• 作成日 : 2022年2月10日

税制改正大綱とは?令和4年度の中小企業に関する改正ポイントを解説!

税制改正大綱とは?令和4年度の中小企業に関する改正ポイントを解説!

令和3年12月24日、令和4年度税制改正大綱が閣議決定されました。今後、国会での審議や本会議での可決で改正法が成立する見込みです。令和4年度税制改正大綱で柱とされたのが、成長と分配の好循環、経済社会の構造変化を踏まえた税制見直しの2つです。

具体的には、賃上げ税制の抜本的な強化、オープンイノベーションの促進、カーボンニュートラル実現のための住宅ローン控除の見直しや不動産取得税の特例の延長などが盛り込まれました。今回は、税制改正大綱の概要から、令和4年度税制改正大綱において中小企業がチェックしておきたいポイントをいくつかピックアップして解説していきます。

税制改正大綱とは?

税制改正大綱は、翌年以降の税制改正の方向性をまとめたもので、与党の税制調査会が中心となって各省庁や団体などからの要望を審議し、閣議へ提出されるものです。

毎年12月ごろに閣議決定される税制改正大綱は、改正法案の作成に利用されます。作成された改正法案は国会に提出され、その後審議を経て本会議で可決され、改正法案として成立する流れです。

税制は変化の激しい経済社会に対応できるように、毎年見直しが行われています。税制改正大綱の内容は確定事項ではありませんが、その後、国会で可決する可能性が高いため、今後の税制の流れを把握しておくためにも重要な資料になります。

令和4年度の中小企業に関する税制改正ポイントは?

令和4年度税制改正大綱のうち、中小企業が押さえておきたい税制改正のポイントを紹介します。

賃上げ促進税制

賃上げや人材への投資を促すため、賃上げ促進税制の大幅な見直しが行われました。令和3年の改正では、雇用者給与等支給額の前年と比べた増加額のうち最大20%(法人税額や所得税額の20%が上限)までを税額控除できるとされていましたが、中小企業については、今回の改正大綱では最大40%(法人税額や所得税額の20%が上限)まで控除割合が拡大しました。

適用期間は、令和4年1月1日から令和6年12月31日までに開始の各事業年度。要件は、青色申告書を提出している中小事業者等(資本金1億円以下の中小企業など)であることです。

オープンイノベーション促進税制

オープンイノベーション促進税制は、令和2年度の税制改正によって創設された制度です。対象となる法人が、設立10年未満のスタートアップ企業に一定規模以上の投資を行ったとき、一定の要件を満たせば、出資した法人が取得した株式の取得価額の25%分を所得控除として受けられるものです。スタートアップ企業である中小企業が、大企業から投資を受ける際に活用できます。

今回の税制改正大綱では、出資法人が株式取得後に売却した際の益金算入が必要な期間が短縮されたほか、出資を受ける中小企業に関わるところでは、スタートアップ企業の要件が変更されました。以前は、設立以後10年未満であることのみが条件でしたが、加えて、売上高に占める研究開発費の割合が10%以上である赤字会社は、設立の日以後15年未満であればスタートアップ企業として認められます。

少額資産等の貸付資産の損金算入の除外

決算対策で利用されていた、貸付け用のドローンやLED照明、足場などの少額資産について、過度な節税を防ぐために規制が設けられました。利益が予想よりも上がりそうなケースで、少額資産を大量に購入し、その後、レンタル料として収入を得る節税対策が横行したためです。

該当する貸付け用の少額資産については、少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度、一括償却資産の損金算入制度、中小企業等の少額減価償却資産の損金算入の特例が適用できなくなりました。今後は通常の減価償却を行うことになります。

ただし、リース業者やレンタル業者など、資産の貸付けを主要な業務として行っている場合については、損金算入除外の適用はありません。

土地に係る固定資産税の負担調整措置

コロナ禍の現状を踏まえ、商業地等の土地の固定資産税等について、負担調整措置がとられることになりました。固定資産税等の負担調整措置については、以前から地価が大きく上昇したときの負担軽減が行われています。

今回の、令和4年度の税制改正大綱で調整が行われたのは、地価の負担水準が20%以上から負担水準60%未満となったときです。

負担水準20%以上負担水準60%未満のときには原則として、前年度の課税標準に当年度の固定資産税評価額の5%を加算し段階的に引き上げることとなっています。この5%の加算が、今回の税制改正大綱では半額の2.5%の加算に変更されました。なお、加算割合の半減は、令和4年度のみ適用されます。

※負担水準:前年度の課税標準額÷当年度の固定資産税評価額

少額減価償却資産の特例措置の2年延長

1つ30万円未満の減価償却資産については、合計300万円を限度に、中小企業者等のみ、即時償却による全額損金算入の特例が認められています。令和4年度の税制改正大綱により、特例措置が令和5年度末まで2年延長になりました。中小企業者であれば、引き続き30万円未満の資産であれば、取得費を一括で損金算入することが可能です。

ただし、前述したように、貸付け用の少額償却資産(貸付けを主な事業としている場合を除く)は特例の対象からは外されます。

交際費課税の特例措置 2年延長

法人の支出する交際費等は、原則として損金算入が認められません。しかし、中小法人については、800万円を限度に交際費等の全額損金算入が特例で認められています。この特例の適用期限が今回の税制改正大綱で令和5年度末まで2年間延長されました。
これにより、中小企業はこの特例措置と接待飲食費の50%のどちらかを選択して損金算入できるとされています。

法人版事業承継税制 確認申請の1年延長

法人版事業承継税制は、中小企業の円滑な世代交代を進め、日本経済の基盤を強固なものにするために制定された制度です。後継者が、円滑化法の認定を受けた非上場株式などを贈与や相続によって取得したとき、一定の要件の下、贈与税や相続税の猶予、後継者が亡くなったときなどは猶予分の贈与税や相続税の免除が受けられます。

法人版事業承継税制については、特定を受けるための確認申請の期間、特例を受けられる事業承継の期間が決められています。確認申請の期間については、令和5年3月末までとなっていましたが、新型コロナウイルスの影響も踏まえ、令和6年3月末までに1年延長されました。

記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応

これまで、申告の義務を履行しない納税者には「無申告加算税」、収入の申告が本来より著しく過少な納税者には「過少申告加算税」の課税が行われていました。

令和4年度の税制改正では、悪質な納税者に対応するために、加算税に対してさらに加重が行われることになります。収入の3分の1以上5割未満が不記載の納税者には、当該申告漏れ等に係る所得税、法人税又は消費税の5%、収入の5割以上が不記載の納税者には10%の加重が決定しました。令和6年1月1日以後より適用される予定です。

また、令和5年1月1日以後開始の事業年度より、存在が不透明な簿外経費は、損金に算入できなくなりました。

電子帳簿保存法への影響は?

インターネットの普及やクラウドサービスの充実化などの背景もあり、電子取引により書類をやり取りする場面も増えました。電子帳簿保存法は、こうした電子化の流れを受けて1998年7月から施行されている、電子データ保存に関わる法律です。

電子帳簿保存法については以下の記事で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。


令和4年度の税制改正大綱では、電子帳簿保存法に関連するものもありました。電子帳簿保存法への影響について解説します。

領収書、請求書等の電子保存義務化の猶予について

これまで電子取引※の記録は電子データによる保存が原則とされ、代替手段として紙に印刷しての保存が認められていました。
(※電子取引とは、電子メールやクラウドサービスなどを利用した領収書や請求書、クレジットカードの利用明細書など、電磁的方法で取引したデータのこと)

令和3年の電子帳簿保存法改正により、令和4年以降は紙での保存ができなることが決定しました。しかし現場からは、システム改修が間に合わない、紙での処理が多くすぐに取り入れられない、などの声が多く上がっています。

こうした現場の状況もあって、令和4年度の税制改正大綱には2年間の経過措置を設けることが盛り込まれました。原則は電子データでの保存になりますが、やむを得ない事情がある場合に限り、紙での保存が可能です。なお、経過措置は令和4年から5年の限定的なもので、令和6年以降は紙による電子取引の記録データ保存は認められなくなります。

タイムスタンプの認定制度について

現行の電子帳簿保存法では、電子データの保存において民間組織である日本データ通信協会の認定制度によるタイムスタンプの記録が認められています。これに対し、令和4年の税制改正大綱では、従来の民間によるタイムスタンプに代わり、総務大臣認定のタイムスタンプが電子帳簿等保存制度の要件として位置付けられることになりました。

これは国による信頼性の裏付けを図り、スキャナ保存での国税関連書類の電子化を進めることなどが目的です。会社の実務に対する影響は大きくありませんが、国により認定されたタイムスタンプを利用することで、電子文書の信頼性が向上するメリットがあると考えられます。

インボイス制度への影響は?

インボイス制度は、適格請求書(インボイス)のための制度です。消費税の引き上げと軽減税率の導入により制度化されたもので、令和5年10月より適用が開始されます。

インボイス制度の概要や導入による変化については、以下の記事で詳細を取り上げていますので、こちらもご覧ください。


令和4年度の税制改正大綱では、インボイス制度に関わる見直しも行われました。ここでは、インボイス制度への影響について解説します。

適格請求書発行事業者の登録申請について

インボイス制度で適格請求書を発行するには、登録申請を行い、適格請求書発行事業者になる必要があります。

これまで、免税事業者においては、適格請求書発行事業者の課税期間途中での登録はできないようになっていました。また、適格請求書発行事業者の登録申請を行う前に、免税事業者は課税事業者選択届出書の提出が必要でした。

令和4年度の税制改正大綱で見直されたのは、この免税事業者の手続きについてです。免税事業者であっても課税期間の途中で登録ができるようになるほか、事前に課税事業者選択届出書を提出する必要はなくなりました。この登録申請制度の見直しにより、スムーズに適格請求書発行事業者への移行ができるようになります。

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今回は、中小企業に関連する項目を中心に令和4年度の税制改正大綱の内容を解説しました。紹介した内容以外にも、さまざまな改正や期限の延長などが行われる見込みです。

マネーフォワードクラウドシリーズは、税制改正にも対応していますので、税制改正分が適用できているか不安にならずに済みます。クラウド会計、クラウド経費、クラウド請求書、などさまざまなサービスが利用できるのもおすすめポイントです。

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よくある質問

税制改正大綱とは?

与党の税制調査会が中心となって審議された、翌年以降の税制改正の方向性をまとめたものです。詳しくはこちらをご覧ください。

令和4年度の税制改正のポイントは?

賃上げ促進税制の控除率の引き上げ、少額の貸付け用資産の損金算入特例等の除外、悪質な納税者への加重や簿外経費の損金不算入などです。詳しくはこちらをご覧ください。

令和4年度の税制改正での電子帳簿保存法の影響は?

電子取引の電子データ保存の猶予期間が設けられたほか、タイムスタンプは民間から総務大臣認定のものに位置付けが変わります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:冨田 健(不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務)

43都道府県で不動産鑑定業務経験があり、各種媒体に不動産価格や不動産税務に関する講演及び寄稿も行う。
令和3年8月に不動産の評価手法・相続・税務、立退料の評価、戸建住宅の価格目線の把握法等を実例を交え一般向けに述べた自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」を上梓。
公認会計士世田谷会幹事・国土交通省公示価格鑑定評価員・その他公職にあり。
特技は12年間学んだエレクトーンで、公認会計士東京会第四回音楽祭で優勝経験あり。
事務所名 :冨田会計・不動産鑑定㈱

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