- 更新日 : 2024年8月8日
協賛金の仕訳方法と勘定科目まとめ
会社で協賛金を支払うことや受け取ることになった場合、いくつかの勘定科目が考えられます。勘定科目によって税区分が異なるため、各科目の特徴を理解していくことが大切です。
今回の記事では、協賛金を支払った際に考えられる勘定科目や消費税区分について解説します。適切な勘定科目を使うことで、節税につながるかもしれません。
協賛金を支払った場合の仕訳と勘定科目
一般的に、協賛金はイベントや事業に対して企業が支払う金銭のことです。協賛金の内容によっては、協賛金として支払った経費を全額損金として算入できます。
協賛金を支払った際、考えられる勘定科目は「広告宣伝費」「寄付金」「諸会費」「交際費」の4通りです。各勘定科目がどのような特徴を持つのかを紹介し、仕訳方法や損金との関係性について解説していきます。
広告宣伝費
広告宣伝費は、企業の商品やサービスを不特定多数の消費者に宣伝する際に必要な経費です。協賛金支払い以外にも、ネット広告やテレビCM、パンフレットの作成などが該当します。
広告宣伝費は対象が「不特定多数」である点がポイントです。協賛金であっても対象が特定される場合は後に説明する交際費に該当します。
地元の花火大会に広告宣伝費として普通預金から30,000円の協賛金を支払う際、仕訳・記帳は以下の通りです。
なお、広告宣伝費は、全額損金に算入できます。
寄付金
寄附金と表記されることもある寄付金は、国や地方自治体、団体などに対して事業性のない寄付をすることです。
例えば、事業と関係のない団体が主催する雪まつりに協賛金を支払う場合、寄付金で処理します。ただし、自社の看板を雪まつり会場に設置するなど不特定多数への宣伝効果が見込まれる場合は、広告宣伝費です。
雪まつりへの協賛金を寄付金として、普通預金から30,000円支払う際は以下の通り仕訳・記帳します。
法人税法上、寄付金は「国や地方公共団体への寄付金」「指定寄付金」「特定公益増進法人への寄付金」「一般の団体や組織への寄付金」の四種類に区分可能です。種類によって、損金の扱いが異なります。
国や地方公共団体への寄附金や指定寄附金は全額が損金算入可能です。指定寄付金は広く一般に募集され、かつ公益性及び緊急性が高いものとして、財務大臣が指定したものを指します。
特定公益増進法人に対する寄附金は、以下いずれか少ない金額が損金に算入可能です。
- 特定公益増進法人に対する寄附金の合計額
- 特別損金算入限度額
一般の団体や組織への寄付金の場合、以下の計算結果を損金に算入できます。
諸会費
諸会費とは、企業の事業に関連して加入している団体に支払う際の勘定科目です。商工会議所の会費などが該当します。事業に関連する協賛金であっても、広告宣伝費や交際費に該当しない場合は諸会費です。
会社が加入する団体に対し、普通預金から30,000円の協賛金を支払った場合には以下のように仕訳・記帳します。
諸会費は原則損金算入が可能ですが、ロータリークラブのように事業性に乏しいと判断された場合は諸会費として損金算入することができません。
交際費
交際費は取引先との付き合いのために支払われる経費です。広告費の項目でも説明したように、協賛金の支出が「特定の対象者」との取引を円滑にする目的の場合、交際費として計上します。
具体例は、協賛するイベントの主催者が取引先であるケースです。取引先が主催するスポーツイベントに対し、普通預金から100,000円の協賛金を支払った場合は、以下のように仕訳・記帳します。
まず、協賛金は対価性がない場合、損金算入することはできません。法人税法上、損金に算入できる場合でも、交際費の金額は資本金額で異なります。
期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(中小企業)は、以下のいずれかの金額を損金に算入可能です。
- 交際費の額のうち、飲食費の50%に相当する金額まで
- 年間800万円まで
一方、期末の資本金の額又は出資金の額が100億円超の法人は全額損金に算入できません。それ以外の法人は接待飲食費の50%まで算入可能です。
出典:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
協賛金を受け取った場合の仕訳と勘定科目
主催者側として、協賛金を受け取った場合も状況によっていくつかの勘定科目に区分することができます。考えられる例が「協賛金収入」「寄付金収入」「雑収入」「事業収益」です。
協賛金収入
あえて協賛金からの収入であることを明確にしておきたい場合「協賛金収入」という勘定科目を設けることも可能です。主催するイベントの協賛金として、30,000円を受け取った場合は以下のように仕訳・記帳します。
寄付金収入
学校法人などでは、寄付金収入を計上するケースがあります。ただし、今回のように中小企業などが協賛金を受け取る際には「雑収入」とすることが一般的です。
雑収入
協賛金は本業以外の収益ととらえた場合、雑収入として計上されます。雑収入は営業外収益のうち、当てはまるものがない勘定科目のことです。
性格は雑収入と同じものなので、仕訳・記帳は協賛金収入の際と同じやり方で、科目名だけが変わります。
事業収益
会費のように事業性のある協賛金である場合や、パンフレットに社名を載せるなど受け取った協賛金の対価として見返りを行う場合であれば、事業収益とするケースもあります。事業収益とする際は、以下の通りです。
協賛金の税区分
協賛金を支払う際の消費税の税区分は、支払う目的によって異なります。対価性があるかどうかという点が、消費税の課税区分を判断する際のポイントです。
まず、広告宣伝効果を目的とした「広告宣伝費」であれば、課税の対象となります。主催者が顧客であり、取引を円滑にする「交際費」の性格を持った協賛金であれば、対価性のない取引なので課税対象にはなりません。
同様に「寄付金」も消費税の課税対象外です。業界に支払う会費にも、対価性がないため不課税仕入れとなります。
協賛金の勘定科目を正しく理解しておく
地元のお祭りや、取引先が主催するイベントがある場合など、協賛金を支払う場面はいくつもあります。協賛金をどの勘定科目に仕訳するかによって、損金算入の額が変わるため、協賛金の勘定科目を正しく理解しておくことが大切です。
協賛金を支払う場面が出た場合、特定の相手先なのか、事業性があるものなのかといった点をチェックしながら仕訳するようにしましょう。
よくある質問
協賛金を支払った場合の勘定科目は?
対象先が不特定多数なのか、事業性があるものなのかといった基準により「広告宣伝費」「寄付金」「諸会費」「交際費」のいずれかに区分できます。詳しくはこちらをご覧ください。
協賛金を受け取った場合の勘定科目は?
本業以外の収入なので、雑収入とするのが一般的ですが、より個別に管理するために「協賛金収入」という勘定科目をつくることも可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
協賛金の税区分は?
協賛金を支払うことで対価性があれば消費税の課税対象、対価性がなければ課税対象外です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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