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  • 更新日 : 2021年6月2日

消費税の課税事業者とは?対象となる取引や計算方法、必要な届出書とは?

消費税の課税事業者とは?対象となる取引や計算方法、必要な届出書とは?

消費税は、消費一般に広く公平に課税する間接税です。
消費税は事業者に負担を求めるものではなく、その税金分は事業者が販売する商品やサービスの価格に含まれ、次々と転嫁され、最終的に商品を消費し又はサービスの提供を受ける消費者が負担するものです。課税事業者は消費者が負担した消費税を申告納付します。
この記事では、消費税が課税される事業者、免税される事業者の違いはなにか。また、消費税の提出書類についても合わせて解説していきます。

消費税とは

消費税は、商品やサービスの取引に課される税金で、消費税(国税)地方消費税の2種類があります(消費税の納税義務者は地方消費税も合わせて納付します)。
最終的には消費する個人や法人が消費税を負担しますが、消費者が直接税金を納めるのではなく、納税義務者である事業者が税金を納める仕組みとなっています。つまり消費者の負担した消費税が間接的に国や地方に納められることから、「間接税」となります。

消費税の流れ

消費税の計算においては、多くの場合、上の図の中央に示したような計算になります。
すなわち、消費税の計算式は次のようになります。

消費税額 = 課税売上に係る消費税額 ― 課税仕入れ等に係る消費税額

 
2019年9月30日までの消費税は一律8%(消費税6.3%、地方消費税1.7%)でしたが、2019年10月1日からは消費税の引き上げと、軽減税率の導入によって消費税に複数税率が導入されました。
消費税の標準税率は10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)で、酒類や外食を除いた飲食物や定期購読の新聞に適用される軽減税率は8%(消費税6.24%、地方消費税1.76%)となっています。

課税事業者と免税事業者の違い

個人であっても法人であっても消費税の申告納付には区別はなく、事業者は消費税を納める義務があります。しかし、事業者の納税事務の負担等の軽減の観点から「免税事業者」となった場合には納付義務が免除されます。

課税事業者

課税事業者、つまり消費税納付義務のある事業者になるかどうかの境目は、課税売上高1,000万円です。課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となります。

課税売上高とは、次の2つの合計額をいいます。

  • 消費税が課税される取引の売上金額
    ※この売上金額からは消費税や地方消費税は除かれます。また、事業用資産の売却代金なども含まれます。
  • 輸出取引等の免税売上金額

後述しますが、課税事業者の判定にあたっては「基準期間」や「特定期間」といった課税の判定対象となる期間が設けられています。

免税事業者

免税事業者とは、消費税納付の義務を負わない事業者です。

課税事業者ではない、つまり一定期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者が該当します。課税売上高が課税事業者のラインに達しない場合は免税事業者となりますが、あえて課税事業者として届出をして消費税を申告することも可能です。

通常の国内取引の場合、課税仕入高よりも課税売上高の方が高くなることが多くみられるため免税事業者でいる方がメリットがあります。しかし、多額の設備投資などがある場合、あるいは輸出事業で常に消費税の還付があるような事業では、課税事業者を選択した方が良いケースもあります。

適格請求書等保存方式導入と注意点

2019年10月から適用された複数税率制度から、事業者は個々の取引の際、標準税率か軽減税率かを明確にしなければならなくなりました。
消費税の計算式は、次のとおりですが、右側の式の後半部分を仕入税額控除と呼びます。

消費税額 = 課税売上に係る消費税額 - 課税仕入れ等に係る消費税額

 
複数税率となってからは「区分経理」により税率ごとに区分することとされました。そして「区分経理に対応した帳簿」と「区分記載請求書等保存方式」が仕入税額控除の要件となりました。
すなわち、区分経理に対応した帳簿には次の5項目が必要となりました。

  • 課税仕入れの相手先の氏名・名称
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 対価の額
  • 軽減材率の対象品目である旨(記載がなければ受取側での追記可能)

そして、区分記載請求書等保存方式における請求書には原則として次の7項目が必要です。

  • 課税仕入れの相手先の氏名・名称
  • 請求書受領者の名称(一定の場合は省略可)
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 対価の額(税込)
  • 軽減材率の対象品目である旨(記載がなければ受取側での追記可能)
  • 税率ごとに区分して合計した税込み対価の額(記載がなければ受取側での追記可能)

箇条書きのいくつかのカッコ書きにあるように、必要事項が記載されていない請求書を受け取った場合には発行元に再交付を依頼するか、受け取り側で追記して内容を確認することとなっています。

インボイス制度への移行と免税事業者

消費税の制度について2023年10月からは「インボイス制度」へと移行することが決まっています。

インボイス制度では、売手側と買手側で次のとおりインボイスの保存が必要となります。

  • 売手である課税事業者は、買手である取引相手から求められたときは、インボイス(適格請求書)を交付しなければなりません。また、売手は交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります。
  • 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、売手である課税事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。

さらにインボイス制度においては、現行の区分記載請求書等保存方式と異なり、仕入税額控除の要件が厳しくなります。インボイス制度での仕入税額控除は課税事業者だけが交付できる「適格請求書(インボイス)」によってのみ許されています。

したがって、免税事業者は適格請求書が発行できず、免税事業者から仕入を行っている事業者は免税事業者との取引について、仕入税額控除を適用できなくなります。
インボイス制度の導入で免税業者が著しい不利益とならないような経過措置が設けられますが、これは一時的なものに過ぎません。
免税事業者は、取引先からインボイスの発行を求められたときどうするかという問題に直面します。2023年10月以降において免税事業者を選択し続けることは、取引先とのやり取りで不利益をかぶる可能性も考えられます。

課税・免税事業者の判定方法とは?

課税事業者や免税事業者の区分を決めるのは「基準期間」又は「特定期間」の課税売上高となります。
基準期間とは、法人は原則としてその事業年度の前々事業年度、個人ならその年の前々年をいいます。法人の場合、基準期間が1年に満たなければ、課税売上高を1年に換算して判断します。

例)前々事業年度の事業期間8カ月で課税売上高600万円

→1カ月当たりの課税売上高は75万円(=600万円÷8)
 1年に換算すると900万円(=75万円×12)<1,000万円 となるため免税事業者になる  ※便宜上、課税売上高の計算を簡易にしています

また、特定期間は、法人は原則として、その事業年度の前事業年開始の日以後6カ月の期間をいい、個人の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日のまでの期間のことをいいます。
なお、特定期間における課税売上高1,000万円の判定に代えて、同期間中の給与等支払の合計額により判定することも可能です。

課税事業者か免税事業者かは、基準期間か特定期間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判断しますので、基準期間の免税条件をクリアしていても、特定期間がクリアできていなければ課税事業者となります。

【課税売上高:個人の場合の基準期間と課税期間】
課税売上高:個人の場合の基準期間と課税期間

新設法人、個人が注意すべき点

新たに法人を設立した場合、設立した年を基準にすると、基準期間や特定期間中に売上が発生していないことから、課税事業者に該当しないことになります。
しかしながら、新設法人については、その事業年度開始における資本金又は出資の金額が1,000万円以上である場合等においては消費税の納税義務は免除されません。

支払能力があると判断される法人は、設立初年度であっても消費税の課税事業者となります。
その他、個人のケースにおいても相続で事業を承継する場合に被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているときなどは、消費税の納税義務を免れることはできません。
新設法人であれば必ず免税事業者となるわけではないので注意しましょう。

課税事業者が提出すべき届け出について

基準期間や特定期間の課税売上高1,000万円を超えた場合、免税事業者が課税事業者を選択する場合、新設法人で課税事業者に該当する場合その他には、税務署に届出が必要です。
消費税の届出は非常に種類が多いため、いつどのような届出を提出したかを管理しておきましょう。

1. 消費税課税事業者届出書
「消費税課税事業者届出書」は、基準期間又は特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたときに提出する書類です。届出書には基準期間用と特定期間用があります。課税事業者に該当することが分かったときに、速やかに提出します。
反対に、課税売上高が1,000万円以下になった場合は、「消費者の納税義務者でなくなった旨の届出書」を使います。この場合も速やかに提出します。

2. 消費税課税事業者選択届出書
「消費税課税事業者選択届出書」は、免税事業者であっても課税事業者を選択する際の届出書です。適用を受けたい課税期間が始まる前日までに届出を提出しないと、課税事業者の適用を受けることができません(事業を開始した年は、その年の課税期間最終日までに届け出れば適用されます)。
反対に、課税事業者の選択をやめたい場合は、「消費税課税事業者不適用届出書」を選択をやめようとする課税期間が始まる前日までに提出します。

3. 消費税の新設法人に該当する旨の届出書
「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」は、課税事業者に該当する新設法人に必要なものです。ただし、「法人設立届出書」に該当する旨を記載しているときは届出の必要はありません。
「消費税課税事業者届出書」同様、該当することが分かったら速やかに手続きを行います。

その他の届出書には、消費税簡易課税制度選択届出書、消費税簡易課税制度不適用届出書、消費税申告期限延長届出書などがあります。いずれも届出すべきタイミングには注意しましょう。

届出を忘れた場合

消費税の届出を忘れた場合は、その届出を提出していなかったこととなります。

例えば、本来なら免税事業者となれる場合であっても、輸出免税売上の割合が大きい場合や高額な設備投資等を行う場合は、自ら課税事業者を選択することにより還付を受ける方が有利になることがあります。この場合、提出期限までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなかった場合には還付は受けられません。
ところが、基準期間の課税売上高が1,000万円超となったため提出すべき「消費税課税事業者届出書」の提出を忘れてしまっても、課税売上高の判定により自動的に課税事業者にはなります。

また、「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することはできません。

このように、個々の届出によって取り扱いは異なりますが、提出すべきタイミングで確実な手続きをすることをおすすめします。

消費税額の計算方法

消費税の計算方法は、原則として「課税売上に係る消費税額」から「課税仕入れ等に係る消費税額」を差し引いたものですが、それ以外の計算方法もあります。
原則課税と簡易課税について計算の概要を見てみましょう。いずれも国税としての消費税を求め、地方消費税については、消費税額×税率で求めます。

原則課税方式での計算

原則課税方式での消費税の計算式の概要は次のとおりです。

原則課税方式での計算

さらに仕入税額控除においては、次のように計算方法が分かれます。

課税売上割合が95%以上課税期間の課税売上高が5億円超個別対応方式又は
一括比例方式により控除
上記以外全額控除可能
課税売上割合が95%未満
又は課税売上高5億円超
個別対応方式又は一括比例方式により控除

個別対応方式とは、仕入れに対する消費税を3つに区分して納付税額を計算する方法です。
3つの区分とは、次のとおりです。

  • 課税売上にのみ対応するもの
  • 課税売上と非課税売上の両方に共通するもの
  • 非課税売上にのみ対応するもの

また、一括比例方式とは、課税期間中のすべての仕入に係る消費税額を、課税売上割合分のみ控除する方法です。

このように支払った消費税額を計算する「仕入税額控除額」については計算だけでも手数が係ります。そこで考えられたのが次の簡易課税方式です。

簡易課税方式での計算

簡易課税方式とは、中小事業者にとって手数の係る仕入税額控除を簡便にする方法であるとともに、仕入税額控除に係る「区分記載請求書等保存」を不要とする方法です。

簡易課税を適用するためには次の要件があります。

  • 基準期間の課税売上高が5,000万円以下
  • 事前に簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を提出

簡易課税方式での消費税の計算式の概要は次のとおりです。

納付税額 = 課税売上に係る消費税額 - 課税売上に係る消費税額 × みなし仕入率

 
みなし仕入率とは、事業区分ごとに定められた仕入率のことで次のとおりです。
例えば、卸売業は90%、小売業は80%などと決められています。
なお、簡易課税制度の運用については、原則として2年間は継続する必要があります。

還付について

多額の設備投資などで、売上に係る消費税が仕入税額控除額を上回る場合、多く支払っている消費税額分の還付を受けることができます。

ただし、還付が受けられるのは課税事業者(簡易課税の適用する事業者を除く)のみです。課税事業者を選択する場合、2年間は課税事業者のままでいなければならないため注意しましょう。

消費税の還付については「消費税還付の仕組みと還付される条件まとめ」で詳細を記載しています。

課税事業者と免税事業者の選択については「消費税の節税は免税事業者と課税事業者はどちらが効果的?」を参考にしてください。法人設立の届出についてより詳しい情報を知りたい方は以下のサイトをご参照ください。

消費税の課税事業者の要件をおさえ、忘れずに届け出を!

消費税については、インボイス制度への移行を踏まえ、インボイス(適格請求書)をどのように保存するかも検討しなければなりません。
消費税においては電子インボイスといって、電子データでの請求書保存が認められることとなりましたが、これには電子帳簿保存法の要件を満たす必要もあります。
今後、消費税で忙しくなる前に消費税の内容をよく理解して、自社がどのような届け出の元にどのような処理をしているのかについて把握しておきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。