- 更新日 : 2024年8月8日
棚卸資産の勘定科目とは?計算方法や仕訳例を解説
商品や原材料など、事業者が販売目的で所有する資産を棚卸資産といいます。固定資産とは異なり、棚卸資産は短期で売買される流動的な性質が特徴です。棚卸資産を仕訳する際の勘定科目には、商品をはじめさまざまなものがあります。
この記事では、棚卸資産の勘定科目のほか、仕訳例や棚卸資産の価値の求め方などを解説していきます。
目次
棚卸資産とは?種類や貯蔵品との違い
棚卸資産とは、事業者が最終的に販売することを目的に仕入れ、決算時に所有している資産を表します。棚卸資産の代表例である商品のほか、製造業で保管されている製品、製品製造を目的に保管している仕掛品(製造途中の製品)や半製品(未完成の製品)、原材料などが含まれます。
また、土地や建物は一般的には固定資産として扱いますが、土地や建物の販売を業としている不動産会社では棚卸資産として扱います。
なお、棚卸資産のように実地棚卸によって期末残高を確認する資産には「貯蔵品」もあります。貯蔵品は保管している切手や文房具など未使用の消耗品などを表すため、販売を目的としないという意味において、棚卸資産とはまた異なる性質をもった資産です。
棚卸資産の分類や評価方法については以下の記事でも解説しています。
棚卸資産は貸借対照表のどこに計上する?
棚卸資産は、貸借対照表の資産の部のうち、流動資産の部に含まれます。流動資産とは、決算日から1年以内に現金化または費用化が見込まれる資産のことです。商品や製品などの棚卸資産は販売を目的に取得したもので、基本的に短期間のうちに販売され現金化されることから流動資産に該当する資産となります。
棚卸高の求め方
棚卸高とは、棚卸資産の在庫額のことです。棚卸資産は、保管期間中の紛失や破損、商品や製品の陳腐化による価値減少が発生する場合があります。
そのため、事業年度末の時点で帳簿価格と実際の価額が一致しているかどうかを確認する必要があります。この作業を実地棚卸といいます。棚卸資産は、その会社が採用している棚卸資産の評価方法で帳簿上の期末棚卸高を求め、実地棚卸を行うことで帳簿上の価値と実際の価値を一致させます。なお、棚卸資産の評価方法については後述します。
棚卸資産の勘定科目と仕訳例
棚卸資産は会計用語として用いられる総称であり「棚卸資産」という勘定科目を使うことは多くありません。棚卸資産の種類に応じた勘定科目を使用するのが一般的です。
よく使われる棚卸資産の勘定科目が「商品」です。販売業など、商品の売買をする業種を中心に使われます。製造業では「製品」のほか、完成前の棚卸資産の実態に合わせて「半製品」「仕掛品」「原材料」などを使用します。
不動産会社が販売目的で所有する不動産(土地や建物など)は固定資産には計上せず、一般的には「棚卸不動産」のような勘定科目が使用されます。
今回は棚卸資産のうち「商品」を例に、棚卸資産に必要な仕訳を見ていきましょう。
期中に購入した棚卸資産
棚卸資産の仕訳には分記法や三分法など、いくつかの方法があります。代表的な仕訳方法は「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの要素を用いて仕訳をする三分法です。三分法では、期中の仕訳で棚卸資産の勘定科目を使用しません。今回は、三分法による仕訳例を見ていきます。
【例】商品50万円を得意先より仕入れた。代金は翌月末に支払うものである。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 500,000円 | 買掛金 | 500,000円 |
※三分法による仕訳の例です。
期中に商品を購入した場合は、商品勘定を増やすのではなく、「仕入」勘定を使って仕訳をします。商品勘定は棚卸によってのみ残高が増減する勘定科目であり、期中には変動がありません。事業年度中の仕入高の把握は仕入勘定で確認できます。
期中に販売した棚卸資産
期中に商品を売り上げた場合も、三分法では商品勘定を使用しません。次の仕訳例のように「売上」の勘定科目を使用して仕訳を行います。仕入時と同じように、当期の売上高を把握しやすいメリットがあります。
【例】商品100万円(原価50万円)を売り上げた。売上代金は来月末に入金される。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 1,000,000円 | 売上 | 1,000,000円 |
※三分法による仕訳の例です。
期末の棚卸資産
三分法の場合、期中は直接的に商品勘定を使わないため、棚卸資産の増減が反映されません。そのため、決算時の棚卸資産の価額は前期末に計上したままの状態です。
事業年度末には、棚卸資産の額を実際の価額に修正する必要があります。まず行うのが決算棚卸です。棚卸資産の在庫は、継続的に記録している商品有高帳などで帳簿上の額を把握できるため、その在庫数をもとに評価を行い、現在の価値に修正する仕訳を行います。以下は、棚卸資産の決算修正仕訳の例です。
【例】商品の決算修正仕訳を行うものとする。なお、前期末の商品棚卸高は800,000円、当期末の帳簿上の商品棚卸高は600,000円であった。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 800,000円 | 繰越商品(商品) | 800,000円 |
繰越商品(商品) | 600,000円 | 仕入 | 600,000円 |
※三分法による仕訳の例です。
決算修正仕訳を行うことで、商品勘定の残高が当期末の帳簿上の価額に修正されます。
なお、棚卸資産は事業年度末に実地棚卸を行いますが、必ずしも帳簿上の残高と一致するとは限りません。実地棚卸により帳簿上の価額と相違が発生した場合は、次のような仕訳を行い商品勘定の残高を修正します。
【例】実地棚卸を行ったところ、商品の破損や紛失により30,000円の棚卸減耗損、商品の陳腐化により20,000円の商品評価損が生じていることがわかった。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
棚卸減耗損 | 30,000円 | 繰越商品(商品) | 30,000円 |
商品評価損 | 20,000円 | 繰越商品(商品) | 20,000円 |
棚卸資産の評価方法・計算方法
事業年度末には棚卸資産の価額を決定する必要がありますが、棚卸資産の在庫の数や種類が多いと計算も困難です。そのため、以下に紹介する棚卸資産の評価方法を用いて棚卸資産の期末評価額を計算します。
■個別法:棚卸資産それぞれを個別に評価する方法。
【計算例】在庫が商品A、B、Cの場合は、A+B+Cの仕入額
■先入先出法:先に仕入れた棚卸資産から順に出ていったと考え評価する方法
【計算例】最終仕入の単価×在庫数量
※例えば最終仕入数が30個で在庫数が50個の場合などは、すべてを最終仕入の単価で計算せずその前の仕入の単価にさかのぼって計算します。
■総平均法:期首の残高とすべての仕入額を総数で割って最終単価を計算する方法
【計算例】(期首棚卸資産の額+仕入額)÷(期首棚卸資産の数量+仕入数量)×期末棚卸資産の数量
■移動平均法:仕入れの度に仕入額と在庫額を合計し加重平均単価を計算する方法
【計算例】(棚卸資産の在庫価額+今回の仕入額)÷(棚卸資産の在庫数量+今回の仕入数量)×在庫数量
■売価還元法:期末時の販売価格の合計に原価率をかけて評価する方法
【計算例】期末棚卸資産の販売価額合計×原価率
■最終仕入原価法:期末に一番近い仕入額を基準に評価する方法
【計算例】最終仕入の単価×在庫数量
棚卸資産の評価方法の詳しい説明や選択のポイントは以下の記事を参照ください。
棚卸資産の種類で勘定科目も変わる
棚卸資産は販売を目的とした資産であり、その種類によって勘定科目が変わります。代表的なものが「商品」や「製品」です。三分法のように、期中に棚卸資産の勘定科目を増減させない仕訳方法もありますので、自社に適した仕訳のやり方を押さえておきましょう。
よくある質問
棚卸資産の勘定科目は?
棚卸資産の種類に応じて使用する勘定科目が異なります。代表的なものが「商品」「製品」「原材料」などです。詳しくはこちらをご覧ください。
棚卸資産の評価方法は?
選択できる評価方法として、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法、最終仕入原価法があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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