• 作成日 : 2022年8月19日

軽量鉄骨の耐用年数や減価償却費計算を詳しく解説

軽量鉄骨の耐用年数や減価償却費計算を詳しく解説

軽量鉄骨は、その用途や鉄骨の厚みによって耐用年数が変化します。購入する際には、事前に耐用年数を確認しておくことが必須です。本記事では、軽量鉄骨の建物の耐用年数や減価償却費の計算方法、リフォームが耐用年数に与える影響などを具体的に解説しています。これから軽量鉄骨の建物を取得する場合や、減価償却費の計算に困っている人はぜひ参考にしてください。

減価償却とは

建物や機械など、事業に用いる資産のほとんどは、時間の経過や使用により会計上の価値が減少していきます。このような資産を取得した場合には、取得時にまとめて費用計上するのではなく、その耐用年数に応じて少しずつ費用計上していくことが求められます。この会計上の手続きを「減価償却」と呼びます。

減価償却の対象となる資産は取得価額が比較的大きく、数年~数十年にわたって使用するものです。それを取得時に一度に費用化してしまうと、実際の使用と費用計上のタイミングが合わなくなってしまいます。これを避けるために、減価償却資産は使用期間で按分して費用を計上する(減価償却する)のです。

土地や骨董品のように、時間の経過や使用によって価値が減らないものは減価償却の対象ではありません。よって、土地と建物をあわせて取得した場合には、建物だけを減価償却していくことになります。

減価償却の計算をする際に用いる耐用年数は、その種類によって法律で定められています。この耐用年数のことを「法定耐用年数」といいます。減価償却資産ごとの法定耐用年数を知りたい人は、下記ページに詳しく記載されているので参考にしてください。

参考:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表

減価償却は、資産の価値を減少させ、費用を増やす会計処理です。よって、減価償却が行われると貸借対照表では資産の減少、損益計算書では費用の増加という形で計上されることになります。

減価償却について詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。

参考:国税庁 No.2100 減価償却のあらまし

軽量鉄骨の減価償却では「法定耐用年数」がポイント

建物は、用途と構造によって一律に法定耐用年数が定められています。たとえ建築士に依頼するなどして丈夫な構造を工夫したとしても、法定耐用年数が変わることはありません。建物を建てたり取得したりする時は、法定耐用年数をあらかじめ確認しておくことが重要です。

軽量鉄骨の中でも厚さによって耐用年数が分けられており、肉厚が3mm以下かどうかが、法定耐用年数を決めるひとつのラインになります。軽量鉄骨の法定耐用年数は使用目的と肉厚の組み合わせで決まるため、具体的な法定耐用年数は以下の表の通りになります。

減価償却額を計算する際は、この表に記載された耐用年数をもとにして計算を行いましょう。

使用目的鉄骨格材の肉厚法定耐用年数
事務所3mmを超え、4mm以下30
3mm以下22
店舗・住宅3mmを超え、4mm以下27
3mm以下19
飲食店・車庫3mmを超え、4mm以下25
3mm以下19
ホテル・病院3mmを超え、4mm以下24
3mm以下17
公衆浴場3mmを超え、4mm以下19
3mm以下15
工場・倉庫3mmを超え、4mm以下24
3mm以下17

参考:国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備)

リフォームを行った場合

不動産オーナーであれば、リフォームを行った場合に耐用年数がどうなるのか気になる人も多いでしょう。

結論から言うと、リフォームを行ったとしても建物の耐用年数が伸びるわけではありません。原状回復や内装工事を行った場合は、維持管理のための費用として「修繕費」などを用いて処理するのが一般的です。リフォームをすれば市場価値の維持にはつながるかもしれませんが、建物自体の耐震性や耐久性アップにはつながらないのがその理由です。

なお、リノベーションで建物躯体の補強工事をしたような場合は資本的支出に該当するため、減価償却の対象となります。例えば、耐用年数30年の事務所を20年経過した時点で大規模リノベーションしたとします。この場合、リノベーション費用を残りの10年で償却するのではなく、リノベーション費用部分に応じた耐用年数で償却を行っていくのが正しい会計処理です。

ただし、その場合でももとの建物の耐用年数と残存年数に変化はありません。法定耐用年数は、あとから手を加えても延長するのは不可能です。

軽量鉄骨の居住用建物の減価償却費の計算と仕訳例

ここからは、軽量鉄骨の建物を取得した場合の、減価償却費の計算方法や仕訳例を紹介します。

※減価償却費の計算方法には定額法と定率法の2通りがありますが、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物の償却方法は原則として定額法です。そのため、ここで紹介する例も定額法による償却としています。

※償却年数別の償却率は以下のサイトを参照しています。

参考:国税庁 減価償却資産の償却率等表
仕訳例)軽量鉄骨造、鉄骨格材3mm超4mm以下の居住用アパートを、期初に社宅として1,000万円で取得した。代金は現金で支払った。

借方
貸方
摘要
建物10,000,000円現金10,000,000円社宅購入

社宅の取得後、決算期が到来すると減価償却を行う必要があります。減価償却を実施するためには、まずは減価償却費を計算します。

減価償却費は以下の式から算出されます。

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

この建物の法定耐用年数は27年なので、減価償却資産の償却率等表によると償却率は0.038です。よって、減価償却費の計算は以下の通りとなります。

1,000万円×0.038=380,000円

期末には、この金額を減価償却費として計上します。

仕訳例)期末になったので、期初に取得した社宅の減価償却費を計上した。

借方
貸方
摘要
減価償却費380,000円建物380,000円社宅年次償却

ここでは直接法を採用しているので、建物は減価償却費380,000円を直接差引いた残高を記載します。

軽量鉄骨の業務用建物の減価償却費の計算と仕訳例

業務用建物の減価償却費の計算方法や仕訳は、居住用不動産と同様です。先ほど紹介した事例と比べると、耐用年数や償却率の数値が変わることになります。

仕訳例)軽量鉄骨造、鉄骨格材3mm超4mm以下の事務所を期初に1,000万円で取得した。代金は現金で支払った。

借方
貸方
摘要
建物10,000,000円現金10,000,000円事務所購入

建物を取得して決算期が到来すると、減価償却を行わなければなりません。減価償却を実施するために、まずは減価償却費を計算しましょう。

先ほどと同様に、減価償却費は以下の式から算出されます。

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

この建物の法定耐用年数は30年なので、減価償却資産の償却率等表によると償却率は0.034です。よって、減価償却費の計算は以下の通りとなります。

1,000万円×0.034=340,000円

期末には、この金額を減価償却費として計上します。

借方
貸方
摘要
減価償却費340,000円建物340,000円事務所年次償却

ここでは直接法を採用しているので、建物は減価償却費340,000円を直接差引いた残高で表記します。

軽量鉄骨でも、鉄骨の厚さによって耐用年数が異なる

軽量鉄骨に分類される建物の中でも、鉄骨の厚みによって耐用年数が異なることはあまり知られていません。竣工後にリノベーションなどを行っても耐用年数を伸ばせないので、設計段階で耐用年数をしっかり確認し、長期的なプランを考えておくことが重要です。

減価償却費の計算はやや複雑に感じられるかもしれませんが、実際の計算は会計ソフトに任せることがあったとしても、計算方法や考え方だけでも理解しておきましょう。

よくある質問

減価償却とは?

減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する資産を取得した場合に、その耐用年数に応じて費用を計上し、資産価値を減額させる会計処理のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

軽量鉄骨の減価償却の計算方法は?

定額法の場合、「減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率」で求められます。軽量鉄骨でも、鉄骨の厚さや使用目的により法定耐用年数が異なります。正しい法定耐用年数を確認し、定額法・定率法それぞれの方法に基づいて減価償却の計算を行ってください。詳しくはこちらをご覧ください。


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