- 更新日 : 2025年2月19日
仮払法人税等とは?計上の流れや仕訳まで解説
仮払法人税等とは、中間申告で支払った法人税等を一時的に計上する勘定科目です。決算で確定した納税額から控除し、残った金額を未払法人税等の勘定科目で仕訳します。
本記事では仮払法人税等の概要や計上の流れを説明するとともに、未払法人税等についても解説します。
仮払法人税等とは
仮払法人税等とは、中間納付法人税など、中間申告で支払った法人税等を一時的に計上する勘定科目のことです。会社が納付する税金はさまざまな種類があります。このうち法人税・法人住民税・事業税は、所得に対して課される税金であり、まとめて「法人税等」と呼ばれる点が特長です。
法人税等について中間申告義務がある法人は、年度末に税額が確定する前に中間申告をする必要があります。
中間申告とは事業年度が6ヶ月を超える法人で、以下の計算式で求めた金額が10万円を超える法人に義務付けられます。
中間申告は「予定申告」と「仮決算による中間申告」のいずれかを選択できます。
予定申告は前事業年度の確定法人税額の6ヶ月相当額により申告する方法で、上の計算式で求めた税額を納めます。
仮決算による中間申告の場合は、事業年度開始の日以後6ヶ月の期間を1事業年度とみなして法人税の計算をする方法で、10万円以下であっても申告が必要です。
法人税の中間申告は確定申告よりも前に行うため、納税額が確定していません。そのような場合に使うのが、仮払法人税等の勘定科目です。
計上した仮払法人税等は決算で精算され、中間納付で支払い過ぎている場合は確定申告で還付されるため、最終的に負担する金額は変わりません。
仮払法人税等の計上の流れ
仮払法人税等を使用するタイミングは、中間申告時と決算時です。それぞれの流れをみてみましょう。
まず、中間申告および納付を行ったときは、その納付額を仮払法人税等で一時的に資産計上します。貸方になるのも現金や当座預金などの資産で、資産の総額に増減はありません。支払った段階ではまだ確認できない納税額を仮払いとして処理するだけであり、この時点では資産に動きはないということです。
決算で当期の法人税等の税額が確定するため、会計処理を行います。貸方には中間申告で計上した仮払法人税等を記帳し、中間申告の納税分を差し引いた金額を未払法人税等として仕訳します。
仮払法人税等の処理は以上ですが、確定申告では法人税等の残額を支払ったあとの処理が必要です。決算で負債に計上していた未払法人税等を仕訳し、すべての会計処理が完了します。
仮払法人税等の仕訳例
仮払法人税等の仕訳例を、計上の流れに沿ってみていきましょう。
中間申告は前述のように予定申告か仮決算による中間申告を選べますが、どちらの場合でも仕訳方法は同じです。
中間申告による納税額30万円を当座預金から支払った場合は、以下のように記帳します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
仮払法人税等 | 300,000円 | 当座預金 | 300,000円 | 中間申告の納税 |
法人税等は決算日から2ヶ月以内に申告して納税するため、決算日にはいったん未払法人税等の勘定科目で仕訳が必要です。
確定した納税額から中間申告で計上した仮払法人税等を控除し、未払法人税等として計上します。
中間申告による納税額が30万円だった事例で、決算により法人税額が80万円に確定した場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
法人税等 | 800,000円 | 仮払法人税等 | 300,000円 | 法人税等の確定 |
未払法人税等 | 500,000円 |
確定申告では決算時に計上した未払法人税等の会計処理が必要です。
未払いの負債になっていた未払法人税等50万円を納税したら、以下のように記帳しましょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
未払法人税等 | 500,000円 | 当座預金 | 500,000円 | 未払分の法人税等を納税 |
仮払法人税等と未払法人税等との違い
決算で使用した未払法人税等は、納付すべき法人税等の未払額を表す勘定科目です。貸借対照表では、負債の部の流動負債に含まれます。
決算の時点では会社の最終的な利益が確定しないため納税額を算出できず、まだ税金は納められません。決算日の翌日から2ヶ月以内に確定申告を行い、最終的な所得に基づいて税額を計算して納付します。
納付日が決算日よりあとになるため、確定した税額の未払分をいったん未払法人税等という勘定科目で計上し、当期の決算に入れるという処理が必要です。
仮払法人税等は決算後、税額が確定した際に差し引かれるもので、差し引いたあとの差額を決算で計上するのが未払法人税等ということです。
仮払法人税等は決算での仕訳を忘れずに
仮払法人税等は、中間申告で支払った法人税等を一時的に仕訳するための勘定科目です。決算日には確定した納税額から控除し、差額をいったん未払法人税等で計上します。未払法人税等は、確定申告で残額を納付したのちに会計処理をするという流れです。
中間申告が必要な法人は、仮払法人税等を仕訳する一連の流れを把握しておきましょう。
よくある質問
仮払法人税等とは?
中間申告で支払った法人税等を一時的に計上する勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
仮払法人税等と未払法人税等の違いは?
仮払法人税等は決算後、税額が確定した際に控除し、その差額を計上するのが未払法人税等です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
【事例で解説】パソコンの勘定科目とは?ケース別に購入時の仕訳例まとめ
IT関連の企業をはじめとして、事務処理などのためにパソコンやマウスを購入する会社や個人事業主は多いでしょう。パソコンの購入は金額によって勘定科目が異なり、その後の会計処理も変わってきますので、しっかりポイントを押さえておきたいところです。今…
詳しくみるお茶を経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
プライベートではなく、業務に関するものであればお茶代を経費化できます。仕訳に使う主な勘定科目は、消耗品費・福利厚生費・会議費・交際費です。 お茶代の仕訳にどの勘定科目を用いるかは、シーンによって異なります。本記事で、どの場面でどのような勘定…
詳しくみる損害賠償金を仕訳する場合の勘定科目まとめ
会社経営を進めていくなかで、事故やトラブルなどで損害賠償金を支払う場面が出てくるかもしれません。損害賠償金は通常であれば発生することの少ない費用であり、会計処理でどのように扱うのか迷うことがあるでしょう。経費にできるのか、どの勘定科目で仕訳…
詳しくみる請求書関連の仕訳と勘定科目のまとめ
請求書を発行してすぐに仕訳が必要になるわけではりません。しかし、請求書を発行して商品・サービスを受け渡したときや、入金が確認されたときは、仕訳が必要です。また、請求書を受領したときは、商品・サービスを受け取ったときと、代金を入金した際に仕訳…
詳しくみる建設仮勘定とは?減価償却や消費税の処理方法、仕訳について解説
建設中の建物にかかる費用については、建設完了と同時に全額を支出するのではなく、建設途中に支払うこともあります。自家建設の場合は、完成までに建設に関わるさまざまな費用が発生します。建設仮勘定は、このような建設中の有形固定資産にかかる費用を処理…
詳しくみる仕入帳の書き方は?作成義務の有無や記入例を解説
仕入帳とは、仕入によって発生するお金の流れを記載する書類です。仕入先や単価、数量など、仕入にかかわる情報はすべて記載します。仕入帳があることでお金の流れを時系列に把握しやすくなりますが、作成義務はありません。本記事では、仕入帳の書き方や保存…
詳しくみる