- 更新日 : 2023年4月20日
減価償却のしくみとは?減価償却費計算や仕訳を基本から解説

事業者が取得する建物や機械装置、器具工具備品などの資産のうち、時間の経過とともに価値が減少していくものを「減価償却資産(または償却資産)」といいます。減価償却資産については、原則的に、減価償却という会計処理を毎期末行っていかなくてはなりません。
この記事では減価償却に関する基本用語や減価償却のやり方、仕訳、決算書との関連、注意点まで、減価償却に関することを詳しく解説していきます。
目次
減価償却の基本
減価償却とは何か、減価償却をなぜ行うのか、まずは減価償却の基本的な内容について解説していきます。
減価償却とは何か?
減価償却とは、時間の経過によって減少する資産の価値を、各資産の耐用年数に応じて、各事業年度の費用に配分することをいいます。
購入や自己建設などで取得した資産のうち、一定額以上のものについては、取得した年に全額を費用計上するのではなく、原則として償却期間として定められた複数年にわたって費用計上していくことになります。
減価償却の目的とは?
減価償却の目的は、費用収益対応の原則に基づいています。費用収益対応の原則とは、得られた収益に対応した支出のみ費用として計上するという会計上の考え方です。
資産の取得価額を取得した年に一括して費用計上してしまうと、実際にその資産が複数年にわたり収益に与えた影響を正確に会計へ反映させることができません。
そのため、資産の使用可能期間にわたり取得価額を配分し、費用として計上していくことが適切と考えるのが減価償却の考え方です。
減価償却をしないとどうなる?
減価償却の扱いは、事業体が個人事業主・法人の場合で異なります。個人事業主は、取得した資産の減価償却は原則として義務(強制償却)であるため、耐用年数に応じて減価償却処理を行わなければなりません。
一方、法人税法では会計で償却費として計上した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額が損金の額に算入されます。したがって、所得税法が強制償却であるのに対し、法人税法は任意償却となります。
しかし、減価償却を行わない場合、減価償却費が損金(法人税法上の計算において計上できる費用)に計上されないことになります。利益を大きくするために、減価償却資産について減価償却費を計上しないのは会計上、適正な処理とは言えません。
減価償却できる資産・できない資産
減価償却は固定資産が対象となる会計処理ですが、取得した固定資産のすべてにおいて減価償却が行われるわけではありません。資産の中でも、減価償却ができる資産と減価償却ができない資産があります。
減価償却できる資産
減価償却ができる資産は、時間の経過や使用とともに資産としての価値が減少すると考えられる資産です。主に次のような資産が挙げられます。
【減価償却できる資産の種類と代表例】
事務所、店舗、工場、倉庫、など | |
アーケード、電気設備、給排水設備、ガス設備、など | |
ブロック塀、用水路、貯水槽、サイロ、果樹棚、など | |
牛・馬・やぎ・豚などの家畜、りんご樹やかんきつ樹などの樹木 | |
貨物自動車、運送用・貸自動車用などの自動車、自転車、など | |
測定工具、検査工具、取付工具、など | |
事務机・椅子、陳列棚、冷暖房機器、コンピューター、など | |
製造業用設備、鉄鋼業用設備、農業用設備、など | |
ソフトウェア、特許権、工業所有権、など |
減価償却できない資産
時間の経過や使用により価値が減少しない資産は減価償却ができません。代表的なものが土地です。土地を使用することで価値は減少しないため、減価償却は行いません。
歴史的価値のあるものや希少価値のある資産も減価償却の対象ではありません。例えば、古美術品や古文書、出土品のような歴史的価値・希少価値をもつ資産は、時間経過による価値が減少するとは考えられていません。このほかの美術品や骨とう品なども減価償却の対象から外れますが、取得価額が1点100万円未満のものは減価償却資産として扱われます。
また、取得価額が1点100万円以上である美術品等であっても時の経過によりその価値が減少することが明らかなものについては、減価償却するものもあります。
減価償却の基本用語
減価償却では特殊な用語が使われています。ここでは減価償却でよく出てくる基本用語を解説します。
減価償却費
減価償却費とは、その事業年度に正しい減価償却の方法によって計上された費用を指します。減価償却費は資産の区分ごとに勘定科目を分けず、建物の減価償却によるもの、備品の減価償却によるものなどをまとめて減価償却費勘定に計上します。
減価償却累計額
減価償却累計額とは、所有する資産に発生した減価償却費の合計額を表す勘定科目です。資産の種類ごとに減価償却累計額を把握しやすくするため「建物減価償却累計額」「機械装置減価償却累計額」などと区分することもあります。
なお、減価償却の処理には直接法と間接法という2つの方法があります。直接法では減価償却費に相当する金額分、資産が減少するような仕訳を行うため、減価償却累計額勘定を使用しません。
一方、間接法では、減価償却費を減価償却累計額に一旦計上する会計処理を行います。これにより、資産の取得価格と減価償却費の累計を同時に把握できるため、資産の正しい価値を把握しやすくなります。
耐用年数
耐用年数とは、対象の資産が経済的な利益をもたらす期間です。会計上、各資産に定められた耐用年数が減価償却期間として扱われます。
国際財務報告基準(IFRS)では、耐用年数を実態に即した使用期間に基づき、個々の資産ごとに経済的使用可能予測期間を算出し、耐用年数を定めるべきと考えられています。しかし、資産一つひとつの経済的使用可能予測期間を見積もるのは大変困難であり、実務で行うのは現実的ではないという意見も少なくありません。
そのため、多くの企業では税法上で定められた耐用年数を基準に減価償却を行っています。
税法上の耐用年数とは、財務省令である「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表に定められた法定耐用年数を指しており、租税の公平の観点から設けられています。法定耐用年数を使って減価償却を行うと税法に適応した減価償却となり、税務調整が必要なくなるため、実務においては合理的な選択であると考えられています。
法定耐用年数は減価償却資産の品目ごとに定められています。期間が長いものは事務所用鉄筋コンクリート建物の50年から、短いものは自転車の2年までとさまざまです。
取得価額
取得価額とは、資産を取得するのに要した額です。資産購入においては、購入代金に荷造運賃、買入手数料、試運転費用、据付費、などの付随費用を加算した額が取得価額となります。
ただし、資産の取得に付随する費用でも一部については、取得価額に含めずにその事業年度の費用に計上することが可能です。税法上は、不動産取得税や自動車取得税、新増設の事業所税、登録免許税などを取得価額に含めないことが認められます。
事業供用日
事業供用日とは、資産を本来の目的で使用を始めた日のことをいいます。機械装置を例に挙げると、機械を据え付けて試運転を行った後、事業のために機械を使い始めた日が事業供用日にあたります。
減価償却は、対象の資産を取得した日ではなく、原則として事業供用日から起算します。資産の取得日と事業供用日が異なる場合、起算日を間違えないように注意が必要です。
保証率
保証率とは、定率法(後述)で減価償却する際に、償却を一定の年数で終わらせるため法令で定められた割合です。
定率法では、減価償却費を期首の未償却残高に、法令で定められた一定の割合(定率法償却率)を乗じた金額とします。一定の割合ですから、未償却残高が減るにつれて減価償却費も少なくなり、ただそのまま定率法を続けると減価償却に何年もかかってしまいます。
そこで、定率法においては減価償却を一定の年数で終わらせるため、減価償却費が一定の金額「償却保証額」を下回った年度以降は、償却の方法を変更し、毎年同じ割合ではなく、同じ金額ずつ償却することとするのです。償却保証額は、資産の取得価額に保証率(耐用年数ごとに定められている)を乗じたものとなります。
償却率
償却率は、減価償却資産の耐用年数や償却方法に応じて変化する値で、減価償却の計算を簡便にするためのものです。減価償却資産の耐用年数等に関する省令(一部は「減価償却資産の償却率等表」として国税庁)で公表されています。
使い方は定額法と定率法で異なります。
【定額法の場合】
【定率法の場合】
定率法において、その事業年度の償却費が保証率を下回るときは、改定償却率を用いて減価償却をします。
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov法令検索
減価償却のやり方
減価償却の意味や関連する用語について説明してきましたが、実務上はどのように減価償却を行っていくべきなのでしょうか。減価償却の方法について順を追って説明します。
減価償却はどのタイミングで行う?
先述したように、減価償却は資産の事業供用日を起点に行います。仮に期首に入手した資産の事業供用日が期中である場合、減価償却は事業供用日を基準に月割りで計算し、事業年度末に減価償却処理を行うほか、月次決算において減価償却費を計上することもあります。
資産の入手日と事業供用日が異なるケースは決して珍しいことではありません。そのため資産を購入した期中には使われず、事業供用日が翌期になる場合もあります。もし資産の入手日と事業供用日が期をまたいでしまったなら、今期では資産を入手した仕訳と固定資産台帳への記入を行い、実際の減価償却は翌期で実際に事業の用へ供し始めた日を基準に減価償却を行いましょう。
耐用年数の確認方法
減価償却を行う際には、費用を複数年に配分するために耐用年数を確認する必要があります。
先述したように、耐用年数は資産ごとに算出される経済的使用可能予測期間が適していると考えられています。同じ資産であっても使用頻度や使用方法などで使用可能予測期間が変化することから、それぞれの会社で個別に経済的使用可能予測期間を見積もらなければなりません。
しかし、資産ごとに使用可能期間の見積もりを行うのは時間も労力もかかることから現実的ではないとも考えられます。そのため実務上は、法人税などの計算で使用する法定耐用年数を基準にするケースが一般的です。
資産の種類や細目ごとの法定耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令より確認できます。
参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令|e-Gov法令検索
取得価額の決め方
取得価額は減価償却の基準になる額です。資産を購入した際に計上する取得価額は、先述したように、購入代金に付随費用を加えた額です。値引きや割り戻しも取得価格に反映させ、最終的な取得価額を確定します。
資産を自社で製作する自家建設においては、製作にかかった製造原価(材料費や外注費などの合計額)を取得価額とします。自家建設に関わる借入金などの利子のうち、稼働前の期間の利子についても取得価額に含めることが可能です。
このほか、発行した株式の対価として資産を受け入れたときは株式の発行価額、固定資産の贈与を受けたときは時価を基準にした公正な評価額など状況に応じて取得価額を決めていきます。
定額法で計算する方法
減価償却の方法には、定額法、定率法、生産高比例法、級数法などがあります。税法上認められているのは、定額法、定率法、生産高比例法です。中小企業を中心とした企業では、税法上の方法を選択するケースが多いため、ここでは定額法と定率法、生産高比例法について取り上げます。
定額法とは、毎期同じ額を減価償却する方法です。法定償却に設定されている方法で、個人では税務署に減価償却の方法を届け出ない場合、定額法しか選択できません。
一方で法人は法定償却が固定資産の品目ごとに定められており、建物、建物附属設備、構築物は定額法、機械装置、車両、器具備品などは定率法を法定償却方法としています。
なお、2007年3月31日以前に取得した建物などは旧定率法が適用され、10%の残存価額を設定する必要がありましたが、2007年4月1日以後に取得した資産は備忘価額である1円(無形固定資産は備忘価額なし)を残して減価償却できるようになりました。
(定額法の計算の例)
備品50万円(耐用年数5年)を取得したときの初年度の減価償却費。
※事業年度は4月1日~翌3月31日で、備品は4月1日に取得しただちに事業の用に供したものとする。
500,000×0.200(5年の定額法償却率)=100,000円
定率法で計算する方法
定率法は、毎期、期首の未償却残高(間接法の場合は資産の取得価額-減価償却累計額)に一定の償却率を乗じて減価償却費を計算する方法です。決まった率を乗じるため、取得事業年度に近いほど計上できる償却費が多くなります。
なお、通常は一定額を乗じた額を減価償却費としますが、耐用年数ごとに定められた償却保証額に満たない場合、税法上は次の計算によって求めた額を減価償却費とします。
また、個人が所得税の計算で定率法を償却方法として選定したい場合は、先述したように資産ごとに税務署長に届け出を行わなくてはなりません。ただし、1998年4月1日以後に取得した建物、2016年4月1日以後に取得した建物附属設備や構築物は、定額法のみの選択となります。
(定率法の計算の例)
備品50万円(耐用年数5年)を取得したときの初年度と2年目の減価償却費。
※事業年度は4月1日~翌3月31日で、備品は4月1日に取得し、直ちに事業の用に供したものとする。
500,000×0.400(5年の定率法償却率)=200,000円
500,000×0.10800(5年の定率法保証率)=54,000円
200,000円>54,000円
初年度の減価償却費は200,000円
(500,000-200,000)×0.400(5年の定率法償却率)=120,000円
500,000×0.10800(5年の定率法保証率)=54,000円
120,000円>54,000円
2年目の減価償却費は120,000円
※この計算例は、200%定率法に基づいています(平成24年4月1日以後に取得をされる減価償却資産の定率法は「200%定率法」となります)。
減価償却における定率法には、旧定率法、250%定率法、200%定率法があり、その減価償却資産を取得した時期により適用する償却率は異なりますのでよく調べましょう。
生産高比例法で計算する方法
生産高比例法は、資産の使用度合いに応じて減価償却をする方法です。生産高比例法を適用するにあたっては、見積総利用量を正確に見積もる必要があるため、適用できる資産は限られます。生産高比例法が適用できる代表的な資産は、鉱業用設備などです。
(生産高比例法の計算の例)
自動車200万円(見積総走行距離100,000km、初年度の走行距離10,000km)を取得したときの初年度の減価償却費。
2,000,000円×10,000km÷100,000km=200,000円
減価償却費の仕訳
減価償却費の仕訳の方法には、直接法と間接法の2つの方法があります。それぞれどのような勘定科目を使用して仕訳をするのか、減価償却方法の定額法で取り上げた仕訳例を参考に説明していきます。
直接法で仕訳する方法
直接法は、資産の取得価額から直接的に減価償却費を控除して、資産の事業年度末時点での帳簿価額を示す方法です。次のようにして仕訳を行います。
(仕訳例)
備品50万円(耐用年数5年)を期首に取得したときの初年度の減価償却費。
500,000×0.200(5年の定額法償却率)=100,000円
なお、企業が直接法を採用する場合は、注記表に減価償却累計額を注記する必要があります。
間接法で仕訳する方法
間接法は、減価償却費を減価償却累計額という資産控除科目に集計して、間接的に資産から減価償却費の合計額を控除することで、資産の事業年度末時点の現在価値を示す方法です。次のようにして仕訳を行います。
(仕訳例)
備品50万円(耐用年数5年)を期首に取得したときの初年度の減価償却費。
500,000×0.200(5年の定額法償却率)=100,000円
※減価償却累計額は、備品減価償却累計額として資産の種類ごとに集計することもある。
減価償却と決算書の関係
減価償却と各種決算書との関係を説明します。
減価償却と貸借対照表との関係
間接法の場合、「減価償却累計額」が貸借対照表の資産の部に控除科目として記載されます。減価償却累計額は対象資産に係る残高の一括表示、資産の種類ごとの分割表示のどちらも認められています。
間接法は、貸借対照表上で固定資産の取得価額と減価償却累計額を同時に確認できるのが特徴です。減価償却累計額は控除科目ですので、固定資産の額から減価償却累計額を控除した額が、最終的な固定資産の帳簿価額として計算されることになります。
直接法を採用すると、減価償却累計額の貸借対照表上の表示はありません。固定資産の取得価額からこれまで計上した減価償却費の累計(=減価償却累計額)を控除した額が、その時点の固定資産価額として貸借対照表上に記載されます。
減価償却と損益計算書との関係
減価償却時に計上した費用は、損益計算書上に「減価償却費」として表示されます。損益計算書に表示される減価償却費は、その事業年度に発生した減価償却費の合計額です。資産ごとに減価償却費を分けることはせず、一括して減価償却費として表示されます。
なお、減価償却を行う資産は事業で使用することから、減価償却費は、営業内費用を示す「販売費及び一般管理費」の内訳として表示されることになります。
減価償却とキャッシュフロー計算書との関係
キャッシュフロー計算書の作成方法には、主要な取引ごとにキャッシュフローを把握する直接法、税引等調整前当期純利益を起点に調整を行う間接法があります。実務上は、損益計算書などの値を使って計算できる間接法が多く採用されています。
キャッシュフロー計算書において、減価償却の項目は、間接法を適用する場合に使用されます。税引等調整前当期純利益を基準にした場合、損益計算に含まれる減価償却費は現金支出のない費用になるため、現金収支を計算するキャッシュフロー計算書では加算する必要があるためです。
このような、現金支出をともなわない減価償却費の性質を利用して、当期純利益+減価償却費の額で簡易的にキャッシュフローを計算することもあります。
減価償却その他の注意点
減価償却に関して、注意点やポイントをいくつか紹介します。
少額償却資産の取り扱い
少額償却資産(少額減価償却資産)とは、法人税法上の定義で、見積もった使用可能期間が1年未満、あるいは取得価額10万円未満の減価償却資産を指します。
少額償却資産については、全額を費用とした場合、減価償却を行うことなく、全額をその事業年度の損金にできます。このことから、使用可能期間1年未満または取得価額10万円未満の減価償却資産は多くの場合資産に計上されず、「消耗品費」などの勘定科目を使って費用計上されています。
なお、法人税法上の使用可能期間とは、法定耐用年数のことではなく、各事業者の平均的な使用状況や補充状況から算出するものとされています。法定耐用年数で見ない点に注意しましょう。
また、取得価額10万円未満とは、1単位として取引されるものを単位ごとに判定した場合の価額です。例えば応接セットの場合、テーブルと椅子を別々に判定するのではなく、テーブルと椅子をセットで10万円未満であるかどうか判定します。
中小企業・個人事業主の特例
中小企業・個人事業主が行う減価償却には、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の制度があります。
これは中小企業や個人事業主を対象にした制度で、取得価額30万円未満の減価償却資産について、取得価額の合計が300万円に達するまで、その事業年度の損金とできる税法上の制度です。
特例を適用するには、確定申告書に必要事項を記載することと損金経理が求められます。損金経理とは、会計処理上その事業年度の費用とすることで、中小企業者等が30万円未満の資産を取得した場合は、多くの場合費用に計上されます。
なお、特例を受けられる中小企業者などは、青色申告を提出する事業者、資本金の額(または出資金の額)1億円以下、常時雇用する従業員数500人以下(2020年3月31日以前に取得した減価償却資産については1,000人以下)の条件を満たした法人、または上記の従業員の要件を満たした個人が該当します。
ただし、連結法人や大規模法人に支配されているような中小法人など、特定の中小法人については特例を適用できません。
また、適用を受ける法人や個人の要件を満たした場合であっても、貸付けを主要な事業とする事業者は、貸付けを行うために取得した資産について特例を適用できません。
一括償却資産
一括償却資産とは、取得価額20万円未満の減価償却資産を、法定耐用年数に関わらず、3年で均等償却できる制度です。
しかし、取得価額10万円未満は少額償却資産となり全額費用にできますので、一括償却資産が行われるのは取得価額10万円以上20万円未満の資産が対象です。
また、中小企業等には、減価償却資産の取得価額30万円未満の特例がありますので、主に大企業や中小企業者等の特例300万円を超えた減価償却資産への適用が想定されます。
なお、一括償却資産は法人税法上の取り決めであり、会計上には同様の制度はありません。そのため20万円未満の資産は先述の特例を適用し、消耗品費などとして費用計上するケースが見受けられます。しかし、税務申告時に申告調整を行う必要が生まれることから、会計上も3年の均等償却に合わせるケースが少なくありません。
中古物件を購入した場合
減価償却の耐用年数の説明で、会計上は経済的使用可能予測期間を耐用年数とするのが適切ではあるものの、税法上との兼ね合いから法定耐用年数が用いられることも多いと説明しました。
しかし、中古物件を取得する場合、法定耐用年数が実態とは合わないことが一般的です。そのため、中古資産を取得した場合、減価償却資産の耐用年数等に関する省令等に基づき見積もった使用可能期間を耐用年数としています。
使用可能期間の見積もりが困難な場合は、以下の簡便法(※資産の価値を高める資本的支出が中古資産の取得価額の50%を超える場合は簡便法の適用不可)によって中古資産の耐用年数を算出することも可能です。
- 法定耐用年数の全部を経過した中古資産の場合
法定耐用年数×20%(1年未満切捨て) - 法定耐用年数の一部を経過した中古資産の場合
(法定耐用年数-経過した年数)+経過した年数×20%(1年未満切捨て)
- 法定耐用年数の全部を経過した中古資産の場合
1や2の計算で耐用年数が2年に満たない場合は、2年を中古資産の耐用年数とします。
ただし、中古資産を取得したときに、同時に行った整備などにより資本的支出が中古資産の再取得価額(同資産の新品を購入する場合の価額)の50%を超えるような場合には、法定耐用年数を適用しなければなりません。
なお、上記はあくまでも税法上の取り扱いですが、税務調整との関係から、会計上も中古資産の耐用年数を税法上の扱いと合わせるケースが多く見られます。
固定資産を売却・廃棄した場合
減価償却の対象となる固定資産を売却または廃棄(除却)したときは、売却や除却の時点で減価償却費を計算して費用計上します。また、売却や除却の時点で減価償却を行うため、事業年度末に売却した資産や除却した資産の減価償却は行いません。
また、間接法を適用している場合は、減価償却費を計上するだけでなく、次のように減価償却累計額を借方に振り替え相殺する仕訳を行わなくてはなりません。
【間接法で固定資産を除去したときの基本の仕訳の形】
※◯◯(資産科目)には、「建物」や「備品」などの資産科目が入ります。
※売却による場合は「固定資産売却損」、売却により利益が出たときは貸方に「固定資産売却益」を計上します。
なお、一括償却資産を償却の途中で売却・除却した場合は、上記のように売却や除却時に減価償却費を計上しても、全額損金算入が認められないことがあります。売却や除却があっても3年均等償却が適用され、取得価額の3分の1相当しかその事業年度の損金として認められないためです。
一括償却中の資産を売却または除却した場合は、会計上の処理と税務上の扱いにズレが生じ、税務調整が必要になることもありますので注意しましょう。
資産の種類によって異なる耐用年数
ここまでで減価償却のやり方や仕訳、決算書との関係などについて見てきました。最後に一点つけ加える必要があるのは、減価償却計算の元となる耐用年数は、償却対象の固定資産の種類によって異なることです。
例として、財務省令の別表で定められている、いくつかの資産の耐用年数を下に示します。
固定資産の種類 | 耐用年数 |
---|---|
事務所用の鉄筋コンクリート建物 | 50年 |
事務所用の木造モルタル建物 | 22年 |
給排水・衛生設備・ガス設備 | 15年 |
一般用の小型自動車 | 4年 |
金属製の事務机・事務椅子・キャビネット | 15年 |
パソコン | 4年 |
カメラ・映写機・望遠鏡 | 5年 |
耐用年数について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
決算書とも関わりのある減価償却の基本を押さえよう
減価償却は、時間の経過とともに価値が減少する減価償却資産を取得した場合、必須の会計処理になります。法人・個人事業主を問わずに資産を取得するケースは多々ありますので、まずは基本を押さえておきましょう。
また、減価償却はそれぞれの決算書とも関わりがありますので、決算書に記載する内容や意味を合わせて確認しておくとよいでしょう。

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よくある質問
減価償却とは?
時間の経過によって価値が減少していく資産を、耐用年数に応じて各事業年度に費用配分する処理を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
減価償却のやり方は?
所有している減価償却資産の耐用年数や償却方法(定額法/定率法/生産高比例法)を確認したうえで、通常は事業年度末の決算整理仕訳として減価償却を行います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。