- 更新日 : 2024年8月8日
特別損益とは?特別損失と特別利益として計上される具体例とともに解説
損益計算書において、企業が通常行っている業務で得た利益である経常利益に、特別利益を加え、特別損失を差し引いて税引前当期純利益を計算します。この経常利益の次の段階における、特別利益と特別損失を合わせて特別損益と呼びます。この記事では、特別損失や特別利益の具体例を交えてわかりやすく解説します。
特別損益とは
企業会計原則において、損益計算書は企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならないとされています。(「企業会計原則」第二・一)」
損益計算書において、経常利益までは当期の業績を反映した「費用」や「収益」を認識するのに対し、特別損益は会社の経常的な業務内容とは関係なく、その期だけに例外的に生じた多額な「損失」や「利益」を意味します。
「費用」と「損失」の違いは、売上に貢献するかどうかという考えもありますが、一般に広義に費用といえば、原価、費用、損失を指すように費用の一分類とするほうが考えやすいと思います。
また、「収益」は企業の営業活動によって生じたもので下の式が成り立ちます。したがって、原則的に特別利益として計上されるものからは費用が控除されています。
上記のように損益計算書には5つの利益が表示していますが、営業損益と経常損益は当期の収益力を表示し、そして純損益計算では当期に発生した例外的な取引を表示しています。
企業会計原則注解12において、特別損益として「臨時損益」と「前期損益修正」の2項目が挙がっていますが、2011年からは「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用することとなり、「前期損益修正」項目については事実上、消滅しました。
ただし、「中小企業の会計に関する指針」等に従い会計処理をする中小企業については、「前期損益修正」の科目で修正処理を使うことは可能です。
したがって、特別損益は実質、会社の当期の業務活動に関係せず、規則的また反復的に生じることのない臨時の利益や損失のこととなります。
特別損失となるもの
省略して「特損」と呼ばれることもある特別損失ですが、特別損失として計上される要件としては、次の2点があげられます。
- 例外的な又は異常な事象に基づくこと
- 多額であること
そして、特別損益のうち、実際の計上例が多いのは圧倒的に特別損失の方です。
国際的な会計基準との比較可能性を高めるため、将来のリスク(不確実性)の財務諸表への開示が進み、減損会計や時価会計などを取り入れた特別損失を使った処理も多く見受けられます。また、自然災害や新型コロナウイルス感染症による企業への影響のように、臨時的で発生が予期できない大きな損害も特別損失として計上されます。
特別損失の具体例
特別損失として企業会計原則注解12にには次のような例があります。
- 不動産などの固定資産売却損や固定資産除去損
- 長期間保有している株式や証券売却による売却損
- 火災や自然災害、盗難などによる損失
しかしながら、異常な事象は予期できないものであり、例えば次のようなもので計上要件に当てはまれば特別損失として計上されることとなります。
- 在庫商品等の評価減
- 休業による損失、リストラ費用
- 減損損失
- 情報漏えい対応費用
- 損害賠償対応費用
特別利益となるもの
一般に特別利益は、企業の経常的な事業活動とは直接関係なく、その期にだけに例外的に発生した臨時的な利益のことをいいます。特別損失と同様に、例外的な又は異常な事象に基づくことや多額であることが要件となります。
しかしながら、特別利益は特別損失と異なり、前年度に繰り入れた引当金の戻入益として特別利益で計上することがあります。「中小企業の会計に関する指針」においても、貸倒引当金の戻入については「取崩額の方が多い場合は、その取崩差額を特別利益に計上する」として特別利益を利用することが示されています。
特別利益の具体例
特別利益も特別損失同様に、企業会計原則注解12から次のような例があります。
- 不動産などの固定資産売却益
- 長期間保有している株式や証券売却による売却益
他にも保険差損益や投資有価証券評価損益などがあります。今般のコロナ関連の給付金や助成金についての表示を営業外収益ではなく、特別利益に計上した企業もあります。
特別損益が多額の時に気を付けるべきこと
特別損失の中でも、多大の特別損失の計上は会社の利益を大きく変えてしまいます。その場合に注意すべき点としては、計上した特別損失が法人税法上損金として認められるかどうかです。
例えば、同じ特別損失であっても固定資産の売却損であれば法人税法上、特別のことがない限り損金不算入とされることはありません。しかしながら、減損損失の場合は「固定資産の評価損」と認識され、法人税法上損は原則として損金不算入とされています。
したがって、多大の減損損失を計上しても税務上は損金不算入となり、法人税が課税されることにつながります。減損の対象となる固定資産が建物などの減価償却資産であれば、減価償却期間にわたって損金不算入とされた金額が認められて会計との差異は徐々に解消しますが、土地の減損だとその土地を売却等するまで、損金不算入とされたままになります。
特別損益と会計のグローバル化
2011年の東日本大震災の影響で、わが国は国際会計基準の強制適用を延期し、同じころアメリカもヨーロッパなどを中心とする国際会計基準の適用を見送りました。その後、わが国は国際会計基準の強制適用を当面見送ることになりました。
実は、国際会計基準や米国基準には我が国の会計制度が持つ「特別損益」の区分はありません。
国際的な会計基準がわが国に浸透しない理由の一つには、この特別損益の存在も無視できません。
普段の業務ではあまり目にする機会の少ない特別損益ですが、会計のしくみの中では目立つ位置にあることがわかったのではと思います。
よくある質問
特別損益とは?
会社の当期の業務活動に関係せず、規則的また反復的に生じることのない臨時の利益や損失のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
特別損失となるケースは?
例外的な又は異常な事象に基づくこと、また多額であることです。詳しくはこちらをご覧ください。
特別利益となるケースは?
特別損失と同様に、例外的な又は異常な事象に基づくことや多額であることが要件となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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