• 更新日 : 2021年5月31日

有価証券売却損とは?仕訳例や勘定科目の説明、計算方法を紹介

有価証券売却損とは?仕訳例や勘定科目の説明、計算方法を紹介

有価証券売却損は、有価証券を売却して損が出た時に使う勘定科目です。
また、似た勘定科目で投資有価証券売却損という勘定科目もあります。
この微妙な違いを、ご存じでしょうか。

この記事では、有価証券の仕訳から手数料、消費税の取り扱いをわかりやすく説明していきます。

有価証券売却損とは?

有価証券売却損とは、有価証券を売却した時に生じる損のことです。
当然のことながら、有価証券の売却価格よりも帳簿価額が大きい場合に損失になります。

計算式は以下の通りです。

【有価証券売却損の計算式】

売却損 = 売却価格 - 帳簿価額

※計算結果はマイナスになります。

正確にいうと、有価証券売却損は、会計の売買目的有価証券を売却して損が出た時に使う勘定科目です。(会計とは財務会計の意味です。以下同様)

まずは一般的な有価証券を確認しましょう。

【一般的な有価証券の例】

  • 株式
  • 国債、地方債、社債などの債券
  • 出資証券
  • 証券投資信託

など

次に会計の有価証券は上記の有価証券を保有目的で分類します。
分類すると以下の4つになります。

会計の有価証券意味
売買目的有価証券値上がりの利益を得る目的の有価証券
短期的に売る可能性の高い有価証券
満期保有目的の債券満期まで保有する目的の債券
債券のみで株式などは含まれない
関係会社株式特定の会社への支配力や影響力をもつための株式
子会社の株式や関係会社の株式
その他有価証券上記以外の有価証券
持ち合い株式や長期的に売却する予定の有価証券など

ここまでをまとめると、有価証券売却損とは、売買目的有価証券を売却した時に損が出た場合に使用する勘定科目です。

投資有価証券売却損を使用する場合

有価証券売却損に似た勘定科目として「投資有価証券売却損」という勘定科目があります。
投資有価証券売却損は、会計の「その他有価証券」を売却し、損が出た時に使用する勘定科目です。

有価証券売却損には消費税がかからない

有価証券の売却は、消費税の非課税取引に該当するため、消費税がかかりません。
例外として、有価証券が実質的にゴルフ会員権などに該当する場合は消費税がかかります。

冒頭で説明した一般的な有価証券の売却は消費税が非課税です。

有価証券売却損の計算方法

有価証券売却損の計算式は、以下の通りです。

【有価証券売却損の計算式】

売却損 = 売却価格 - 帳簿価額

上記の計算式は、購入した有価証券をすべて売却する場合の計算式です。
有価証券の購入と売却を頻繫に繰り返す場合は、売却する有価証券の原価を計算する必要があります。

購入と売却を頻繫に繰り返す場合の計算方法は以下の2つがあります。

移動平均法

移動平均法とは、有価証券を購入するたびに平均単価を計算する方法です。
なお売却した場合、平均単価は変わりません。

具体例で確認していきましょう。前提は以下の通りです。

【計算の前提】
購入、売却する銘柄はすべて同じで、売買目的とする。

1月10日:購入
株式10株を購入した。
その際に、株式10,000円と手数料100円の合計10,100円を支払った。

1月15日:購入
株式30株を購入した。
その際に、株式33,000円と手数料300円の合計33,300円を支払った。

1月20日:売却
株式20株を17,000円で売却した。
その際の売却手数料として200円を支払った。

1月25日:購入
株式10株を購入した。
その際に、株式10,600円と手数料100円の合計10,700円を支払った。

まずは、売却直前までの購入分をまとめて平均単価の計算をします。

株数単価合計価額
1月10日:購入10101010100
1月15日:購入30111033300
合計401,085(※計算)43400

【移動平均法の平均単価の計算】

平均単価1,085円 = 43,400円 ÷ 40株

次に、売却損の計算をします。移動平均法では、上記の平均単価の有価証券を売却したとみなします。

【売却損の計算】
20株を17,000円で売却

売却損4,700円 = 売却価格17,000円 - 株式の価額21,700円(※)

※株式の価額21,700円 = 移動平均の単価1,085円 × 20株

また、売却後の残っている株数と価額は以下になります。
売却時は平均単価が変わりません。

株数単価合計価額
売却後20108521700

最後に、売却後に残っている株式に購入分を加えると以下になります。

株数単価合計価額
売却後201,08521,700
1月25日:購入101,07010,700
合計301,080(※計算)32,400

【移動平均法の平均単価の計算】

平均単価1,080円 = 32,400円 ÷ 30株

総平均法

総平均法とは、一定期間の平均単価を計算する方法です。
特徴として、総平均法の集計期間が終わらなければ平均単価を計算することができません。

移動平均法と同じ具体例を使って説明していきます。
総平均法の期間は1カ月とします。

【計算の前提】
購入、売却する銘柄はすべて同じで、売買目的とする。

1月10日:購入
株式10株を購入した。
その際に、株式10,000円と手数料100円の合計10,100円を支払った。

1月15日:購入
株式30株を購入した。
その際に、株式33,000円と手数料300円の合計33,300円を支払った。

1月20日:売却
株式20株を17,000円で売却した。
その際の売却手数料として200円を支払った。

1月25日:購入
株式10株を購入した。
その際に、株式10,600円と手数料100円の合計10,700円を支払った。

まず、1月に購入した株式をすべて集計します。集計結果は以下の通りです。

株数単価合計価額
1月10日:購入101,01010,100
1月15日:購入301,11033,300
1月25日:購入101,07010,700
合計501,082(※計算)54,100

【総平均法の平均単価の計算】

平均単価1,082円 = 期間の購入価額合計54,100円 ÷ 合計株式数50株

次に、売却損を計算します。

【売却損の計算】
20株を17,000円で売却

売却損4,640円 = 売却価格17,000円 - 株式の価額21,640円(※)

※株式の価額21,640円 = 20株 × 総平均法の単価1,082円

総平均法は、集計期間が終わらなければ平均単価を計算することができません。
具体例では1月20日に売却していますが、現実的には1月20日に有価証券売却損を計算することができません。
理由として、1月20日時点は総平均法の集計期間が終わっていないため平均単価の計算ができないからです。具体例の場合、売却損の計算が可能になるのは早くとも2月1日以降になります。

有価証券売却損の仕訳例

仕訳として有価証券売却損を確認していきましょう。
仕訳は、借方に売却価格を記入し、貸方で帳簿価格を取り崩すように行うと間違いが少なくなります。

売買目的有価証券を売却した場合

売却の例として以下を前提とします。

【仕訳の前提】
売買目的で保有していた株式(帳簿価額21,700円)を売却価格17,000円で売却した。

仕訳は以下の通りです。

借方
貸方
預金
17,000円
売買目的有価証券
21,700円
有価証券売却損
4,700円

まず、借方に売却価格の17,000円と書き勘定科目は預金とします。(対価が現金の場合は「現金」の勘定科目を使用します。以下同様)
次に、貸方を売買目的有価証券とし、帳簿価額の21,700円にします。
最後に、借方と貸方の差額を計算します。借方が4,700円少ないため、借方に有価証券売却損4,700円とします。

その他有価証券を売却した場合

その他有価証券の売却の例として以下を前提とします。

【仕訳の前提】
その他有価証券として保有する社債(帳簿価額19,000円)を売却価格17,000円で売却した。

仕訳は以下の通りです。

借方
貸方
預金
17,000円
その他有価証券
19,000円
投資有価証券売却損
2,000円

まず、売却価格17,000円を借方に預金とします。
次に、貸方に帳簿価額19,000円でその他有価証券とします。
最後に、借方と貸方の差額を計算します。借方が2,000円少ないため、借方に投資有価証券売却損2,000円とします。

有価証券売却損の手数料の仕訳

有価証券を購入・売却すると手数料がかかります。
手数料の取り扱いは、購入時と売却時で処理が違うため注意が必要です。

タイミング手数料の取り扱い
購入時有価証券の取得価額に含める
売却時支払手数料で処理する

売却手数料の例として以下を前提とします。

【仕訳の前提】
売買目的で保有していた株式(帳簿価額21,700円)を売却価格17,000円で売却した。
その際に手数料200円を支払った。

仕訳は以下の通りです。

借方
貸方
預金
17,000円
売買目的有価証券
21,700円
有価証券売却損
4,700円
支払手数料
200円
預金
200円

上記の仕訳は、有価証券の売却と手数料を別々にしたものです。
借方と貸方に同じ勘定科目である「預金」があるため、以下のように相殺してまとめても問題ありません。
借方
貸方
預金
16,800円
売買目的有価証券
21,700円
有価証券売却損
4,700円
支払手数料
200円

有価証券売却損の仕訳を正しく行おう

有価証券売却損は、会計の売買目的有価証券を売却した時に使う勘定科目です。
その他有価証券を売却した時は投資有価証券売却損の勘定科目を使います。

仕訳を行う時は、借方に売却価格、貸方に有価証券の帳簿価額を記入します。
最後に借方と貸方の差額を計算することで、間違いが少なくなるでしょう。

よくある質問

有価証券売却損とは?

有価証券を売却した時に生じる損のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

有価証券売却損の計算方法は?

「売却損=売却価格-帳簿価額」によって求められます。詳しくはこちらをご覧ください。

有価証券売却損の仕訳方法は?

借方に売却価格を記入し、貸方で帳簿価格を取り崩すように行うと間違いが少なくなります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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