状態を踏まえた次期の業績見通し
・期中における重要な子会社の異動や会社方針変更などの注記事項
・そのほか通期業績を見通す際に有用と思われる情報 
など
添付資料・各種連結財務諸表個別財務諸表
・当期の経営成績や財務情報の概況
・事業継続を前提とした上で、将来的に経営に大きな影響を及ぼすと思われる事象 
など

四半期決算短信

四半期決算短信とは、四半期ごとの決算内容をまとめたものです。3ヶ月ごとにある四半期決算後に開示されます。

「そもそも四半期ごとになぜ決算を行う必要があるのか」という疑問もありますが、これは投資家へタイムリーな投資の判断材料を届けるためです。かつて日本は諸外国と比べて企業業績の公表が遅く、国際競争力などの観点から問題視されていました。

また、ベンチャーやスタートアップなどの新興企業の業績変動は非常に激しく、通期の決算のみでは正しい判断ができません。こうした背景もあり、四半期決算の正式な決算結果である「四半期報告書」が金融商品取引法にて提出義務となり、これにあわせるように四半期決算短信の開示も証券取引所にて義務付けされました。

内容は累計期間で記載されます。例えば、4月から事業年度開始の企業を例にみていきましょう。

  • 第1四半期:4~6月
  • 第2四半期:4~9月
  • 第3四半期:4~12月

四半期決算短信に記載する内容は、主に以下のとおりです。

決算短信   概要
サマリー・四半期の累計の連結(個別)経営成績や財政状態
・株式の配当状況や配当予想
・経営や財政状態を踏まえた年度末業績の見通し
・四半期累計期間中における重要な子会社の異動や会社方針変更などの注記事項
・そのほか通期業績を見通す際に有用と思われる情報 
など
添付資料・各種四半期連結財務諸表や個別財務諸表
・四半期中の経営成績や財務情報の概況
・事業継続を前提とした上で、将来的に経営に大きな影響を及ぼすと思われる事象 
など

なお、特定事業会社に当てはまる銀行業や保険業、信用金庫企業などは第2四半期までのみ作成します。

決算短信のファイル形式と開示方法

決算短信は以下のWebサイトにてPDF形式等で閲覧可能です。

決算短信は適時開示情報サービス(TDnet)を通じて証券取引所に提出されます。提出時のファイル形式はXBRLデータと呼ばれる、企業の財務情報を記述するための標準言語XBRL規格で行うのが一般的です。

また、決算短信の様式は、証券取引所が公表する以下の参考様式にもとづいて作成するよう要請があります。

決算短信サマリー情報用の参考様式
通期第1号参考様式【日本基準】(連結)
通期第2号参考様式【日本基準】(非連結)
通期第3号参考様式【IFRS】(連結)
通期第4号参考様式【米国基準】(連結)

四半期決算短信短期サマリー情報用の参考様式
四半期第1号参考様式【日本基準】(連結)
四半期第2号参考様式【日本基準】(非連結)
四半期第3号参考様式【IFRS】(連結)
四半期第4号参考様式【米国基準】(連結)

特定事業会社第2四半期の決算短信サマリー情報用の参考様式
四半期第5号参考様式【日本基準】(連結)
四半期第6号参考様式【日本基準】(連結)
四半期第7号参考様式【IFRS】(連結)

参考様式の詳細は、日本取引所グループの公式サイト「決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領」より確認可能です。

決算短信と有価証券報告書との違い

有価証券報告書も決算短信と同じく、企業情報の財務情報や経営状態を取りまとめて開示するための書類です。
有価証券報告書
【出典】マネーフォワード | 有価証券報告書

目的も同じく「投資判断に必要な情報を開示すること」ですが、提出ルールや情報量に大きな違いがあります。具体的には以下のとおりです。

 有価証券報告書決算短信
情報の正確性確定情報であるため正確速報値とある程度の予想が入るため確定情報ではない
情報量数百ページに及ぶことが多く情報量が豊富数十ページに収まることが多く必要最低限
開示タイミング   決算日後3ヶ月以内決算後45日以内
ルール・金融商品取引法
・提出義務
・証券取引所
・法律的な縛りはない

とくに大きな違いは情報量です。有価証券報告書には決算短信の内容に加え、より詳細な設備の状況や株式の変動状況、配当の状況、将来的な事業予測などが記載されています。

有価証券報告書の提出義務があるのは、上場・非上場にかかわらず以下のいずれかに当てはまる有価証券の発行者です。

  • 金融商品取引所に上場されている
  • 店頭登録されている
  • 募集または売出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出している
  • 所有者数が1,000人の株券または優先出資証券、もしくは所有者数が500人以上の有価証券

正確かつ詳細な情報であるのが有価証券報告書の特徴ですが、市場状況や世界情勢についていち早く情報を掴みたい投資家にとっては、決算短信の方を重視する傾向があります。

決算短信の読み方

決算短信を読めるようになれば、専門家の予想よりも正確かつ詳細な情報が手に入ったり、今後の業績予想を立てやすくなったりなどのメリットがあります。自分で事業を行っている場合は、自社経営についての分析に応用できるはずです。

とはいえ決算短信の情報量は多いので、まずは要点だけを押さえた読み方が大切になります。決算短信で見るべき部分は以下の情報です。

  • 連結経営成績
  • 連結財政状態
  • 連結キャッシュ・フローの状況
  • 連結業績予想

それぞれの概要や読み方のポイントをご紹介します。

連結経営成績

連結経営成績
【出典】日本取引所 | 決算短信・四半期決算短信作成要領等

連結経営成績とは、売上高や営業利益経常利益当期純利益などの「1年間または四半期の営業成績」を表すものです。それぞれの意味をみていきます。

  • 売上高:売上原価販売費及び一般管理費などを差し引く前の売上
  • 営業利益:「売上高-売上原価-販売費及び一般管理費」で算出する本業で上げた利益
  • 経常利益:営業利益に本業以外の損益(営業外収益・費用)を加えた利益の総額
  • 当期純利益:経常利益に臨時的または想定外の損益(特別利益・損失)を加えた利益

連結財政状態

連結財政状態
【出典】日本取引所 | 決算短信・四半期決算短信作成要領等
連結財政状態とは、総資産や純資産、自己資本比率、1株あたりの純資産などの「企業の負債や資本の状況」を表すものです。それぞれの意味をみていきます。

  • 総資産(総資本):企業が持つ負債と資本の合計額
  • 純資産(自己資本):総資本のうち返済義務のない金額
  • 自己資本比率:総資産(総資本)のうち純資産(自己資本)の割合
  • 1株あたりの純資産(BPS):純資産を発行済株式数(自社株を除いた数値で計算するのが主流)で除した企業の安定性を見る数値

連結キャッシュ・フローの状況

連結キャッシュフロー状況
【出典】日本取引所 | 決算短信・四半期決算短信作成要領等

連結キャッシュ・フローの状況とは、営業活動、投資活動、財務活動における現金の収支を表したものです。それぞれの意味をみていきます。

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー:本業での現金収支
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー:固定資産や投資有価証券などの売買による投資活動関係の現金収支
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー:営業活動や投資活動の維持のための資金調達・負債返済による現金収支

連結業績予想

連結業績予想とは、その名のとおり次期の業績予想値です。連結経営成績と同じく売上高や営業利益などを用います。

投資家の多くはこの連結業績予想と合わせて、次期以降の経営ビジョンや戦略をチェックし判断材料とします。その後「無理がある計画で信憑性がない」「堅調な数値で来期も安定だが成長性は未知数」「3年前からの上がり幅を見ると大幅に達成できそうだ」など、総合的に見た投資判断を行うのです。

決算短信を理解し適切な業務分析や投資活動を!

決算短信は上場企業の通期および四半期の決算の要点をまとめた書類のことです。財務状態や経営状況を中心とした企業の重要な情報が載っているため、投資家にとって貴重な情報源になります。

意味や読み方をしっかり理解することで、企業会計や財務、経営分析の理解ならびに実務のスキルアップにつながるでしょう。自身の投資活動を行う上でもプラスになるはずです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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