- 更新日 : 2024年8月8日
決算とは?行う理由や時期、業務の流れ、必要書類について解説!
健全な経営を図るため、また、株主などのステークホルダーへの会計責任を果たすために、会社は「決算」を行います。この記事では、なぜ決算が必要なのかという理由から、決算の時期、決算業務の流れ、決算に関わる書類について解説していきます。
目次
決算とは?
決算とは、一定期間における収益と費用の計算により損益を求め、決算日時点における資産、負債、純資産の状況を確定する手続きです。企業だけでなく、一般社団法人、国、地方公共団体などでも決算の実施が義務付けられています。
また上の図のように、当期末に行う決算を「本決算」、当期のちょうど半分で行う決算を「中間決算」、当期を4つの期間に分けて行う決算を「四半期決算」といいます。本決算はどの企業も行う必要がありますが、中間決算や四半期決算は任意です。ただし、金融商品取引法の対象となる上場企業などにおいては、四半期ごとに決算を行い、四半期報告書を提出する義務があります。
決算を行う理由は?
企業などでは、法律によって決算を行うことが義務付けられています。決算を行うことで確定する会社の財務状態や経営成績などは、企業のステークホルダー(利害関係者)にとって重要な情報になるためです。
ステークホルダーは、取引先や金融機関のほか、株主、従業員、消費者、地域社会など、企業と関係があるあらゆる個人や組織などをいいます。特に近年の流れとして、企業に資金を提供する投資家を重視する傾向があり、決算での情報開示(ディスクロージャー)によって、投資家の経済的意思決定を阻害しない環境づくりが求められるようになりました。
また、経営者が適切な経営判断を下すための資料として、決算書が用いられます。企業の状態を数値面から多角的に分析することで、新規事業の導入や不採算事業の整理など、重大な経営判断の材料となります。
決算を行う時期は?
法人と個人では、決算を行う時期が異なります。
法人の決算期
法人は、事業年度を任意に設定できます。事業年度とは、決算のために区切った一定の期間です。決算期は事業年度の最終月を指し、3月決算を採用している企業もあれば、12月決算もあるなど、企業によって決算期は異なります。
事業年度は、法人設立時に税務署へ提出する法人設立届への記載が義務付けられています。定款への記載は任意ですが、特段の事情がない限り、事業年度を記載するのが一般的です。
会社の決算期については以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。
個人の決算期
個人事業主は、法人とは異なり、確定申告のための会計期間が毎年1月1日から12月31日の1年間と決められています。法人のように、事業者が任意で期間を設定できません。そのため、個人事業主の決算期は、必然的に12月となります。
決算業務の流れは?
決算は、主に以下のような流れで行います。
- 当期分の記帳を確定させる
- 資産や負債の実地棚卸と残高確認
- 決算整理仕訳
- 決算書の作成
- 株主総会などで承認を受ける
- 決算書をもとに法人税などの申告書を作成・提出
当期分の記帳を確定させる
決算は事業年度内全ての取引の総まとめのような手続きです。そのため、事業年度の全期間の記帳が完了していないと、決算を進められません。
決算を行う前準備として、当期分の記帳を終わらせた上で、試算表や明細表を作成して確認を行います。確認には主に各勘定科目の集計表である試算表が用いられますが、個々の計算の正誤を確認するために固定資産台帳や製造原価報告書などの明細表も使用されています。
資産や負債の実地棚卸と残高確認
事業年度中に起きた記帳の誤りや減耗などにより、棚卸資産の数量や金銭の額と帳簿上の記録に相違が生じる場合があります。決算においては実際の額・数量に修正する必要があるため、資産や負債の実際の値と帳簿上の値に差異がないか、以下のような調査を行います。
- 預金の残高証明書、当座預金の取引照合表と預金の記帳が一致しているかの確認
- 現金の実残高と帳簿上の残高が一致しているかの確認
- 商品、製品、仕掛品、材料の実地棚卸
- 売掛金・買掛金・未払金・未収金残高の確認
- 仮払金や立替金などの未清算分の確認と帳簿との比較
- 事業年度中の固定資産の除却・移動などの確認 など
決算整理仕訳
実地棚卸や残高確認の結果をもとに修正仕訳を行った後、決算整理仕訳を行います。決算整理仕訳とは、決算を行うために必要な最終修正の仕訳です。通常の仕訳とは異なる決算整理仕訳では、以下のような会計処理を行います。
- 実地棚卸による期末棚卸高を確定し、売上原価を計算する
- 取引先の状況や過去の実績に基づいて貸倒引当金を設定する
- 固定資産の減価償却を行う
- 未払費用や前払費用などの経過勘定を確定し計上する
- 有価証券の評価替えを行う
- 貸倒引当金以外に引当金があれば見積りを行い計上する など
決算整理仕訳と会計処理については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。
決算書の作成
決算整理後、作成した試算表に問題がなければ、決算書を作成します。株式会社において、会社法上作成が必要なのが、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)、事業報告、計算書類の附属明細書、事業報告の附属明細書です。
証券市場において株式を広く募集している上場企業においては、利害関係者も増えるため、会社法による定め以上に厳しい情報開示が求められます。上場企業など、金融商品取引法の対象になる企業は、財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書、附属明細表)のほか、企業概況や事業概況などの情報を含んだ、有価証券報告書の作成が必要です。
株主総会などで承認を受ける
作成した計算書類は会社法によって定められている機関から承認を受ける必要があります。原則として株式会社は定時株主総会による承認を受けなければなりません。しかし、例外として取締役会および会計監査人を設置している企業は、定時株主総会による承認は必要なく、当該計算書類の内容を定時株主総会で報告する義務を負います。
決算書をもとに法人税などの申告書を作成・提出
確定した決算書をもとに、法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税、消費税の税務申告に必要な書類を作成し、確定申告を行います。申告期限は、課税期間終了日(決算日)の翌日から2ヶ月以内であるため、計画的に作業を進めていく必要があります。
個人事業主は、所得税の確定申告と、必要に応じて消費税の申告が必要です。
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決算書を構成する書類は?
前述したように、決算にあたり、さまざまな書類を作成する必要があります。作成する書類については、上場企業など金融商品取引法の対象になるかどうかで変わってきます。決算報告書や有価証券報告書を構成する書類については、以下の記事で詳細に触れていますので、こちらをご覧ください。
決算書を構成する書類の中でも代表的なのが、財務三表と呼ばれる、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)の3つです。それぞれの書類について、簡単に解説していきます。
損益計算書(P/L)
損益計算書は、当期の経営成績を示した書類です。当期の売上高や売上原価のほか、営業損益、営業外損益、特別損益が表示され、営業利益、経常利益(営業外損益を含めた利益)、当期純利益(特別損益を含めた利益)の額が把握できます。
損益計算書でわかるのは、収益や費用の内訳と理由です。前年度の損益計算書と比較し、売上や利益の伸び率や費用とのバランスなど、企業が持つ収益性や競争力について分析できます。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表は、決算日における企業の財政状態を示す書類です。決算日時点で、企業が持つ資産の額と内訳、資産を構成する他人資本(借金など)と自己資本(株式発行など)の比率などが把握できます。
貸借対照表からは、企業経営の健全が推察できます。貸借対照表から得られる情報は、投資家などのステークホルダーにとってだけでなく、経営者にとっても非常に重要な情報です。貸借対照表の情報は、債権債務の情報整理に役立つほか、資金調達の優先度や、資金繰りに影響を与える流動資産と流動負債のリバランスにも役立ちます。
キャッシュフロー計算書(C/F)
キャッシュフロー計算書は、有価証券報告書の提出義務がある上場企業などで作成が必要な書類です。キャッシュフロー計算書は、損益計算書や貸借対照表ではわからない、一定期間におけるキャッシュ(現金や預金などの現金同等物)の動きを表しています。
損益計算書上で利益が出ていても、収益の認識とキャッシュの回収時期にはズレが生じる場合があるため、資金繰りが難しくなることがあります。キャッシュフロー計算書は、キャッシュの出入りに注目した書類なので、作成義務のない中小企業でも、資金の流れを確認するために作成しておくと便利です。
例えば、「営業活動によるキャッシュフロー」の項目では、本業におけるキャッシュのサイクルがプラスになっているかを確認できるため、サイクルの改善といった経営判断をする材料となります。
損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/F)の見方については、以下の記事で解説していますので、こちらもご覧ください。
決算書の読み方を更に詳しく知りたい方へ
決算書は会社の成績表のようなものなので、読めると自社や競合他社のことをしっかりと理解できます。しかし最初は読み方を理解するのが難しいかもしれません。そこで、決算書の基本的な読み方について、初心者にもわかるようにご紹介する資料をご用意しました。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などについて解説しています。
決算に向けて日頃から帳簿を作成して準備を進めましょう
決算においては、監査法人や税理士の協力のもと、決算報告書や税務申告書類といった多くの書類を作成する必要があります。会計担当者は日頃から各帳簿を整理し、監査法人や税理士への適切な共有が求められるでしょう。
また、連結決算が必要な企業は、単体での決算だけでよい企業に比べて非常にスケジュールがタイトになりがちです。
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よくある質問
決算とは?
一定期間の損益計算を行い、決算日の財産の状況を確定することをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
なぜ決算をする?
会社のステークホルダー(利害関係者)に対して、適切な会計情報を提供するためです。詳しくはこちらをご覧ください。
決算の時期は?
個人事業主の決算期は12月、法人は決算期を任意に設定できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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