• 更新日 : 2024年12月6日

稟議書とは?書き方・目的別の例文、無料テンプレート

稟議書とは、経費で物品を購入する場合や社員の新規採用の場合などに、上長から承認を得るための書類です。しかし、いざ稟議書を書くとなると、書き方がわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、稟議書の書き方や稟議の流れについて解説します。稟議書作成で使えるテンプレートや例文も紹介するので参考にしてください。

稟議書とは?

稟議書とは、自身の権限では決められない事案に関して、社内で回覧し、複数の関係者に承認や決裁を得るための書類です。「立案書」と呼ばれることもあります。

稟議書が必要なケースは、新規取引先との契約、会社の経費を使った備品購入や会食、従業員の採用などです。これらは、稟議書で承認や決裁を経て、はじめて進めることができます。

一般的には、稟議書を回覧して承認を得るまでを「稟議を上げる/かける」といいます。承認された状況は「稟議が下りる/通る」と表現します。

稟議書の必要性・目的

稟議書の目的として、他部署との連携や情報共有をスムーズにすることが挙げられます。稟議書を複数の部署に回覧することにより、事案の内容や合意について共通認識が持てることもポイントです。

また、稟議書を活用することで複数関係者の合意を得る会議が不要となることもあり、承認までの時間や工数の短縮が可能になります。

稟議と決裁の違い

稟議と決裁は、どちらもよく使われる言葉です。

稟議とは、関係者の承認を得るための手続です。稟議書は複数名で回覧し、下位の承認者から順番に承認していきます。

一方、決裁とは稟議書の内容に対する最終的な判断を下す手続です。複数では行わず、決裁者のみが行います。

稟議と起案の違い

起案とは、社内で実行したいことについて原案を作ることです。起案の際に作成した原案が、起案書となります。起案は稟議の始まりともいえるでしょう。

稟議と起案は、原案を作り承認を得るプロセスである点で似た手続です。近年は、稟議と起案、稟議書と起案書を同じ意味として捉えるケースも増えています。

稟議(承認・決裁)の流れ

一般的な稟議は、稟議書の作成、提出、承認、決裁という流れです。「直接決裁」といって、承認を経ず申請から決裁にいくパターンもあります。

それぞれの手順について、解説します。

稟議書の作成・提出

稟議書には、稟議にかけたい内容をわかりやすく記入します。目的に沿ったフォーマットやひな形を使うと良いでしょう。多くの企業では、稟議書に番号をつけて管理しています。提出者側で番号の取得が必要な場合は、管理番号を取得して記入しましょう。

稟議書が完成したら、直属の上司に稟議書を提出します。

承認・決裁

稟議書の承認経路は社内規定などで定められており、稟議の種類によって経路が異なることもあります。直属の上司から順に、上層へ向かって承認を得るような形が一般的です。最終的に決裁権限のある者による決裁が下りると、稟議書に記載した計画が実行できるようになります。

稟議書の内容に不備や疑問点があると、差し戻しや却下となる可能性があります。差し戻しや却下になった場合は、稟議書を修正して再提出しましょう。

稟議書の決裁には時間がかかることもあります。必要事項が漏れていないか、稟議の目的やメリットが記載されているか、提出前に必ず確認しましょう。

稟議書の記入必須項目

稟議書の記入必須項目は、作成日、起案部署・起案者氏名、件名、稟議内容、添付書類、決裁者所見です。それぞれについて解説します。

稟議書の書き方

作成日

作成した日付を入力します。和暦と西暦は、社内の規定に合わせましょう。

起案部署・起案者氏名

起案者が属する部署名と本人の氏名を入力します。部署名は正式な名称を記載しましょう。

件名

稟議内容がすぐわかるよう、件名は要点を絞って簡潔に記載します。

稟議内容

稟議内容には、稟議書の目的・背景・理由・具体的な申請内容を記載します。

目的に盛り込むのは、稟議書に記載した内容を実行することによるメリット・得られる効果や、費用対効果などです。デメリットにも触れておくことで、メリットをより際立たせられる場合もあります。費用対効果の部分では、必要な予算・物品・時間についても説明しておくとよいでしょう。

また、稟議書を作成する背景・理由として、なぜその対応が必要になのかについての記載が必要です。「シュレッダーが故障していて個人情報の廃棄方法で困っている」のように具体的な課題を説明すれば、読み手がより理解しやすくなります。

具体的な申請内容に記載することは、稟議書の種類によってさまざまです。たとえば、購入に関する場合は具体的な金額、新規取引の場合は取引先概要などについて説明しなければなりません。

添付書類

契約書や見積書、履歴書・職務経歴書など、稟議に必要な書類を添付します。

決裁者所見

稟議書を見た決裁者からの意見や疑問点が記載される欄です。こちらから何か書く必要はありません。

稟議書のテンプレート

稟議書の作成には、テンプレートの利用が便利です。稟議書のテンプレートは以下URLのページからダウンロードできます。

稟議書の例文

稟議書に記載する内容は、状況によって異なります。そこで、ここから「物品購入の場合」「新規取引先との契約の場合」「出張の場合」「備品修理の場合」「社員採用の場合」に分けて、それぞれの例文を紹介します。

物品購入の場合

新規にタブレット端末を導入する場合に、上記のフォーマットに沿った稟議書の例文を作成しました。実際に稟議書を作成する際の参考にしてください。

2024年4月15日
第一営業部 山田一郎

営業部で使用するタブレットの購入について

下記のとおり、営業部で使用するタブレットを購入したく、お伺いいたします。

  1. 背景・理由
    営業部では、営業提案の説得力を高めるため、印刷したパンフレットや各種資料を持ち歩いていました。タブレット端末があれば、資料運搬の負担が減り、今以上に営業活動を効率的に進められると考えています。
  2. 購入内容
    対象製品名:○×社製 タブレット○○ ○○型
    価格:1台48,000円
    数量:8台(営業部員8名に1人1台貸与するため)
  3. 導入効果
    営業部員へのヒアリングの結果、現在、営業部員が資料を準備するために、1週間あたり30分必要との結果が出ました。タブレットの導入により、1週間あたり30分の所要時間の軽減が見込まれます。
    また、顧客に提示する資料の印刷にかかる費用は、1商品あたり500円です。1商品のリリースの度に500円×8名=4,000円必要な費用の削減も想定できるため、タブレットの導入を希望します。
  4. 使用開始希望日
    2024年6月1日
  5. 添付資料
    「○×社製 タブレット」パンフレット
    営業部員アンケートの結果(資料準備時間、タブレット使用により想定される効果)

新規取引先との契約の場合

リスク管理やコンプライアンスなどの観点から、一般的に新規取引先との契約にも稟議書の作成が求められます。例文は、以下のとおりです。

2024年4月20日
第一営業部 山田一郎

株式会社△△との新規取引開始について

下記のとおり、新たに株式会社△△との取引を開始したく、お伺いいたします。

  1. 背景・理由
    現在、当社は〇〇県への進出を検討しております。△△社は〇〇県を拠点とする企業のため、本件取引をきっかけに同県への販路拡大を目指すものです。
  2. 新規取引先概要
    取引先名:株式会社△△
    資本金:10億円
    業種:卸売業
    社員数:800人
    設立年:1956年
  3. 期待効果
    △△社は老舗で県民からの認知度も高い企業です。第一営業部が現地で〇〇県民50人に独自に調査を実施したところ、利用しているスーパーマーケットの1位が△△社(30%)でした。そのため、△△社との取引をはじめることにより、〇〇県における当社商品の認知度の上昇も期待できるものと考えております。
  4. 取引条件
    取引開始希望日:2024年6月1日
    初回取引額:■■万円
    支払方法:掛け取引(末締め翌月末払い)

出張の場合

出張する際にも、会社の方針に沿った正当なものであることを示すために稟議書の作成が必要です。会社によっては、「出張申請書」というフォーマットが使われることもあります。

出張の場合に作成する稟議書の例文は、以下のとおりです。

2024年3月10日
第一営業部 山田一郎

〇〇県の市場調査に伴う第一営業部職員2名の出張について

下記のとおり、現地調査に伴う出張をいたしたく、お伺いいたします。

  1. 背景・理由
    同業他社との競争が激しくなり、本社を構える■■県での売上が低迷しております。そこで、販路拡大を図るため、現在隣接する県への進出を検討中です。今回は、当社の〇〇県における進出可能性を探るため、第一営業部社員2名を出張させることを検討しております。
  2. 期間
    2024年3月20日〜25日
  3. 出張者
    第一営業部◆◆、◇◇
  4. 訪問予定先
    株式会社△△など(別紙参照)
  5. 期待効果
    現地調査で当社の可能性を探ることにより、進出リスクの軽減を図ります。△△社など、取引見込みのある先との面談により、現地での協力体制を構築します。
  6. 出張費用概算
    6万円(別紙参照)
  7. 添付資料
    訪問先概要、行動予定表、出張費用内訳

備品修理の場合

購入する場合だけでなく、備品を修理する場合にも稟議書を作成することがあります。ノートPCを修理に出す場合の稟議書の例文は、以下のとおりです。

2024年6月15日
第一営業部 山田一郎

営業部で使用中のノートPCの修理について

下記のとおり、営業部で使用中のノートPCを修理したく、お伺いいたします。

  1. 背景・理由
    6月13日より、営業部で使用しているノートPC1台(備品番号:XX-11111)を起動するも、たびたびエラーが表示されるようになりました。メーカーに確認したところ、早急に修理が必要とのことです。業務に欠かせないツールのため、本件対応を進めるものです。
  2. 修理依頼先
    Y社(ノートPCメーカー)
  3. 修理費用
    〇万円
  4. 導入効果
    第一営業部では、職員それぞれにノートPCを貸与しています。予備のPCがないため、当該ノートPCを使用していた職員は現在資料をタブレットで作成しており、通常より1.5倍の時間を要している状況です。本件修理対応により、従業員の業務効率化につながります。また、ノートPCを新たに購入した場合は約◇万円かかるため、今回はよりコストを抑えられる修理対応といたしたく、本件申請に至るものです。
  5. 修理依頼日
    ご承認後即日
  6. 添付資料
    見積書

社員採用の場合

新たに社員を採用する場合にも、稟議書を作成しなければなりません。採用の稟議書を作成する主なタイミングは、人材を募集するときや最終面接を終えて採用が確定したときです。

総務部で社員を中途採用するため、人材募集する際に作成する稟議書の例を、以下にまとめました。

2024年2月28日
経理部 鈴木花子

経理部への中途採用について

下記のとおり、経理部への中途採用を進めたく、お伺いいたします。

  1. 背景・理由
    本年3月31日に、経理部の正社員が1名退職予定です。業務量を踏まえると、2名では経理業務への対応が困難なため、経理に関する知識・経験を有する人材を新たに採用いたしたく、申請に至りました。
  2. 募集要項
    学歴:不問
    経験:経理業務に関する経験3年以上
    その他:Excelスキルがあること、会計システムを扱えること
  3. 選考方法
    書類選考
    一次面接:人事部長、経理部長
    二次面接:代表取締役社長
  4. 採用コスト
    採用予算:◯万円
    *2022年度に総務部が実施した中途採用のコストと同等の額を試算
  5. 採用効果
    本件採用により、経理部の職員負担軽減、業務量増加に伴うミスの発生リスク軽減につながる見込みです。採用にあたってコストが発生しますが、前担当者が退職することに伴い人件費が減少することや、職員不足に伴う残業代の上昇を防ぐことを考慮すると、妥当なものと判断しております。
  6. 採用予定日
    2024年4月1日
  7. 添付資料
    2022年度、総務部中途採用時の稟議書(写)

承認を得られる稟議書の書き方のポイント

承認を得られる稟議書の書き方のポイントは、主に以下のとおりです。

  • 要点を簡潔にまとめる
  • 根拠となるデータを添付する
  • メリットだけでなく課題や解決策も記載する
  • 稟議書を通す前に根回しをしておく

それぞれ解説します。

要点を簡潔にまとめる

稟議書の文章は、要点を簡潔にまとめるよう心がけましょう。冗長な表現が使われていたり、文章が長かったりして内容をうまく伝えられないと、差し戻しになる可能性があります。

承認者・決裁者が読みやすい文章にするためには、目的・背景・理由・メリットなどを明確に記載することが大切です。また、必要に応じて箇条書きやナンバリングを使うと、読み手が内容をスムーズに理解できます。

根拠となるデータを添付する

根拠となるデータを稟議書に添付することも、承認を得られる稟議書を作成する際のポイントです。公的データのように信頼性の高い資料を添付して市場の状態や他社の動向を示すことで、新規取引の契約や備品の購入などを承認する必要性を承認者・決裁者に伝えられます。

ただし、データを添付する際には分量に注意が必要です。添付資料が膨大になると大切な点が何か読み手に伝わらなくなる可能性があるため、説明に不可欠な情報をピックアップしましょう。

メリットだけでなく課題や解決策も記載する

メリットを記載する際は、あわせて課題・リスクも記載することがポイントです。メリットやポジティブな面にだけ注目して稟議書を作成すると、承認者・決裁者に「客観的に分析せず、稟議書の承認を得ることしか考えていないのでは?」と疑問を持たれる可能性があります。

そこで、稟議書には取引すること・購入することなどについての懸念点やリスクなども明示したうえで、「どのように解決するのか」などを説明することが必要です。メリットがデメリットを上回っていることをうまく伝えられれば、稟議書の承認を得られる可能性が高まります。

稟議書を通す前に根回しをしておく

書き方に関連して、稟議書を通す前に根回しをしておくこともポイントです。

事前に知らされずに稟議書を読んだ承認者は、内容についてよく理解できなかったり、承認の必要性に疑問を持ったりする可能性があります。その点、上司や関係者にあらかじめ内容を説明しておけば、稟議書の内容に疑問を持たれずスムーズに進められるでしょう。

稟議書の作成の流れ

稟議書を作成する際の一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. データを集める
  2. 構成を作成する
  3. 初稿を作成する
  4. 上司や関係者のレビューを受ける
  5. 承認者に提出する

まず、稟議書の内容の信頼性を高めるために、関連するデータを集めます。公的データを調べる、専門家の意見を確認する、アンケートを実施するなどして情報をまとめましょう。

続いて、テンプレートやフォーマットを活用して背景・理由や効果など基本構成にまとめます。会社で決まったものがある場合は、その書式を使いましょう。

構成がまとまったら、各項目に記入して初稿を作成します。極力簡潔な表現を心がけつつ、伝えたいことをすべて盛り込みましょう。

初稿が完成したら、直属の上司などに確認してもらいます。その後、レビュー・フィードバックに基づいて表現を修正しましょう。

最後に、自分でもう一度誤字脱字がないか、内容は理解しやすいかなどを確認したら、承認者に提出します。

稟議書のメリット

稟議書を活用することにより、さまざまなメリットや効果が生まれます。

代表的な稟議書のメリットを3点紹介します。

会議を開くことなく承認を得られる

稟議書を作成することで、会議を開かなくても関係者の承認が得られます。会議がなくなることで、会議の時間やスケジュール調整の手間が省け、自分の業務に割く時間が増えます。

全体の流れが把握できる

稟議書は「いつ誰が何をどのように提案したか」が簡潔にまとめられている書類です。今後の計画や動きがわかりやすく書かれているため、全体の流れを把握できます。稟議書は記録としても残るため、いつ、誰が、何を承認したかの証拠にもなります。

検証と改善により内容の濃い意思決定が可能

稟議書は、回覧する過程で関係部署からの問題点の指摘や改善案の提案が加わります。これにより、稟議書を作成した段階よりも申請内容が改善される点も稟議書のメリットです。

稟議書のデメリット

稟議書には、メリットだけでなくデメリットもあります。稟議書の導入で想定されるデメリットを3点紹介します。

作成に時間と労力がかかる

稟議書作成には時間がかかり、他の業務を圧迫する可能性があります。とくに、稟議書の作成に不慣れな人や文章を書くことが苦手な人は、稟議書作成により時間がかかってしまうでしょう。

さらに、稟議書の内容に専門的な情報が含まれる場合、専門外の部門にその分野について理解してもらう労力も必要となります。

承認までに時間がかかる

複数名に稟議書を回すと、そもそも承認までに時間がかかります。稟議書の差し戻しや承認者の不在が原因で、承認作業がスムーズに進まない場合もあります。稟議書の承認が遅くなることにより、新規契約や新規採用といったビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。

近年、稟議書の承認や決裁を電子化する動きも出ています。稟議書電子化のメリットは、承認までの時間を短縮できることです。承認までの時間を短縮したい場合、電子化を検討すると良いでしょう。

責任の所在が不明確になる恐れがある

稟議書の承認は、1人ではなく必ず複数名で行われます。複数名で承認することにより、承認者個々の稟議書に対する責任感が希薄になってしまう可能性があります。

責任感が希薄になることにより、トラブルやミスでの責任の所在が不明確になるかもしれません。あらかじめ、責任の所在を上司に確認しておくと良いでしょう。

稟議書にはスムーズに決裁を得るための書き方がある

稟議書とは、複数の関係者から承認や決裁を得るための書類です。スムーズに決裁を進めるために、必須の記載事項や書き方のポイントなどを押さえておきましょう。

稟議書には、会議を開かずに稟議を通せるメリットがあります。しかし、複数名に依頼することや承認者不在により承認に時間がかかる点がデメリットです。

近年、稟議書を電子化する動きがあります。稟議書の電子化のメリットは、承認までの時間を短縮できることです。今後稟議書の電子化により、業務の効率化や、稟議を通す際の申請者や承認・決裁者の負担が軽減されることが期待されます。

よくある質問

稟議書とはどのような書類ですか?

稟議書とは、備品購入や新規取引先との契約など、個人では決定できない事案を社内で回覧し、複数の関係者から承認や決裁を得るための書類です。会議を開くことなく承認と決裁を得られるメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

稟議書にはどのような項目を記載すれば良いですか?

稟議書には、作成日、起案部署・起案者氏名、件名、稟議内容、添付書類、決裁者所見を記載します。稟議内容には、稟議書の目的、背景、趣旨、メリット、予算、物品、時間、得られる効果を簡潔に記載しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。


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