• 更新日 : 2024年9月27日

決算期は任意で変更可能!メリットや必要な手続きは?

決算期は、定款の変更や税務署などへの届出によって、任意の日にちに変更できます。変更するかどうかは、期待できる効果や業務への影響などを踏まえて検討しましょう。本記事では、決算期変更のメリットや注意点に加えて、変更の手順や決算期設定のポイントを紹介します。自社にとって、変更のメリットや必要性があるか検討してみてください。

決算期は任意で変更できる

決算期は任意の日にちに設定でき、変更も可能です。決算期とは、決算日とも呼ばれ、会計年度の最終日を指します。多くの企業が採用している決算期は3月31日で、会計期間は4月1日~翌年3月31日です。政府や地方公共団体の会計年度にならい、このように設定している企業が多くあります。

ただし税法上、1つの会計期間は12ヶ月以内としなければなりません。たとえば、12月31日の決算期を3月31日に変更する場合の会計期間は、1月1日~翌年3月31日の15ヶ月ではなく、1月1日~12月31日と翌年1月1日~3月31日の2つに分かれます。申告納税も、2つの期間ごとにそれぞれ行わなければなりません。

決算期変更のメリット

決算期の変更によって期待できるメリットには、節税の可能性や社内の状況に適した対応ができることなどがあります。以下で詳しく見ていきましょう。

節税できる可能性がある

決算期を変更することで、節税できる場合があります。ただし、決算期を変更すると必ずしも節税できるというわけではありません。以下では、決算期の変更によって節税が期待できる3つのケースを紹介します。

業績の悪化を見越して利益を持ち越す

会計期間の終盤に多くの利益が期待でき、なおかつそのあとに多くの損失が出そうな場合は、決算期を早めることで節税できることがあります。利益が多ければ、その分法人税額も高くなります。そこで決算期を前倒しすることで、多くの利益が出そうな月を次の会計年度に回し、損失と相殺することで法人税の節税が可能です。

以下の例で考えてみましょう。

  • 3月決算のA社
  • 2020年4月~2021年2月までの利益は合計1,000万円、2021年3月の利益は500万円
  • 2021年4月~2022年2月までの利益はマイナス500万円、2022年3月の利益はマイナス100万円
  • 法人税の税率は15%、800万円を超える部分は2%とする

3月決算の場合は、2021年3月期の利益は1,500万円、法人税は282万4,000円です。2022年3月期の利益はマイナス600万円、法人税は0円となります。

決算期を3月から2月に変更した場合は、2021年2月期の利益は1,000万円、法人税は166万4,000円です。2022年2月期の利益は0円、法人税も0円となります。

2パターンを比較すると、2022年の法人税はいずれも0円ですが、2021年の法人税は120万円近く差があります。2021年3月の利益を先延ばしにすることで、その後の損失と相殺できるため、2期間トータルで見ると法人税額は減ることがわかるでしょう。

ただし、業績の悪化を予測することは難しいため、思ったような節税効果が出ない場合もあります。

利益を来期に回して経費計上で節税を目指す

会計期間終盤の利益を先延ばしにし、来期に多額の経費を計上して利益と相殺することで節税を目指す方法もあります。経費を計上する方法には、大規模な機械や設備の購入や役員報酬の増額などが考えられます。期首に売上が多い場合は、以降の売上を予測することで法人税額を大まかに試算でき、節税方法を考える時間が確保できるでしょう。

消費税の免税期間を延長する

決算期の変更によって、法人税ではなく消費税の節税ができる場合もあります。2期前の事業年度の売上が1,000万円以上ある事業者は、消費税の課税事業者です。決算月付近で多額の売上が計上されることで年度の売上が1,000万円を超える場合は、決算月を早めて売上を来期に回し、今期の売上額を抑えることで免税期間を延長できます。

資金繰りが調整できる

申告納税の期限を資金繰りしやすい時期にできる点も、決算期変更のメリットです。業種によっては、手元にある現金預金の残高が大きく変動する場合もあるでしょう。売掛金は多いものの、現金預金が十分にないという場合も考えられます。決算期を変更することで、現金預金が潤沢にある時期に申告納税の時期を調整でき、無理のない資金繰りで法人税を納付できるでしょう。

役員報酬の金額変更が可能になる

決算期を早めることで、役員報酬の金額も早期に変更できるようになります。役員報酬の金額は、新事業年度の開始から3ヶ月以内でなければ変更できません。「早急に役員報酬の金額を変更したい」という場合には、決算期を前倒しすることも一案です。

決算業務の時期を社内調整できる

社内の状況や繁閑に合わせて決算期を変更することも可能です。決算期を迎えると、経理担当者は通常の業務と並行して決算業務も行わなければなりません。とくに決算期と繁忙期が重なっている場合は、大きな負担となるでしょう。

そこで、通常の業務が落ち着いている時期に決算期を変更することで、担当者は余裕をもって決算業務に集中できるようになるでしょう。

決算期変更の手続きの流れ

決算期変更には、以下の手続きが必要です。

  • 株主総会を開催して議事録を作成する
  • 定款の決算期に関する事項を変更する
  • 税務署・都道府県税事務所・市区町村に「異動届出書」を提出する

一般的に事業年度は定款に記載されているため、決算期の変更には定款を変更しなければなりません。株式会社が定款を変更する場合は、株主総会での特別決議は必要ですが、小規模の企業の場合は書面のみで済ませることもあります。いずれの場合も、決算期変更の旨を記載した議事録の作成が必要です。

議事録のコピーとともに、管轄の税務署や都道府県事務所、市区町村に「異動届出書」を提出することで、手続きは完了します。なお、事業年度は登記事項ではないため、法務局での手続きは不要です。また、許認可の必要な事業を行っている場合は、管轄の省庁へ届出が必要となる場合もあります。

届出の提出期限については、とくに定められていません。しかし、変更後の決算期の2ヶ月後までには提出しておく必要があります。このタイミングが申告納税の期限であるためです。

決算期変更の注意点

決算期の変更がメリットとなる場合は多い一方で、注意すべき点もあります。以下では、決算期の変更を検討する際に知っておきたいデメリットを紹介します。

短期間での決算処理や納税対応が必要

決算期を変更することで、短期間での決算処理や納税対応が必要です。税法によって会計期間は12ヶ月以内と定められており、決算期を変更すると12ヶ月未満の会計期間が発生するためです。たとえば、12月決算を3月決算に変更する場合は、1月~12月、翌年1月~3月のそれぞれの期間において決算処理や申告納税が必要となります。

12ヶ月未満の会計期間において、イレギュラーな対応が必要な場合もあります。減価償却費の計算や中小法人などにおける軽減税率の適用、消費税の基準期間などは、12ヶ月の会計期間を想定しています。そのため、12ヶ月未満の場合の計算は煩雑になるでしょう。

事業年度の短縮により業績判断がしづらくなる

12ヶ月未満の事業年度は、業績や財務状況などを前年度と単純に比較できません。会計期間の長さに加えて、月ごとの繁閑も異なります。そのため、たとえば決算期変更によって6ヶ月の会計期間ができたとしても、前年度の数字を単純に2分の1にして比較しただけでは、経営判断の十分な材料にはならないでしょう。

変更手続きや税務署等への通知の手間がかかる

決算期変更には、定款変更や届出などの手間がかかります。定款変更に株主総会が必要な場合は、発行済み総株式数の過半数を有する株主の出席と、一定の割合の賛成を得なければなりません。届出は、税務署・都道府県事務所・市区町村に対して少なくとも3回必要です。決算期の変更は申告納税に関する重要事項であるため、忘れることなく確実に行いましょう。

決算期の決め方のポイント

決算期をどのように決めればよいのか気になる方もいるのではないでしょうか。メリットを得るほか、デメリットを避けるためにも、以下のポイントを考慮して決算期を検討しましょう。

繁忙期を避ける

決算期を迎えると、原則としてその2ヶ月後までに決算業務を経て申告納税を行う必要があります。自社の繁忙期を避けることに加えて、顧問税理士の繁忙期も避けると、決算業務がスムーズに進むでしょう。

自社の繁忙期

自社の繁閑がはっきりしている場合は、決算期に繁忙期を避けることで担当者の業務負担が分散されます。決算期に通常業務の負担が少なければ、決算業務に集中できるでしょう。

税理士の繁忙期

顧問税理士の繁忙期がわかる場合は、その時期を避けることも一案です。税理士が忙しければ、しっかりと打ち合わせや情報共有を行うことが難しい場合もあります。将来的に継続して決算のサポートを依頼しようと考えている場合は、税理士の繁閑も参考にするとよいでしょう。

期首に売上が多い月を設定する

あえて売上の多い月を期首となるように、決算期を設定するという方法もあります。売上が多く忙しい時期に決算業務を行うことになるものの、1年の売上にある程度の目星をつけ、その金額に合わせた節税方法をじっくり考えられるでしょう。申告納税までに時間があるため、大規模な設備の購入など時間のかかる方法も、余裕を持って実行できます。

納税月を考慮する

決算後に納税する時期の資金状況を考えることも、決算期を考える際の1つの要素です。売上によっては、法人税が多額となる場合もあり、納税のために現金預金が必要となります。現金預金の少ない時期が納税月となれば、資金繰りが苦しくなるでしょう。自社の繁閑に基づいて、手元に十分な現金預金のある時期に納税月が当たるよう調整することで、無理のない資金繰りができます。

メリットが多ければ決算期の変更を検討しよう

決算期は任意の日にちに設定でき、変更も可能です。決算期の変更は、節税となる可能性があるほか、社内の繁閑や資金繰り状況に合わせられることもメリットです。一方で、決算期の変更には手続きやイレギュラーな決算処理が必要であり、前年度との比較がしにくくなります。メリットとデメリットを踏まえて、決算期を変更するかどうか判断しましょう。


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