- 更新日 : 2022年4月22日
2022年版 – 減価償却とは?減価償却費の計算・仕訳を解説

企業経営者や個人事業主が、会計処理をする際に大切となることのひとつが減価償却です。減価償却の方法や計算と減価償却費の仕訳に関しては多くのルールがあります。
例えば、定率法と定額法の違いやどのような特例があるのか、耐用年数などの用語の意味を知っておくことは、減価償却にとって重要です。
また、減価償却をすれば、その事実を貸借対照表や損益計算書に記載する必要が生じます。今回は、減価償却費を正しく理解するために重要となるポイントや、財務諸表への記載方法、直近の法改正などを解説していきます。
目次
減価償却とは?なぜ必要か
まずは、減価償却に関する基本的な事柄を整理していきます。
減価償却費とは
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する資産を取得した際に、取得するための支払額をその耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことを指します。
よって、土地のように時間の経過や使用により価値が減少するわけではないものは、減価償却資産には含まれません。なお、耐用年数は法律で品物ごとに定められています。詳しくは後ほどご説明します。
なお、減価償却では、資産の価値を減少させ、費用を増やす処理を行います。そのため原則として、貸借対照表では資産の減少、損益計算書では費用の増加として取り扱われます。
減価償却できる資産
時の経過等によってその価値が減っていく資産で、使用可能期間が1年以上のもの、または取得価額が10万円以上のものを取得した場合には、減価償却が必要です。減価償却できる資産には、次のようなものがあります。
このほか、家畜や樹木なども減価償却できる資産になります。
減価償却できない資産
時間の経過や使用によって価値が減少しないものは、減価償却はできません。例えば、次のような資産が減価償却できないものです。
- 土地
- 骨董品
- 美術品
ただし、骨董品や美術品で100万円未満のもの(時の経過により価値が減少しないことが明らかなものは除く)や、100万円以上のものでも時の経過により、価値が減少することが明らかなものについては、減価償却ができます。
減価償却費の仕訳と計算
減価償却を理解するには「会計処理」と「計算」の2つの方法を理解する必要があります。
会計処理とは、簡単にいうと仕訳のルールです。減価償却には複数の計算方法がありますが、どの計算方法でも、計算結果の「減価償却費」を仕訳するルールは同じです。減価償却の仕訳には、直接法と間接法があります。
ここでは、減価償却費の仕訳と代表的な計算について見ていきましょう。
直接法による減価償却費の仕訳
直接法とは、固定資産から減価償却費を直接差し引く方法です。具体的には借方科目に減価償却費を計上し、貸方科目に固定資産を記入します。
当期償却額 |
直接法では、減価償却累計額を注記する必要があります。この記帳により、固定資産の取得価額は以下の式で算出できます。
間接法による減価償却費の仕訳
間接法の場合、減価償却費は減価償却累計額に表示されます。具体的には借方科目に減価償却費を計上し、貸方科目に減価償却累計額を記入します。
当期償却額 |
この記帳により、固定資産の帳簿価額は以下の式で求めることができます。
このように固定資産の帳簿価額を間接的に表示できることから、この仕訳方法は間接法と呼ばれています。なお日本の会計基準では原則無形固定資産に直接法を、有形固定資産に間接法を適用することとされています。
定額法による減価償却費の計算
定額法は、減価償却が必要な固定資産の購入代金を原則、法定耐用年数の期間で同額ずつ償却していく方法のことを指します。
購入金額を5分割し、1年に50万円ずつ償却します。
実際の減価償却の計算では、償却率を使って計算します。償却率は、償却方法(定額法、定率法)や耐用年数ごとに定められています。
定額法の計算は「取得価額×定額法の償却率」で行います。
上記の例の場合、耐用年数5年における定額法の償却率は0.200です。計算式にあてはめて計算すると、取得価額250万円×定額法の償却率0.200=50万円となります。
定率法による減価償却費の計算
対して定率法は、未償却の金額から毎年一定の割合で償却する方法です。定率法を用いると、購入時に近い頃ほど多めに償却することになります。
定率法についても償却率を用いて計算します。しかし、定額法のように取得価格に償却率を乗じて計算するのではなく、前年末の帳簿価格(未償却残高)に償却率を乗じて計算します。
定率法の計算は「未償却残高×定率法の償却率」で行います。
なお、定率法の計算方法では、耐用年数以内に減価償却を終わらせることができません。そのため、一定期間経過後に償却保証額を使った調整が入ります。
耐用年数が5年の場合、定率法の償却率は0.4と定められています。これをもとに実際の年度ごとの償却額をみていきます。
1年目:200万×0.4=800,000円
2年目:(200万-80万)×0.4=480,000円
3年目:(200万-80万-48万)×0.4=288,000円
4年目:(200万-80万-48万-28.8万)×0.4=172,800円
今回の例では、償却保証額は216,000円となります。償却保証額は、計算後の償却金額がこの金額を下回った場合でも、この金額を償却することを定めるために設けられているものです。
なお、償却保証額は保証率によって導かれます。耐用年数が5年の場合、保証率は0.10800と定められています。
償却率を使って求めた減価償却費が償却保証額を下回るため、4年目の償却額は216,000円となります。
5年目:5年目も4年目と同様に216,000円を償却することになります。
※200万-80万-48万-28.8万-21.6万=21.6万
減価償却の方法は、設立時に減価償却の方法の選択(届出が必要)をしない限り、原則、個人が定額法、法人が定率法となっています。減価償却の方法を変更する場合には、個人は変更をしたい年の3月15日まで、法人は新しい償却方法を採用する事業年度開始日の前日までに所轄の税務署長へ申請書を提出・承認を受ける必要があります。
生産高比例法による減価償却費の計算
生産高比例法とは、当該資産の使用度合いに応じて減価償却費を計上する方法です。固定資産の取得価額について、その固定資産が生み出す全体の生産高(使用量)のうち、当年度に生産(使用)した割合のみを減価償却費として経費計上します。
500万円×(5万km/20万km)=125万円
2年目(年間走行距離8万km)
500万円×(8万km/20万km)=200万円
3年目(年間走行距離4万km)
500万円×(4万km/20万km)=100万円
4年目(年間走行距離5万km)
500万円×(3万km/20万km)=75万円 ※ 減価償却費合計 500万円
※実際には4年目に「残存価額1円」を残した差額を減価償却することになります。
生産高比例法は、航空機や鉱業用設備など、総生産高(総使用量)を正確に予想できる資産にのみ適用できます。
生産高比例法については、次の記事で詳しく解説しています。こちらをご参照ください。
減価償却における耐用年数
減価償却の対象となる固定資産に対しては、その資産ごとに法律で細かく耐用年数が定められています。耐用年数とは、取得した固定資産として使用できる期間のことです。
耐用年数は、前述のように固定資産の取得価額を、利益を得るためにその資産が使用可能と考えられる期間で割り、計上するためのものです。
減価償却における耐用年数については、次の記事で詳しく解説しています。こちらをご参照ください。
なお、償却方法は減価償却資産の種類ごとに選定します。この場合、所轄の税務署に償却方法の選定の届出をしなければなりません。
例えば、新たに業務を開始する場合には、減価償却方法を決めて翌年の3月15日までに所轄の税務署長へ届け出る必要があります。この届出をしなければ、一般的に定額法で減価償却をすることになりますので、ご注意ください。
中小企業・個人事業主の特例
青色申告を行っていて、従業員数が1,000人以下(令和2年4月1日以後に取得する場合は500人以下)の個人事業主や中小企業(資本金1億円以下の法人)の方には、少額減価償却資産の特例があります。これは、取得価額が30万円未満の減価償却資産に対し、一括で減価償却費として計上できるようにするものです。
なお、10万円未満のものに関しては、元々消耗品費として計上できるので、間違えないようにしてください。
減価償却に関するその他の用語
ここでは、上記で触れなかった減価償却に関する用語をご紹介します。
一括償却資産
一括償却資産とは、取得価額20万円未満の一定の固定資産を取得した場合に、耐用年数ではなく、3年間で均等償却するものです。
例えば、15万円の固定資産を取得した場合は、15万円×1/3=5万円を3年にわたって、毎年減価償却費に計上できます。
通常の減価償却費の計算をするか、一括償却資産として減価償却費の計算をするかは、取得年度に選択できます。
少額減価償却資産
少額減価償却資産とは、一定の個人事業主や中小企業が取得した減価償却資産が取得価額30万円未満である場合、一括で減価償却費として費用計上できるようにするものです。
なお、取得価額が10万円未満のものは「少額の減価償却資産」と呼ばれることがあります。少額減価償却資産とは異なるため、注意が必要です。
取得価額
固定資産の取得価額とは「購入代金+付随費用」のことです。購入代金だけでなく、購入手数料や配送費用、据付け費用などの付随費用も含まれます。
例えば、購入代金30万円、据付け費用1万円の資産の取得価額は合計の31万円になります。
30万円でなく、31万円が減価償却計算の対象となるので注意が必要です。
事業供用日
事業供用日とは、取得した固定資産を事業で使い始めた日のことです。減価償却は購入した日ではなく、事業供用日から計算を始めます。
12月はまだ事業に供用していないので、購入年度には減価償却できません。翌年の事業供用日を含む年度で初めて、減価償却できます。
減価償却累計額
減価償却累計額とは、減価償却費の累計金額のことです。減価償却累計額を見れば、今までいくら減価償却をしてきたかわかります。
減価償却累計額については、次の記事で詳しく解説しています。こちらをご参照ください。
未償却残高
未償却残高とは、固定資産の取得価額のうち、あとどれだけ減価償却できるかを表すものです。直接法の場合は「未償却残高+減価償却累計額」で、その資産の取得価額を求めることができます。
2022年(令和4年)の減価償却に関する法改定
2022年(令和4年)の税制大綱では、少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度の改定が盛り込まれました。以下の減価償却資産の特例の対象資産から、貸付用に使っている資産を除くというものです。
- 取得価額10万円未満の少額の減価償却資産
- 取得価額20万円未満の一括償却資産
- 取得価額30万円未満の少額減価償却資産
これは、ドローンや建設用足場をリースしている個人や会社で、取得年度に損金にできる固定資産を大量に購入する節税スキームが横行していることへの対策といわれています。自社で使う貸付用でない資産の場合は、今まで通り特例の対象となります。
正しい方法で減価償却費の計算と仕訳を行おう
減価償却には、直接法と間接法の2つの会計処理方法があります。また、計算方法も定率法や定額法などさまざまです。
会計処理法や計算方法を間違えてしまうと、財務諸表への反映や、所得金額の計算も正しく行えません。正しい方法で減価償却費の計算と仕訳を行うよう心がけましょう。
よくある質問
減価償却とは?
固定資産の取得価額を、耐用年数に応じて費用計上する会計処理のことです。 詳しくはこちらをご覧ください。
減価償却費の計算方法は?
定額法、定率法、生産高比例法などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。