• 作成日 : 2019年10月25日

複式簿記を成り立ちから理解しよう

簿記の技術は何世紀にもわたって世界中で普及してきました。
一見すると複雑なようにも思えるこの技術が会計に役立つのはなぜなのでしょうか。
この記事では複式簿記単式簿記の違いをはじめ、簿記の歴史、そして複式簿記と会計との関係について解説します。財務諸表の全体像を踏まえて、会計処理や経理業務にお役立てください。

単式簿記と複式簿記

簿記には単式簿記と複式簿記の2種類があります。
単式簿記とは1つの勘定科目に絞って取引を帳簿に記録する方法であり、取引が1つあれば記録をするのも1か所だけです。預金通帳のように手許の現金の出入りなどが記録されているものが単式簿記にあたります。

これに対し、複式簿記とは、取引の原因と結果という両面を同時に帳簿に記録する方法です。複式簿記は、「借方」と「貸方」の2つの面があり、「借方」と「貸方」は必ず同額になるよう記載しなければなりません。

また、複式簿記では、取引について勘定科目というグループにわけて記録をします。勘定項目は「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5グループで、財産にかかわる取引があった場合、必ずそのどれかに当てはまります。

例えば資産や費用の場合、増えるときは借方に、減るときは貸方に記録されます。一方で、負債や純資産、収益が減る場合には借方、増える場合には貸方に分類します。
単式簿記では、収入と支出を記録しますが、複式簿記では収益と費用を記録するという違いがあります。そのため、借入金は単式簿記では収入になりますが、複式簿記では収益にはならず、負債として扱います。
また、複式簿記では借方と貸方の値が一致するように作成するため、取引を漏れなく記録することができ、1つの取引を原因と結果の両面から捉えるため、正確な記録が残せます。そのため実務においては、古くから複式簿記を推奨しています。

なお、複式簿記を使い青色申告確定申告をする場合には、「複式簿記によって作成した貸借対照表損益計算書を確定申告書とともに提出期限までに提出する場合には、最高65万円を控除することができる」という特典が受けられます。

複式簿記の歴史

複式簿記の起源は、古代ローマ説や中世イタリア説などがあります。世界で最初に出版された複式簿記の文献としては、「近代会計学の父」と呼ばれるイタリアの数学者、ルカ・パチョーリが執筆し、1494年ヴェネチアで出版された「算術・幾何・比及び比例全書」が挙げられます。15世紀の商業と貿易の急速な発展により、パチョーリが著書内で提唱した簿記の理論はヨーロッパに科学的会計の基礎を築いたといえます。

日本では、明治時代に福沢諭吉がアメリカのテキストを翻訳した「帳合之法(ちょうあいのほう)」などが複式簿記の始まりであり、以降洋式の複式簿記が全国に広がったといわれています。
しかし、江戸時代には、大阪商人などの間で独自の複式簿記の技術が用いられているという素地がありました。そのため、筆による縦書きの複式簿記から現代の複式簿記への移行は、比較的スムーズだったといわれています。

複式簿記と株式会社

複式簿記が何世紀にもわたって使い続けられている理由の1つとして、株式会社の存在があります。株式会社は継続する企業であり、株主に継続して配当する必要があります。そのため、会社の収益と資本は常に区別しなければなりません。そこで収益と資本との区別ができる複式簿記の技術が非常に役に立ちます。

日本で用いられる「企業会計原則」の一般原則の中には、「資本利益区別の原則」があります。資本とは株式の発行や借入金など事業をする際のもとになる財産であり、利益は実際に事業を行い損益取引をまとめた結果です。法人税は利益を元に課税されるため、資本と利益を明確にわける必要があります。

資本取引と損益取引との区別をしなければならないということは、結局は複式簿記で記帳する必要があるということです。また、企業会計原則には、「正規の簿記の原則」があります。これは正確な会計帳簿を作成しなければならないということですが、これに必要となる要素は「網羅性・立証性・秩序性」の3つとされています。

「秩序性」という要素を保つには、1つの事実(取引)を借方と貸方の2面から、5つのグループに分かれた勘定科目によって記録がなされる複式簿記を採用することで難なくクリアできます。
こうして見ると、事業を継続する株式会社においては、複式簿記でなければ正確な会社の情報は表せないこととなります。

複式簿記と会計

複式簿記では転記という技術によって、仕訳帳総勘定元帳試算表などの帳簿が作成されます。

・仕訳帳:日付ごとに複式簿記で記録した取引を記載した帳票
・総勘定元帳:仕訳帳の情報をもとに、取引を勘定項目ごとにまとめた帳票
・試算表:仕訳帳から総勘定元帳へ各取引が正しく転記されたかを示す集計表

試算表は財務諸表のもとになる帳票で、上部に「貸借対照表」の項目、下部に「損益計算書」の項目が書かれます。前期の試算表と当期の試算表の同項目を比較すればどの項目で大きな差があるのかを元に事業の分析や評価ができます。

簿記は会社の経済活動をお金の価値により記録し、その結果を整理して会社の利害関係者に報告するための「技術」であるといえます。

それでは、会計とは何でしょうか?
簿記で記帳するためには、取引金額が決まっていなければできません。会計とは、起票しない場合も含め、その取引をどの勘定科目にし、いつの時点でいくらで示すかという「評価」に重点が置かれたものです。

複式簿記と会計の関係性については諸説ありますが、少なくとも簿記の中心は「記録」や「管理」であり、会計の中心は、決算における各種の「評価」や決算報告書を通じた企業利害関係者への「報告」にあるといえるでしょう。

複式簿記は誠実な会計の証明と事業分析に役立つ

複式簿記は借方や貸方、各勘定項目など扱う情報が多く煩雑だと感じる場合があるかもしれません。しかし、この技術を活用することで正しく事業状況が報告でき、経営分析をするのにも役立てられるのです。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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