- 作成日 : 2024年10月4日
決算書と財務諸表の違いは?目的や読み方のポイントをわかりやすく解説
一般的に決算書という用語は、財務諸表とほとんど同じ意味で使われます。なぜ決算書の他に、財務諸表や計算書類などと呼ばれるのでしょうか。この記事では、決算書と財務諸表の違いの他、財務諸表の作成目的や読み方のポイントなどを解説します。
目次
決算書と財務諸表の違い
決算書とは通称で、正式名称は「財務諸表」「計算書類」です。法律によって正式名称が異なるため、それぞれの違いについて解説します。
決算書の正式名称が「財務諸表」と「計算書類」
「決算書」は正式名称ではなく通称です。会社法では「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ばれます。
「財務諸表」と「計算書類」の違い
会社法が定める「計算書類」と金融商品取引法の定める「財務諸表」には、名称だけでなくさまざまな違いがあります。以下の表は、財務諸表と計算書類の主な違いを示したものです。
財務諸表 | 計算書類 | |
---|---|---|
法律 | 金融商品取引法 | 会社法 |
作成対象 | 有価証券発行会社 (上場企業など) | すべての株式会社等 |
提出先 | 内閣総理大臣 | 株主総会など |
書類の内訳 | 貸借対照表 株主資本等変動計算書 キャッシュ・フロー計算書 附属明細書 | 貸借対照表 損益計算書 株主資本等変動計算書 個別注記表 (附属明細書) (事業報告) |
財務諸表(財務三表)とは?
財務諸表の中で作成する書類のうち、特に重要な書類を財務三表といいます。財務三表といわれるのは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つの書類です。
貸借対照表
貸借対照表は、決算日の会社の財政状況を表す書類です。B/S(バランスシート)とも呼ばれます。貸借対照表の借方(左側)には会社の保有する資産の種類と金額、貸方(右側)には資産を取得するためにどのように資金を調達したのかが表示されます。借方の合計金額と貸方の合計金額が一致するのが特徴です。
損益計算書
損益計算書は、一事業年度の会社の業績を示す書類です。P/L(ピーエル)とも呼ばれます。損益計算書には売上高を始め、売上原価、販売費および一般管理費、営業外収益や営業外費用などに関する勘定科目を記載します。収益や費用だけでなく、会社の利益がどのくらいあり、どのようにして利益が発生したかわかるのが特徴です。
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書とは、一定期間の現金および現金同等物の流れを表した書類です。営業による現金の増減は「営業キャッシュ・フロー」、設備投資など投資活動による現金の増減は「投資キャッシュ・フロー」、資金調達や返済による現金および現金同等物の増減は「財務キャッシュ・フロー」として示されます。
財務諸表の作成目的
企業が財務諸表を作成する主な目的は、以下の3つです。
株主や投資家に経営状態を開示する
財務諸表を作成する目的の一つは、株主や投資家に企業の経営状態を開示することです。株主は、開示された財務諸表を判断材料の一つとして、投資の継続に問題がないか確認します。
企業に出資していない投資家にとっても、財務諸表から得られる情報は重要です。財務諸表は企業の成長可能性や健全性を測定できる書類であり、企業に投資をするかどうかの判断材料の一つになります。
税務当局に法人税等の申告や納付額を確認してもらう
法人税申告の際には、財務諸表を添付して確定申告書を提出します。財務諸表を併せて提出するのは、税務署が決算書の内容と税務申告の内容を比較して、不備や不正がないか確認するためです。財務諸表の作成には、企業が申告する法人税額が適切かどうか、税務当局に確認してもらう目的もあります。
従業員や取引先に会社の安全性や収益性を伝える
財務諸表の作成には、その企業で働く従業員やその企業と関係のある取引先に、企業の経営状態の安全性や収益性を開示する目的もあります。
企業の経営が安定していることは、従業員にとって働き続けることの判断材料の一つになるためです。また、取引先にとっては、財務諸表からわかる収益性や経営の安全性は、取引の継続に問題がないかの判断材料にもなります。
財務諸表の読み方のポイント
財務諸表から、どのようなことが読み取れるのでしょうか。財務諸表の読み方の主なポイントを紹介します。
収益性
収益性とは、企業が稼ぐ力のことです。企業の収益性は損益計算書から読み取れます。損益計算書には売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益の「5つの利益」が表示されます。それぞれの項目から、企業がどこでどのくらい利益を出しているかを把握できます。また、売上高と比較することで、それぞれの利益が売上高に対してどの程度の割合を占めているかも把握できます。
安全性
安全性とは、企業の経営が安定しているかということです。安全性は、主に貸借対照表の各項目から読み取れます。代表的な指標の一つが株主資本比率です。株主資本(基本的には純資産のこと)が総資本(負債と純資産の合計額)に対してどれくらいの割合を占めるかを示す指標で、債務超過のリスク判定などに用いられます。
効率性
効率性とは、企業が投入している資産が効率良く利用されているかということです。主に貸借対照表の各項目から読み取れ、代表的な指標に棚卸資産回転率があります。売上原価を棚卸資産の期末残高で除して算出する指標で、仕入や販売が効率良く行われているかがわかります。
決算書とは財務諸表や計算書類のこと
一般的に決算書と呼ばれるものは、法律上では計算書類あるいは財務諸表と呼ばれます。いずれも、貸借対照表や損益計算書を中心に構成される決算に関係する書類のことです。決算書(財務諸表または計算書類)が作成される目的は、さまざまです。株式会社などでは作成が義務付けられている書類であるため、作成が必要な書類や作成意義を確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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