• 作成日 : 2020年1月20日
  • 更新日 : 2020年9月17日

消費税の課税事業者の条件と提出書類まとめ

事業者は原則、消費税の納付が義務付けられています、一定の条件を満たす中小企業や個人事業主は納付が免除されます。今回は、消費税が課税される事業者、免税される事業者の違いはなにか。また、課税事業者の提出書類についても合わせて解説していきます。

消費税とは

消費税は、商品やサービスの取引に課される税金で、消費税(国税)と地方消費税の2種類があります(消費税の納税義務者は地方消費税も納めなければなりません)。最終的には消費する個人や法人が消費税額分を負担しますが、消費者が直接税金を納める仕組みではなく、納税義務者である事業者が税金を納める仕組みです。事業者をとおして、消費者の負担した消費税が間接的に国や地方に納められることから、間接税に区分されます。

2019年9月30日までの消費税は一律8%(消費税6.3%、地方消費税1.7%)でしたが、2019年10月1日からは消費税の引き上げと、軽減税率の導入によって、複数税率となりました。消費税の標準税率は10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)で、酒類や外食を除いた飲食物や定期購読の新聞に適用される軽減税率は8%(消費税6.24%、地方消費税1.76%)です。

課税事業者と免税事業者の違い

原則、個人であっても法人であっても、事業者は消費税を納める義務があります。ただし、一定規模以下の事業者については納付義務の免除が認められており、これを免除事業者といいます。

課税事業者

課税事業者、つまり消費税納付義務のある事業者になるかどうかの境目は、課税売上高1,000万円です。課税売上高とは、国内における消費税が課税される売上高に輸出にかかる免税売上高を加算したものから返品、値引きなどを差し引いたもので、対応する消費税額を含まない額のことを指します。後述しますが、基準期間あるいは特定期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者は、課税事業者になります。

免税事業者

免税事業者は、消費税納付の義務を負わない事業者です。課税事業者ではない、つまり基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者が該当します。課税売上高が課税事業者のラインに達しない場合は、免税事業者でいることもできますし、あえて課税事業者として届出することも可能です。

通常の国内取引であれば、課税仕入高よりも課税売上高の方が上がることから免税事業者でいる方がメリットはあります。しかし、多額の設備投資などがある場合、あるいは輸出事業で常に消費税の還付があるような事業では、課税事業者を選択した方が良いケースもあります。

【適格請求書等保存方式導入と注意点】

2019年10月から適用された複数税率の関係で、事業者は取引の際、標準税率か軽減税率かを明確にしなければならなくなりました。そこで導入されたのが、標準税率と軽減税率の区分を明確にした「区分記載請求書等保存方式」です。なお、2023年10月からは「適格請求書等保存方式」へと完全移行することが決まっています。

適格請求書等保存方式は、区分記載請求書等保存方式とは違い、課税事業者のみが交付できる請求書です。

免税事業者は適格請求書等保存方式での請求書が発行できず、免税事業者から仕入を行っている事業者は免税事業者との取引分を仕入控除できなくなります。適格請求書等保存方式の適用で著しい不利益とならないよう、適用から2026年9月末までは本来の80%、2026年10月から2029年9月末までは50%を仕入控除にできる経過措置が設けられますが、これは一時的なものです(2019年12月時点)。

免税事業者自身の納税にはかかわってきませんが、免税事業者を選択し続けることは、今後、取引先とのやり取りで不利益をかぶる可能性が考えられます。

いつどのように、課税・免税事業者は決まるのか?

課税事業者や免税事業者の説明部分でも触れましたが、いずれかの区分を決めるのは基準期間、あるいは特定期間の課税売上高です。基準期間とは、法人なら前々事業年度、個人なら前々年を指します。法人の場合、基準期間が1年に満たなければ、課税売上高を1年に換算して判断します。

(例)前々事業年度の事業期間8カ月で課税売上高600万円
→1カ月当たりの課税売上高は75万円。1年に換算すると900万円なので免税事業者になる。
※便宜上、課税売上高の計算を簡易にしています。

特定期間は、法人なら原則、前事業年開始日から6カ月の期間、個人なら前年の1月1日から6月30日の期間のこと。基準期間はおおむね2年前、特定期間はおおむね1年前でかつ半年分を判断基準とみることができます。

課税事業者か免税事業者かは、基準期間か特定期間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判断しますので、基準期間の免税条件をクリアしていても、特定期間がクリアできていなければ課税事業者となります。

特定期間の計算については、課税売上高ではなく、期間中の給与等支払合計額に代えて判定することが可能です。

新設法人が注意すべき点

新たに法人を設立した場合、設立した年を基準にすると、基準期間や特定期間中に売上が発生していないことから、課税事業者に該当しないことになります。原則は、設立した年に課税売上高1,000万円を超えていても納税義務者にはなりませんが、以下に該当する場合は例外です。

資本金、あるいは出資額が1,000万円以上
・資本金や出資額が1,000万円未満の新設法人で、課税売上高5億円超の法人が当該法人の株式を実質50%超保有する場合(2014年4月1日以後設立の法人が対象)

このように支払い能力があると思われる法人は、設立初年度であっても消費税の課税事業者となります。ほかにも、相続で事業を承継する場合に被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているときなどは、法人を新設しても消費税の納税義務を免れることはできません。

合併や分割も新法人の設立とはみなされず、それぞれ合併前や分割前の課税売上高の状況で判断されます。新設法人であれば必ず免税事業者となるわけではないので注意しましょう。

課税事業者が届けなくてはいけない書類について

基準期間や特定期間の課税売上高1,000万円を超える場合、免税事業者が課税事業者を選択する場合、新設法人で課税事業者に該当する場合は、いずれも所轄の税務署への届出が必要です。

1. 消費税課税事業者届出書

「消費税課税事業者届出書」は、基準期間、あるいは特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたときに提出する書類です。課税事業者に該当することが分かったとき、速やかに提出します。反対に、課税売上高が1,000万円以下になった場合は、「消費者の納税義務者でなくなった旨の届出書」を使います。

2. 消費税課税事業者選択届出書

「消費税課税事業者選択届出書」は、免税事業者に該当する事業者が、あえて課税事業者を選択する際の届出書です。原則、適用を受けたい課税期間が始まる前日までに届け出を済ませないと、課税事業者の適用を受けることができません(事業を開始した年は、その年の課税期間最終日までに届け出れば適用されます)。免税事業者が、課税事業者の選択を辞めたい場合は、「消費税課税事業者不適用届出書」を提出します。

3. 消費税の新設法人に該当する旨の届出書

「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」は、課税事業者に該当する新設法人に必要なものです。ただし、「法人設立届出書」に該当する旨を記載しているときは、届出の必要はありません。「消費税課税事業者届出書」同様、該当することが分かったら速やかに手続きを行います。

還付について

多額の設備投資などで、売上に対する消費税から仕入などの消費税を控除できない場合、多く支払っている消費税額分の還付を受けることができます。ただし、還付が受けられるのは課税事業者(簡易課税の適用を受ける事業者を除く)のみです。免税事業者に該当する法人などが還付を受けたい場合は、「消費税課税事業者選択届出書」によって課税事業者の選択をしなくてはなりません。課税事業者を選択する場合、2年間は課税事業者のままでいなければならないため注意しましょう。

消費税の還付については「消費税還付の仕組みと還付される条件まとめ」で詳細を記載しています。

課税事業者と免税事業者の選択については「消費税の節税は免税事業者と課税事業者はどちらが効果的?」を参考にしてください。※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。

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