• 更新日 : 2021年6月2日

手形要件とは?不備があった場合はどうなる?一覧でまとめて解説

手形は、一定の期日に決められた金額を支払うことを約束する決済方法です。企業間のやりとりで使用される場面もあり、名称を聞いたことのある方も多いと思います。

しかし、実際どのように取り扱えば良いか把握している方は少ないのではないでしょうか。手形にはさまざまなルールがあり、正しく使用しないと無効になったり、会社の信用に影響を及ぼしたりする恐れがあるので注意しなければなりません。

そこで本記事では、手形要件の基礎知識や約束手形為替手形の要件一覧、要件の不備と白地手形、裏書きについて解説します。

手形要件とは

手形は信用があってこその、現金支払いの代わりとなる証券です。そのため、取引への安全性や支払いの確実性を確保するため、必要事項は誰が見てもわかるように、券面上に必ず記載しなければなりません。まずは、手形要件の基礎知識について解説します。

そもそも手形とは

手形とは、所定の期日に決められた金額を支払う内容を記載した証券のことです。商品売買の取り引きの際に、現金に代わる決済手段のひとつとして用いられることがあります。

定めた期日に後から支払う点では掛取引と似ていますが、支払いまでの期日が長いことや、より法的な強制力を持っているのが手形の特徴です。また、小切手も手形と同様に思われがちですが、前者は受け取ってからすぐに現金化できるのに対し、後者は支払期日にならないと現金化できません。なお、手形には「約束手形」と「為替手形」の2種類があり、詳細は後述します。

手形要件とは手形を有効にするための記載事項

手形の振出を有効化するためには、手形用紙の必要的記載事項を満たさなければなりません。この記載事項を手形要件と呼びます。

手形は取引相手との信頼関係を前提に用いられるため、債務成立への安全性や確実性が何より重要です。よって、誰が見ても債務内容が分かるように記載されているかという点と、手形要件に不備がないか必ず確認しておきましょう。

また、手形要件以外の記載事項には、手形内容に影響を与えない「無益的記載事項」や、記入することで手形自体を無効とする「有害的記載事項」があります。企業独自の手形番号や手形本来の効力を記した文言は無益的記載事項として扱われますが、法律に反する特約等を記載すると有害的記載事項に該当するため注意が必要です。

約束手形の要件

約束手形とは、手形の振出人(支払人)が代金の受取人に対して、所定の期日に記載金額の支払いを約束する手形のことです。約束手形の要件を以下の表でご確認ください。

要件内容
約束手形文言約束手形であることを示す文字
※統一約束手形用紙に印刷されている
単純な支払約束振出人が受取人に対して手形金額の支払いを約束する文言
「上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引き
替えにお支払いいたします。」と印刷されている

※「2回に分割してお支払いします。」等の文言を加筆すると有害
的記載事項に該当し、手形が無効となるため注意
手形金額一定の金額を記載

【金額明記の注意点】
手書き文字:漢数字を使用。金額の前に「金」を、後ろに「円成」
を明記。(例:金壱百五拾万円成)
アラビア数字:専用チェックライターを使用。金額の前に「¥」を
後ろに「※」または「☆」を明記(例:¥1,500,000※)
満期金額を支払う年月日(支払期日)
※暦にない日を記載した場合、記載されている月の末日となる
※振出日より前の日付を記入すると無効となるため注意
支払地支払場所である最小行政区画を記載
受取人手形金額を受け取る人物の名前を記載
※法人の場合、会社名(商号・屋号)を記入。代表者名は不要
振出地振出場所である最小行政区画の記載が必要となる場合がある
振出日手形が振り出された日を記載
※満期日(支払期日)より後の日付を記入すると無効となるため
注意
振出人の署名個人の場合:住所・氏名・捺印
法人の場合:住所・社名・職名・氏名・捺印
※銀行への届印で捺印する

為替手形の要件

為替手形は、約束手形同様に所定の期日に金額の支払いを約束する手形のことを指しますが、3社間の取引における決済方法です。振出人と受取人のほか、支払人(支払いを引き受けた方)が存在します。

なお、為替手形の発行は、本来あるべき発行形式である「他人宛為替手形」、振出人と受取人が同一である「自己受為替手形」、振出人と支払人が同一である「自己宛為替手形」の3パターンに分類可能です。為替手形の要件は次の表をご確認ください。

要件内容
為替手形文言為替手形であることを示す文字
※統一為替手形用紙に印刷されている
単純な支払委託 振出人が手形金額の支払いを委託する文言
「**殿またはその指図人へこの為替手形と引替えに上記金額をお
支払ください。」と印刷されている
手形金額一定の金額を記載

【金額明記の注意点】
手書き文字:漢数字を使用。金額の前に「金」を、後ろに「円成」
を明記。(例:金壱百五拾万円成)
アラビア数字:専用チェックライターを使用。金額の前に「¥」を
後ろに「☆」もしくは「※」を明記。(例:¥1,500,000※)
支払人手形金額を支払う人物の名前を記載
※法人の場合、会社名(商号・屋号)を記入。代表者名は不要
※支払人の住所は要件ではないが、引受提示の際に便利であるため
記載推奨
満期金額を支払う年月日(支払期日)
※暦にない日を記載した場合、記載されている月の末日となる
※振出日より前の日付を記入すると無効となるため注意
支払地支払人の取引銀行が不明の場合、記載無し
※支払人の住所が記載されていると、そこが支払地とみなされる
受取人手形金額を受け取る人物の名前を記載
※法人の場合、会社名(商号・屋号)を記入。代表者名は不要。
振出地振出場所である最小行政区画の記載が必要となる場合がある
振出日手形が振り出された日を記載
※満期日(支払期日)より後の日付を記入すると無効となるため注意
振出人の署名個人の場合:住所・氏名・捺印
法人の場合:住所・社名・職名・氏名・捺印
※銀行への届印で捺印する

要件に不備がある場合は手形が無効になる?

手形法上では要件に不備がある場合は、無効として扱われます。これを回避するためには、手形を受け取った際、必要的記載事項の抜けがないか確認することが重要です。

一方で、必要事項の一部が記入されていない手形も存在します。意図的に必要的記載事項を空欄で振出している手形のことを「白地手形」といいます。

この手形は振出人や裏書人、または保証人の署名のいずれかがあれば交付可能です。ただし、本来の形式としては不完全なままなので、受取人や所持人が後から空欄を補充しなければなりません。

白地手形は、最終的に要件をすべて満たした完全な手形として銀行に持っていく前提で振り出されます。使い勝手の良さから白地手形を振出しするケースは多いのですが、振出人と受取人の双方が合意した内容の補充がされていない場合、トラブルを招く可能性もあるため注意しましょう

裏書に要件はある?

手形を受け取った方は、その権利を第三者へ譲渡することが可能です。譲渡する場合、手形の所持人(譲渡人)が手形の裏に次の事項を記載する必要があります。

  • 所持人の住所・氏名・捺印(法人の場合:住所・会社名・代表者肩書・代表者名・捺印)
    ※会社名は正式名で記入。(株)等は使用不可
    ※被裏書人の欄には重ならないように注意
  • 手形を譲渡したい相手(被裏書人)の会社名や氏名
    ※実務上空欄のままでも良い

裏側に必要事項を記入して譲渡することから「裏書き(裏書譲渡)」と呼ばれ、裏書譲渡された手形は「裏書手形」または「廻り手形」として扱われます。

手形要件について正しく理解しよう

ここまで手形要件の基礎知識や種類ごとの要件一覧、要件の不備と白地手形、裏書きについてお伝えしました。手形は相互の信用によって振り出す証券です。

どの種類の手形でも、手形要件とされる必要事項が記載されていなければ有効にはなりません。一部例外として白地手形がありますが、意図的な空欄を受取人や所持人に埋めてもらうものです。不備を補充するために使用するものではないのでご注意ください。

さまざまなルールが設けられている手形ですが、この記事を参考に手形要件を正しく理解して対応方法を身につけましょう。

よくある質問

手形要件とは?

手形の振出を有効化するための、手形用紙の必要的記載事項のことです。

要件に不備があった場合はどうなる?

手形法上では無効として扱われます。なお、意図的に必要的記載事項を空欄で振出している手形を白地手形といいます。

裏書に要件はある?

所持人の住所・氏名・捺印、手形を譲渡したい相手(被裏書人)の会社名や氏名を記載する必要があります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事