- 更新日 : 2024年8月8日
火災保険を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
不意の火災に備え、事務所や工場といった建物などに火災保険をかける企業は多いでしょう。火災保険を利用する場合、どのような勘定科目で会計処理するのが適切なのでしょうか。火災保険を支払ったときの勘定科目や仕訳について解説します。
火災保険の仕訳に使える勘定科目
火災保険は損害保険の一種で、火災により保険対象の資産が受けた損害を補償する保険です。落雷や風水災、雪災などの自然災害や盗難、水漏れなどによる損失を補償対象にする商品が増えています。
火災保険の掛金は、事務所用の建物や工場用の建物、事業用の機械など、会社の資産を対象にしたものであれば全額を経費にできます。自宅兼事務所など、保険対象の資産が個人所有を兼ねている場合には按分計算が必要です。
一般的な火災保険は建物が保険対象ですが、建物内の商品や製品、什器備品といった財物の損害も補償するように保険内容をカスタマイズできる法人向けの火災保険もあります。
火災保険料を支払った際の仕訳は、保険が効力を発揮する期間に応じて「保険料(または損害保険料)」や「長期前払費用」の勘定科目を使います。また、積立型の火災保険を契約した場合は、積立部分は「保険積立金」などの資産の勘定科目を使った仕訳が必要です。
火災保険を保険料で仕訳する
保険料を支払った火災保険の契約期間が1年以内である場合、次の仕訳例のように保険料(または損害保険料)の勘定科目を使って仕訳をします。
(仕訳例)
事務所用建物の火災保険料(2023年1月~2023年12月まで)として1年分の30万円を普通預金より支払った。会計期間は1月~12月である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
保険料 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
(摘要)事務用建物の火災保険料1年分(2023年1月~2023年12月) |
仕訳例では、ちょうど会計期間内の1年が契約期間になっていますが、火災保険料の契約期間が事業年度をまたぐ場合、「前払費用」の勘定科目を使用して、当期分と翌期以降分に分けて仕訳をします。ただし、契約期間が1年以内で継続して処理を行う場合は全額を保険料として経費に計上することも認められます。
上記の例は一般的な火災保険のケースですが、火災保険には掛け捨て型だけでなく積立型のものも存在します。払込保険料のうち一部を満期時に満期返戻金として受け取れるタイプの火災保険です。火災保険料のうち、将来満期金となる積立部分については貯蓄の性質があるため、資産として計上しなければなりません。積立型の火災保険については以下のような仕訳をします。
(仕訳例)
事務所用建物の火災保険料(2023年1月~2023年12月まで)として1年分の50万円を普通預金より支払った。なお、積立型の火災保険料を契約しており、うち20万円は積立部分である。会計期間は1月~12月である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
保険料 | 300,000円 | 普通預金 | 500,000円 |
保険積立金 | 200,000円 | ||
(摘要)事務用建物の積立型火災保険料1年分(2023年1月~2023年12月) |
火災保険を長期前払費用で仕訳する
火災保険は1年単位ではなく、長期での契約もできます。単年契約と比べ、同期間の保険料の総支払額を抑えられるのが長期契約の特長です。以前は10年まで契約ができましたが、2022年10月に行われた火災保険改定により、以降は最長5年までの契約期間となっています。
「長期前払費用」の勘定科目を使って仕訳をするのは、長期契約で契約期間分の火災保険料を一括で支払うような場合です。
次の仕訳例のように、当期分の火災保険料については「保険料」、当期以降分の火災保険料については「長期前払費用」の勘定科目で仕訳をします。
(仕訳例)
事務所用建物の火災保険料(2023年1月~2027年12月までの契約で積立型ではない。)として5年分の120万円を普通預金より支払った。会計期間は1月~12月である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
保険料 | 240,000円 | 普通預金 | 1,200,000円 |
長期前払費用 | 960,000円 | ||
(摘要)事務用建物の火災保険料5年分(2023年1月~2027年12月) |
(計算)
当期分の火災保険料 1,200,000×12/(12×5)=240,000 円
当期以降の火災保険料 1,200,000-240,000=960,000円
複数年分の火災保険料を一括で支払った場合、支払年度の翌期以降、以下の仕訳例のように長期前払費用を費用に振り替える仕訳も必要です。
(仕訳例)
前年度に支払った事務所用建物の火災保険料(2023年1月~2027年12月までの契約で積立型ではない。)120万円(5年分)について、当期分の火災保険料を振り替える。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
保険料 | 240,000円 | 長期前払費用 | 240,000円 |
(摘要)事務用建物の火災保険料5年分前払いのうち当期分 |
(計算)
当期分の火災保険料 1,200,000×12/(12×5)=240,000 円
前払いした火災保険料の期間で勘定科目が決まる
火災保険料のうち、保険の効力が1年以内であれば、継続して処理することを条件に全額を費用に計上できます。そのため、1年契約で更新している火災保険料の支払いは、支払いのたびに「保険料」のような費用の勘定科目を使った仕訳をして問題ありません。一方、1年以上先に効力が生まれる分の火災保険料の前払いをする場合は、当期分と翌期以降分に分けて仕訳する必要がありますので注意しましょう。
よくある質問
火災保険は経費にできる?
事務所用建物や事業用の設備や製品を対象にしたものなど、事業のために契約している火災保険料の支払いは経費にできます。詳しくはこちらをご覧ください。
火災保険の仕訳のポイントは?
1年未満の契約は保険料、1年を超える分の保険料を支払った場合は翌期以降の分は長期前払費用の勘定科目を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
協賛金の仕訳方法と勘定科目まとめ
会社で協賛金を支払うことや受け取ることになった場合、いくつかの勘定科目が考えられます。勘定科目によって税区分が異なるため、各科目の特徴を理解していくことが大切です。 今回の記事では、協賛金を支払った際に考えられる勘定科目や消費税区分について…
詳しくみる外注費と給与の判定は契約書があれば大丈夫?税務調査のポイントを解説
外注費と給与は、契約書が違うから大丈夫、と思っていませんか?契約書で「業務委託」と書かれていても、働き方の実態によっては「給与」と判断される場合があります。税務調査では外注費と給与の区別が重要なチェックポイントです。判断を誤ると追徴課税など…
詳しくみる食材を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
事業に関係のある食材であれば、かかった費用は経費として計上できます。例えば、レシピを考案するために購入した食材や、グルメ記事を執筆する際に注文した食事代などもすべて経費の対象です。どのような勘定科目を使えるのか、仕訳例を挙げて説明します。 …
詳しくみる接待交際費とは?経費にできる条件や仕訳の解説
接待交際費とは、事業に関わる人に対して接待や謝礼をするときに支払った費用のことです。経費計上が可能な費用のため、接待交際費にできる支出とできない支出の範囲について正確に知っておくことが求められます。 間違えやすい勘定科目として、会議費や接待…
詳しくみる株式移転の仕訳や会計処理とは?親会社・子会社・株主別にわかりやすく解説
会社の組織再編やグループ経営の強化を目的として「株式移転」という方法が使われることがあります。この株式移転には複雑な会計処理がともなうため、経理や財務の現場では正しい仕訳の理解が欠かせません。 この記事では、株式移転の基本的な考え方から、親…
詳しくみる買掛金とは?未払金との違いや仕訳例をわかりやすく解説
買掛金とは、企業の営業活動において、仕入における掛取引の処理で用いる勘定科目です。支払義務がある仕入にかかわる科目であることから、仕入債務にも区分されます。 この記事では、買掛金の概要や買掛金と未払金や未払費用との違い、買掛金の仕訳、残高確…
詳しくみる