- 更新日 : 2024年8月8日
勘定科目「衛生費」とは?使い方や仕訳例
職場における健康増進や病気の予防などへの関心は高まりをみせる昨今ですが、ここでは「衛生費」に関する支出についてご紹介します。
これらの経費をどのように他の勘定科目と区別し、仕訳をするかを解説します。
衛生費とは?
衛生費とは健康増進、疾病予防、環境保全などについての経費で、今までは主に地方公共団体や飲食業などにおいて使用されてきた費用科目です。
一般の企業では、救急箱セットや宿泊用ベッドのクリーニング代などで利用する程度でした。したがって、これらの費用を「福利厚生費」など、衛生費以外の勘定科目で処理をするケースがよくあります。
特に、飲食業や宿泊業などは、おしぼりやクリーニング代など比較的衛生関連費が多く発生する業種です。それ以外の業種においても「衛生費」として把握すべきものを勘定科目として独立させるほうがわかりやすいです。
衛生費を使用する経費の例
衛生費として、福利厚生費から区分することは、新たな経費がどれだけかかったかを把握するために有効です。衛生費として勘定科目を独立させなくても、福利厚生費の中の補助勘定科目として追加してもよいでしょう。
衛生費として計上される費用には、次のようなものがあります。
- 消毒液、消毒用ティッシュ、マスクなどの消耗品
- 空気清浄機などの備品(固定資産とならないもの)
- 洗剤、殺虫剤、応急の薬類
- クリーニング代(業務用シーツ、来客用ゆかた、従業員ユニフォームなど)
- モップやマットなどのレンタル費用
- 清掃業者を利用した場合の清掃代
- 来客用おしぼり代
- ごみ処理費
年に1~2度の支払いであるため雑費に入れている費用でも、用途が衛生関連費用であれば衛生費に変えるとよいでしょう。
例えば、執務室用に購入した消毒剤3個(税抜1,000円/個)と使い捨てマスク3箱(税抜1,500円/箱)を購入した仕訳は次のようになります。(消費税は税抜処理とします)
衛生費 | 7,500円 | 現預金 | 8,250円 | 消毒剤@1,000×3,マスク@1,500×3 |
仮払消費税 | 750円 |
衛生費の税制上の取扱い
ここで、給食を提供する会社においてマスクなどの費用が災害損失欠損金に該当し、法人税が還付される例を挙げておきます。
(事例)
学校に給食を提供する会社が、コロナによる学校の臨時休校などで食材を廃棄しなければならなくなりました。あわせて、調理場や配膳室などの施設を消毒する必要が生じました。
次の費用や損失は、資本金が1億円以下の中小企業などにおいては、「災害損失欠損金」となり、過去に納めた法人税の還付を受けること(繰戻還付)ができます。
大企業でも新型コロナ税特法の特例対象となり、還付が可能となっています。
- 飲食業者の食材(棚卸資産)の廃棄損
- 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
- 施設や備品などを消毒するために支出した費用
- 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気洗浄機等の購入費用
- イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
出典:5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係 No.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁
また、前年以前の法人税を支払っていなかった場合でも、「感染症の患者が発生したことに伴う消毒作業により、仕入れていた食材を廃棄した場合」は、「納税の猶予」を受けられることがあります。
出典:4 納付の猶予制度関係
衛生費と似た用途の勘定科目
衛生費と似た勘定科目としては、先述した福利厚生費、雑費以外にも次のようなものがあります。
- 修繕費
- 管理費
- 消耗品費
例えば、カーテンではなくブラインドが壊れた時の支払いです。
衛生費というより、モノを維持管理するための費用ですので、修繕費が適当でしょう。
非常に広範囲をさす「管理」という用語。会社の特定の費用として常時利用しているのであれば問題ありません。
しかし、例えば執務室のカーテンのクリーニング代であれば、管理費より衛生費のほうがわかりやすいでしょう。
日常使いの文房具などを消耗品費とするように、日常使いのマスクを消耗品費とするのは問題ありません。
しかし、例年になくマスクを大量に購入した場合などは、衛生費のほうがよいでしょう。
理由は、決算書には販売管理費の明細を添付しますが、その時、消耗品費が昨年に比べ大きくなっている原因を知るためには、経理担当が説明を加える必要があります。しかし、衛生費としておけば、昨年に比べ衛生費が大きくなっている理由の見当がつきやすいからです。
必ず衛生費という勘定科目を利用しなければならないというルールはありません。
要は、最終的により内容が伝わりやすい財務諸表をどう作っていくか、ということなのです。
衛生費は現物の管理に気をつけて
衛生費の管理にも注意を払いましょう。
大量に購入した消毒液などが期末に未開封の状態で残るのであれば「貯蔵品」への振替えを検討するなど、利用状況の把握に努めましょう。
よくある質問
衛生費とは?
衛生費とは健康増進、疾病予防、環境保全などについての経費です。詳しくはこちらをご覧ください。
衛生費を使用する経費には何がある?
飲食業や宿泊業など接客業でよく使われる経費が該当します。消毒液、マスクなどの消耗品、洗剤、殺虫剤、応急の薬類、クリーニング代、清掃代などです。詳しくはこちらをご覧ください。
衛生費の税制上の取扱いは?
「災害損失欠損金」に該当し、繰戻還付の対象となったり、納税猶予の対象となったりすることもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
自己振出小切手の使い方や仕訳方法
自己振出小切手はそれほど登場頻度が高くないため、まだ出会ったことがないという人も多いでしょう。自己振出小切手という名前だけ見ると難しく感じられますが、実際は自分が振り出した小切手が手元に戻ってくるだけのことで、会計処理も決して難しいものでは…
詳しくみるその他資本剰余金の配当にかかる会計処理・税務処理を解説!
事業の元手となる財産は財務諸表上で「株主資本」とされます。株主資本は「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」に分けられますが、その中の「資本剰余金」は「資本準備金」と「その他資本剰余金」に分けることができます。 利益がそれほど出ず、配当を出す…
詳しくみるプリンターに関する経費の勘定科目と仕訳まとめ
プリンターの購入やリース、レンタルした場合の勘定科目はすべて異なります。それぞれの勘定科目と仕訳例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。またプリンターを資産として減価償却するケースや、インク代や修理費用の勘定科目と仕訳例についても紹介しま…
詳しくみる電報を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
事業に関して取引先や従業員などに電報を送った場合、経費に計上できます。電報の勘定科目は送り先によって異なり、社外宛の場合は「交際費」、社内宛であれば「福利厚生費」にするのが一般的です。また、「通信費」として計上することもできます。勘定科目は…
詳しくみる支払利息割引料とは?支払利息との違いや仕訳例、消費税について解説
支払利息割引料は、借入金の利息や手形割引の手数料を処理する際の勘定科目です。会計基準の改正もあり、勘定科目としては使われなくなりつつありますが、企業会計を把握するうえで理解しておくことをおすすめします。 この記事では、支払利息割引料について…
詳しくみる引当金の会計処理はどう考えればいいのか?
「引当金」についてご存知でしょうか? 引当金とは、将来に発生するであろう特定の費用又は損失に備えてあらかじめ準備しておく見積金額のことをいいます。 なお、発生する可能性が低い場合は、その金額を引当金として計上できません。会計上は、役員引当金…
詳しくみる