減価償却とは?計算方法や減価償却費の仕訳を理解するためのポイント

企業経営者の方や個人事業主の方が、会計処理をする際に大切となることのひとつに減価償却があります。減価償却の方法と減価償却費の仕訳に関してはルールが多く、理解するのが難しいと感じる方も多いのではないでしょうか?今回は、減価償却費を正しく理解するために重要となるポイントを解説していきます。
目次
減価償却とは
まずは、減価償却に関する基本的な事柄を整理していきます。
減価償却の概要
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を取得した際に、取得するための支払額をその耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことを指します。
ですので、土地のように時間の経過や使用により価値が減少するわけではないものは、減価償却資産には含まれません。また、ここでの使用可能な期間とは、実際にその資産を用いる期間ではなく、法律により品物ごとに定められている期間のことを指します。詳しくは後ほどご説明します。
減価償却の目的
減価償却は、以下の様なことを目的として行います。
物品の取得のために掛かった支払額のすべてをその年度で費用とするのではなく、収益を得るために利用した期間に応じて費用計上することによって企業の業績を正しく捉えるようになると考える費用収益対応の原則の考え方を実現するために減価償却の方法をとることになります。
減価償却を理解するための3つのポイント
それでは、減価償却に関する基本事項を抑えたところで、減価償却を正しく理解するためのポイントをみていきます。減価償却を理解するためには、以下の3点が特に重要になると考えられます。
減価償却費の計算方法
実際に、建物や自動車などの価値の減少がどのくらいかを調べるのは難しいことです。そのために、価値の減少を会計に反映させることを目的として、減価償却額の計算を行うためには、主に以下の2種類の方法を選択することができます。
<定額法>
定額法は、減価償却の対象となる固定資産の購入代金を法定耐用年数の期間で同額ずつ償却していく方法のことを指します。
例:200万円で耐用年数5年の物品を購入した場合
単純に全額を5分割し、5年間で40万円ずつ償却していくことになります。
<定率法>
対して定率法は、毎年未償却の金額から一定の割合で償却していく方法のことを指します。定率法を用いると最初の方に多めに償却することになります。
例:200万円で耐用年数5年の物品を購入した場合
この条件の場合には、償却保証額が216,000円となります。償却保証額は、計算後の償却金額がこの金額を下回った場合でもこの金額を償却することを定めるために設けられています。
なお、償却保証額は、耐用年数が5年の場合には0.10800と定められている、保障率により導かれます。
また、同様に耐用年数が5年の場合の償却率は0.4と定められています。これをもとに実際の年度ごとの償却額をみていきます。
1年目:200万×0.4=800,000円
2年目:(200万-80万)×0.4=480,000円
3年目:(200万-80万-48万)×0.4=288,000円
4年目:(200万-80万-48万-28.8万)×0.4=172,800円
※この金額は償却保証額を下回るため、4年目の償却額は216,000円となります。
5年目:5年目も4年目と同様に216,000円を償却することになります。
※200万-80万-48万-28.8万-21.6万=21.6万
なお、減価償却の方法を変更する場合には、変更をしたい年の3月15日までに所轄の税務署長へ申請書を提出・承認を受ける必要があります。
法定耐用年数
減価償却の対象となる固定資産に対しては、その資産ごとに法律で細かく耐用年数が定められています。これは、前述のように固定資産の取得価額を出来るだけ収益を得るために用いた期間で分割をして、計上することを目的として設けられています。
なお、償却方法は減価償却資産の種類ごとに選定します。この場合、所轄の税務署に償却方法の選定の届出をしなければなりません。
例えば、新たに業務を開始する場合には、減価償却方法を選定してその翌年の3月15日までに所轄の税務署長に届け出なければなりません。この届出をしなければ、一般的に定額法での減価償却をすることになりますので、ご注意ください。
具体的には、国税庁による耐用年数表をご参照ください。
少額減価償却資産の特例
青色申告を行っていて、従業員数が1,000人以下の個人事業主や中小企業(資本金1億円以下の法人)の方には、少額減価償却資産の特例という制度が用意されています。これは、取得価額が30万円未満の減価償却資産に関して、一括で減価償却費として費用計上することができるようにするものです。
なお、10万円未満のものに関しては、元々消耗品費として計上することができるので、間違えないようにしてください。
減価償却費、減価償却累計額の仕訳
最後に、減価償却を会計処理する際のルールに関してみていきたいと思います。
減価償却について記帳する場合には「直接法」と「間接法」の2種類の方法があります。
直接法
直接法は減価償却費を固定資産から直接差し引いていく方法です。
具体的には減価償却費を借方科目として費用計上し、貸方科目に固定資産を記入し、金額には減価償却費と同じ金額を記入します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | ○○○○○ | 固定資産 | ○○○○○ |
この場合、貸借対照表には固定資産の価値の残高(「固定資産の帳簿価格」)がそのまま表示されます。しかしこれだけでは固定資産の取得価額を把握することができません。
そのため直接法では減価償却累計額を注記として表示する必要があります。これにより以下の計算によって取得価額を導き出すことが可能となります。
固定資産の取得価額=固定資産の帳簿価額+減価償却累計額
間接法
一方間接法では減価償却費は減価償却累計額で表示されます。具体的には減価償却費を借方科目として費用計上し、貸方科目には減価償却累計額を記入します。
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | ○○○○○ | 減価償却累計額 | ○○○○○ |
この方法で記帳すると、次の計算式によって固定資産の帳簿価格を導き出すことができます。
固定資産の帳簿価額=固定資産の取得価額−減価償却累計額
このように間接的に固定資産の帳簿価額の表示が可能なことから、この方法は間接法と呼ばれています。なお日本の会計基準では原則無形固定資産に直接法を、有形固定資産に間接法を適用することとされています。
まとめ
減価償却を正しく理解することは、会計上で必須です。概念や計算方法をしっかり把握し、減価償却費の正しい処理を行うようにしましょう。
国税庁|減価償却
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