1. クラウド会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計」
  2. 会計の基礎知識
  3. 棚卸しの意味・英語や目的とは?在庫管理作業の方法、粉飾決算になる場合
  • 作成日 : 2021年3月4日

棚卸しの意味・英語や目的とは?在庫管理作業の方法、粉飾決算になる場合

棚卸しは、商品の在庫が実際にどのくらいで、状態はどうか確認するために必要なもので、会計処理にも影響します。年に数回棚卸しを行うこともあれば、業種によっては月末の度
に実施するなど頻繁に棚卸しをすることもあるでしょう。

棚卸しとは具体的にどのような意味か、どのような目的をもって行われるのか、やり方や棚卸しをごまかしたときの注意点も合わせて解説します。

棚卸しとは?なぜ必要?

決算時期を迎え、棚卸しに追われる会社も多いのではないでしょうか。棚卸しという言葉は、人生の棚卸しなど、何かを整理する意味でも使われることがありますが、会計的な意味合いはまた異なります。

棚卸しとは何か、どのような目的をもって行われるものなのか、など棚卸しの概要を解説します。

棚卸しの意味と目的

棚卸しとは、資産の数量や価値などを実際に確認することをいいます。実際に確認して、会計上資産価値を金額として確定することが棚卸しの大きな意味です。少なくても、年に1回、決算時には棚卸しの作業が必要です。

棚卸しの対象となるのは、商品や製品などの販売を目的とした資産のほか、仕掛品や原材料など製造途中、あるいは製造投入前の資産、また消耗品などです。いわゆる、在庫として確認できるような資産をいいます。

棚卸しを実施する目的はふたつ。1つは、実際の在庫(数量)を確認して、帳簿上記録された数量と照らし合わせること。もう1つは、棚卸資産の状態や需要を見て、商品の価値が取得価額より低下していないか確認することです。

棚卸しを行った結果、数量に差異があったり、資産価値が大幅に低下していたりするようなことがあれば、決算時に「棚卸減耗」「商品評価損」計上などの必要な会計処理を行います。

棚卸しの英語表現

棚卸しは、英語では、an inventory count(アン・インヴェントリ・カウント)やStocktaking(ストックテイキング)などと表現されます。どちらも、在庫の確認という意味合いをもった英語です。

なお、商品などの棚卸しが必要な資産をまとめて「棚卸資産」といいますが、英語では棚卸資産をinventory(インヴェントリ)といいます。棚卸しの英語表現と合わせて、覚えておきたい表現です。

「棚卸し」と「棚卸」どっちが正しい?

「棚卸し」のほか、「棚卸」が使われることもあります。国税庁の表記は、「棚卸し」で統一されていますので、棚卸しの作業を指す場合、棚卸しを会計上の意味として使う場合は、「棚卸し」と表現するのが無難でしょう。

会計上、棚卸しの送り仮名を取って、「棚卸」を使うのは、「棚卸資産」のようにひとつの名詞として存在する場合です。会計上の固有名詞ではなく、決算にともなう在庫確認を指す場合は、「棚卸し」を使います。

棚卸しの作業の基本的なやり方とコツ

次に、棚卸しの作業について説明します。

リスト方式とタグ方式

棚卸しの方法は、大きく「リスト方式」と「タグ方式」に分けることができます。

リスト方式

リスト方式は、在庫管理システムから在庫のリストを出力し、実際の在庫と照らし合わせる方法です。リストの出力が前提ですので、在庫管理システムを導入していないとリスト方式を採用できません。

リスト方式のメリットは、リストと比較しながら在庫数を確認できること。棚卸し作業中にリストと実際の在庫が合わなければ、すぐに数量の相違をチェックできます。効率良く棚卸しを進められるでしょう。

ただし、在庫管理システムに棚卸し作業までのすべての商品の入力が反映されていることが前提です。入力に漏れがあったり、未入力があったりすると、相違部分の確認に時間をとられてしまいます。

タグ方式

タグ方式は、品目や数量を記入するタグ(棚札)を用意して棚卸しをする方法です。商品ごとに数量を確認し、確認を終えたら棚などにタグを貼り付けます。リスト方式のようにシステムを用意する必要はなく、どの業種においても取り入れられる方法です。

すべての商品などの棚卸資産の在庫を確認して、タグを貼り付け終えたら、番号順にタグを回収して、商品の状態を確認します。タグを貼り付けて回収する作業があるため、手間がかかるのがタグ方式の難点です。

このほか、大量の商品を扱う業種、システムを構築できる会社では、バーコードを読み込んで棚卸しをするバーコード方式もあります。

実地棚卸と帳簿棚卸

棚卸しの作業では、実地棚卸と帳簿棚卸が必要です。実地棚卸とは、タグ方式やリスト方式などで、実際の在庫を確認する棚卸しのこと。帳簿棚卸は、日々商品の出入りを継続記入している商品有高帳などから、帳簿上の在庫を確認することです。

実地棚卸は、商品など棚卸資産の状況を実際に把握するために必要な作業ですが、会計上、実地棚卸だけでは十分といえません。

最終的には、決算で棚卸資産の数量や価値を確認して、実際上と帳簿上が一致するように決算整理をしなければならないためです。

実地棚卸と帳簿棚卸を行って、実際の在庫が決算書に反映されるように会計処理を行います。帳簿棚卸よりも実地棚卸の在庫が減っていることも多いです。理由は、保管中にものがダメになったり、大量の商品の管理でものがなくなったりすることもあるからです。

実地棚卸で数量が減少していることがわかれば、減少した分を会計処理して、実際の在庫と一致するように処理します。

棚卸しの頻度

棚卸しは、在庫がシステムや帳簿上管理している数量と一致しているかどうかの確認ができるだけでなく、商品の状態を確認するのにも有効です。

個人事業主の場合も、法人の場合も年1回は決算を行い、棚卸資産の残高を適切に把握する必要がありますので、少なくとも年1回は棚卸しが必要になるでしょう。

決算における棚卸しは会計上重要ですが、棚卸しはしっかり商品を管理する手段でもあるため、特に実施回数に制限はありません。適切に管理するためには、より高い頻度で実施するのが良いでしょう。

小売業や飲食業など、商品を常にストックしており管理が重要な業種においては、月1回の頻度で実施しているケースもあります。

棚卸し在庫の評価方法

棚卸しを終えた棚卸資産は、最終的に金額にする必要があります。問題は、金額をどのようにして導き出すかということ。

同じ商品であっても、仕入価格が毎回同じとは限りません。棚卸資産を正しく評価するには、一定のルールに従って価額を導きだす必要があります。

棚卸資産の評価方法として認められているのが、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法です。ほかに、容認されている評価方法として、期末からもっとも近い価額で評価する最終仕入原価法があります。

個別法

個別法は、棚卸資産ひとつひとつを管理して評価する方法です。大量に仕入れるような資産の管理には向きませんが、宝石など個別性が強く、価値を一様に評価できない資産の評価方法として使われます。

先入先出法

先入先出法は、先に入ってきた資産を順に払い出したものとみなして計算する方法です。先に入ってきたものは順に払い出されると仮定するため、期末には直近の価額が在庫の価値として反映されることになります。

総平均法

総平均法は、年または月に取得した棚卸資産の額を、取得した数量で除して、年または月当りの平均的な取得価額を導きだす方法です。平均取得原価を用いて、期末の資産を評価します。

移動平均法

移動平均法は、棚卸資産を受け入れる都度、平均値を求める方法です。受け入れの都度、受入額と残高を足したものから、受け入れ額と在庫数量を除して、棚卸資産の額を求めます。

売価還元法

売価還元法は、販売総額に原価率を乗じて棚卸資産の取得原価を求める方法です。

いずれも、棚卸資産における原価法という方法になります。通常は、いずれかの原価法を通年継続して採用し、棚卸資産の評価として用います。

問題は、原価法で計算した取得価額以上に棚卸資産の価値が下がってしまった場合です。棚卸資産の価値は、需要低下や長期保管による品質低下などで価値が下がることがあります。

原価法で計算した価額に対して、価値が大きく下落している場合、決算書上で棚卸資産の価値が適切に評価されているとはもはや言えないでしょう。価値が大きく下がったとき、適切に棚卸資産の価値を評価できるように、棚卸資産の評価では低価法が認められています

低価法とは、原価法で計算した方法と、税務上の時価を比較して、税務上の時価が低いときに、低い方の時価を採用して期末の残高を評価する方法です。
一定の場合には、税務上否認される場合がありますので、注意が必要です。

棚卸しの結果が合わない理由と対処法

棚卸しの結果、実際の在庫とシステム上の在庫が合わない、実際の在庫と帳簿上の在庫が合わないといったことが発生することもあります。棚卸しの結果が一致しない主な原因は、以下のとおりです。

受け入れや払い出し時に間違ってカウントしている

数量や種類の多さ次第で毎回確認することが難しいケースもありますが、多くは商品などの受け入れ時、または払い出し時に数に誤りがないか確認していると思います。棚卸しの結果が合わない原因のひとつは誤って数量をカウントしていることです。ミスが多い場合は、二重にチェック、システムを導入するなどして対策しておきましょう。

誤った数値を入力している

帳簿入力や商品管理システム入力が手作業の場合、誤った金額や数量を入力すると棚卸しが一致しない原因になります。二重にチェックするなどの対策が有効です。

管理ルールが徹底されていない

現場で管理ルールが徹底されていないと、棚卸資産の受け入れから保管、払い出しまでにミスが発生しやすくなります。度重なるミスは、棚卸しの結果が合わなくなる原因のひとつです。適切な管理ができていない場合は、管理マニュアルから作成し、ルールを徹底して守ってもらうような環境づくりを行っていきましょう。

棚卸しを効率化する方法

棚卸しの作業は、店舗を閉めて作業が必要になるところもあるほど、手間も時間もかかる作業です。

抱える在庫が少ない業種であればアナログな方法でも問題ありませんが、抱える在庫が多ければ多いほど、さまざまな棚卸資産があればあるほど、負担は大きくなります。

手書きで在庫を記録するなどアナログな方法を中心に採用してきた企業なら、作業効率化のためにシステムを取り入れると良いでしょう。在庫管理システム、バーコードでの管理ができるタイプのものなど、棚卸しの効率化に役立つシステムはさまざまなものがあります。

在庫が多く作業に大きな負荷がかかっている場合は、ミスを減らすためにもシステムの導入を前向きに検討してみましょう。

マネーフォワード クラウド会計は、在庫管理システムと連動して、会計処理を行うことが可能です。棚卸資産の受け入れや払い出し、棚卸しでは会計処理も必要となりますので、連携して自動で処理されるシステムを取り入れると便利です。

棚卸しは決算作業の一環

棚卸しは、決算整理の作業の一環としても行なわれるものです。棚卸資産の額を適切に評価するという意味はもちろん、売上原価の額を適切に計算するためにも棚卸しによる在庫の把握は必要です。(売上原価は、通常、当期商品仕入高に期首商品棚卸高を加算し、その合計額から期末商品棚卸高を差し引いて計算します。)

正しく棚卸しを行わないと粉飾決算になる可能性も

粉飾決算とは、決算書を偽って報告することです。粉飾決算でよく見られるのが、棚卸資産の過大計上で、利益を大きく見せる手段として使わることがあります。もちろん、粉飾決算は行って良いものではありません。

粉飾決算が発覚すれば、ペナルティが課される可能性がありますし、行政処分が下される可能性も考えられます。

意図しなくても、棚卸しを適切に行わないと、過大に資産が計上されたりするなどして粉飾決算になることもありますので、注意が必要です。

棚卸はシステムで効率良く

棚卸しは、決算などで必要な作業ですが、ひとつひとつ在庫を確認していく必要があるため、アナログな方法だと、時間も手間もかかります。抱える在庫が多い場合は、在庫管理システムなど、システムをうまく活用するのがおすすめです。会計ソフトと連携できるものであれば、棚卸しなどにともなう会計処理も楽になるでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

経理初心者も使いやすい会計ソフトなら

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。

関連記事